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日本にとって台湾は友好国であるとともに、戦略的に極めて大事な国である。万が一、台湾が中国によって陥落すれば、次は我が国が危うい。以下、中国の侵略に対して台湾がどこまで持ちこたえられるか、また、我が国としてはどうすれば良いか、について私の分析と提案である。

 

かつて中国は、経済と文化交流で台湾を統一できると踏んでいた。しかし、その見当に反して、現在、台湾人の3分の2は「自分を中国人だ」と意識してはいない。6割は中国に対して不信感さえも抱いている。実際、今年1月の台湾総統選では、蔡英文総統が親中派の候補に大差をつけ、史上最高800万票超の得票で圧勝した。つまり、台湾の有権者は、台湾統一を掲げる中国に対し、ノーを突きつけたと言える。

 

こうした情勢を踏まえ、中国・習近平国家主席は、より好戦的な対応を取り始めた。具体的には、

1)昨年、「新たな時代における中国の歴史的な復興には統一が必須条件」だ、と演説。

2)中国人民解放軍がここ数ヶ月、台湾に対する軍事的圧力を強化。

・戦闘機を台湾海峡の事実上の中間線を越えて飛ばしている。

・台湾周辺で大規模な軍事演習を実施している。

 

また、国防費を比較してみると、中国が継続的に増加させているのに対し、台湾は数十年、横ばい状態。こうした中で、今や台湾を中国から防衛することはかなり難しくなっている。

1)戦闘機の数で見ると、中国は10年前に台湾の4倍保有し、今は6倍の戦闘機を保有している。

2)中国の公表国防費は1990年代には台湾の2倍だったのが、2018年時点には台湾の約16倍になっている。(台湾中央銀行が発表した為替レートで米ドル換算して比較した場合)。中国は、1989年度から30年間で約48倍、2009年度から10年間で約2.5倍のスピードで増額を続けてきた。

 

図表I-2-2-16 台湾の防衛当局予算の推移

 

図表I-2-2-1 中国の公表国防予算の推移

 

図表I-2-2-17 中台の近代的戦闘機の推移

 

図表I-2-2-4 中国軍の配置と戦力(イメージ)

(出所)令和2年版 防衛白書より

 

もちろん、どんなに強大な軍事力を持ってしても、海から侵攻することは容易ではない。実際、米軍が朝鮮半島を攻略して以来、一国が海からそれなりに防衛された国を攻略した事例は世界にはない。中国も、第二次世界大戦で連合軍が実行した「ノルマンディ上陸作戦」のようなものを想定した軍事演習は一度も実施していないのだ。

 

現実的には、軍事ヘリや特殊部隊を駆使して攻めるほうが合理的である。しかし、これに対しても台湾の防衛の準備が十分整っていて、かつ、台湾人が戦う意志を持っていたら、十分に防衛できるだろう。

 

問題は、残念ながら、台湾の防衛準備が整っていないことだ。また、戦う意志も薄れてきているようだ。その証拠に、

1)米国のターナ・グリーアという軍事専門家は、9ヶ月間にわたって台湾の軍隊の視察をしてきたが、その結論として「台湾の軍隊は総じて訓練不足である」と総括している。

2)8月の台湾世論調査では、「中国と戦う意志がある」と答えた人は半分以下である。

 

したがって、今度は、米国が中台の紛争にどこまでかかわるか、ということが台湾防衛に極めて重要になる。

 

この点から言えば、「ランドシンクタンク」などが「机上作戦」を行った結果、米国はかなり不利な立場に置かれるということが判明している。具体的には、

1)アジアにおける米軍基地は、すべて中国のミサイルの射程範囲内にある。

2)米国本土から爆撃機を飛ばすことはできるが、これらに搭載すべきミサイルが不足。

3)米国の情報通信ネットワークを駆使した最新の軍事技術は、中国のサイバー攻撃能力に太刀打ちできるか不透明。

4)「米国第一主義」ということで内向きになった米国民が、どこまで中国との戦争を支持するか。

 

最も楽観的な想定で行われた「机上作戦」でも、米国は中国軍を押し返すことはできても、台湾は廃墟同然になるだろうと予測されている。

 

内向きになっている米国人について言えば、今や米国本土にある都市がすべて中国の核ミサイルの射程範囲に入っていることも影響している。「台北を守るかわりに、ロスアンゼルスを犠牲にする」鋼の意志が米国人にあるかどうか、判断を迫られるだろう。

 

まずは、何よりも台湾の軍事力強化と国民の意識改善が必要である。しかし、この点については、世論調査で「近い将来、中国と一線交えると思うか」という質問に対して、「ある」と答えた人は全体の5分の1に過ぎない。こうした台湾世論の中で、果たして防衛力を強化するための予算などをどこまで確保できるか、はなはだ心もとないことである。

 

こうした厳しい予想を踏まえ、我が国としてはやるべきことは、

1)台湾との軍事交流を強化。

2)台湾に軍事物資を支給する段取りを整える。

3)米国との共同戦略を早急に策定して、台湾防衛のための日米の役割をはっきりさせる。

ことなどが求められる。

 

再び警鐘を鳴らすが、台湾が陥落すれば、次は我が国だ。危機感をもって、以上の政策を早急に実行していく必要がある。

新しい総理・内閣が誕生し、今ここでふり返って、安倍政権誕生の2012年末からの景気拡大期の分析をするのも決して無意味ではないだろう。新型コロナ不況以前から、我が国の産業経済が、一般に思われているより厳しい状況にあることが分かるからである。

 

一言でいえば、日本経済は低賃金スパイラルに陥っている。

 

【低賃金スパイラルの実態】

具体的には、①消費が伸びない→②中小零細企業とりわけ小売業が人員削減、場合によっては倒産→③あぶれた労働者は大企業に再就職するが、大半とまでは言わなくても、多くは非正規雇用で採用→④平均賃金が伸びない→振り出しに戻って、①消費が伸びない。。。

 

この悪循環を断たないと賃金は上がらない。そして消費は増えない。

 

よく言われるように、たしかに大企業は2012年末から「営業利益」が7割以上伸びている。前代未聞の利益だ。さぞかし給料も増えていると思いきや、大企業の一人当たりの平均賃金は1.2%減少しているのである。要は、増えた利益は株主配当や税金支払いに回されているものの、賃金は引上げられず、内部留保におさまっているということである。

 

もっと詳細にみれば、大企業の利益の増え方もいびつだ。「売上」は実はそれほど増えてはいない。どのように利益を増やしたかというと、一つは人件費の削減である。もうひとつは、たまたまこの時期、原油価格が安くなっていたので、原材料の経費が大幅に減ったのである。

 

ここで私たちの課題は、「この悪循環を断ち切って、どうやって賃金を上げるのか」だ。これには様々なやり方がある。①最低賃金の引上げ。②「同一労働同一賃金」の定着。③経済成長を伸ばす。④生産性の高い産業を発展させること、が挙げられる。

 

【最低賃金の引上げ】

まず、最低賃金については、政府はこれを引き上げようとしている。菅総理の強い意向だそうだ。しかし、新型コロナの影響で企業が疲弊している中、それらの個々の体力に応じて最低賃金を引き上げていかなければ、不当に中小企業を追い込むことになる。いや、むしろ、菅総理の参謀であるデービッド・アトキンソン氏は、中小企業を淘汰することで経済全体の生産性を向上させることできるという考え方である。

 

私自身、必ずしも最低賃金の引き上げに反対していないが、個々の企業には個々の事情がある。とりわけ中小企業は大企業と全く事情が異なる。政府によって無理矢理に大手も中小も一律最低賃金を引き上げることには反対だ。

 

【同一労働同一賃金】

次に、「働き方改革」の一つの目玉「同一労働同一賃金」について触れる。これは文字通り、正規であろうと非正規であろうと、同じ仕事をしているのであれば同じ賃金を支払うことを意味する。

 

うまくいけば、大企業の非正規雇用として採用されたとしても、それなりに正規雇用と同じような賃金を得ることができ、結果として消費が増えることにつながり、良い循環に転換する可能性がある。

 

しかし実際には、大企業では、逆に非正規雇用の賃金水準まで正規雇用の賃金水準を下げようとしている。例えば、正社員の家族手当や住宅手当を廃止する企業が少しずつ増えている。これでは平均賃金の上昇にはつながらない。むしろ逆方向になる。やはり、非正規雇用の賃金が上がるような政策を考えていかなければならない。

 

そういう意味では、非正規雇用の正規雇用化をもっと進めなければいけない。もちろん、多様な働き方があり、非正規雇用の方が自分の生活様式に合うという方もいる。また今の日本の雇用制度の中で、非正規雇用を積極的に活用しないとなかなか経営が厳しいということも理解できる。

私は、大企業については、非正規雇用をすべて規制するのではなく、「一定の契約期間、働いた者は正社員にしなければいけない」という義務規定を罰則付きで強化することを提案する。現在、非正規雇用が労働者全体の4割程度も占める。この割合を減らしていかないと平均賃金は上がらないのである。

 

【経済成長の増強】

三つ目に、やはり経済の成長率そのものを引き上げること、これが経済政策の王道である。これにより全体の消費や賃金の水準を引き上げることにつながる。これは先のブログでも取り上げたとおりであるが、1)労働力人口、2)設備投資、3)生産性の3つの要素でしか、成長率を伸ばすことができない。

 

このうち、人口政策としての家族政策を強力に実行すべきである。また、生産性を上げるためには、研究開発に国の予算を集中投入するのと同時に、教育水準を上げるための政策なども推し進めるべきだ。

 

【産業政策】

最後に、産業政策についてはどうか。これまでの日本経済の強みは「ものづくり」だった。しかし、2012年末からの景気拡大期においてでさえ、日本のものづくり産業の売上はあまり上がっていない。国内景気も良く、輸出も好調である中にあっても、なかなか売上が上がらず、結果として人件費削減という「乾いた雑巾」を絞らざるを得なかったのである。また、たまたま原油安という追い風にも恵まれ、利益を増やしてきたのである。これが今の日本の産業の厳しい現状である。

 

ところが、賃金が高く、売上げも伸ばしてきた産業がある。これが「高度サービス産業」だ。情報通信関連企業、学術関係、技術や知識を提供するサービスのように、知的な資産を提供する産業である。現実、今後については、こうした産業が若者の雇用と将来の経済を背負っていくだろう。だからこそ、政府はこうした産業に力を注ぎ込むべきである。規制緩和などの方法もあるが、やはり高度サービス産業で活躍できる人を育てる教育が必要である。大学院の教育、とくに金融や、コンピューターサイエンス、データサイエンスといった分野に相当力を入れなければ、日本は遅れを取り戻すことはできない。

米国においては、ものづくり産業の雇用よりも、「高度サービス産業」の雇用の方が圧倒的に多くなっている。この20~30年で、アップル、グーグル、アマゾンといった企業が発展して、多くの米国人の雇用を増やしている。だからこそ米国の平均賃金が上がってきたのである。

 

【真の「デフレ脱却」とは】

賃金が上がることが、本当の意味での「デフレ脱却」である。金融緩和や円安政策により無理に物価を上昇させるのではなく、売上が伸び、賃金が上がり、その結果として物価が上がる。今やらなければいけない経済政策は、こうした好循環をつくりだすことに焦点を絞るべきではないか。

 

いずれにしても、魔法の杖はない。魔法の杖はないが、地道な政策を推し進めることが、日本経済の底上げにつながり、生活の豊かさを確保できるのだと確信している。「急がば回れ」である。

我が国が、これまで築いてきた富と自由と独立を守りたいのであれば、少子化とこれに伴う人口減少に歯止めをかける必要がある。

国家予算で、社会保障全体のうち少子化対策の占める割合は7.2%である一方、医療年金介護の占める割合は66.3%。このような大きな開きが見られる。

ここで、諸外国の少子化対策を参考にしてみる。

その前に、そもそも他の国では「少子化対策」という言葉は使わない。「家族政策」が通常の表現である。

我が国では、戦前の家父長制度を彷彿させるためか、政府は「家族」という言葉を避けている。しかし、様々な家族形態はあってもいいものの、地域や社会の基本単位である「家族」が重要であるのは間違いない。この基本共同体を応援するのが「家族政策」であり、これを推し進めることによって、子どもを増やすことを先進国の一部はかなり力を入れているのだ。

各国比較する上で、国によって経済規模が違うので、分母にGDPの数字、分子に家族政策の予算額をおいて計算すると以下の通りになる。

家族政策予算額/GDPの比率

GDP比

出生率

日 本

1.29

1.43

米 国

0.65

1.77

ドイツ

2.28

1.57

フランス

2.96

1.92

スウェーデン

3.54

1.85

イギリス

3.57

1.79

米国はご案内のとおり、自己責任の強いお国柄なので、日本よりも予算額が少ない。しかし、他の国は我が国を大きく上回っていることがわかる。

こうした中で、日本政府はあと5年ほどで出生率を1.8%まで引上げると言っているが、これは不可能と言わざるを得ない。

もちろん、上記の表から分かるように、必ずしも家族政策に予算をたくさん使ったからと言って、出生率が上がるとは言えないが、だいたいの傾向は見えてくる。

外国人労働者などに現実的な問題があるため、私はかねてから1.29%という日本の家族政策関連の予算を増やしていくしかないと訴えてきた。

フランスやスウェーデンでも、一時期出生率が1.5~1.6までかなり落ち込んだが、家族政策の予算を増額し、各種支援策を打つことによって回復させたこともあるので、日本もこういう決断をすべきではないだろうか。

そもそも日本は、既婚女性の出生率は他の先進国に比べてもそんなに低いわけではないが、ライフスタイルの変化や結婚形式や価値観の多様化に伴い、諸外国と比較して晩婚化が顕著であり、また未婚女性も増えていることが出生率の低下に直結している。

先のブログで紹介した通り、内閣府のアンケートによると結婚していない・しないのは「経済的な理由」が挙げられている。

これは避けて通れない大きな課題である。

このまま何もしなければ、現役世代の人口が急激に、そして大きく減る。いや、もうすでにこうした流れの真っ只中にあると言える。これは経済成長にも悪影響を及ぼし、防衛力や国力そのものにも影響する。

徹底的な家族政策を実行すべきではないだろうか。

徹底的な家族政策こそ、必ずや日本経済と国力の底上げにつながると確信している。