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新しい総理・内閣が誕生し、今ここでふり返って、安倍政権誕生の2012年末からの景気拡大期の分析をするのも決して無意味ではないだろう。新型コロナ不況以前から、我が国の産業経済が、一般に思われているより厳しい状況にあることが分かるからである。

 

一言でいえば、日本経済は低賃金スパイラルに陥っている。

 

【低賃金スパイラルの実態】

具体的には、①消費が伸びない→②中小零細企業とりわけ小売業が人員削減、場合によっては倒産→③あぶれた労働者は大企業に再就職するが、大半とまでは言わなくても、多くは非正規雇用で採用→④平均賃金が伸びない→振り出しに戻って、①消費が伸びない。。。

 

この悪循環を断たないと賃金は上がらない。そして消費は増えない。

 

よく言われるように、たしかに大企業は2012年末から「営業利益」が7割以上伸びている。前代未聞の利益だ。さぞかし給料も増えていると思いきや、大企業の一人当たりの平均賃金は1.2%減少しているのである。要は、増えた利益は株主配当や税金支払いに回されているものの、賃金は引上げられず、内部留保におさまっているということである。

 

もっと詳細にみれば、大企業の利益の増え方もいびつだ。「売上」は実はそれほど増えてはいない。どのように利益を増やしたかというと、一つは人件費の削減である。もうひとつは、たまたまこの時期、原油価格が安くなっていたので、原材料の経費が大幅に減ったのである。

 

ここで私たちの課題は、「この悪循環を断ち切って、どうやって賃金を上げるのか」だ。これには様々なやり方がある。①最低賃金の引上げ。②「同一労働同一賃金」の定着。③経済成長を伸ばす。④生産性の高い産業を発展させること、が挙げられる。

 

【最低賃金の引上げ】

まず、最低賃金については、政府はこれを引き上げようとしている。菅総理の強い意向だそうだ。しかし、新型コロナの影響で企業が疲弊している中、それらの個々の体力に応じて最低賃金を引き上げていかなければ、不当に中小企業を追い込むことになる。いや、むしろ、菅総理の参謀であるデービッド・アトキンソン氏は、中小企業を淘汰することで経済全体の生産性を向上させることできるという考え方である。

 

私自身、必ずしも最低賃金の引き上げに反対していないが、個々の企業には個々の事情がある。とりわけ中小企業は大企業と全く事情が異なる。政府によって無理矢理に大手も中小も一律最低賃金を引き上げることには反対だ。

 

【同一労働同一賃金】

次に、「働き方改革」の一つの目玉「同一労働同一賃金」について触れる。これは文字通り、正規であろうと非正規であろうと、同じ仕事をしているのであれば同じ賃金を支払うことを意味する。

 

うまくいけば、大企業の非正規雇用として採用されたとしても、それなりに正規雇用と同じような賃金を得ることができ、結果として消費が増えることにつながり、良い循環に転換する可能性がある。

 

しかし実際には、大企業では、逆に非正規雇用の賃金水準まで正規雇用の賃金水準を下げようとしている。例えば、正社員の家族手当や住宅手当を廃止する企業が少しずつ増えている。これでは平均賃金の上昇にはつながらない。むしろ逆方向になる。やはり、非正規雇用の賃金が上がるような政策を考えていかなければならない。

 

そういう意味では、非正規雇用の正規雇用化をもっと進めなければいけない。もちろん、多様な働き方があり、非正規雇用の方が自分の生活様式に合うという方もいる。また今の日本の雇用制度の中で、非正規雇用を積極的に活用しないとなかなか経営が厳しいということも理解できる。

私は、大企業については、非正規雇用をすべて規制するのではなく、「一定の契約期間、働いた者は正社員にしなければいけない」という義務規定を罰則付きで強化することを提案する。現在、非正規雇用が労働者全体の4割程度も占める。この割合を減らしていかないと平均賃金は上がらないのである。

 

【経済成長の増強】

三つ目に、やはり経済の成長率そのものを引き上げること、これが経済政策の王道である。これにより全体の消費や賃金の水準を引き上げることにつながる。これは先のブログでも取り上げたとおりであるが、1)労働力人口、2)設備投資、3)生産性の3つの要素でしか、成長率を伸ばすことができない。

 

このうち、人口政策としての家族政策を強力に実行すべきである。また、生産性を上げるためには、研究開発に国の予算を集中投入するのと同時に、教育水準を上げるための政策なども推し進めるべきだ。

 

【産業政策】

最後に、産業政策についてはどうか。これまでの日本経済の強みは「ものづくり」だった。しかし、2012年末からの景気拡大期においてでさえ、日本のものづくり産業の売上はあまり上がっていない。国内景気も良く、輸出も好調である中にあっても、なかなか売上が上がらず、結果として人件費削減という「乾いた雑巾」を絞らざるを得なかったのである。また、たまたま原油安という追い風にも恵まれ、利益を増やしてきたのである。これが今の日本の産業の厳しい現状である。

 

ところが、賃金が高く、売上げも伸ばしてきた産業がある。これが「高度サービス産業」だ。情報通信関連企業、学術関係、技術や知識を提供するサービスのように、知的な資産を提供する産業である。現実、今後については、こうした産業が若者の雇用と将来の経済を背負っていくだろう。だからこそ、政府はこうした産業に力を注ぎ込むべきである。規制緩和などの方法もあるが、やはり高度サービス産業で活躍できる人を育てる教育が必要である。大学院の教育、とくに金融や、コンピューターサイエンス、データサイエンスといった分野に相当力を入れなければ、日本は遅れを取り戻すことはできない。

米国においては、ものづくり産業の雇用よりも、「高度サービス産業」の雇用の方が圧倒的に多くなっている。この20~30年で、アップル、グーグル、アマゾンといった企業が発展して、多くの米国人の雇用を増やしている。だからこそ米国の平均賃金が上がってきたのである。

 

【真の「デフレ脱却」とは】

賃金が上がることが、本当の意味での「デフレ脱却」である。金融緩和や円安政策により無理に物価を上昇させるのではなく、売上が伸び、賃金が上がり、その結果として物価が上がる。今やらなければいけない経済政策は、こうした好循環をつくりだすことに焦点を絞るべきではないか。

 

いずれにしても、魔法の杖はない。魔法の杖はないが、地道な政策を推し進めることが、日本経済の底上げにつながり、生活の豊かさを確保できるのだと確信している。「急がば回れ」である。

我が国が、これまで築いてきた富と自由と独立を守りたいのであれば、少子化とこれに伴う人口減少に歯止めをかける必要がある。

国家予算で、社会保障全体のうち少子化対策の占める割合は7.2%である一方、医療年金介護の占める割合は66.3%。このような大きな開きが見られる。

ここで、諸外国の少子化対策を参考にしてみる。

その前に、そもそも他の国では「少子化対策」という言葉は使わない。「家族政策」が通常の表現である。

我が国では、戦前の家父長制度を彷彿させるためか、政府は「家族」という言葉を避けている。しかし、様々な家族形態はあってもいいものの、地域や社会の基本単位である「家族」が重要であるのは間違いない。この基本共同体を応援するのが「家族政策」であり、これを推し進めることによって、子どもを増やすことを先進国の一部はかなり力を入れているのだ。

各国比較する上で、国によって経済規模が違うので、分母にGDPの数字、分子に家族政策の予算額をおいて計算すると以下の通りになる。

家族政策予算額/GDPの比率

GDP比

出生率

日 本

1.29

1.43

米 国

0.65

1.77

ドイツ

2.28

1.57

フランス

2.96

1.92

スウェーデン

3.54

1.85

イギリス

3.57

1.79

米国はご案内のとおり、自己責任の強いお国柄なので、日本よりも予算額が少ない。しかし、他の国は我が国を大きく上回っていることがわかる。

こうした中で、日本政府はあと5年ほどで出生率を1.8%まで引上げると言っているが、これは不可能と言わざるを得ない。

もちろん、上記の表から分かるように、必ずしも家族政策に予算をたくさん使ったからと言って、出生率が上がるとは言えないが、だいたいの傾向は見えてくる。

外国人労働者などに現実的な問題があるため、私はかねてから1.29%という日本の家族政策関連の予算を増やしていくしかないと訴えてきた。

フランスやスウェーデンでも、一時期出生率が1.5~1.6までかなり落ち込んだが、家族政策の予算を増額し、各種支援策を打つことによって回復させたこともあるので、日本もこういう決断をすべきではないだろうか。

そもそも日本は、既婚女性の出生率は他の先進国に比べてもそんなに低いわけではないが、ライフスタイルの変化や結婚形式や価値観の多様化に伴い、諸外国と比較して晩婚化が顕著であり、また未婚女性も増えていることが出生率の低下に直結している。

先のブログで紹介した通り、内閣府のアンケートによると結婚していない・しないのは「経済的な理由」が挙げられている。

これは避けて通れない大きな課題である。

このまま何もしなければ、現役世代の人口が急激に、そして大きく減る。いや、もうすでにこうした流れの真っ只中にあると言える。これは経済成長にも悪影響を及ぼし、防衛力や国力そのものにも影響する。

徹底的な家族政策を実行すべきではないだろうか。

徹底的な家族政策こそ、必ずや日本経済と国力の底上げにつながると確信している。

各種選挙や、ユーチューブの準備・撮影などに忙殺され、久しぶりにブログを書く。10月1日に消費税が10%に引上げられたので、自然と増税の話になってしまう。

皆様もご存知のとおり、消費税10%への引き上げは過去2回、いずれも経済的な理由で延期された。しかし、その理屈でいえば、昨年のブログにも書いたように、今は過去2回延期したときよりも経済的に不透明感が漂っていて、本当は今回こそ延期をすべきだった。

最初に安倍総理が増税を延期したのは、今から5年前の2014年11月だった。確かにこの時は、消費税率が同年4月に8%に引上げられたので、当然、経済統計の数字も悪かったのは事実。しかし、実際に10%への増税が予定されていたのは、延期を発表した1年後の2015年10月のこと。いくらなんでも増税直後の数字が悪いからといって増税予定の1年前に増税延期を決定するのは、判断が早すぎるといわざるを得ない。現実に、その後の経済はそれなりに順調に推移していったのだ(2016年実質GDPはプラス1.0%)。

次に延期したのは、今から3年前の2016年6月。この時の直近の統計は、実質GDPが1.7%も伸びていた。それでも総理は「原油価格・商品市況が暴落している状況がリーマンショックに似ている」という理由で延期に踏み切った。しかし、この「原油価格・商品市況が暴落している」のは、当時、米国でシェールガスが発掘されたことや、ドル高騰によることが大きく、景気そのものには直接関係なかったのである。

では、今回の経済状況はどうか。

昨年末から警鐘を鳴らしているとおり、昨年から欧州、中国の経済が減速している。頼みの綱の米国も、今や利下げにより景気の延命措置に汲々としているのである。私が勝手に言っているのでなく、世界の専門家からも金融恐慌の可能性すら云々されている。

何よりも心配なのは、消費増税で一番打撃を受ける中小企業や個人事業者だ。これらの大半は「働き方改革」によってこれから想像以上に厳しい局面を迎える。長時間労働の抑制、「同一労働同一賃金」などは労働者にとっては当然の措置である。しかし、政策の良し悪しとは別に、中小企業の大半にとって相当な負担になることに間違いない。労働条件が改善しても、職場が倒産で消えたら元も子もない。

こうしたことから、世界経済が悪化する中で、中小企業は不景気・働き方改革・増税の「三重苦」を背負っていくことになるだろう。

つまり、現在の景気状況は、過去の増税延期判断の時に比べて、少なくとも同じくらい不透明であり、これまでと同じ理屈でいけば今回の増税は延期すべきだった。

ただ私自身は、2回目の増税延期の時点で、おそらく総理はもう延期しないだろうと踏んでいて、そのように選挙でも訴えた。というのも、延期時に安倍内閣は消費税増税法を改正して、なんと「景気条項」をまるまる削除したからである。「景気条項」というのは、「景気が悪ければ増税はしなくてもいい」という至極当然の法律規定だ。逆に、この規定を削除することは、もはや「景気に配慮せず増税をしても良い」と解釈するのが普通だからだ。

なぜこのような不思議な改正をしたのか。

おそらくは、財務省や与党内の一部の議員の増税派を説得するためだろう。増税派は、安倍総理が2回も増税延期したので「2度あることは3度ある」と疑心暗鬼になり、総理がそれらを払拭し説得するためには、「景気がどうあれ、次回は必ず増税するので安心しろ。その証拠に消費税増税法から“景気条項”を削る」と手形を切らざるを得なかったのではないか。

いずれにせよ、消費税増税法から「景気条項」が消した時点で、安倍総理は自ら退路を断ち、今回の誠にタイミングの悪い増税がほぼ確定したのである。