予算委員会第三分科会で質問に立ちました。北朝鮮の軽水炉開発事業のために、我が国は国際協力銀行から
朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に400億円以上を融資してきましたが、結局、北朝鮮の核開発によりこのプロジェクトは終了してしまいました。今後、これまでの貸付金を北朝鮮から回収できなかった場合の税金投入の可能性などを尾身財務大臣に質問しました。
昨年も取り上げたテーマですが、この1年間の北朝鮮情勢の推移を踏まえながら、質問しました。

北神質疑
2007年03月01日 予算委員会第三分科会
 次に、北神圭朗君。

○北神分科員 おはようございます。民主党の北神圭朗でございます。

 引き続き、大串さんの後に審議をさせていただきたいと思います。

 私の方は、北朝鮮に対する外交問題についてお聞きしたい。外務省の事務方にも来ていただいていると思います。

 ついこの間、六者会合というのが閉幕をしているんですが、その前に、日本としても平成七年ぐらいから北朝鮮に対してはいろいろな支援をしてきた、ある意味では、それが破綻をしたからまた仕切り直しということで、六者会合というものが、二月八日でしたか、開催されたというような経緯だというふうに思っております。きょうは、外交問題もありますし、それと、北朝鮮に対して日本としても国際協力銀行を通じて資金供与している、この回収の問題とかいろいろあると思いますので、その点について御質問したいというふうに思います。

 簡単に私の方から経緯を、私の理解の範囲内で申し上げますと、平成七年ぐらいからKEDOという国際共同事業というものを立ち上げて、日本、そして米国、韓国を主として、北朝鮮に対して軽水炉事業の支援をしてきた。これは、別に慈善事業でも何でもなくて、北朝鮮が平成六年ぐらいに、核査察というものを国際機関から受け入れない、そして核兵器の開発の疑いというものが生じた、それをやめさせるために、その引きかえに軽水炉事業でもやってあげようかということで、日本もそれに参加したということだというふうに記憶しております。

 その中で、国際協力銀行からKEDOに対して約四億ドルぐらいの資金拠出、貸し付けをしている、そのKEDOからまた、北朝鮮の軽水炉事業のための資金供与として貸し付けが行われている。さらに、KEDOの事務局経費とか利子補給とか、そういうものを含めると約五億ドルぐらいにも上る、日本円に換算しますと大体五百億円を超える、そんな金額になるというふうに思います。

 それが、一昨年の二月に北朝鮮が核兵器を保有しているという宣言をして、一体何のためにこれまでKEDOを通じてこういう支援事業をしてきたのかということで、当然のことながら、同年の十一月に、KEDOという事業も廃止をする、停止をするというのが正確な言い方だと思いますが、そういう事態になったわけであります。

 ある意味では、そういうことで北朝鮮との関係が混乱してきた、さらに今、核兵器を保有しているという話になって、それでこの前の六者会合というものが開催をされたということであるというふうに思いますが、依然として、日本の立場からしたら、北朝鮮を信用してこれまでお金の貸し付けもしてきたわけでありますが、見事に裏切られたというわけであります。今後、こういう事態の二の舞は絶対避けないといけないというふうに私は思うんです。

 そういう意味合いも込めて御質問したいのは、今回の六者会合の評価というものはまた後ほど議論したいと思いますが、そもそも、今申し上げた、国際協力銀行からKEDOに約四百八十億円ぐらいの貸し付けを行ってきた、KEDOからまた北朝鮮に貸し付けを行ってきた。北朝鮮が約束を裏切って核兵器保有宣言をして、KEDOというものを廃止したのはいいんですが、その貸し付けたお金というものを回収しないといけないと思うんですね。

 これについて、去年も私はこの会で、ちょうどこの日だったと思うんですが、麻生外務大臣にも質問させていただいたんです。大臣は、非常に率直に議論に応じていただいて、読み上げますと、「最もふざけているのは北朝鮮なんだから、ちゃんとその分出せということを、おまえらはおれたちに損害を与えたんだから出せということは、我々としては言わないかぬ、大事なところだと思っております。」という答弁をされております。

 その後、この返済の問題についてどう対応されてきたのか、特に六者会合で問題提起をされたのかどうか、御質問したいと思います。

○伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今先生御指摘のとおり、今回の軽水炉のプロジェクトが終了するに至ったというのは、北朝鮮がそもそも供給協定に定められた約束を守らなかったからだということは明らかでございます。

 それで、北朝鮮とKEDOとの間の供給協定というものを見ますと、その十六条の二というところで、いずれか一方がこの協定に定められたそれぞれの措置を履行しない場合には、金銭的な損失に対する即時の支払いを要求する権利を有するということが供給協定に明記されておりまして、そういう意味では、KEDOは、この軽水炉プロジェクトに関連する金銭的な損失に対して即時の支払いを北朝鮮に要求する権利があるわけであります。

 我が国としては、KEDOの他の理事国メンバーと緊密に連携しまして、KEDOから北朝鮮に対して、KEDOがこうむったすべての金銭的な損失に対する支払いを行うように、口上書で既に五回にわたって要求を行っております。

 それから、先般の六者会合と今回のこういうKEDOをめぐる問題との関係でございますけれども、まさに先生御指摘のとおり、KEDOというのは、九四年の米朝のジュネーブの合意に基づいて行われている事業でありますが、残念ながら、米朝の合意というものは北朝鮮側の行為によって踏みにじられたわけです。そういうことを踏まえて、もう一度北朝鮮に対して核の放棄を迫るというのが今回の六者協議でございます。

 この六者協議において、先般の北京での会合で、第一段階の措置として、KEDOでも、ジュネーブ合意でも彼らが約束しましたけれども、核施設のシャットダウン、そういった一連の措置について約束をさせ、さらにはその次の段階で核施設を無能力化するとか、そういった一連の約束をするのに対応した形で一定限度のエネルギー支援をしよう、それが前回の北京での会合の結果でございまして、それとジュネーブの合意に基づくKEDOというのは全く別のものでございますので、今、私どもは、むしろ六者会合を通じて、北朝鮮に対して核の放棄を迫っていくということが重要であろうというふうに考えております。

○北神分科員 私の質問というのは、六者会合で問題提起をされたのかということであります。それで、答弁は、ジュネーブの合意された枠組みと今回の枠組みというのは別個だという話です。

 しかし、それは外交の専門家の間でそういうふうに位置づけているのかもしれませんが、実際の流れとしては、当然、九四年のジュネーブの合意された枠組みが破綻をして、また核兵器を持とうとしている、あるいは持っている、それで、もう一回集まって六者会合で議論しようじゃないかという意味では、これは非常に直線的につながっているというふうに言わざるを得ないと私は思うんですよ。

 日本もそうだし、ほかの韓国もアメリカも、もう一回、ある意味では、私の個人的な意見でいえば、振り出しに戻っているような話ですから、もちろん今回いろいろな新たな工夫をされておるのはわかっていますが、そういう中で、普通は、おまえらは一回約束を破って、お金を貸している、これは韓国もたしか貸していると思うし、アメリカは重油だけの支援をしているんだと思うんですが、それについての総括がなくて、よくその次の話に進められるなというふうに思うんですが、それについてどうお考えですか。

 要するに、一たん今までの話を、これは同じ話ですからね、核兵器を保有して、それをやめさせるという、この一連の外交の中で、なぜこういう総括をせずに次にまた支援の話になるのかというのはとても理解できないんですが、これについてどうお考えか。

○伊原政府参考人 KEDOをめぐる問題に関連しては、六者協議をやっているから終わりということではなくて、KEDOの問題については引き続き、私どもとしては、他の理事会のメンバーとも協力しながら、北朝鮮に対して金銭的な損失に対する支払いを強く求める、これは六者協議での取り組みとは別個、これはきちっとやっていくというふうに考えております。

○北神分科員 私は、六者会合でも、ある意味では、カードというとおかしいですけれども、そういうことも本当はテーブルにのせて交渉すべきじゃないかなというふうに単純に思うんです。別個に五回もKEDOを通じて北朝鮮に要求をされているという話でありますが、これは具体的に成果を上げているんですか。どういう感じで交渉が推移しているのか教えていただきたいと思います。

○伊原政府参考人 残念ながら、今のところ、北朝鮮側からはこれに対する前向きな反応というのはございません。

○北神分科員 これはもうわかり切った話で、九四年の合意に基づいた話でも、あれは急に一昨年二月に核兵器を保有したという話じゃなくて、今までも、日本に対しては不審船を送り込んだり、テポドンを撃ってきたり、拉致問題が公式に発覚したりしながらも、日本というかKEDOはずっとそのままお金を貸し続けてきた経緯で、さらに最後に、核兵器を保有しました、それで、やめるかもしれないからまた支援をお願いしますというのが今度の会合の話であるわけです。

 ですから、こんな国は、そもそも私なんかは話にならぬ国だと思っておりまして、とてもこんなものは返済なんかはできないというふうに思うわけであります。

 そこで、国際協力銀行が財務省の所管だということもあるので、財務大臣にお聞きしたい。

 ややこしいのは、すぐ外務省の皆さんはKEDO、KEDOと言うけれども、KEDOなんか、まあこんなものは、国際共同事業といいながら、実質は日本と米国と韓国で仕切っているわけですよ。だから、KEDOに任せているような言い方は私はよくないというふうに思うんですよ。やはり当事者意識を持って、国際協力銀行からKEDOに対して四百億円以上のお金を貸し付けているわけで、その回収の見込みが立たないというか、はっきり言って北朝鮮が返すわけがないというふうに私は断言してもいいというふうに思うんです。

 そこで、自然な疑問として、この貸付金は戻ってこない、今後どう処理されるつもりなのかということをお聞きしなければならない。結局、先取りして私の考えというか、みんなこういう考えになると思いますが、財務大臣としては外交の失敗による穴埋めを恐らく日本国民の血税によってしないといけないというふうに、私のない知恵を絞る中でそういう解決策しか思いつかないんですが、そういう対応もあり得るというふうにお考えなのか、もし、そうでないのだったら、どういう処理の仕方があるのかというものをお聞きしたいというふうに思います。

○尾身国務大臣 ただいまの問題、北朝鮮における軽水炉プロジェクト及び重油供給を行うために設立されたKEDOは、我が国との協定において、JBICへの返済を確実にするということを約束しているわけでございます。一方、KEDOの方は、北朝鮮との協定に基づきまして、KEDOがこうむった金銭的な損失に対する支払いを北朝鮮に要求している。

 我が国としては、このようなKEDOの努力にあらゆる協力をするという立場にございます。したがいまして、現時点では、あくまでも北朝鮮からお金を返してもらうという考え方でありまして、北朝鮮が支払いを拒否することを前提としたような御質問にお答えできる状況にないというふうに考えております。

○北神分科員 昨年も、この分科会で、当時は外務副大臣であった塩崎官房長官が同じような答弁で、まずは供給協定に基づいて北朝鮮に対するKEDOへの金銭的な損失に対する支払いを要求するというのが筋だ、そして、現時点では、我が国としてあらゆる協力を行うというのが政府としての立場で、北朝鮮が返済を拒否するということを前提で今のようなお話、税金投入の話をするわけにはいかないと、現時点でというふうに去年も言われているわけですよ。

 それで、今、外務省の参事官からお話がありましたように、五回交渉して、多分もう話にならないぐらい全然進展はないというふうに私は推測するわけでありますが、これは私も決して何かくだらない足を引っ張ろうというつもりは全くございません。ただ、北朝鮮に対する外交の問題もありますが、この問題も、例えば同じKEDOにいるアメリカとか韓国、韓国は無理だと思うけれども、もともとこの九四年のジュネーブの話なんか、アメリカ主導で、カーター元大統領が乗り込んでやっているわけですから、米国は非常に大きな責任を持っていると私は思うんですよ、こんなものに乗せられて。だから、米国からちょっとおまえら支援するということも考えられないことはないけれども、これもなかなか難しいと思いますので、これはもういずれ血税を入れないといけないということであるならば、どこかのタイミングで決断をしなければならない。これはやはり早め早めにしないと、だらだらずっといくと、利子の問題はないのかもしれませんが、国民の皆さんに対する説明責任という問題もありますし、これはひとつけりをつけないといけない。

 KEDOが廃止をしてから一年数カ月たって、まだ全然めどがつかない中で、現時点ではそういう税金投入の話はできないという大臣の今の答弁だったんですが、では、どのタイミングで決断をされるのかというのを大臣にお聞きしたいと思います。

○尾身国務大臣 これは、KEDOを通じて北朝鮮に対する軽水炉プロジェクトを進めていたわけでありますが、これを終了せざるを得なかったのは、そもそも北朝鮮がKEDOとの協定に関して核開発を凍結せず、二〇〇五年二月に核兵器保有宣言を行ったことが原因であります。

 したがいまして、こういうことを考えますと、KEDOとしては、KEDOがこうむったすべての金銭上の損失について、引き続き北朝鮮に対して支払いを要求しているわけでございます。ですから、私どもは、このKEDOの立場を踏まえて、KEDOに対するあらゆる協力を行うというのが我々の考えでありまして、それ以上のことは今は全く考えられない、こういうことであります。

○北神分科員 全く考えられないというお話ですが、それはもうある程度のめどがついているんですか。要するに、政府としてKEDOに協力をしてお金を回収するという。少しでもそういうめどが立っているんだったらわかりますよ、引き続き交渉していくということであると思うんですが、もう一年もたって、何の進展もない。常識的に今までの北朝鮮の行動を見ると、そんな進展があるはずがないというふうに思うんですが、それでも全然そういうことは考えないというふうにおっしゃるんですか。

○尾身国務大臣 この問題は、KEDOが北朝鮮と交渉して、きちっとした返済をしていただくということが必要であり、それが国の立場であります。ですから、この点に関して、いずれ云々とかいうようなことは考えないで、この基本的な線を私どもは貫き通していきたいと考えております。

○北神分科員 財務大臣がそういうお立場だったら、私は外務省にお聞きしたいのは、そうしたら、五回やってきた、全然進展がない、外務省としてKEDOに対していつまで要求し続けるつもりなんですか。要するに、これは今のままだったら、皆さんかたくなにみずからの信念を貫かれて、KEDOなんか実体のないようなところが北朝鮮からそんなお金の回収なんかできるはずがないですからね、それをずっとそのまま放置していくというのは、ちょっと私は考えられないんですが、外務省の立場として、何かこういうスケジュール観はおありなんですか。

○伊原政府参考人 政府の立場は今大臣の方からお答えしたとおりでございまして、政府全体として、KEDOを通じて北朝鮮からお金を返してもらうように引き続き努力するということだと思っております。

○北神分科員 立場は重々わかりましたが、私としては、要求したいのは、これはやはり、そんな精神論というか、あるいは逃げているのかちょっとわかりませんが、いずれこの問題は発覚するわけですから、早目にそれは明らかにして国民に説明をすべきだというふうに思いますので、それだけちょっと申し上げて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 次は、六者会合そのものの話ですが、会合の結論としては、初期段階の措置として、北朝鮮が、寧辺ですか、そこの核施設を最終的に放棄することを目的として活動の停止及び封印することを決めた、そしてその引きかえに、重油五万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始する、その次の段階の措置としては、北朝鮮がすべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無力化などを行って、その引きかえに、さらに重油九十五万トンに相当する規模を限度とした援助を行うということが合意されたということです。

 日本はその中で、拉致問題を含む日朝関係の現状を踏まえて、初期段階の支援については我が国は参加しないということと、その次の段階の支援についても同じように、拉致問題を含む日朝関係に進展が見られるまで、我が国は参加しないことにつき、関係国は了解と説明されているわけであります。

 外務省のホームページを見て、「共同声明の実施のための初期段階の措置」という採択された正式な文書を読んでも、全然日本の立場が書かれていないわけですよ。ただ、おかしいなと思ったんですが、外務省がつくった概要の中には、括弧書きの中で、拉致問題を含む日朝関係に進展が見られるまで、我が国は参加しないことにつき、関係国は了解というふうに書いてある。

 私も、外交については素人ですが、役人をやっていたこともあるので、こういったことは基本的に一番重要な部分。これは、日本の姿勢としては、私は非常に評価しているんですよ。当然のスタンスだというふうに思うんですが、ただ、それが実行できるかどうかというのが問題でありまして、実行するに当たっては、当然その公式の採択された文書に明記されているのが普通だというふうに思うんですね。なぜ明記されていないのかということを、外務省の方にお尋ねしたいと思います。

○伊原政府参考人 先般の北京での全体会合あるいは二国間の会合を通じまして、今先生御指摘のような日本の立場、すなわち拉致問題の進展がなければ日本としては経済、エネルギー支援には参加できない、そういう立場については、明確に我が方代表団の方から一貫して発言をしております。

 その結果として、日本は、そういう意味で、今回五万トンあるいは九十五万トンについて今は参加しないということでありますけれども、この五万トン、九十五万トンについて参加するという意向を表明しておりますアメリカと韓国とロシアと中国、この四カ国が、ではどういうやり方で支援をするのかということを話し合って、これは文書で彼らの中で合意をしております。それは彼らの文書ですから、私どもが公表するというものではございませんけれども。その彼らの文書の中で、この四カ国は平等と公平の原則に基づいて支援をするんだということがはっきり書いてあって、その後に、日本については、日本の懸念、これは当然拉致問題です、日本の懸念が手当てされるに従って、日本も同様の原則に従ってこの支援に参加してくれることを期待するということがはっきり書かれている。その書かれた文書については、全体会合においてもみんなに明らかにされて、北朝鮮も含めてそれは見ている。ただ、その文書そのものは四カ国の文書である、そういうものがございます。

 したがいまして、そういう意味で、この日本の立場、すなわち日朝関係の進展がない限りは具体的な経済、エネルギー支援には参加しないということはこの四カ国においても明確に認識されている、了解されている、そういうことでございます。

○北神分科員 その四カ国の文書というのはまた後で、それは入手することはできるものですか。

○伊原政府参考人 今申し上げましたように、それは四カ国がつくった文書、四カ国のものですので、私どもの方から公表するような性格のものではないと思っております。

○北神分科員 例えば、アメリカとか韓国からは入手できるということなんですか。

○伊原政府参考人 入手云々というよりも、それを対外的にどう明らかにするかということについては、まさに四カ国の御判断であろうというふうに思っております。

○北神分科員 わかりました。それについては、また私も検討していきたいというふうに思います。

 時間がございませんので、最後の方で、経済制裁の話に移りたいというふうに思います。

 まず、外務省にお聞きしたいのは、六者会合の今回の結果を受けて、要するに拉致問題等を含めたそういう日本と北朝鮮の間の懸念事項が進展をするまでは支援をしないということですから、それまでは、今までの経済制裁に象徴されるような北朝鮮に対する厳しい姿勢というものは崩さないという理解でよろしいんでしょうか。

○伊原政府参考人 我が国が北朝鮮に対してとっております措置については、今回の六者の会合あるいはその合意文書を受けて今後北朝鮮がどういう対応をするのかとか、あるいは安保理の決議もございますので、これは安保理で今後どういう議論が行われるかとか、そういった国際社会の動き等も踏まえて総合的に判断していく問題だというふうに思っております。

○北神分科員 総合的に、それは情勢を見ながら当然判断をされていくんだと思いますが、現時点で、私は、その経済制裁というのは当然続けておられますし、それを維持すべきだというふうに考えているわけであります。

 そこで、財務大臣にお聞きしたい。この前、二月二十六日に、米国財務省のグレーザー財務次官補代理がマカオに入られた、バンコ・デルタ・アジアという銀行において凍結をされている北朝鮮関連口座の凍結解除問題について協議を行ったという、これは私は報道でしか見ていないんですが、そういった報道がありました。その報道によれば、違法行為と無関係の口座、これは多分アメリカの愛国者法という法律に違反していないと思われる口座について、凍結解除の方向で話が進んでいるということになっているわけであります。

 これはまだ決まっていない話だと思いますが、仮にアメリカが金融制裁というものを緩めるということになれば、それは我々の、日本としての金融制裁に直接影響を及ぼすものではないというふうに思いますが、やはり金額からしてみても、日本独自で金融制裁をやってもほとんど効果がない、これは当然アメリカが参加していないと意味がない。例えば、このマカオのバンコ・デルタ・アジアというのは、二十八億円今まで北朝鮮関連で凍結をしているわけですよ。日本は今まで九十万円ですよ。ですから、そのくらいアメリカの金融制裁の重みというのは非常に大きい、連携をしないといけない話だというふうに思いますが、この今回のバンコ・デルタ・アジアへのダニエル・グレーザー氏の協議についてどうお考えか、お聞きしたいと思います。

○尾身国務大臣 二月の二十六日に、グレーザー米財務次官補代理がマカオに行って、バンコ・デルタ・アジア銀行問題についてマカオ当局と協議を行ったということは私どもも承知をしております。

 しかし、このバンコ・デルタ・アジア銀行の問題をどう取り扱うかということは、一義的にはアメリカの財務省の問題でございまして、私どもとして、この問題について、現在コメントすることは差し控えさせていただきたいと考えております。

 いずれにいたしましても、この北朝鮮の核問題、核開発問題は、日本、アジアだけではなしに、人類全体に対する脅威であり、断じて容認できないと考えております。財務省といたしましては、昨年九月から、北朝鮮の核その他の大量破壊兵器及びミサイル開発計画に関する十五団体一個人に対して資金移転防止措置を実施しているところであります。

 現在の核不拡散体制は崩壊の危機にあるというふうに私は考えておりまして、全人類の未来のために、国際社会が連携して核不拡散体制を維持するための努力を強化しなければならないというふうに考えております。そういう中で、米、中の財務省とも日ごろより情報交換を緊密にしているところでございます。

○北神分科員 最後にしますが、きょうの質問で申し上げたかったのは、今回の金融制裁の話も、アメリカの方は私の理解では独自に動いている、多分今回の件でも、それ自体について事前に日本に相談があったとも思えないし、独自に動いている。そして、それは、アメリカの国益に基づいた世界戦略の中でイランの方が大事だから、今度日本もイランの制裁にも参加しておりますが、あるいはさせられておりますが、こういったアメリカの戦略がある。

 日本が、本当に拉致問題を含めて北朝鮮との関係で自分たちの国益を確保するんだったら、これはアメリカの世界戦略にある程度影響されるのはしようがないと思いますよ、今の国力の中では。でも、やはりそこを、自分たちの利益をちゃんと踏まえてしっかりと交渉していただきたい、それに失敗すれば、北朝鮮の問題に限らず、今後全部請求書が日本の財務省に行くわけですから。これはひいては、大臣、はっきりおっしゃらないけれども、国民の税金で穴埋めせざるを得ない。

 こういったことを、私は決して軽々にこれは批判する話ではないと思います。もっと本当に根本的に国の防衛とか外交問題に及ばないといけないけれども、皆さんがある程度正直に問題を認めないと、そこまで問題が行かないんですよ。そして、みんな適当に責任逃れでいって、うやむやになって、日本の国益がどんどん失われていく、そういう懸念を申し上げて、質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

○森主査 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

全議事録

衆議院経済産業委員会で甘利経産大臣、竹島公取委員長に質問しました。
甘利経産大臣に対しては、経済成長戦略に関連して、研究開発等に対する予算の重点配分の必要性、個人消費の活性化の必要性などを訴えました。竹島公取委員長に対しては、中小零細企業対策として、公正な市場環境を作る観点から、不当廉売・優越的地位の濫用への対策強化について問い質すとともに、公正取引委員会の機能強化を求めました。

北神質疑
2007年02月21日 経済産業委員会
○上田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 大臣、大分時間も遅くなりましたが、またひとつよろしくお願いしたいと思います。

 きょうは、経済成長戦略、二つ目にはエネルギー外交、三つ目には公正取引委員会関係の優越的地位とか不当廉売について御質問したいというふうに思います。何せ八番バッターなので、もう大分論点も出てまいりましたので、重複するところもあるかと思いますが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 今度、経済成長戦略に基づいて、経済成長戦略大綱関連三法案というのが閣議決定をされたということであります。これは、安倍政権が成長力の強化に努めていく、経済成長というものを一つの大きな政権の柱にしていくということでありますが、私自身ももう前々から、小泉政権のときから、この方向性については大賛成であるわけであります。

 というのも、小泉政権の四年、五年間の間、どちらかというと、財政再建の方に力点を置いてきた。その手段としては歳出削減とか増税、これは余り言われていなかったけれども、実際は増税をしてきた、さらには民営化とか、そういった政策が前面に出てきたということであるわけであります。

 しかしながら、私も昔、財務省におったわけでありますが、財政再建というのは、やはり歳出を削るとか増税だけでは到底果たすことができない。これは、内閣府の調査でも、アメリカの八〇年代の財政再建の要因分析というものがおととしぐらいに出たと思いますが、それを見ても、ある程度歳出削減もあるし増税もあるんですが、やはり経済成長による自然増収の要因というのが非常に大きい。こういったところを無視して、ただただ歳出を減らしたり増税をしたりでは、財政再建もままならないし、そもそも何のために政治をやっているのかというのがよくわからないということであるので、私は、安倍政権になってから、経済成長戦略というものには非常に期待をしていたわけであります。

 そういうこともあって、今回の関連の三法案について、正直、非常に期待をしていたわけでありまして、簡単に言えば、アメリカでいえば、レーガン時代のヤング・レポートとか三年前のパルミザーノ・レポートとか、そういったアメリカの成長戦略に基づく政策、それに匹敵するものをすごく期待していたわけであります。

 ところが、この前、経済産業省の事務方から説明を受けたんですが、財政的な規模も中身もかなり見劣りせざるを得ないというふうに私は思ったわけであります。規模については、経済成長戦略要望に予算の重点配分をされたというふうに言われておりますが、現在審議中の平成十九年度の予算案を見ると、三千億円超にとどまっている。また、大企業と比べてまだまだ足腰の弱い中小零細企業、これは日本経済の根幹であるわけでありますが、この中小企業対策についても、費用が予算の中で千六百二十五億円と、昨年からわずか九億円ふえたにすぎない。ここ十年、二十年ぐらいを見ていると、大して伸びていないわけですね。

 中身についても、これも私、なかなか判断が難しいですし、皆さんもあからさまには言えないと思いますが、どうも昔見たような対策が衣がえをされたり、あるいは多少条件をつけられたりして、つけかえみたいな形でまた改めて束ねられているという印象を持たざるを得ないということであります。簡単に申し上げると、まだ政策の中身に入る以前の問題として、安倍政権の成長戦略あるいは甘利経済産業大臣の経済成長に対する意気込みというものがなかなか予算に明確にあらわれてこないというふうに言わざるを得ない。

 私も、単に予算をばんばんつければいいというふうに思うわけではないんですが、もし日本の今皆さんが考えておられる経済成長戦略というものが、アメリカとか先進国の潮流の中で出てきているようなものと大体似たようなものであるならば、基本的にその成長戦略というのは、補助金とかそういったものよりは、研究開発あるいは人材育成、教育、こういったところに力点を置くことだと思うんですね。それらは簡単に言えば将来に対する投資みたいなものであって、もちろん、その中身とかいろいろ制度整備、どういう条件をつけていくのか、こういうことも大事だと思いますが、投資ですから、やはり金額というものが極めて重要な部分を占めるというふうに私は思います。

 質問としては、ですから、基本的にイノベーションというふうに言うのであれば、今回の中身を見ると、従来型の補助金的なものとか見受けられて、もちろんそれだけではなくて、いろいろ知的財産権の項目とか入っておりますが、やはりもう少し明確に、研究開発、人材育成というものに重点化して、大幅に増額をする必要があるというふうに思うんですが、この辺の、私が今るる申し上げた考え方あるいは見方、これについて経済産業大臣の基本的なお考えを伺いたいと思います。

○甘利国務大臣 成長なくして日本の未来なしというのが安倍内閣のスローガン。この成長を確保していくために、税と予算と法律を駆使する。

 税につきましては、減価償却税制、これは四十年ぶりに抜本的に見直しました、一〇〇%償却。それから、競争の激しい部分については、法定耐用年数そのものを短縮して競争力をつけていく。設備が最新のものに入れかわる、サイクルを早くしたわけですね。

 予算でいいますと、確かに三千億の枠です。しかも、これは三千億を外枠で出したというんじゃなくて、質を変えたのを優先的に織り込んでいくというやり方です。ですから、ボリュームとしてはもうちょっとあっていいなというのが率直な私の思いでありますし、またその旨も主張しました。ただ、財政再建という縛りがかかっている中で、どうやってイノベーションを加速していくか。だから、予算をふやすというんじゃなくて、予算の質を変えるという作業をやったわけですね。三千億、その質が変わった要求については最初からつけていって、上げますよというやり方でやったわけであります。それとあわせて、法律、我が省でいえば、中小企業地域振興三法案を出したわけであります。

 私は、経済財政諮問会議でもたびたび主張していることでありますが、この三千億は、プラン・ドゥー・チェック・アクションというか、見直しを常時かけていく。政策効果の見直し、それから新しい玉出しとか、常時見直しのサイクルを組み込んでいくべきだ。これは新年度予算でありますけれども、その次の予算もこういう枠をできれば拡大して設けるべきではないかという主張も、諮問会議を含めてあちこちでしているところであります。

○北神委員 ありがとうございました。

 本当に率直な御意見を伺えてよかったと思います。

 というのは、実際、大臣も多少やはりまだまだ足りない部分があるという御意見だというふうに思います。足りないといっても、比較の対象というものがないとなかなかわからないんですが、私も経済産業省が出している資料で見ますと、アメリカは、さっき申し上げたパルミザーノ・レポートに基づいて、去年の一月三十一日にブッシュ大統領が一般教書演説において米国競争力イニシアチブというものを発表された。その中身を見ますと、ナノテクなどの重要な研究に対する連邦政府の財政措置を倍増する、あるいは研究開発減税の恒久化、これは大臣も以前取り組まれたという話ですが、今度アメリカの方では恒久化をするということであります。三本柱で、あともう一つは学校教育、生涯教育ですね。生涯教育というのは、アメリカの文脈の中で職業教育というものにすごい力点を置いているみたいですが、そういった教育改革というものも入れている。

 そして、財政規模を見ますと、二〇〇七年以降、今後十年間で千三百六十億ドル、これは、日本円に直すと何と約十五兆円あるわけであります。アメリカの経済規模と日本の経済規模の違いとか、それはもちろんいろいろあると思いますが、しかも、アメリカは十年間にわたってずっと継続的にやっていく。日本の方は単年度ぽっきりで、単純に三千億で比較をすれば、約五十分の一になってしまうという計算になると思います。だから、気合いの入れ方が違うんじゃないかというふうに思っております。

 ただ、今大臣が言われた、経済財政諮問会議において、プラン・ドゥー・チェック・アクション、そういった提言をされている。これは、私もぜひそれをきっかけに、今後、これは単年度の話だけではなくて、十年、二十年ぐらいのスパンで徐々に改善をしていきながら、できれば、やはり研究開発とか教育の投資というのは財政規模が最後は物を言うというふうに思いますので、そこら辺をぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 これは、ほかの政策についても私も安倍政権になってから本当に気づいて、よく目にしてきているんですが、皆さん、やはり財政再建の制約の中でやらないといけないと。今も大臣もそういうふうに言われましたし、去年の教育基本法の改正のときも、教育改革は最重要課題だと。

 御存じのように、日本の教育費というのは、OECDの先進国の中でも、GDP比では非常に少ない。お金が全部じゃないけれども、やはりそういうところに力を入れるという意味では、ぜひそこは予算で力を入れてほしいというふうに伊吹大臣に申し上げたら、彼も、やはり財政の制約がある、なかなかできないと。特に、教育については、去年、いわゆる骨太二〇〇六の中で、もう既に小泉政権の中で枠をはめられちゃっているんですよね。これまで以上の削減をするということがもう閣議決定をされてしまっている。

 そういった意味で、安倍総理が去年、所信表明演説の中で、成長なくして財政再建なし。大臣は何かきょうは成長なくして日本の未来なしというふうにおっしゃっていますが、もともとは成長なくして財政再建なし。これは物すごい明確なメッセージで、私が冒頭申し上げた考え方にも共通するものがあるんですが、極端に言えば、赤字覚悟ででもやはり経済成長に投資をするんだ、最初は赤字かもしれないけれども、いずれその投資のリターンというものがより多く入ってくるというのがそのフレーズの意義だというふうに思うんですね。

 ですから、そこは多分、大臣は当然理解されているというふうに思いますし、安倍総理も理解されていると思いますが、やはり財務省の呪縛から、あるいは小泉政治の呪縛から脱却しないと、なかなか経済成長というのは図れないというふうに思うんですよ。私も財務省にいたら怒られますけれども、はっきり言って、財務省にいながら私なんかもそう思っていたわけであります。ですから、そういった姿勢でぜひとも政権の中で頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、今回の経済成長関連三法案について申し上げたいのは、予算の規模、具体的な政策の中身だけではなくて、戦略の方向性であるわけであります。

 つまり、午前中、近藤さんとの話で、イノベーションとオープンというものが二つの柱だと。イノベーションというのもそうですし、オープンもそうですけれども、基本的には、簡単に言えば、企業の生産性向上と、国内だけじゃなくて海外にも需要を求めるという意味合いだというふうに思います。

 これについては、アメリカの置かれている経済環境と日本の置かれている経済環境というのはおのずと違う。アメリカの方はそんなに、景気が悪くてもみんな消費をするような国ですから、消費はある程度ずっと堅調なわけですね。日本の場合は、さっきからもうずっと議論があるように、やはり消費が非常に弱い。大臣御自身も、この前、十六日の所信表明で、消費に弱さが見られる、企業部門の好調さが家計部門に波及することによって、バランスのよい景気回復が実現されることが必要だというふうに述べておられるわけであります。

 私もそのとおりで、持続的な経済成長というのはやはり設備投資、輸出だけではとてもとても確保することができないというふうに思っておりまして、政策的に申し上げれば、企業の生産性向上だけではなくて、それだけやるんだったらやはり成長戦略としては不十分だというふうに言わざるを得ない。

 私たち民主党は、今国会で格差問題とかいろいろ議論をしておりますが、個々の家計とか個人の生活の安定とか安心とか、そういったものも大事ですし、あるいは国民、国家として、余り格差が広がって、不公平感が広がるというのも非常に問題だというふうに思いますが、それだけではなくて、まさに、ここで議論している経済成長の観点からいっても、経済格差というのは非常に足かせになるんじゃないかというふうに思います。

 そういった中で、御手洗経団連会長とかあるいは一部の識者の中では、今グローバル化で、インドとか中国とか、三十億人もの低賃金労働者と競争しないといけない、そういった意味では、当然、企業が国際競争力を確保するためには、人件費を極力抑えないといけない、そういう論調があるというふうに思いますし、私もそれは決して軽視すべきではないと。確かに、グローバル経済の中でそういった傾向がある。当然、そういうリーディング産業の足を引っ張るようなことはできるだけしてはならないというふうに思いますが、これも、先ほどからもお話が出ているように、ただ、その理屈が本当に今に当てはまるかといいますと、今回の景気回復の局面を見ると、決してその理屈は当たらないというふうに思うんですね。

 というのは、もう五年間、企業収益というものはずっと回復をしてきている。これは、私が提出した資料の一枚目にありますが、既に皆さんいろいろな形で、もっとわかりやすい形で資料として出されておりますが、財務省の発表している法人企業統計ですね。もう大体景気が回復されたと言われる平成十三年ぐらいから数字を出してあるんですが、企業収益が回復をしていると。

 内部留保の方を見ますと、マイナスから、平成十七年に至っては約九兆円ぐらい蓄積をしている。そういった中で、役員賞与の方は、平成十三年五千六百五十億円から、平成十七年には一兆五千二百二十五億円と、約三倍になっております。株主の配当も、平成十三年四兆四千九百五十六億円から、平成十七年には十二兆五千二百八十六億円、これも約三倍ぐらいになっておる。それぞれ、配当もあるいは役員賞与も三倍ぐらいふえている。ところが、人件費は、平成十三年の百九十二兆八千六百七億円から、平成十七年百九十六兆八千四百七十五億円と、ほとんどふえていない。

 だから、これは決して競争力に困って、なかなか商売もうまくいっていないから、収益がふえていないから、賃金に回せないとか、そういった話ではないというふうに思うんです。

 実際、この五年間で、幾らタイムラグがあるといっても、さっきも、川端先生の資料にもありましたが、八〇年代あるいはイザナギ景気のときに比べたら、明らかに労働分配率というものが上がってきていない。これだけでは、こういった状況では、なかなか大臣がおっしゃるように、消費が弱い状況というのは改善をしないんじゃないかというふうに思います。

 そこで、お聞きしたいのは、経済産業省も、名前のごとく、経済と産業、両方に目配りをする、設置法上もそういった役割になっておりますので、本当は今回の経済成長戦略の中で、企業の生産性向上だけではなくて、消費重視の政策というものを盛り込む必要があったというふうに思うんですが、それについて、見解と今後の取り組みについて伺いたいというふうに思います。

○甘利国務大臣 先生が御提出をされた資料で、平成十三年から十七年までの間のそれぞれの数字の伸び率を拝見させていただきますと、確かに人件費の比率が他に比べて極めて鈍化した伸びしか示していない。

 配当金の方は、役員賞与とは違った要素もあるのかもしれません。それは、MアンドAがかなり頻繁になってきた中で、実力に見合った株価になっていない、防衛策の一つとして株価を上げていくということ等もあって配当をふやしていく企業行動が反映したという点もあるのではないかと思っております。

 御指摘のとおり、消費がGDPの大宗を占めるわけでありますから、ここに力強い拡大感がないと本格的に景気が拡大局面に入ったというふうなことは言えないと思うし、企業の経営判断もそこのところを見ていると思うんです。

 そこで、もちろん、経営者側の言い分というのは、これから労働力がどんどん不足していって、タイトになってくれば、当然、買い手市場から売り手市場になっていく、いい条件を出さないと人が集まらなくなるしということになっていくんだという話が一方であります。それも事実だと思います。

 ただ、私は、余裕がない会社に賃金を上げろとは言えないですけれども、余裕があるところはできるだけ上げていって、企業から家計に所得が移転をしていくということを通じて、消費が拡大をされるし、世の中の消費マインドといいますか雰囲気がよくなるはずだ。そういうことを通じて、早く好循環、企業収益と消費の拡大のいい循環をつくり上げた方がいいんじゃないですかということを申し上げているわけでありまして、これは経団連の役員総会のときに総理御自身からも発せられた言葉でもあります。

○北神委員 今回の成長戦略にはなかなかそれが見えてこないということを指摘したいのと、今後の取り組みについては、最低賃金の話とか、あともう一つ申し上げたいのは、やはり労働法制の中で、大臣と川端先生の話でありましたが、もともとの趣旨が大分違ってきて、はっきり言えば経営者の方に乱用されちゃっている。だから、やはりそういったところをちょっと見直していく必要もあるんじゃないか。しかも、労働監督局も、非常に人員が少ない中で、多分そういったところにも目がなかなか行き届いていない。そういった部分もやっていかないといけないというふうに思います。

 とにかく、時々、私も直接経団連の会長とお話ししたこともないですし、あれですけれども、やはり、どうやら八〇年代からのアメリカの何か資本主義というか市場原理の考え方というものが、相当、またかなり極端になってしまっていて、労働と商品というものを同一視しちゃっている部分がある。これは確かに、経営者の立場からただただ利益を上げるというものが目的であるならば、そういった視点に自然となってしまうおそれもあるというふうに思うんです。

 これはちょっと通告していなかった質問なんですが、これに関連をして、こういった風潮が一部見られる、そういった中で、この前、十五日の参議院の厚生労働委員会ですか、柳澤大臣が、労働者は時間が売り物だという発言をされているんですね。そして、これは、日本版ホワイトカラーエグゼンプションの制度の意義を説明する際に、柳澤大臣から、工場労働というか、ベルトコンベヤーの仕事、もう労働時間だけが売り物ですというような、そういうところでなく働いている方々の現実に着目した労働法制をつくることが課題だというような発言をされたんですが、これも別に私も足を引っ張るつもりはないんですが、やはりこういう考え方が非常にはびこってきている嫌いがある、そういうことについて、いわゆる労働者というか労働力に対する認識とか評価に、その言葉どおり受けると、極めて問題があるというふうに思うんですが、その点について、大臣のお考えを聞きたいと思います。

○甘利国務大臣 柳澤大臣は基本的に極めて頭のいい人で、政策にも明るいので、ただ、時々、自分の言いたいことをわかりやすく強調する余り違った理解をされてしまうという点があるんだと思います。

 恐らく彼が言いたかったのは、内容を見ていませんからわかりませんが、工場のラインに入っている労働者で自分の創意工夫で付加価値を生み出して自分の評価につなげることができない、つまり、その作業に加わっている労働者の評価というのは得てして時間ではかられてしまうというみたいなことを言いたかったんじゃないでしょうか。

 つまり、自分の創意工夫を生かしていろいろなことができる仕事の部分と、定格化された作業を強いられる部分との働き方の差をわかりやすく言おうとして、わかりにくくなったんじゃないんでしょうか。

○北神委員 ホワイトカラーエグゼンプションの話ですから、知識・知能労働者と、肉体労働者というんですか、それとを分けるときにそういう表現を使ったというふうに思うんですが、実際、さっきから申し上げている成長戦略の中でも教育というものが非常に大事だというのは、まさに、高度化、いわゆる知識経済になってきている、競争力もどんどん激しくなっている。本当はそういったことを言うんじゃなくて、むしろそういった人たちをどうやって引き上げて、この競争経済の中で十分力を発揮できるようにしていくような、そういった姿勢が大事だというふうに思うんです。

 もう一点だけ、申しわけないんですけれども、柳澤大臣も産む機械だとか装置だとか、そういった発言もされて、こういうのがどんどん続いてきている。毎回謝っておられるんですが、こんなに何回も続いていると、どうもちょっと、さっき言われたように表現力が下手なのかどうかわかりませんが、何か非常に、根本的にちょっと適当じゃないというところがあるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺、大臣のお考えはどうでしょうか。

○甘利国務大臣 私が知る限り柳澤大臣というのは極めて人格者で、女性に対しても、もちろん男性に対しても、労働者に対しても極めて敬意を払う人だと私は思うんですが、このところ何か、ちょっとどうしちゃったのかなという、何か歯車のかみ合わせがちょっとうまくいっていなくて、御本人も歯がゆい思いをされて、自分の真意が、どうも出る言葉は違う言葉が出ちゃって、悩んでいらっしゃるんじゃないかというふうに思うんですが。

 従来から申し上げますように、日本の企業の強みというのは、みんなの力を結集する、いい改善提案を共有する、恐らく、よそにそんなにないと思うんですね。こうやったらうまくいったと発見した自分のノウハウだから、そんなものを人にただでやってたまるかという気持ちが働くはずですけれども、日本の労働者は、こうやったらうまくいくよ、あなたもこうやったらということを言う、これが力だと思うんですね。

 だから、ライン方式からセル方式の方が生産性が上がったというのは、みんなでいいことを共有しようよという総合力を最も発揮できる労働形態だから、生産性がより上がったということになるんだと思いますし、そこはやはり、日本の経営者はそういう働き手との、そういう、機械でも装置でもない、人間だというところの強みを理解しているから、日本の企業は強かったんだと思います。(発言する者あり)

○北神委員 ありがとうございます。労働大臣兼務という話もありますが、ぜひそういった考えを経済産業行政の方に反映していただきたいというふうに思います。

 消費の部分についてこの五年間の回復を見ていると、消費が一応伸びていることは伸びている、でも、五%台で伸びている。それで、輸出とか設備投資は二けた台で伸びている。そういった意味では、非常に差があるし、でも消費は実際に伸びているじゃないかという方もおられますが、それは実際は、貯蓄を取り崩して消費に回しているという分が多いんですね。貯蓄がゼロの方というのは二十年前ぐらいはほとんどおられなかったんですが、今はもう二四%ぐらいにふえている。それは、ほとんどその貯蓄を、多分高齢者が多いと思うんですが、そういった方が取り崩して消費に回している。

 消費は、例えばウナギばかりを食べていて、だんだん所得が減ってきたが、ほっか弁の弁当になかなか切りかえることができない、自分の今までの生活水準を維持したいという意味で、どちらかというと、貯蓄を崩してでもその消費水準というものを維持したいという部分が働くと思いますので、消費がプラスだからといって安心することは非常に危険だ。今後、どんどん貯蓄を崩していって、この低金利の中で、利子所得も得られない、そういった中で、やはり先行きというのはこのままでは非常に不安定なことになってしまうということを申し上げたいというふうに思います。

 ちょっと、私もしゃべり過ぎて時間が、ほとんど質問できなかったんですが、あと二点ぐらい質問したいのですが、ちょっと公正取引委員会の方に質問したいというふうに思います。

 それは、先ほども中小企業対策の話も申し上げてまいりましたが、今回も生産性の向上という話が法案の中に入っております。しかし、これも質問できなかったんですが、サービス産業の生産性向上というのはなかなか、IT化ぐらいは思いつくんですが、サービス産業でどうやって生産性を向上するのかというのは非常に難しい問題だというふうに思いますし、ほかの部分を見ると割と旧来型の補助金みたいな部分があると思いますので、この委員会でもいろいろな議論もありましたが、私は前から思うのは、今一番求められている中小企業対策というのは、補助金とか減税とかそういったものではなくて、やはり大企業との関係で公正な競争というものをいかに確保するかということだと思います。これは地元へ戻っても、中小企業の社長さんから、やはりどうしてもそのところで自分たちは非常に苦しい目に遭っていると。

 そこで、先ほども話が出ましたが、公正取引委員長、竹島委員長の方から、不当廉売、優越的地位の濫用等についてお尋ねしたいというふうに思います。

 これは、私の出した資料にも載っておりますが、三枚目だと思いますが、日経新聞に記事が出まして、公正取引委員会が、不当廉売、優越的地位の濫用について課徴金を科すべきだ、そういった方向で主張をされていると。それに対しまして経団連が、そんなことはだめだという記事が載っております。よく新聞にはガセネタみたいのも出ますので、これが本当かどうかわかりませんので、これが本当に根拠がある記事かどうかというのを竹島委員長に伺いたいと思います。

○竹島政府特別補佐人 今御指摘のこの記事の部分ですが、正確には、公正取引委員会が不当廉売や優越的地位の濫用について課徴金の対象にしたいと、積極的にといいますか、そういう主張をしているというのではございません。

 これはまさに、この十七年の独禁法の改正のときに、衆議院、参議院両方において、優越的地位の濫用と不当廉売について、ただやめろという排除措置命令だけじゃ不十分だ、課徴金の対象にすべきであるという御議論が国会の方でございまして、それが附帯決議にも盛られている、そういうことを受けて、私どもとしては、それは宿題であるというふうに認識をさせていただいております。

 当時も申し上げましたが、これは法律的に非常に難しい。端的に申し上げますと、カルテルや談合のようなものは課徴金の対象にすべきである、当然違法で情状酌量の余地もなしということになっているわけですが、この不当廉売とか優越的地位の濫用というのは不公正な取引方法というものでございまして、競争を制限するというのじゃなくて、公正な競争を阻害するおそれがある、よってやめなさいというグループなものですから、おそれぐらいで課徴金だ、罰金だということになるのか、平たく申し上げますと、そういう問題がございます。

 したがって、同じ独禁法の違反行為でも、カルテル、談合の場合とは内容、性格が異なる一つのグループである、それにどういうペナルティーを科すのが妥当なのか、こういう問題なものですから、そう単純な話ではない。

 そこで、内閣府の基本問題懇談会で、学者先生も入っていただいて、今どういう形があるべき姿かということを議論しておられる。六月か七月には御提案が出てくると思いますので、そういうことも踏まえて我々としては勉強していきたい、こういうことでございます。

○北神委員 ぜひ、私の立場からしたら、やはり前向きにそれは検討していただきたいというふうに思います。

 特に、おっしゃるように、法律上、刑事の犯罪構成要件ですか、これはなかなか難しい。ただ、日本の法律の場合は何々のおそれがあるというところが多分問題になると思うので、諸外国の法律を見るとおそれというものはない。だから、場合によってはそこを改正して課徴金を科すことにするということも考えられると思います。ただ、いずれにせよ、実際にちゃんと取り締まれる方法が一番いいというふうに思います。

 最後にお聞きしたいのは、この法律を改正するにせよしないにせよ、この問題について竹島委員長も、十六日のこの委員会で、厳正に、迅速に処分をしているというお話もされましたが、私の地元で、いわゆる酒屋さん、小さな酒屋さんで非常に困っていると。なぜなら、割と大手の酒屋さんが来て、車で一時間ぐらいかかるところに、ビール半額だ、あるいはウイスキー半額だ、そういったビラをまいて、みんなそっちに行っちゃう、自分たちはそういったことに対応できない、これは不当廉売じゃないかと。いろいろビラとか集めたり、情報を集めたり、数字を集めたりして公正取引委員会の方に出しても、私もそれにちょっとかかわりましたが、なかなか対応してくれないと。

 別に、その結果は、それはまあいろいろあると思うんですよ。皆さんが最終的に判断されることだと思います。しかし、聞いてみると、調査をされている方、その不当廉売の調査、私の場合京都なんですけれども、京都だけじゃなくて近畿地方全体でこの不当廉売の調査をしている人員が四名しかいない。これはとても、どう頑張っても、不当廉売が行われているかどうかとか、そういったことは恐らく不可能だと思うんですよ。

 ですから、そういった意味で、法改正をするしないの問題ももちろんありますが、やはりこの体制の問題というものを、より拡充していかないと、とてもとても法律の趣旨を実行することはできないんじゃないかというふうに思いますので、その点について最後に伺いたいと思います。

○竹島政府特別補佐人 酒屋さんにかかわる不当廉売というのは非常に多いわけです。ガソリンの場合も多いんですが。

 我々としては、相当の数、不当廉売ですよ、やめなさいということの注意や警告をもうしておりまして、特に影響の大きいものはもう排除措置命令も出しているということで、近畿でもガソリン販売業者に法的措置を講じたことがあります。

 ちょっと統計を申し上げますと、酒類の不当廉売の注意件数というのは五百件ぐらいございまして、平成十五年が五百七件、十六年度が四百八十五件、十七年度が三百九十七件、十八年度、まだ終わってませんが、四月から十二月までで四百四十四件やっております。したがいまして、数は、マンパワーの問題は確かに御指摘のようにあるんですが、結構な数やっておるということでございます。

 これからも、こういう厳しい定員事情でございますので限度がございますけれども、着実に体制整備に取り組んでいきたいと思っております。

○北神委員 ありがとうございました。以上でございます。

全議事録

経済産業委員会で「官製談合防止法の改正案」について質問しました。
最近全国各地で相次いで官製談合事件が発覚していますが、与党案と民主党案を比較すると、職員による「不作為」を入札談合等関与行為に追加する民主党案の方が、官製談合の防止に一層効果的であると主張いたしました。

北神質疑
2006年11月29日 経済産業委員会
○上田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 民主党案そして与党案の官製談合防止法について、引き続き、民主党の立場から質問をさせていただきたいと思います。

 私、この問題については新参者でございまして、今までの三者とはちょっと、基本的な質問をさせていただきたいというふうに思います。

 談合というのは、先ほど話がございましたように、ややもすると、いい談合もあるんじゃないかと。特に玄人的な意見で、談合というのも、世の中、余りきれいな水の中には魚もすまないんだ、そういうのも必要じゃないかというような風土があるように思いますが、それは違う、すべて談合というのは犯罪であるという言葉もありましたし、もう一つ今までの審議で思いましたのは、官製談合の場合は、それぞれの公務員の職員だけの問題ではなくて、天下りなんかと密接につながっている組織的な犯罪を行っている場合がある。この二点が非常に強く印象にございます。

 そういう意味で、それぞれ、与党案と民主党案が出されているわけでございますが、相当に違うところもある。方向性は同一だというふうに思いますが、中身を見ると異なっている部分があるということで、きょうはその辺を明らかにしていきたいと思います。

 まず、民主党の提出者に伺いたいのは、今までも議論の中で、どっちの案がいいか、与党案がいい、民主党案がいい、それぞれの主張がございましたが、どこが与党案と違うのか、民主党提出者の立場からちょっと総合的なお話を伺いたいと思います。そして、どちらが今申し上げた談合の排除そして抑止に効果があるのか、その辺を伺いたいと思います。

○原口議員 北神委員にお答え申し上げます。

 大体三つ、大きく分けて考えています。

 私たちの案は、もともと刑法の抜本改正に言及しているんです。それはなぜかというと、先ほど昭和十六年のお話がありましたけれども、目的犯になっている。政府の原案になかったものが、いつの間にか国会で修正をされて目的犯になっている。統制経済の時代に、いわゆる政府が差配をする価格形成、これについてはそもそも抜かれているんですね。

 それが証拠に、「大コンメンタール刑法」を見ますと、こう書いてあります。なぜ目的犯のところが加わったのかという理由にこう書いてあるんですね。当時、統制経済で自由な価格競争による批判も大きかった。官庁側から業者に談合を促していた。そして、談合必ずしも悪でないという考え方が強かったため、このような法改正になったんだとされているわけです。

 今や、まさに開かれた市場、自由な経済では、あり得ないことが今なお、刑法九十六条の三第二項の談合罪は、もともと官製による談合というものを抜かしているんです。そのもともとのところを正常な形に変えようというのが民主党案のまず第一点です。

 それから第二点目は、その結果として、官に甘く民に厳しい。今、地方自治体でいろいろなお金の流用と言っています。あれは流用でしょうか。本当は詐取ですよ。そこで、民間だったら即責任をとってやめさせられるはずの人たちが、会計検査院からもたくさんの不祥事の報告が官についてありますが、だれもやめない、だれも責任をとらない。こんなことではだめだということで、私たちは、民法七百九条、まさに重過失といったことまで要件にしていたのでは、それこそ官による談合の差配というのをやめさせることができない。大きな責任、大きな公共性を持つ人たちにはより大きな義務と、そしてそれを破ったときには大きなサンクションがあるんだ、この考え方が民主党案でございます。

 与党の方々も、官製談合をやめさせるということについては方向性は同じだと思いますが、しかし、刑法のもとのところが変わっていない、あるいはサンクションについても重過失というものを要件とされている。こういうところが大きな違いでございます。

 また、民主党案においては、裁判所から公正取引委員会への求意見制度を創設しています。そして、公正取引委員会と会計検査院、もともと私たち民主党は、会計検査院も、先ほどの答弁のようなことをなさるのであれば、国会の中において、立法府のコントロールのもとでしっかりと予算、決算のチェックがきくようにということを考えておりまして、その連携の強化、それから職員の損害賠償責任の厳格化、このことを規定しているところでございまして、一言で言うと、本来の官の責任をしっかりと追及できる、そういう官製談合防止の案になっているというふうに自負をしております。

○北神委員 今の話でいけば、与党案より民主党案の方が官製談合に対して厳しく処置をすることができる、それは刑法の抜本的な改正の話もあると。それは、先ほど近藤委員の質疑の中で、目的の部分ですね、公正な価格を阻害する、または不正な利益を得るような目的、そういう主観的な要件が今まで現行の法律にはあったけれども、それを取っ払うという意味が、一つ大きな象徴的な部分だというふうに思います。

 もう一つ、今回の法案のスキームの中で、刑法的な部分じゃなくて、いわゆるその事前の段階だと思いますが、公正取引委員会が、そういった入札談合的関与が見受けられたときに、その改善措置を要求するという部分も一つ大きなスキームの部分だというふうに思います。これについては、民主党案は、黙認という話が先ほど山本委員の質問の中にありました。

 今までの三つの類型、一つは、まさに談合をそのまま直接に指示する。もう一つは、秘密の情報を漏えいする。もう一つは、業者を指定する、いわゆるチャンピオンを指定する。今までこの三つの類型に当たるときに、公正取引委員会が改善措置を要求することができた。そして、場合によっては、それがその役人の懲戒処分あるいは損害賠償に至る、そういった流れだというふうに思います。

 与党案の方は、その三つの類型では例えばあの道路公団のときには対応できないということで、四つ目の類型として幇助というものを入れられた。民主党案の方は、先ほど黙認という言葉がありましたけれども、この黙認というのはやや不正確な言葉で、ちょっと誤解を招くというふうに思うんですね。

 私も最初、黙認と聞くと、いじめの問題でも、いじめているのを黙認した子供も罪が重いとかいう話もありますが、これはもっと厳密な、厳格な、損害賠償にも至るような法律の話でありますので、本当にすべて黙認を対象にしていいのかというふうに私も直観的に思ったわけでございますが、よくよく見ると、民主党案は黙認という言葉を使っていなくて、一定の不作為という言葉がありますし、その一定の不作為も条件が課されているというところでございます。

 具体的に、これは民主党の法案の第二条の「定義」のところの第五項だと思いますが、その条件についてちょっと民主党提出者にお聞きしたいんです。

 まず、実際に入札談合関与を行う対象の話ですが、「契約の締結に関し権限若しくは職務上の地位に基づく影響力を有する職員の不作為」であるという条件が一つあります。これが、法律用語でちょっと抽象的なので、具体的にどの範囲を指すのか。つまり、余り広くするとこれはだれでも罪に問われるおそれがあるという懸念があると思うので、多分こういう限定をつけたと思うんですが、その点についてお伺いしたいと思います。

○近藤(洋)議員 お答えいたします。

 まず、契約の締結に関し権限等を有する職員、対象の範囲はどういうことか、こういうことでございましたけれども、発注機関の入札事務を担当する者及び監督する職員を想定しているわけですけれども、実際に法令の適用に際しては、その権限、事務分掌上の権限や運用実態等を総合的に判断して適用することになるかと思うわけです。

 ただ、あえて指摘をしておきたいのは、当然に、その監督権限というのはだれかということですけれども、自治体である場合は首長、国の機関であれば大臣には包括的な権限があり、契約の締結に関し権限等を有する職員に当たると考えます。さらには、同様に副大臣、大臣政務官、さらには知事の場合は副知事も、職務上の地位に基づく影響力を有する職員に当たる場合があるだろう。担当する副知事というのはその職員に当たるのではないか、こういう形で考えております。また、この考え方は、基本的に、やはり監督の責任というのはトップはあるんだという認識で、こういう形で考えておるわけであります。

 また、「明白なおそれがあることを知りながら」ということについては、さまざまな情報があるわけですけれども、もう明らかに、そういった権能を有する者が、証拠に基づき、そして自分も目撃し等、明らかに問題があるという情報を知りながら、確実な証拠や根拠に基づいた情報が提供された場合、みずから入手した場合を想定して、「明白なおそれがあることを知りながら」という要件を付しておりますので、明確な資料、根拠に基づいた情報ということだろうなと思っております。

 ですから、ただのうわさ話を聞いただけということは、当然ながら想定をしておりません。

 以上です。

○北神委員 ありがとうございます。

 この黙認という話が出てくると、当然、そういういろいろな懸念があるというのはよくわかるんですが、今のお話でわかりますように、実際対象となる職員は、入札談合に直接かかわってくる人、それとその監督責任、これはかなり、当然、いわゆる結果責任という意味で、地方公共団体だったら首長とか、国の方だったら大臣、さらにそれに準ずる者というふうに限定をしておりますし、もう一つは、明白なおそれがある、入札談合のおそれがあるということがなければならない。

 だから、単なるうわさ話とか、単に、何か談合しているようだよとか、そんなような話で動くようなことはない。そういう意味では、その懸念が払拭されるというふうに、私も聞いて安心をしているところであります。

 逆に、これは与党案の方にお聞きしたいんです。

 与党案の方は幇助ということで、幇助というものもなかなか聞きなれない言葉で、幇というのはたしかたいこもちの当て字にも使うぐらいのあれで、多分、犯罪をちょっと促して便宜を図るというような意味合いだというふうに思いますが、これは具体的に、今まで三つの類型があって、業者を指定するとか、談合を指示するとか、秘密情報を漏えいするとか、ある程度幅広い網がかかっているように思うんですが、この幇助を入れた趣旨というのはどんな意味なんでしょうか。

○佐藤(剛)議員 今先生の御指摘の幇助ですが、これは、刑法理論で共同正犯、幇助、幇助罪とか、そういうふうに使う意味と御理解をいただければと思います。

 私どもの自公の案は、基本的に申し上げますと、幾つかのエッセンスがあるんです。先生御指摘しました明らかなこととか、それから、いろいろな情報が入ってくるけれどもその情報というものは本当に信憑性があるのかないのか。つまり、簡単に言えば義務とのつながりですね。義務を持つ、そういう義務ということで、きちんと不作為ができるのかどうなのか。こういうところが、私どもは議論をもちろんいたしましたが、これを四項としまして追加するのには、やはりきちんとした構成要件といいますか、そういうものが必要であるというところで、今回の提案の字句になったところであります。

○北神委員 私が勉強したところ、幇助というのは、道路公団の談合のときに、分割発注をしたり、そういう分割表を、スケジュール表を提出したりして、直接どこの業者が入札しろというような明白な指示はないけれども、ある程度間接的にやっている。これについてなかなか取り締まりにくいというような問題意識があったというふうに思うんですが、私は、そういう意味では別に、幇助というのはさらにちょっとグレーゾーンを明らかにするという意味合いはあるというふうに思うんですね。

 ただ、先ほどの民主党の提出案は、またちょっと次元の違うところに網をかけていると思うんですよ。それは、例えば私の地元でもそうですし、皆さんの地元でもそういう町があると思いますが、特に田舎町なんかでは物すごい高い落札率がずっと続いている。九八%ぐらいの落札率がずっと、もう十年、二十年ぐらい続いている。こういったことに対して、余り証拠が出ていなくても、普通に考えたら、ややおかしいな、談合の可能性は非常に高いんじゃないかというふうに思うところがあるんですね。

 こういったことが、本当に、冒頭申し上げたように談合というものを排除するんだという決意があるのであれば、本当はこの辺も網をかけないといけない。そういう意味では、私は、民主党の案の方が、一定の不作為、しかも明白な証拠がある、談合しているおそれがあるということがあれば、そこは改善措置を要求して是正することができるというふうに思うんですが、この辺について民主党提出者は、こういう考え方でいいのかどうかというのをお聞きしたいというふうに思います。

○長妻議員 やはり、先ほど御答弁申し上げましたように、今委員が言われましたような、非常に高い落札率がずっと続いているとか、あるいは、例えば入札、落札の結果が、特定の会社が順繰りに、きれいに順番どおり長年にわたってそれが続いているとか、やはりどう考えても、入札業務にかかわる方はプロですから、もうなれておられるので、それがもうおかしいというのが明白にわかる。

 こういう状況が外形的にも確認できたときに、それを不作為するということは、税金の無駄遣い、談合を増長する一つの大きな要因でもありますので、やはりここが最も本質的な問題だ、原因の大きな一つだと我々は考えておりまして、ここを措置しない法案というのは非常に根本的な欠陥があるんじゃないかというふうに考えております。

○北神委員 私も全く同感でして、結果として談合が行われている可能性が高い場合は、やはりメスを入れていかないといけない。そして、さっき先生が言われたように、刑法の構成要件の厳格な議論でいえば、私もそこはいろいろな賛否両論があるというふうに思いますが、これは要するに、一種別個の法律でやっているわけでして、政策的な法律だと思います。

 だから、そういった意味で、いわゆる六法的な厳格な法理論ももちろん考慮に入れないといけないと思いますが、やはりこの政策目的、すなわち日本の風土の中から入札談合というものを排除する、あるいはこれから抑止する、そういった観点からいえば、先ほど長妻提出者が言われたように、九八%もずっと高い水準で高どまりして落札をされているいろいろな自治体が実際にあるわけでありますし、さっき言ったように、もう長い、十年、二十年で見たらきれいに各会社が、あるいは業者が全部仕事をちゃんともらっている、こういうのはもう明らかにメスを入れていかなければ本質的な解決にはならないというふうに思うわけであります。

 百歩譲って、では構成要件、刑法理論上それはふさわしくないとしても、この問題というのは厳然と存在するわけでありますから、そこは与党として、あるいは政府として、そこまでいきませんけれども、とりあえず与党としてどう考えているのか。こういう問題はしようがないと、実際に今与党の案が通ったとするならば、その要件にはまるようなことしか我々はやっていかないんだ、そういうことなのか、それとも、そういう問題はそういう問題で別途対応するのか、その辺をお聞きしたいと思います。

○佐藤(剛)議員 先生の御指摘は、むしろ、公取委員長がおられますから、これまでの運用でやってきましたと。三つの類型でやってきたわけですね。それで、もう一つ、いろいろなケースで、これがあるとうまくいくんだというようなことの相談を私どもいろいろとしていますから。相談というのは、こういうのは大丈夫かどうだとかいうのは、私も自民党の独禁調査会の事務局長もやっていますので、そんなことでやっていますので、ちょうど委員長がおられますから、委員長から一言いただいたらいかがでしょうか。

○北神委員 振られましたが、ちょっと通告も何もなかったので、もし御見解があれば。

 要は、民主党案の方が、さっき申し上げたような、結果としてこれは談合の可能性が極めて高いんじゃないか、どう見ても不自然な落札率の推移とか、あるいはもうかなり信憑性の高い談合の情報が入ってきたときとか、さらには、長期間で見て、きれいに、よくよく見たら、結果としてうまいこと談合になっているな、そういったものにもメスを入れないといけない。恐らく、幇助を入れるだけではその問題は解決できないし、現行の類型だけでは解決できない。

 その点について、仮に与党案が通ったところで、本当に運用でその辺は解決できる問題なのかどうか、お聞きしたいと思います。

○竹島政府特別補佐人 おっしゃっている問題点は私も十分理解していますし、いやしくも発注業務に携わる職員においては、まさに、よりよいものをより安く調達するということで、ありとあらゆる注意を働かせ、知恵を出すべきであると思います。

 しかしながら、そういう情報に接したときに不作為、何もしなかったということについて、法律上どう罰するのかということになりますと、これはほかのことでもそうだと思いますが、大変難しいところがあるし、むしろ問題は、悪いことをするのをいかに防止するかという方が先でありまして、何もしていない人に対してそれを罰するという考え方の前に、ありそうな違反行為、それに結びつくような行為をいかにきちんと構成要件を明確化した上で罰するかということがまず求められるのではないか。

 そういう意味では、観点は全く違いますが、与党案の幇助というのは、まさに、やれとは言わないんだけれども、もう事実上やってよろしいと言っているのに等しいというような、そういう行為をどう見るか。それは、グレーだからいいんだ、セーフだということでいいのか。私はそうあってはならない。

 そうすると、悪知恵を出す者がまさにそういう影響力を行使するということは大いにあり得ますし、地位によっても、そういうことは間接的に影響力を行使するということはできてくるということになってまいりますので、その壁にぶつかってしまいますから、そうじゃない、幇助の行為についても今回新たに入札関与行為であるというふうに決めるというのは実務上も十分に意味がある、こういうふうに思っております。

○北神委員 今の委員長のお話は、構造的な、高い落札率とかそういう問題はその問題として認識されているけれども、なかなか法的に難しいところがあると。ただ、今言われたのは、法的に罰則とするのはどうか、それはなかなか構成要件として認められないんじゃないかということだと思います。

 これについては、誤解されているのは、いきなり刑罰にいくとか損害賠償にいくというふうにみんな解釈されるかもしれませんが、実際は違って、このスキームを見ると、仮に民主党案が通ったとして、いわゆる一定の不作為があった、それに対して公取が改善措置の要求をする、それに対して調査をして、どこまでその職員が関与していたとか、あるいは知っていたとか、どこまで、関与の度合いとか過失があるかどうか、その辺を見きわめて、そこで初めて、損害賠償の責任を問われるとか、あるいは懲戒処分を受けるとか、そういういわゆるプロセスが、過程がちゃんとあるわけですね。

 だから、類型にはまるからといって直接罰せられるというわけではないということは指摘したいというふうに思いますし、むしろ提出者から、そういう考えでいいのかどうか、今の与党の提案者あるいは公取の委員長のお話でいけば、構成要件としてなかなか厳しいんじゃないかという話があったわけでございますが、そこをお聞きしたいと思います。

○原口議員 与党あるいは公取の委員長の答弁にも、少し誤解もあるなと思います。

 私たちが一番目指しているのはコンプライアンスなんですね。官という発注業者のガバナンスをどうきかすんですか、ここに焦点を当てているわけで、そのことについては、例えば、これは政治家同士の議論ですから、私たちも公職選挙法で、私たち自身がしっかりとした監督義務を負っています。それは知らなかった、末端の運動員が、あるいは組織的な運動について、選挙違反をしたということを知らなかったということはもう理由にならないですね。

 それと同じように、発注業者には高い責任を負わせるんだ、そして、見て見ぬふりを長年やってきた、あるいはその疑いのあるものについてはこれを積極的に取り締まっていきましょう、これが私たちの基本的な法の趣旨でございますので、もともとコンプライアンスをきっちりしておけば、何も業務で萎縮することもありませんし、逆に言うと、国民のあるいは県民、地方の皆さんの負託にこたえて、しっかりとした発注業務ができるものだ、そのように考えております。

 以上です。

○北神委員 ありがとうございます。

 もう時間がなくなりましたので、結論めいたことを申し上げますと、今のいろいろな議論を聞いていると、民主党案の方がやはり官に厳しくやっている。特に、本当に官製談合というものを排除するのであれば、今申し上げたような、単に、何か個別の事案で職員が何か犯罪を起こした、そのとき取り締まるだけじゃなくて、構造的にこれを解決する。特に、職員が贈収賄とかいう部分もありますが、そういった部分もありますが、我々が議論しているのはむしろ組織犯罪としての官製談合であるわけでありますから、そこは政策目的にかんがみて、できるだけ厳しい民主党案の方が私はいいなということを最後に強く指摘を申し上げまして、質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

全議事録

経済産業委員会で「消費生活用製品安全法」改正案について質問いたしました。
先日の本会議に引き続いての質問になりますが、今回は運用上の課題を中心に、いくつか提言も交えながら質問しました。

北神質疑
2006年11月07日 経済産業委員会
○上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、午前中に参考人質疑がありまして、私も大変勉強になりましたが、午後、採決の前に、残りわずかの時間、質問をさせていただきたいと思います。

 これまでの審議の中で、総論的な論点は大体いろいろ議論されてきましたが、きょう、私は、運用の面の話と、あと運用を実効あらしめるための体制整備の話と、時間があれば、罰則とか実際に企業側が法律を守るインセンティブづくりみたいな話と、四点目に消費者の意識の喚起のお話をしたいというふうに思います。

 まず、この前の代表質問でも質問をさせていただきましたが、パロマのガス瞬間湯沸かし器の一酸化炭素事故におきましては、実際、経済産業省にはこの事件が発覚する大分前から情報が入っていたというのが事実であります。それが役所の中の縦割りの担当の中で、なかなかその関連性とか全体像が見えなくて放置されてきたというのが事実だというふうに思います。それについては大臣も明確に責任をお認めになっているということでございます。

 こうした事態の反省から、今回の改正案におきましては、経済産業省の中にデータベースをつくったり一元管理をするという体制整備を進めるということになっております。これ自体も当然、大変結構なことでありまして、ぜひともしっかり進めていっていただきたいというふうに思います。

 しかし、経済産業省の中の縦割りの問題はさておきまして、経済産業省所管の製品評価技術基盤機構、通称NITEというものがあって、ここに既にそのような一元管理体制というものができているというふうに伺っております。実際にデータベースとかもつくっていると。

 これは、お配りしている資料の一ページ目にあると思いますが、そこの表がありまして、このNITEにおいては、右側にありますように、左の方の消費者から情報が直接間接に上がってきて、この製品評価技術基盤機構、NITEの方に情報が入ると、しっかりとそこで調査あるいは原因究明、場合によってはテストまでを行う。さらには、事故情報のデータベース化というものがある。そこでまたさらにそれが、経済産業省の方に情報が上がっていくということであります。

 申し上げたいことは、つまり、今回法案で新たに一元管理とかデータベース化とかそういった話が出ておりますが、実際に今までNITEの中でこういうことをやってきたわけですよね。これは経済産業省所管の独立行政法人ですから、今回の改正というのは、結局、NITEでやっていたことを経済産業省の中に持ち込むのか、あるいは同じように同時にやっていくのか、ちょっとその辺が私も不勉強なんですが。いずれにせよ、こういった一元管理体制が既にできていながらも、実際にこのパロマの事故において対応が極めておくれてしまった。

 したがって、質問としては、この字面だけ見ているとNITEでやっていることをまた経済産業省内でやるようなふうに受け取られるのですが、実際にどこがどういうふうに違ってくるのかということを質問したいというふうに思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、パロマ事件が起こった際、私、過去のパロマの事故報告書を全部めくって見ました。その結果、ほとんどが、事故原因の項目が調査中、そういう形になっておりまして、その後のフォローがなされておりませんでした。しかも、すべての事故報告書が紙ベースでなされておりまして、関係課の間でファクスでやりとりがなされていた、こういう状況にあったわけでございます。

 したがいまして、関係課の間で十分な情報の共有、連携というのがなされていなかった、かつ、人事異動で人がかわるたびにその情報が十分に後任者に移転されていなかった、このような結果になったのではないか、こういうふうに思っております。このような事態を生み出したことにつきましては、経済産業省といたしまして大いに反省をしているところでございます。

 したがいまして、このパロマ事故を教訓といたしまして、また、省内の事故情報を統合的に電子化いたしましてデータベースを構築いたしまして、省内の情報共有を徹底することといたしております。

 本データベースにつきましては、経済産業省に報告がありました事故情報の内容はもちろんのこと、事故情報に対する経済産業省の処理が適切に行われているかどうかがすべて一見してわかるようにするために、処理中、未処理あるいは処理済みといった対応状況も含めたものとして構築をしてございます。

 一方、先生御指摘の独立行政法人製品評価技術基盤機構におきましては、さまざまな情報提供者からの幅広い事故情報を四半期ごとに取りまとめてデータベース化してきたものでございまして、ただいま申し上げました事故情報の処理状況をリアルタイムでチェックするための経済産業省内のシステムとは目的を異にするものでございます。

 なお、今回の改正におきましては、消費生活用製品の安全性に関する技術上の調査を行うことをNITEの役割として明確に定めたところでございます。お尋ねのNITEのデータベースにつきましては、重大製品事故以外の事故情報を中心に扱うものとなりますが、経済産業省のデータベースと接続して相互に補完する役割を果たすことになると考えております。

○北神委員 はい、よくわかりました。今までは紙だけで、しかもその継続性が役所の人事異動とかでなかなかつながらなかった、そこを改善するということだというふうに思います。NITEと両方相互補完でやるということであります。

 次に、パロマの事故、きょうも参考人質疑の中で出てきましたが、製造されたガス機器というよりは、むしろその安全装置の部分が改造されて事故の発生につながってきたと。これは、パロマさんの方が暗黙の了解でそういうことを許していたのかどうかとか、その辺の責任の所在というのはなかなか、諸説あるというふうに思います。しかし、いずれにせよ、事実としては、いわゆる改造がなされて、ガス機器の心臓部である安全装置というものがいじられてしまったということだというふうに思います。

 当然、今回の法案は、このパロマのいわゆるガス瞬間湯沸かし器だけを対象にしたわけじゃなくて、それに拘泥する必要はないと思うんですが、これが一番大きなきっかけとなったわけで、そういった意味では、この改造という部分にやはり対応していく必要があるというふうに思います。

 私も、提案としては、今は製造事業者と輸入事業者に報告義務を課しているけれども、できるならば、実際に改造を行う修理事業者とか設置工事事業者、こういったところに報告義務を課すべきだと思いますが、一つ目の質問としては、なぜそこができないのか。この前も代表質問で大ざっぱな答弁を大臣からいただきましたが、ちょっと詳しい答えをぜひお聞きしたいというふうに思います。

 さらに言えば、この改造ということですが、考えてみるならば、このガス機器というのは一定の危険性を有する製品でありまして、その安全装置について自由にだれでも改造できるということ自体がちょっとおかしいんじゃないか。したがって、この改造、特に安全装置みたいなものの改造について一定の規制というものもつけ加えるべきじゃないかというふうに思いますが、これは具体的に、例えば、こういった改造は危険性があるから許されないとか限定列挙をするとか、そういったいろいろな具体的な方法があると思いますが、この二点について伺いたいと思います。

○広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の一連のパロマ事故の一因といたしまして、安全装置を不正に改造することに対する制度的な歯どめが働かなかったことが挙げられます。このため、この点について制度的対応を図り、安全装置の不正改造を防止することが必要であると考えております。

 現在、ガス消費機器のうち構造、使用状況等から見て工事の欠陥により災害が発生するおそれが多いものにつきましては、特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律によりまして、特定の工事を行う場合、設置工事業者には有資格者に工事の監督を行わせることが義務づけられております。

 このため、今般、半密閉式ガス瞬間湯沸かし器などの安全装置の機能を変更する工事につきましても、安全装置の機能を停止させるような不正改造を防止するという観点から、有資格者による監督を義務づけるため、この法律の施行規則を改正いたします。

 また、安全装置が容易に不正改造されない構造であることをガス瞬間湯沸かし器の製造または輸入時の技術基準として追加するため、ガス用品の技術上の基準等に関する省令などを改正いたします。

 現在、これらの省令改正のための所要の手続を行っているところでございまして、このようにして、ガス消費機器の不正な改造が行われないよう、万全を期していきたいと考えております。

○松井政府参考人 今先生の方から、修理事業者に報告の義務づけを行わないのか、こういう御質問がございましたので、お答えいたします。

 今回の改正案におきましては、製品の安全性に一義的な責任を有する製造・輸入事業者に対しまして、重大製品事故の報告義務づけを行い、設置・修理事業者には報告の義務づけは行わないことといたしました。

 設置・修理事業者につきましては、通常、製造事業者や販売事業者からの依頼を受けてサービスの提供を行うことが多いことから、製造事業者、販売事業者を超えて義務を課すことは適当ではない、こういうふうに考えておる次第でございます。

○北神委員 二つ目の質問の件についてはよくわかりました。規則とかそういったところを改正して、実際に事前の規制を強化していくということだというふうに理解します。

 最初の質問の方は、報告義務は、一義的には製造事業者、そして販売事業者がある、したがって、修理事業者は彼らの依頼によって仕事をするわけだから、彼らに義務を課さないということだというふうに思いますので、その販売事業者の部分についてさらに質問させていただきたいと思いますが、これも報告義務の対象範囲の話であります。

 今回の法案では、先ほど申し上げたように、製造事業者、輸入事業者に報告義務を課す、一方で、販売事業者等は報告義務は課されない。先ほど、一義的な責任は販売事業者にもあるというお話を審議官されました。違いますか、あれは。製造事業者にあるんだということですね。(松井政府参考人「はい」と呼ぶ)わかりました。たしか言われたと思いますがね。それは違うということで、私もちょっと驚いたんですが、販売事業者には一義的な責任はないということですね。

 ただ、私が申し上げたいのは、販売事業者が消費者に一番近い立場にある。経済産業省にしてみれば、やはり迅速な情報収集を行うためには、本当は販売事業者というものも対象にすべきではないかというふうに私は思うんです。これは、実際、アメリカの消費者製品安全委員会という、CPSCというところでも、製造事業者、輸入事業者、さらに流通事業者とか販売事業者も対象に含めている。そういうことを考えると、本来は迅速にやるべきだ、やるべきだし、そのためには、販売事業者にも報告義務を課す方が望ましいというふうに思います。

 この点について、何か、それは第一義的な理由、責任はないということだと思いますが、私は、だから、それは第一義的な責任はないかもしれないけれども、情報収集の迅速性を考えると対象にすべきじゃないか、何か、それがだめだという大きな理由があるのかどうかということをお尋ねしたいというふうに思います。

○松井政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、製品の安全性に一義的な責任を有する製造・輸入業者に対しまして、重大製品事故の報告義務づけを行いまして、販売事業者や設置・修理事業者には報告の義務づけは行わないことといたしました。これは、販売事業者につきましても、製品の安全性に一義的な責任を負う製造・輸入事業者から製品を購入、販売する立場にございまして、安全性の確保に関しまして、製造・輸入業者と同等の責任を負わせるのは適当ではないというふうに考えたためでございます。

 また、仮に販売事業者に報告義務を課した場合には、販売事業者は非常に多くの多種多様な製品を取り扱うため、販売後長期間にわたりましてその販売した製品すべてについて把握することは現実的に困難でございます。特に、多くの零細な販売事業者にとりましては過度な負担となりかねないということでございます。

 しかしながら、やはり消費者に一番近いところにおられるのが販売事業者でありまして、消費者から事故情報等々を受け入れる可能性は非常に多うございますので、消費者の方から事故情報を受け取った場合には製造事業者あるいは輸入事業者に通知をする、あるいは、そのような情報を得たことをほかの消費者の方にお知らせをして同じような事故を起こさないような警鐘を鳴らす、あるいは、同様の製品を消費者がお買いになるときにこのような問題があったというようなことを注意を申し上げる、さらには、常にやはり安全という観点から消費者に対して物を販売するという姿勢を徹底して、安全な製品の設計をメーカーに対して提案する、あるいは、安全性のすぐれた製品を仕入れるなどなど、さまざまな形で安全性の確保について努力をしていただくことをお願いしたい、こういうふうに考えております。

○北神委員 販売事業者に報告義務を課さない二つの理由として、一つは、第一義的な責任を負わない、それはそうかもしれませんが、要するに、人の生命あるいはその身体に係る安全を確保する話で極めて重要な話ということを考えると、情報収集をやはり迅速にしなければならない、次、もしかしたら、それがおくれてしまったら、だれかがけがをしたり、あるいは死んだりしてしまう、そういうことを考えると、私は、依然として必要だなというふうに思います。

 また、二つ目の理由は、たくさん多過ぎる、これも、確かに物すごく多いと思います。ただ、これはまた後ほど議論をしたいと思いますが、こういったいわば事後規制というものを整備するときに、これを実効性あらしめるものにするためには、それなりの、非常に、人材、人員確保、予算あるいはその司法的な権能みたいなものも備えるとか、そういったことが多分必要になってくると思うんですよ。また後で議論しますが、今の経済産業省の体制では、なかなか、恐らくそれは非常に物理的に難しいという状況が本音の理由じゃないかなというふうに勝手に解釈をしております。それは、だから、今回緊急な話ですから、別に異論を唱えるつもりはないんですが、そうした考えに基づいて、次善の策として運用面で何とか確保していかないといけない。

 というのは、今回の法案は、製造事業者と違って、販売事業者とか修理事業者については、何か製品事故があった場合には、製造事業者、輸入事業者に通知をする努力をしなければならないと、努力規定になっているわけですよね、義務というよりは。それはそれで次善の策としてはしようがないと思いますが、それを実際に可能にするというのはなかなか大変なことだというふうに思うんですよ。

 おっしゃったように、たくさん販売事業者というのもいるし、修理事業者、設置工事事業者を含めると巨大な数になってしまう。こういった人たちに通知をする努力というものを課すというのは、それは、放置して、努力規定だから別に勝手にやったらいいじゃないかということだったらほったらかしにしたらいいかもしれないけれども、やはりそういうわけにいかないわけですから、そういうことを考えると、やはりその体制整備というものをやっていかないといけないんじゃないか。

 具体的に言えば、恐らく販売事業者も、この法案が通ったとしても、実際にそういう法律が改正されたということもなかなか認知はされない。そういう意味では周知徹底というものも必要になってくるし、そういったことになれていなければ、その販売事業者において、窓口はどこにするのかとか、担当をどうするのかとか、あるいはその連絡体制というもののいわば危機管理マニュアルみたいなものもつくっていかないといけない。

 そういったことをしなければ、結局、法律だけ改正されて、通知義務があるよと言いながら、実際何も機能しないというおそれもあるというふうに思いますので、これはアメリカとか諸外国比較すれば、販売事業者も当然本当は報告義務を課すべきだと思うんですが、次善の策として、やはり運用面できちっとそこの体制を整備すべきだと思いますが、お考え、どうでしょうか。

○松井政府参考人 今、北神先生がおっしゃるとおりでございまして、我々といたしましては、この法律にございます販売業者の努力義務をしっかり実行していただくために、事故情報の収集、提供体制の整備を含めて、自主行動指針を経産省として策定いたしまして、これはさまざまな規模、態様がございます、さまざまな販売事業者の業界ごとに適切な形にその指針をうまくつくりまして、それに基づいてしっかりとした対応をとるように指導をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 この自主行動指針というのは、具体的に、簡単でいいですけれども、どういうことを規定しているんですか。

○松井政府参考人 先ほどの御質問でお答えいたしましたように、まず、そのようなクレームが来たら、その会社のトップまで早急にその情報を上げて、そしてそれをメーカーに通知すること、あるいは、当該情報を次のお客様の消費行動に警鐘を鳴らせるように一般消費者の方にそれをPRすること等々、具体的な安全情報の収集提供体制について自主行動指針をつくっていきたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 内容は恐らくそういうことでいいと思うんですが、なかなか数が多いから、人員が少ない中で周知徹底が非常に大事になってくると思いますので、そこをよろしくお願いしたいというふうに思います。

 あともう一つ、運用面での問題を取り上げていきたいと思うんです。

 例えば、消費者が古い電気製品なんかをずっと使用し続けていると、二十年前のものを使っていると、その電気製品をつくった会社が倒産あるいは廃業することもあり得るというふうに思います。あるいは、そんな長い間使っていなくても、景気が悪くて業績が悪ければ、その会社が、製造事業者が、あるいは輸入事業者が倒産、廃業に追い込まれる、そういうことも十分考えられるというふうに思います。その場合は、報告義務とかいっても、もう報告義務をするところがないので、そういった場合は、当然経済産業省がみずから乗り出して情報収集をして、分析をして、さらにまた消費者に周知徹底をしないといけないという大変な作業があるというふうに思います。

 これについてどのように運用面で考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正案におきましては、「主務大臣は、重大製品事故に関する情報の収集に努めなければならない。」旨の責務規定がございます。経済産業省といたしましては、この規定を踏まえて、警察等の関係省庁や消費者団体との提携、通達に基づく任意の事故情報収集制度の運用などを通じて、幅広く事故情報の収集に努めてまいることとしております。

 今先生御指摘のような、重大製品事故の報告を行う義務者である製造・輸入事業者が倒産やあるいは廃業をしてしまった場合の製品事故につきましても、これらを通じて必要な事故情報を収集して、消費者に周知するため、適切に公表を行ってまいる所存でございます。特に、NITEの組織などを使いまして、そのような場合には積極的に消費者に対して警鐘を鳴らすべく努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 私も想像はつかないんですけれども、どのぐらいそういう事例が出てくるのかわかりませんが、そういうことが起きたら今言われたような方法しかないんでしょうけれども、非常にこれも大変な作業だというふうに想像します。特に、今の体制の中ではなかなか厳しいものがあるんじゃないかというふうに思います。それについて、また後ほど議論したいと思います。

 もう一つ、その前に運用の問題として取り上げたいのは、今回の法案は、製品事故という定義上、製品の欠陥によって生じたものではないことが明白な事故については、要するに、製品そのものの欠陥によって発生した事故でない場合は、報告義務の対象になってこないというふうに理解しております、報告義務の対象から除外をされると。例えば製品を使って自殺を図るとか、そういったときは当然除外される。

 もう一つは、製品外の事故によって何か事態が発生した場合、例えば自転車に乗っていて自動車に当てられたとか、そういった場合は別に自転車のせいじゃないので、こういった場合は報告義務から外れるということであると思います。これは非常にわかりやすい例なんですが、実際、なかなかわかりにくい場合が現実には起こってくるということで、一般消費者がその製品の目的と違うような使い方をする場合や、あるいは使用している人に重過失がある場合、こういった場合は、結局それぞれ個別の判断に任せるということになると思うんですね、この法律の構成上。

 これがなかなか難しい部分で、例えば、今回話題となった家庭用シュレッダーで幼児が指を切断してしまった。これは、ある意味ではその目的、製品の欠陥、そこら辺は非常に判断が難しいんですけれども、目的外の使用をしているという部分もあるし、この場合は報告義務の対象になるという整理になっていると思います。一方で、てんぷらなべをこんろの上で火をつけて温めている、ちょっとそこから離れる、そして発火して火災になってしまう。これは重過失の場合になるんだろうと思いますが、この場合は、私が調べた感じでは報告義務の対象にならないというふうになっております。

 この辺は私もわかりやすい例を申し上げましたが、こういったいろいろ、私もなかなか想像力が乏しいので全部想定できないんですが、非常にわかりにくい部分も出てくると思うんですよね、実際の運用上。製造事業者、輸入事業者、あるいは通知の努力義務を持っている販売事業者、修理事業者にとって、これはどう判断したらいいのかどうか、非常にわかりにくいときも出てくると思います。

 そういった意味では、こういった個別の判断に任せられている部分については、ある程度わかりやすい基準というものを設ける必要があるのではないかというふうに思います。事業者もどの案件を報告したらいいのか困惑する。場合によっては、面倒くさいからこんなのはいいだろうというふうにだんだん人間の心理で報告をしないようになってくることも考えられるわけであります。

 こういったことを踏まえると、消費者保護の観点からすれば、製品に欠陥があるのか、あるいは製品事故の原因がその製品そのものにあるのかどうか疑わしいものについては、基本的に報告義務の対象とすべきだと思うんですね。これは非常に面倒くさい話かもしれませんが、やはりさっき言ったように人の命にかかわる話でもありますので、そういったところはできるだけ厳しく、疑わしきを罰するじゃないんですけれども、疑わしきについては報告義務を課すというふうにすべきだというふうに思います。

 この法案の趣旨並びに皆さんの今後の運用において、そういった、今私が申し上げた考え方が反映されるのかどうか、伺いたいというふうに思います。

○松井政府参考人 今回、法の対象となります製品事故は、事故の原因にかかわらず製品の使用に伴って生じた事故を幅広く対象としておりますが、先生御指摘のように、製品の欠陥によるものでないことが明らかな事故については対象外としております。

 それで、欠陥によるものでないことが明らかな事故とは、典型的には、これも先生が例示で挙げられましたように、製品の使用者が故意に人を傷つけた場合や自殺した場合、また、製品自体は安全に機能している状態で偶然交通事故に遭うなど、外的な要因により事故が起きた場合を考えております。

 また、著しい誤使用による事故などにつきましても、限定的に報告義務の対象から除外することが適当と考えております。ただし、このような場合につきましては、除外対象を明確にするため、具体的な事例を経産省のホームページ等で列挙し、これに明確に該当する場合のみ報告を要しない運用としたい、こういうふうに考えております。

 なお、具体的な事例を列挙する際には、事前に第三者委員会での意見を踏まえながら検討していくことを考えております。

 いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、製品の欠陥が原因かどうか疑わしいものは、基本的に報告義務の対象になるものと考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 今、ホームページに除外される部分について列挙するという話ですよね。それは、事前に第三者機関で諮ってからそういうものを載せるということでありますが、先ほどの参考人の話もありましたけれども、ホームページを見るという習慣もなかなかついていない事業者もあるだろうし、そういったところを本当に周知徹底していかないといけないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○松井政府参考人 先ほどの参考人の御質疑のときにも、経済産業省あるいはNITEのホームページは普通の方はごらんにならない、こういう御指摘もございました。

 したがいまして、我々は、新たに事故情報を集めたポータルサイトみたいなものを開発して、事故というものについてそこさえ見ればさまざまな情報にアクセスできる、このようなものをこれから検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 ぜひ、その辺、しっかりポータルサイトというものをつくって、それも、そういうものがあるよということを当然幅広く通知する必要があるというふうに思います。

 これは、私も決してけちをつけるつもりはなくて、あらゆるこういった企業を対象にする法律について、現場の、地元の企業とかの人たちはなかなか実際知らないという場合が非常に多いということを考えると、それは、補助金が出る話とかそういった件についてもそういうわけですから、ましてやこういう製品の安全について報告をするとか、こういった点についてはますます、自然とそういうものを探して情報を見ようというインセンティブはなかなかないと思いますので、普通以上にそこは通知の努力が必要だと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 ここで視点を変えまして、もう少し大きな視点で議論をしたいと思います。

 今までも、運用の話をずっとさせていただいて、基本的に審議官の今の答弁を聞いていると、非常に運用面についてもいろいろと考えておられる。それを実際に実行する場合に、これはやはり人が必要なんですよね。これはもう物理的に大変な話だというふうに思います。ですから、そういった部分を含めて、この法律を通す、そしてその運用というものもどんどんこれから整備をしていく、そういった中で、机上の空論に終わらないためには、実際にそれなりの当局のマンパワーとか調査能力、そういったものが非常に求められるということだと思います。

 その前段としてちょっとお聞きしたいのは、この前もたしか牧原委員の資料にありましたが、製品事故というのが、パロマとかだけじゃなくて、全体として、ソニーのリチウム電池の話とか、いろいろ最近製品事故がふえてきているように見受けられます。これは、報道のニュースとかだけ見ていると、そういったものがどんどん出てくる。この前の牧原委員の資料を見ても、急にここ数年事故がふえてきている。これは、今までそういう情報が上がってこなかったのかどうかわからないんですが、私の皮膚感覚でいっても、非常に日本の製品事故というのが急増している。

 こういったことを考えると、一体この原因は何なのか。余りにもちょっと不思議な、突然事故がふえているというのは一体どういう原因に由来するのかということをお聞きしたいというふうに思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 独立行政法人製品評価技術基盤機構の事故情報収集制度によりますれば、平成七年度に報告された製品事故が約千件なのに対しまして、平成十七年度における製品事故は約二千四百件に増加しております。この理由につきまして、十分に分析はできておりませんけれども、とりあえず幾つかの原因ではないかというふうに考えております。

 まず第一点目は、製品の機能の高度化が進み、さまざまな機能を持った製品が次々と市場に送り出されております。また、シュレッダーのように、事務用機器が家庭に普及するなど、消費者の使用形態の変化と多様化も進んでおります。このように、消費者が接する製品の種類と数が増加しているということが事故を増大させている一つの要因と考えられます。

 また、二つ目は、製造事業者も、機能の高度化やコストダウンを優先して、相対的に安定マージンの確保をおろそかにしていたという面も否めないというふうに考えられます。

 さらに、ひっくり返ったら、倒れたら火が消えるストーブ等々、フェールセーフ機能を備えた製品に消費者がなれてしまいまして、結果として消費者の製品の危険性に対する認識が若干弱まっているのではないかなということも考えられます。

 さらに加えまして、製品事故に対する消費者、世論の感度が高まってきており、製品事故と認識される事故が増加していることなどが考えられます。

○北神委員 いろいろな要因を挙げられました。恐らく、最初の消費者の多様化の話とか、製品がいろいろ高度化している、こういったことと、企業のコストダウンの話とか、これら全体を含めると、大分、橋本内閣の時代から言われているように、大競争時代に突入してしまっている、非常に企業間の競争というものが激しくなってきている、そういったところでなかなか品質管理とかそういったところがおろそかになってきているというのが一つの大きな原因だというふうに思います、そのコストダウンの話とかそういうのを含めると。

 そういうことを考えると、今後も恐らくなかなかこういった潮流というのはとめようがない、非常に競争も激化する時代にもう入って、それもなかなか変えることはできないという中で、絶えずコストダウンのインセンティブというのは非常に強くなってきている。

 私も代表質問で申し上げましたが、非正規雇用ですね、パートとか派遣社員、これは当然人件費が安くなるわけですよ。企業の方も、私なんか地元の中小企業の社長さんとかとお話ししていると、本当は正社員を雇いたいんだと。正社員を雇わないと、やはり品質がどんどん落ちていく、たくみの伝統というものがどんどん絶えてしまってくる、その危機感は一方であるんだけれども、でも、今回の業績を考えると、決算を考えると、どうしてもやはりそっちの方に、安易な方に流れてしまうと。そういう非常に熾烈な競争の中で、やむを得ず品質管理というものが、ある意味で犠牲になってきている部分もあるというふうに思うんですね。

 こういった時代がなかなかもう変わらない、そういう中で、やはり今回の法案も、まさにその象徴ですが、事後規制というものをきちっと整えていかないといけないということだというふうに思います。

 先ほど何回も申し上げておりますが、私もこの質問の中で、できるだけ皆さんにもわかりやすく、これはなかなか大変だと。法律で書くのは簡単だし、大体の総論的な論点についてはだれも異論はないというふうに思います。しかし、実際に運用をしたり、万全を期すということに当たっては、非常にたくさんの人が必要になってくるし、その人材も、ただ片手間に、ほかのことをやりながらこの製品安全の仕事もするとか、そういうのでなかなか対応できなくなってくるし、そういった意味では、当然、予算の裏づけというものも必要になってくる。

 そういう意味では、一つ申し上げたいのは、今の経済産業省の体制、この資料の二ページ目にありますが、これは、日米の報告義務制度の比較というもので、経済産業省の方でつくっていただいたんですが、左側が日本で右側が米国だと。いろいろ違いがあって、簡単に言えば、やはり米国の方がかなり権限を持っているし人員も持っている、そういった体制が非常に整備されている。当然、向こうの方が経済規模も二倍ぐらいですから、それは簡単には比較できないというふうに思うんですが、それにしても、日本の、例えば一番上の方の担当行政庁のところに経済産業省があって、組織人員、製品安全課が二十五名だと、二〇〇六年時点ですね。その下のNITEがありますが、これが、製品安全業務担当職員数が六十七名ぐらいだと。全部で九十二名ぐらいかかわっている。

 これは、当然、今回の法案は主務大臣に報告義務ということですから、経済産業大臣だけじゃなくてほかの省庁もかかわってくると思いますが、ほとんどが多分経済産業省だというふうに理解しております。右側のアメリカの方は、経済規模は大きいといえども、四百八十名ぐらいいて非常な規模だということです。これは、これに限ったことではなくて、何もこれは偶然の話でも何でもなくて、基本的に、私が申し上げているように、規制緩和をして、小さな政府になって、競争というものをどんどん促すような経済システムというものをつくる上で何よりも必要なのが事後規制なんですよね。アメリカは、あるいはイギリスもそうだと思いますが、そういった事後規制を非常に強化しているわけですよね、ずっと。

 このアメリカの消費者製品安全委員会もそうだし、向こうの公正取引委員会みたいなものも、日本の規模に比べたらもう巨大な規模と権能を持っている。さらに言えば、ホリエモンのあの問題でなった証券取引等監視委員会、これも、日本の方ではこの前改正をして、多少人員をふやしたり権限をふやしたりしておりますが、比べたらもう全然足りない。

 ですから、申し上げたいことは、やはり安全、安心を確保するためにはこの事後規制の整備が必要で、この法案だけでは足りないんですよね。やはり、これを実行して、きちっと監視をして取り締まる行政の権限というものを強化しなければならない。そういう意味で、今の経済産業省の体制というのは不十分ではないか。それは、なかなかそちらからそういうことを言うことはできないと思いますが、やはりそういう苦しさというものはあるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○渡辺(博)副大臣 ただいま委員御指摘の点は、まさに大変重要な問題だというふうに思っております。事後規制を強化していくことでありますから、そのためには人員の問題も大変重要なポイントであります。

 今回の一連の事件を教訓としまして、経済産業省としては、事故情報の適切な分析と処理の体制を強化するために、第一点は、省内の関係部局が事故情報を処理する体制を整備、例えば、保安・安全連絡会議というものを設置したり、そしてまた省内共通の、先ほどもお話ありましたけれども、データベースの構築をしております。第三点としまして、事故原因の分析等に知見を有する独立行政法人製品評価技術基盤機構、いわゆるNITEにおいて事故分析体制の整備、とりわけ事故のリスク情報分析室を設置しております。このような形で整備を講じたところであります。

 今回の法改正に基づく事故情報の報告制度を十分に機能させるためには、経済産業省としましても、製品安全担当部署について可能な限り体制の充実を図っていくことが大変重要だというふうに思っております。

 先ほどの資料の中には、いわゆるCPSCですね、アメリカの場合については四百八十名という大変多くの人数がおりますけれども、日本のいわゆる製品安全担当部局は確かに二十五名、そしてまたNITEの方は六十七名という状況であります。これは、経済産業省としましては、個別物資を所管する関係課室がございますけれども、こういった関係課室とも強力に連携していくことによって対応ができるのではないかというふうに思っています。ちなみに、全体の関係人数としては三百五十名おりますけれども、これがすべて安全の担当をするわけではありませんが、いざというときにはそういった体制も組めるということであります。またさらに、先ほどのいわゆるNITEや関係省庁との連携を深めていくことが大変重要だというふうに思っております。

 このような体制をしっかりと整備することによって、いわゆるCPSCに相当する対応ができるのではないか、そのように考えております。

○北神委員 なかなか副大臣も苦しい状況だというふうに思います。これもさっきから申し上げているように、緊急の話ですから、それは当然この法案を通していただいて、そういう、できる限り今の資源をフル動員してやっていただくしかないと思うんですが、今申し上げたような、長期的な、あるいは中期的な視点というものを大臣もぜひ持っていただきたいというふうに思うんです。

 今はみんなもう、行革、行革で、何か役人を減らしたらいいというふうに言われて、確かに無駄な部分とかそういったところは節減したらいいと思うんですが、本来は、本当に規制緩和というのをどんどん続けていって、競争というものをどんどん促進するような政策を打つのであれば、ますます事後規制、さらにその事後規制をバックアップする役所体制、行政というものを強化していかないといけないということです。

 もう一点だけ最後に質問させていただきたいと思います。

 これは、人員の話もそうですが、経済産業省のままこの法案、実際実行していくということになっておりますが、私は、その経済産業省というのは、これはやや問題があると思うんです。

 それは、一方で、経済産業省は産業を育成する政策を打っているわけです。もう一方では、製品安全の政策を打つ、行政をやる。これは、必ずしも矛盾しないかもしれないけれども、場合によっては利益相反が生じる場合もあるんですね。つまり、企業にとっては、こんな報告義務なんか、ある意味ではコストがかかるような話であるわけですよね。あるいは、そういった問題が出てしまったら、少なくとも短期的には被害を受けてしまう。そういった意味では、私は、産業を育成する立場と、製品の消費者保護の観点から製品の安全というものを図ることが、利益相反を生じることもあり得ると。

 そういうことを考えると、今すぐとは申し上げませんし、皆さんから、はい、そうですという答えも期待をしませんが、これも長期的に考えて、やはり独立のものをつくっていかなければならないというふうに思うんですが、この点について最後に質問したいと思います。

○渡辺(博)副大臣 御質問の趣旨は、いわゆる産業政策と、そしてまた安全に関する対策についての安全政策、これは利益相反するのではないかという御指摘だと思いますが、私は決してそのようには思っておりません。産業政策と製品の安全、消費者保護の政策、そういったものは、まさに私は表裏一体のものだというふうに感じております。

 例えば、多岐にわたるこの消費生活用製品について、安全な製品の設計、製造、そしてまた迅速な事故原因の究明、適切な再発防止措置の実施など、これを行うためには、個々の製品をめぐる事業環境も考慮に入れつつ適切に事業者を指導していく必要があるというふうに思っております。

 こうした観点から考えますと、生活用品の大宗を所管する経済産業省が消費生活用製品の安全行政に責任を持って対応することが、かえって効率的かつ実効的であるというふうに理解をしております。

○北神委員 これはいろいろ議論があるというふうに思いますし、もう、ちょっと時間がなくなってしまったので終わりにしたいと思いますが、やはり、米国でもイギリスでもこうやって独立して監視をするような行政機関を設けているというのは、もともとそういう利益相反のあった話で、今おっしゃったことは確かに一種の理念としてはあり得ると思うんですよ、企業が製品の安全のことを余り考えなければ自分たちが結局損をするんだと。でも、そんなことを言ったらパロマなんか出てこないわけですよ。やはり短期的に見たら、こんなことが出たら自分たちが被害を受けるとか責任逃れとか、そういった部分も出てくるわけですから、産業育成の観点からそういったのをかばうという発想もあり得るわけですよね。

 もう時間がないので、私はそういう考えを申し上げて、こういったことをぜひこれからも議論していきたいというふうに思っていますので、きょうの議論を踏まえてぜひ運用の面をしっかりやっていただきたいということを期待を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

全議事録

政府の改正案と新たに発足した「教育再生会議」との関係、教育に対する財政的な手当ての重要性について、伊吹文部科学大臣と塩崎官房長官に迫りました。

北神質疑
2006年10月31日 教育基本法に関する特別委員会
○斉藤(斗)委員長代理 次に、北神圭朗君。

○北神委員 おはようございます。民主党の北神圭朗でございます。

 本日、伊吹文部科学大臣そして塩崎官房長官に、教育基本法についてお尋ねしたいというふうに思います。

 伊吹大臣は、同じ京都選出の先輩議員でもありますし役所の先輩でもありますが、多少やりにくい部分もございますが、胸をかりるつもりで質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 きのう、この場で終日議論が行われまして、それを拝聴いたしまして、私も、お互い共通の認識としては、この日本の立て直しの方策の根幹にやはり教育というものがあるというふうに思います。

 京都の話になりますが、御存じだと思いますが、かまど金という話がありまして、要は、明治維新の際に天皇さんが江戸に行かれた。それで町衆の人口が非常に減った。商業もなかなかうまくいかないし、全体の町の活力というものがなくなっていった。京都の町衆が、そこでどうするのかということを考えたときに、やはり教育が一番大事だと。お国に頼るんじゃなくて、それぞれの町衆の家でかまどが一個あるのか二個あるのか、それに応じてお金を出し合って、日本最初の近代的な小学校というものができた。そういう伝統のある京都でありますが、日本全体においても、やはり教育というものがその再生の一番根幹にあるというふうに思います。

 ただ、戦後、占領の影響もあるでしょうが、日本国民自身が、さきの大戦に対する反動とかショックとかで、日本人の当然の感情としての自国の歴史や文化に対する愛着、あるいは信仰心、あるいはそれらに基づく道徳心、こういったものがなかなか教育の現場、教育論議ではタブーになってしまった嫌いがあるというふうに思います。そういう意味では、戦後の教育論議の中では空白が生じていた。

 この教育再生というのは、まさにその空白を正面切って埋めていくということだというふうに私も理解しますが、ただ、それは、我々にしてみれば当然の話かもしれないけれども、戦後の教育の議論の流れの中では、主流からは、大きな飛躍とまでは言わないかもしれませんが、やはり今までの戦後の日本の教育の論議からすれば、大きな変革であるということは間違いないことだというふうに思っております。

 したがって、その方向性については我々も非常に大事だというふうに思っておりますが、国民の皆さんの意識の浸透を図りつつも、これはやはり、時間をかけて慎重に議論していくべき話であるというふうに私は思っております。

 ところが、さきの通常国会の最後の方にいきなり教育基本法案が出てきた。小泉総理も余り関心をお示しにならなかったので継続審議になったわけでございますが、この臨時国会においても、何か拙速に事を運ぼうとしているのではないかというふうに見受けられる次第であります。というのも、教育改革の意思決定の問題について多少混乱があるのではないかというふうに思っております。

 それはどういうことかといいますと、安倍内閣が成立をした、教育基本法の議論がさきの通常国会からずっと来ている、そういった中で、安倍さんも非常に教育に力を入れるとお示しになりたい気持ちがある中で、教育再生会議というものを新たに設置したわけであります。

 私はそれについて多少驚いたわけでありますが、その一つとしては、文部科学大臣も御存じのように、大臣の諮問機関として中央教育審議会というものがあると思います。基本的に、教育の問題についてはここで議論するのが普通であるというふうに思いますが、その教育再生会議と中央教育審議会の関係についてどういうふうに整理されているのか、お尋ねしたいと思います。まず大臣から。

    〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕

○伊吹国務大臣 胸は幾らでもおかししますが、大変勢いのいい、強い新弟子ですから、どうぞ、かした胸を吹き飛ばさないように、ひとつよろしくお願いします。

 まず、再生会議と中教審の関係ですが、中央教育審議会は、もう先生御承知のとおり、これは国家行政組織法に基づく組織でございます。再生会議は、閣議決定による安倍首相の諮問機関だと私は思います。

 中教審の所掌の範囲の中で、今直面している教育の問題を解決できないことが非常にたくさんあります。

 それは、先ほどおっしゃった、例えば、かまど金というようなものの出てきたゆえんの商人道であるとかなんというものは、どういう形で形成されてきたのかということを考えますと、これはやはり、学校で教えたから出てきたわけじゃないんですよ。これは、京都の商家に代々伝わる家憲、家訓のようなものの中から、金はもうけなくちゃいけないけれども、仕入れ先をいじめてもうけちゃいけない、お得意さんに不義理をしてもうけちゃいけない、もうけたお金で自分のぜいたくはしてはいけない、公のためにこのお金を使うべし、私のうちなんかにもそういう家憲がございます。こういう中から当時の京都の商家の人たちがお金を出し合って、十近くだったと思いますが、小学校を寄附したんですね。

 これは、ありていに言うと、家庭の再生を果たして、その中で、祖先が立派に守ってきた家憲、家訓に書かれているような、法律に強制されていないけれども、やらねばならないものを伝達させるということが一つ非常に大切なんですね、家庭のしつけ力という。

 今現実は、経済が大きくなっちゃって、そしてほとんどの働き場所が都会に集中しちゃっておりますよね。だから家族は分断されるわけですよ、田舎と家庭で。そうすると核家族になりますね。核家族では、とてもじいちゃん、ばあちゃんが持っていた規範意識を伝えられないですよ、離れているわけで。これを再生しようとすると、同じところへやはり定着させねばならない。サッチャーなんかも、そういうことを考えたから田舎へ工場誘致を税金を投入してやったと私は思うんですが、公共事業、工場誘致、そこまでかかってきますね。

 それから、共働きが非常に多くなっておりますから、お父さん、お母さんを早くうちへ帰して子供と対話をさせない限り、家族というものはそこで成り立たないんですよ。早く帰すというと労働法規の問題にかかってきますね。これは少子化の問題の裏返しでもあるわけですよ。

 ですから、そういう問題をやるために、例えば家庭、地域社会の復権の委員会というものを一つつくっているわけですね。それから同時に、率直に言って、今までの中教審や文部科学省だけの流れの中ではどうも従来の行政にとらわれてうまくいかないから、外部の人から少しヒントを与えようというので、教育行政のあり方とかなんかというところもつくっているわけです。

 だけれども、その中で学校教育、中教審の守備範囲に落ちてくる御意見があれば、それは私どもの方に引き取って、中教審の御意見を伺って、法律その他をつくる場合は、また国会へ持ってきて皆さんの御審議にゆだねる、当然そういう位置づけになっておりますから、文部科学省としては、再生会議ができたことで権限争いをする気持ちなんて全くなくて、これは、どうも無料でアドバイザーができて非常にうれしい、そういう思いでおるわけです。

○北神委員 要は、省庁をまたがるようなことがある、文部科学省だけでは決められない部分があるということだというふうに思います。

 ただ、そういう省庁をまたがる横断的な教育に関する会議としては、つい五年前に、小渕、森内閣のもとで教育改革国民会議というものが設置をされておりました。実際これは、平成十二年の十二月に結論も出しております。要するに私が申し上げたいのは、たった五年前の話なんですよね。

 それで、官房長官にお聞きしたいと思いますが、今回の教育再生会議というものは、これまでの教育改革国民会議の方の取り組みとどこが異なってくるのか。つまり、これまでの取り組みにどのような問題があるというふうに認識をして、新たに教育再生会議というものを設置することにしたのかというものをお聞きしたいと思います。

○塩崎国務大臣 御指摘のように、平成十二年に教育国民会議が開催されて、その年の十二月に報告が出されたことは間違いないことでありまして、その後、それを踏まえた教育改革というのが行われてきたわけですね。

 しかしながら、その後この五年間といえども、さまざまな問題が起こり続けているという実態をどう考えるのかということで、先ほど来、生涯学習から始まって、広い意味の教育というものについての議論が先生方の間になされておりましたけれども、いじめの問題、子供のモラルの低下、学ぶ意識の低下、それから、家庭や地域の教育力の低下というのは繰り返しこの教育基本法の議論の中でも出てまいりますし、こういうことを考えてみると、やはり、教育をめぐるさまざまな深刻な問題についてはまだまだ道半ばというか、そういうことで、この教育改革国民会議が提起した問題で改革が進みつつある中で、さらにまた幅広い観点から、教育再生会議で議論をしていこうということでございます。

 先ほど、伊吹大臣から中教審との関係のお話がありましたけれども、幅広い議論をする中で、今度は、逆に教育再生会議で出てきた提言を中教審の方に大臣から諮問してもらって、さらにまた中身を詰めていくというようなことも当然起きてくるわけでありまして、学校、それから地域、あるいは家庭、場合によっては産業、企業の中、そういうところも含めて幅広くもう一回考え直そうということが、今回の教育再生会議の大きな目的でございます。

○北神委員 モラルの低下の話とかいじめの問題とかいろいろお話しされましたが、今報道でいろいろ取り上げられていますけれども、正直、それは大分前からあった話であって、前回の教育改革国民会議においても議論はなされているわけですね。資料の一ページとか二ページ、三ページにもありますが、かなり大幅に議論をしている。その集大成として、まさに教育改革国民会議において、教育基本法を改正すべきだというのが一つの結論として出されたわけであります。今、現時点でその教育基本法の改正案について政府が提出されて、議論している。

 したがって、この五年間の中で、いじめの問題とかモラルの低下とか、前になかったような問題が仮に発生しているのであれば、当然、政府としてはその教育基本法改正案にそういう部分についての対応というものも盛り込んでいるというふうに普通は思うと思うんですよ。だから、正直、何で新たにまた再生会議というものを設けるのかというのが非常に疑問だというふうに思っております。

 人によっては、別にいいじゃないか、教育について幾らでも議論を重ねるのは何も不都合じゃないというふうに言われる方もいるかもしれませんが、私があえてこういう質問をしているのは、これが教育再生会議の設置を知って驚いた一つの理由なんですが、教育再生会議でこれから行われる議論と、ただいま議論をしている教育基本法改正案との関係がいまいちはっきりしていないんじゃないかというふうに思っています。

 一言で言えば、これから教育再生会議において教育改革の根本的な議論を行うのであれば、まさにこれは教育基本法改正案にもかかってくる話ですから、普通に考えたら、再生会議の結論を待って、それで教育基本法の改正を行う、きのう鳩山幹事長も言っておられましたが、普通はそういう段取りになるのだというふうに思います。その関係について、教育再生会議での議論と、現時点国会で行われている、この教育基本法をめぐる議論の関係について、大臣にお尋ねしたいと思います。

○伊吹国務大臣 教育基本法というのは、これはもう申すまでもなく、教育の基本を定める法律ですから、この基本を定めることと教育再生の議論を別途しているということは、私は何ら矛盾することではないと思っておりますし、また、今も中教審でもいろいろな議論が現実に行われております。

 それで、今回定めていく教育基本法の内容と今審議をしている内容が全く違うというようなものが万一あれば、そういうことを例えば私が中教審に諮問するということは、これは、法律を出しながら、御審議をお願いしながら中教審に諮問するなんということは、私が何か頭の構造がおかしくならない限りは、そんなことはないと思います。

○北神委員 官房長官についても同じ質問をお願いします。

○塩崎国務大臣 今、伊吹大臣からもお話がありましたように、教育基本法は、本当に基本的な理念を説く法律、六十年ぶりにつくり直すわけでありますから、まさに基本の理念そのものを指し示すものだというふうに思うわけで、そこから社会全体のこの教育改革をどうやっていくのかということが進んでいくんだろうと思います。

 それで、この教育再生会議は、このような理念のもとで、基礎学力の向上などの学校再生とか、あるいは、規範意識が落ちていることをどうやってもう一回戻していくのかとか、家庭、地域の教育力の再生、さらには、その他のもろもろの政策について実効ある方策というのは何があるのかということを考えようということであって、この理念のもとでやっていこう、こういうことで、言ってみれば、教育再生の大きな基盤となるのが教育基本法ではないのかなというふうに考えております。

○北神委員 大臣と官房長官の答え、多少違うと思うんですね。大臣は、教育基本法というのは基本的に教育の基本事項について定める、教育再生会議ではそれ以外の話をするんだと。官房長官は、教育基本法において理念を定めるんだ、それで、それに基づいたいろいろな政策について教育再生会議で議論するということであると思います。

 いずれにせよ、皆さんは別々だというふうに言われますが、これは同じことについて議論しているわけですよ。資料の四ページの方を見ていただければわかりますが、これは、教育再生会議の第一分科会、第二分科会のテーマについて左側に列挙しております。下線を引いてありますが、教育基本法で我々が今議論していることと基本的に似通った、重なる部分があるわけですよね。四ページにおいては、左から下の方を見ると、「教育委員会など教育行政」、これは、ずっと議論になっている、教育の最終権限とか責任はどこにあるのかという話だと思います。五ページを見ると、「心の教育、伝統・文化の教育」、「規範意識、規律」、まさにこういったものが出てくるわけですよ。

 だから、官房長官が言われるように、教育基本法では理念を定める、その具体的な話は教育再生会議でやるというのは必ずしも当たらないんじゃないか。教育再生会議でもまさに理念について議論をしているし、仮に、具体的な話をしているんだ、教育基本法とは違って、もっと具体的な、詳細な政策について規定しているんだというにしても、これは国会の審議を軽視していることになるんじゃないかというふうに思うんですよ。

 というのは、もし、今議論している教育基本法改正案の理念に基づいて具体的な議論をある意味では先取りして教育再生会議で議論しているのであれば、これは、もうまさにこの改正案が当然通るものだという前提で進めてしまっているということだし、逆に、大臣が言われるように、教育再生会議と教育基本法について基本的に同じような議論をしている、何の問題もないというのであれば、例えば、教育再生会議が、心の教育とか伝統、文化についてここで教育基本法改正案と違う結論を出すことも理論的には十分あり得るわけですよね。

 そういった場合、教育再生会議でいつ結論が出るのか、来年の年度末ぐらいだというふうに言われておりますが、そこで結論が出て、仮にこの教育基本法改正案が通ったとしますよね、そうしたら、違う結論であれば、またその教育基本法を再改正するということもあり得るわけですよ。同じ「心の教育、伝統・文化の教育」、「規範意識」についてこれから教育再生会議の分科会で議論していくわけですから、そこの結論と教育基本法改正案の内容が異なる場合も理論的には十分考えられるわけですよね。その場合どうするのかということでありますが、その関係についてまた。

○伊吹国務大臣 まず、北神先生が資料として配付していただいたのは、私も再生会議に出ておりますが、最初、すべての人たちに、今の教育について考えていることを自由に各委員に言ってくださいというような運営をしておりましたね。その言った意見を、三つの分科会をつくることになっておるわけですから、その分科会に分けて整理をして、自由に意見を言わせたのはこの三つの分科会をつくる前なんですよ。そして、では三つの分科会をつくろう、三つの分科会に分けてやってみればこういうことだなという仕分けをしたこれは資料なんですよ。だから、整理が悪いと私は思うんですが、初めから分科会をつくっておって、何か意見を言わせた資料じゃないんです。

 ですから、先生も財務省でお仕事をしておられたのでおわかりになると思いますが、大きな法律のもとで、理念法のもとでいろいろここに書いてあるようなことを動かしていくことは、これは、各法あるいは予算その他の肉づけにおいて現実の行政が行われていくわけです。ですから、ここで議論していただいているような基本法である理念法と違うような議論が起こるとすれば、基本法を直すんじゃなくて、それは議論から落ちてしまうということなんですよ。それは当然のことなんですよ。ここが国権の最高機関ですから、ここで決めるのが、日本国の最後の、国民との関係の権利義務を決めるわけですから。

 ですから、ここで決めた基本法と違うことが論じられたら基本法を直さなければいけないということを、立法府に身を置く者はそんな自信のないことじゃなくて、我々が最高なんだという意識でやはり議論をすべきで、であるからこそ、ここに入っている項目は、ここで今議論をしていただいている民主党さんの案あるいは自公の案、これは、違ってきても、教育基本法がどちらの案が通るにしろ、それは基本法を直すんじゃなくて、各法を直すことによって対応していくという方向性になるわけですよ。

 ですから、何かここで決まったことで逆に基本法を直すなんということは、私は本末転倒の議論だと思いますよ。

○北神委員 それは私はちょっと違うと思うんですよ。

 というのは、各法の話が出ましたね、まず教育再生会議で議論して、もし教育基本法と違うような結論が出ると、それは各法とか予算で対応すべき話だと……。それは違うんですか。では、もう一度。

○伊吹国務大臣 違う議論が出れば、それは各法で対応すべきじゃなくて、教育基本法と違う意見が出たら、それは実行できないんですよ。

○北神委員 だから、同じような理念の話、同じ次元の議論を同じ項目について議論している、それで違う話が出てきたら、こっちの教育基本法の方が優先するということ、それは当然の話です。それは何ら私も疑いを持っておりません。ただ、それは国会の話でありまして、安倍総理、安倍内閣としては、教育再生会議というのはまさに諮問機関であるわけですから、そこで結論が出てきたものについて、それは参考にしないといけないわけですよね。

 ですから、私は、国会で審議したことが何も自動的に、強制的にひっくり返るということは申し上げておりません。申し上げているのは、安倍内閣の教育再生会議を設置した趣旨からすれば、当然そこで違う議論が出てきて、もう既に成立してしまった教育基本法と違っていたら、そこでは彼はどうするんですか。

○伊吹国務大臣 これは後ほど官房長官がしっかりとお答えしていただければいいと思いますが、一般論として言えば、先ほど来申し上げているように、閣議決定において設置された安倍首相のアドバイザリーボードなんですよ、再生会議というのは。中教審というのは、国家行政組織法に基づく法的な機関なんですよ。だから、ここからいろいろな助言あるいは意見を安倍総理は当然聞かれるわけですよ。聞かれて、それは、安倍総理のお立場からいえば、国権の最高機関でつくられた教育基本法というものをにらみながら、自分の行政権を持っている、各法を提出できる内閣にいろいろ指示をされるわけです。

 賢明な首相が、国会が決めたものと違う指示をされるということは、それはありません。

○北神委員 いや、まさにそこを私はついているわけでありまして、あり得ないんですよ。あり得ないのに、おかしいじゃないですか、その教育再生会議で今教育基本法改正案と同じ論点について議論しているのは。

 というのは、場合によっては安倍総理はそういう状態に追い込まれるわけですよ。つまり、彼がこの教育再生会議の議論や結論をコントロールできないわけですから。そこで委員の皆さんがいろいろ話して結論が出て、アドバイザリーボードとして意見が出てきて、それを参考にしてそこで判断をするわけですが、普通に考えたら、鳴り物入りで教育再生というもので教育再生会議を設置して、そこで結論が出てきて、いや、もう教育基本法が成立しちゃって、いろいろ理念は違うかもしれないけれども、これは申しわけないね、今回ちょっとその部分は取り上げられないよというような判断に追い込まれるからこそ、私は、教育再生会議の議論を待って、その結論を受けて、もう一度教育基本法について議論すべきではないかということを申し上げているわけでございます。

○伊吹国務大臣 再生会議というものは、法律に基づいて行われている会議ではなく、先ほど申し上げているように、閣議決定においてつくられた安倍首相のアドバイザリーボードですから、それはいろいろな御意見をおっしゃるでしょう。しかし、それを取捨選択するのはアドバイスを受けた首相であって、首相は国会で決めていただいた法律の枠の中で当然やるのであって、再生会議の結論を待って基本法の審議を始めろというのは、これは逆なんじゃないんですか。

○北神委員 いや、逆じゃないと思うんですよ。だって、教育再生会議で同じことについて議論しているんですよ。心の問題、伝統……(発言する者あり)いや、総理が選んだらいいんですよ。総理が選んだらいいんだけれども、総理が選ぶときに、彼が教育再生会議で出てくる結論をそんなにないがしろにはできないですよね。

 要するに申し上げたいのは、これは変なんですよ。大体、教育改革国民会議においてほとんど方向性が決まって、それに基づいて五年間かけて教育基本法の改正案を出された。そして、また教育再生会議というものを立ち上げて、そして、また同じ議論をやっているということは、百歩譲って、不自然だということは申し上げたいというふうに思います。(発言する者あり)いやいや、熱心だけで政治をやってもらっちゃ困るんですよ。これは意思決定というものがありますからね。

○伊吹国務大臣 今、もう少し再生会議の中身をごらんいただくと、再生会議で心の問題だとかいろいろなことを言っておりますよ。しかしそれは、それを現実に履行していく場合に、基本法と全く違うこととかということをおっしゃるけれども、それを履行していく場合のほとんどは、教育基本法のもとにある教育関係諸法及び毎年の予算、それから行政執行のあり方、それによって対応できるものを議論しているわけですよ。

○北神委員 いやいや、その前提の議論が違うんですよ。要するに、対応できるものを議論していると言われるけれども、そうじゃないじゃないですか。(伊吹国務大臣「どれなんですか」と呼ぶ)だから、資料の六ページ、「高等教育」もそうですし、その前の五ページ、「心の教育、伝統・文化の教育」、「規範意識、規律」、これはまさに教育基本法の理念的な話ですよ。

 それで、仮に、そんなことはないと思いますが、でも可能性としては、こんな心の教育はやはりだめだ、良心の自由に反するという結論を出す可能性もあるわけですよ、この教育再生会議で。そういった場合に、各法とか予算とかで対応できないんですよ。だってこれは理念の話ですから。基本法の話ですよね。そういった場合、理論的に言えば、教育基本法を改正しないといけないということになりますよね。

○伊吹国務大臣 それは、例えば規範意識を現実にそれではやろうということになれば、これはどういう具体的なやり方でやるのか、家庭教育をどうするのか、地域社会の教育力をどうするのか、あるいは学校でどこまで教えるのか、そういうことは各法にゆだねられているわけですよ、各法律に。ですからそこで、いろいろ大きなテーマとしては、なるほど、教育基本法の中に書かれている大きな項目のように見えますよ。しかし、大きな項目を再生会議が議論しているんじゃなくて、それを現実に実施していくためには、今のままではだめじゃないかとかどうだろうとか、そういう話をしているわけですから、だから、そこはやはり先生、そして、万が一、教育基本法の決定と今おっしゃったことは現実に起こり得ないと思うけれども、規範意識を教えなくていいという決定を、教育再生会議が架空の問題としてあり得たとすれば、それは、現行の教育基本法は規範意識を大切にという方向性になっているわけですから、賢明な安倍首相はそんなアドバイスは受け入れないんですよ。

○北神委員 おっしゃっているのは、この教育再生会議で行う議論というのは教育基本法に抵触しない議論だ、そういうふうに制限すると。でも、それはだれも言っていないですよ。出たら却下するということですよね。

○伊吹国務大臣 却下する権限は私にはございません。それは首相のアドバイザリーボードですから、賢明な首相が、そんなアドバイスが、賢明な教育再生会議がそんなアドバイスをされるわけもありませんが、万一された場合には、それは総理は受け入れないんですよ。

○北神委員 もう水かけ論になりますから次の内容の問題に移りたいと思いますが、本当にこれ、手順としてはやはり極めておかしいと思いますよ。おかしいよ。

 官房長官、最後に何かありますか。

○塩崎国務大臣 安倍総理が総裁選の間も唱えてまいりましたし、所信表明でも言ったことは、教育基本法は教育基本法で早期に成立をさせる、しかし、教育にかかわる問題は余りにも大き過ぎるし、たくさんあり過ぎて、これを議論しないわけにはいかない、やはり日本の再生をするためには教育再生をせないかぬということで、今回教育再生会議というのをつくった。

 したがって、あらゆる議論はもちろんします。そしてまた具体策をつくるときには、理念なくして具体策があるわけがないわけであって、その理念は、やはりこの場で議論される教育基本法で決まってくることだろうと思いますけれども、それを、教育基本法ができてから教育再生の問題を議論してくださいというふうに言っておられるかのように聞こえるわけでありますが、もう待ったなしの問題が毎日いっぱいあるわけですね。自殺もあるしいじめもあるし、いろいろなことがある。そういうときに、やはりみんなで英知を出して、ひとり文科省の問題だけではなく、幅広く教育問題を議論して、具体的に何をやるべきなのかということを皆さんから知恵を出してもらおうというのが教育再生会議でありますので、順番とかいうことを待っていられるほどの余裕もないほど、教育というのは今再生が求められているということだろうと思います。

 それで、先ほど申し上げたように、この教育基本法はやはり理念法であって、この理念のもとで具体的に何ができるのかということを議論していくのが教育再生会議であるということは全く先ほど申し上げたとおりでありますので、御理解を賜りたいと思います。

○北神委員 もう終わりにしますが、官房長官の言われたこともひっかかるところがあるんですよ。理念に基づいて教育再生会議で議論するというのは、今回、教育基本法改正案には新たな理念が盛り込まれているわけですよ。それが成立しないのに、それに基づいて議論するというのは多少おかしいと思いますが、次の中身の話に移りたいというふうに思っております。

 それは、具体的に、教育に対する財政支出の問題であります。

 格差の問題がよく言われておりますが、その一番根幹にあるのは、やはり教育の格差にあるんじゃないかというふうに思っております。先ほども戦後教育の問題点についても指摘をさせていただきましたが、一方で、諸外国と比較して立派な部分もあると。その一つが、公教育を通じて教育における機会の平等というものが非常に保障されてきたというところだというふうに思っております。

 ところが、ここ数十年間よく言われる話では、東大生の家庭の平均収入がほかの私立大学などよりも高いとか、あるいはデータを見ると、塾通いの子供が非常に多い。中学二年生で半分ぐらいが塾に通っている。これはお金が当然かかるわけであります。そういう意味では、機会の平等というものが失われつつある状況になってきているというふうに思っております。

 さらに、私の資料の七ページにもありますように、日本の高等教育に対する家計負担というものも、五六・九%となっていて、これも先進諸国の中でも断トツになっているわけであります。

 大臣にお尋ねしたいのは、こうした教育における機会の平等というものが確保されにくくなっている状況について、どう認識をされて、どうお考えになっておられるのかというものをお聞きしたいと思います。

○伊吹国務大臣 先生がおっしゃったような傾向があるということは私も受けとめております。

 しかし同時に、いろいろな諸外国の統計を見ますと、実は、日本ほど親の所得、親の地位で教育のレベルが違わない国はないんですよ。これはやはり大切にしておかなければならない。だから、この傾向がどんどん外れていくということについて教育の責任者としてできるだけ歯どめをかけるというのは、これは当然のことなんですね。

 ただ、今おっしゃっている高等教育の部分になってきますと、義務教育の部分は割に議論がしやすいんですが、義務教育を終えて実社会に出られる方がおられるわけですよ。この方は、汗とあぶらにまみれて、源泉徴収された所得税を納めていますね。この方々の所得税で公教育の方々をどこまで援助するかということについては、やはり国民間の議論をかなり深めなければならない。

 私は少しやった方がいいんじゃないかという立場なんですけれども、これは、財源の問題と、いろいろなことがありますから、そこのところは先生もよく御認識をいただいていると思いますので、ひとつ御協力もいただいて、できるだけ国民の理解を得て、今先生がおっしゃったような傾向に歯どめをかけるようにお互いに協力したいと思っております。

○北神委員 その点については私も同感であります。

 高等教育についても、民主主義のかがみと言われているアメリカなんかでも、ハーバード大学なんかは、自分の両親とかおじいちゃんとか代々通っている人たちが優遇されたり、大体三割ぐらいがそういう方たちが優遇されて入学を認められる。それはそれで必ずしも悪いことではないと一方で思うんですよ。いわゆる、単なる学力だけじゃなくて、教養とか、そういう環境に育った人たちの社交的なそういった部分とか、一種リーダーシップみたいなものも恐らくはぐくまれてくると思います。

 しかし、やはり日本というのは、基本的には機会の平等で、だれでも自分の能力に応じた大学に行けて、社会でも非常に流動的な、ダイナミックな社会だというのが強みであるというふうに思いますので、そういったところはやはり失っちゃいけないというふうに思っております。

 ところが、教育の機会の平等という問題は、親の所得に左右されずに、自分の望むような教育を受ける、そういう話だというふうに思いますので、やはり財政支出というものが重要になってくる。財源の問題というふうに先ほど大臣もおっしゃいましたが、それはそのとおりですが、実際よく知られている数字で、資料の八ページにありますが、教育機関に対する公的財政支出の対GDP比を見ると、先進諸国、OECDの加盟国の中で、平均が四・七%ある。我が国は三・一だという、著しく低い水準にとどまっているわけであります。

 また、機会の平等の問題だけではなくて、先ほど官房長官からも、安倍総理は教育というものを第一優先に考えておられる、そういう政策を強力に推進していくということであります。きのうも、審議の中で総理からはっきりと、教育というものは未来への投資をするんだということを言われております。投資というのは、やはりこれも財源が必要な話であるわけでございます。

 予算は、まさにそういう意味では政策を映し出す鏡であるというふうに思いますが、教育再生を内閣の重要課題として掲げるのであれば、政府として教育に対する財政的な手当てをしっかりやっていかないといけないというふうに思いますが、その点について大臣の見解を伺いたいと思います。

○伊吹国務大臣 私は、文部科学大臣である前に実は国務大臣ですから、行政権を預かっている内閣の一員でございます。したがって、文部科学大臣の立場としては、もう先生のおっしゃっていることに一言の異議もございません。

 ただ、同時に、予算の提出権は内閣にあるわけですから、これは、負担と給付の関係を考えながらどこかでバランスをとっていかねばなりませんので、私は、今、先生の御意見に従って文部科学大臣としてできるだけ頑張ってやりたいと思いますが、ひとつ民主党も御支援いただくと同時に、官房長官から、なるほど、そのようなとおりだという御意見をひとついただければさらに心強いことだと思っております。

○北神委員 行政大臣と国務大臣というのを見事に分けて答弁されたわけでございますが、財源というのは、最近、財務省のプロパガンダが本当に浸透してしまって、自民党の議員からも、財源はどうなっているんだとか、すぐそういう話が出るのに私なんかは非常に隔世の感があるわけでありますが、徳川時代、ちょっと古くなりますが、岡山の財政再建を果たした山田方谷という方がおられまして、この人が言うには、財の内に屈するな、財の外に立てと。要するに、財政が厳しいというのはわかっている、でも、そればかり考えて、財務省の主査のように歳出を減らしたり、主税局のように増税ばかりして、そんなので本当に財政が立ち直るかというと、立ち直らないし、国の活力というものももとより出てこないという言葉がありますが、私は実はそのとおりだというふうに思っております。

 それで、もう一つさらにその財源の問題について突っ込みますと、教育の議論とある意味では離れたところで、骨太の方針二〇〇六というものがことしの七月七日に閣議決定をされております。これは、御存じのように、今後五年間の国家予算の歳出改革の道筋を示したものだというふうに言われております。

 その中で、私の資料の九ページにあると思いますが、下の方ですね、囲んであるところです。その一番最初の丸ですが、こういう文言がございます。「文教予算については、子どもの数の減少及び教員の給与構造改革を反映しつつ、」「これまで以上の削減努力を行う。」これまで以上のということでありますから、果たして、ではこれまでの文教予算というのはどう扱われてきたのかというと、これは資料の十一ページの一番下の方にあります。右の方に下がっていくグラフですが、文教予算というものを相当削減しているという状況であります。それを、骨太の方針、閣議決定でありますが、今後さらに削減するということになっております。

 繰り返しになりますが、格差の根幹にある教育の機会の平等、これは非常に大事な話でありますし、教育を最重要課題としている安倍内閣としても、教育の格差以外の部分でもやはりこれは強力に力を入れていくべき話でありますが、実際には、骨太の方針二〇〇六というものが閣議決定をされて、全く逆の方向性を示しているわけであります。こういった消極的な姿勢では教育再生というものはなかなかできないというふうに私は思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○伊吹国務大臣 骨太の方針は、今先生おっしゃったとおりです。しかし、同時に、安倍内閣では、その方針の上に安倍内閣としてのやはり政策的色づけを予算面でつけていかねばなりませんから、再チャレンジの予算要求枠とか、御承知のようにいろいろな特枠をつくっておるわけですね。それを使って要求をいたしておりますので、現実には文教予算はマイナスの要求をしておりません。かなりふえた要求をしております。

 ただ、これを今度は財務大臣に削られちゃうと困りますので、ですから民主党も、今先生がおっしゃったようなお考えであれば、ぜひ御協力をいただいて、しっかりとやっていきたいと思います。

○北神委員 では、官房長官に今の質問を答えていただけますでしょうか。教育というものを最重要課題として掲げているわけですから、この骨太の方針のようなこれまで以上の削減努力というのはやはりおかしいのではないか。それをはね返すぐらいのそういう気概で臨むべきではないか。さらに言えば、具体的には、骨太の方針を撤回することもあり得るのかということもお聞きしたいと思います。

○塩崎国務大臣 骨太の方針は閣議決定をされているものでございますから、それをひっくり返すことはあり得ないというふうに考えます。

 先ほど御指摘いただいたように、安倍総理から昨日も、未来への投資、これこそまさに教育への考え方だということで御答弁申し上げたところでございます。本当に、日本の将来をつくるのは将来の子供たちで、そして、その将来の子供たちをつくるのはやはりこれからの教育だろうと思いますから、その点は間違いないことだと思います。

 今、骨太の方針の歳入歳出の一体改革のところを引用していただきました。これまで以上の削減ということで、けしからぬ、こういう話でありますが、御案内のように、予算というのは限られた資源をどこにどう配分するのか、まさに、これをどうやるのかによって政権はその政権の味を出すわけであって、それがだめなときには政権交代が起きるということであります。

 いろいろなアジェンダがある中で、財政再建、先生も財務省御出身であるだけにその重要性はよくわかっておられると思いますが、我々としては、その重要なものに重要な価値を置く。教育なら教育に対して、全体の財政再建の中で大きな方針を持ちつつも、どういうめり張りのきいた、また、効果のある予算というものの使い方というか、限られた資源の、つまり、税しかないわけです、それはきょうの税かあすの税かは別として、基本的にはない。社会保険であれば保険料がありますけれども、あるいは窓口負担もありますが、限られたこの資源をどう割り振っていくかということは、これはまさに腕の見せどころになってくるわけでありますから、その価値観と、数多くあるアジェンダの一つの大きな柱である財政再建とをどう組み合わせていくのかというところが問われるわけで、これはやはり、最終的には国会で皆でこの予算を議論するということになってまいりますから、そこでまたもう一回、先生を含めて御議論を賜るということになるんではないかというふうに思います。

○北神委員 官房長官から、閣議決定だからもう変えられないということを踏まえれば、これまで以上の削減努力というものは、これは絶対的な方針となるわけですよね。伊吹大臣もそれは気の毒ですね。プラスの要求をしている中で、それはもう方針ということで受け付けられないということになるというふうに思いますが。

 私が申し上げたいのは、確かに財政再建というのは大事だ、私も財務省にいたからこそ、ただ、それを果たすために歳出歳入の改革だけでは無理だというふうに思っているわけですよ。レーガンの時代もサッチャーの時代も、それは当然財政再建というものをやってきた。小さな政府というものを実現しようとした。でもその一方で、言われた、将来への投資というものも非常にめり張りをきかせて強く推進しているわけですよ。産業戦略もそうですし、産業に非常にお金をつぎ込んで投資をしている。教育というものもその根幹として位置づけられていたわけでありますよね。

 ですから、そういうものがあって、要するに強力に推進するものがあったからこそ、歳出改革とかそういったものも生きてきたんだというふうに思いますし、ことしの一月だったと思いますが、内閣府の調査でアメリカの八〇年代、九〇年代の財政再建の要因分析をしております。一番大きな要因は、歳出削減でもない、増税でもない。やはり経済成長なんですね。その経済成長というのは、さっき申し上げた産業戦略も入りますし、教育というものもその一番根幹にあるというふうに思います。

 ですから、余り財務省の魔術にとらわれずに、やはりそれは大胆にやっていくべきだというふうに思うんですよ。それが私は小泉さんの五年間に一番欠けていた部分だというふうに思っております。ただただ大蔵省の主査のように歳出をどんどん減らして増税を図るというこれだけでは、仮に百歩譲って財政再建を果たしたとしても、国は滅んでいるというふうに思います。

 教育というのはそういう意味では一番根幹にある話でありますから、そういったところは、もちろん無駄遣いはだめですが、奨学金とか私学助成とか、あるいは、これもいろいろ議論はあると思いますが、教員の給与というものを優遇することもあり得ると思うんですよ。それは、一方で免許の条件というものをより厳格化してやはりいい人材を確保しなければ、幾ら文科省が決めた内容がよくても、それを実際に教える先生が、情熱を持った、使命感の高い、志の高い、そういった人材がそろわなければ、結局机上の空論になってしまう。そういう意味ではお金はかかると思うんですよ。だから、OECDのほかの先進諸国においては、かなり公的支出というものを行っているというふうに思います。

 ですから、最後の質問にさせてもらいますが、教育基本法、民主党の方ではしっかりこれを規定しているんです。幼児教育あるいは高等教育において無償化というものを漸進的に進めていくんだとはっきり規定しております。これはまた財務省の魔術にかかった人たちは、いや、そんな財源はどうするんだという話もありますから、ぜひ民主党の法案の提案者にお尋ねしたいのは、実際、財政が確かに厳しい中でどうやってその無償化というものを果たしていくのかをお尋ねしたいと思います。

○大串議員 今、北神委員からお尋ねのありました教育の予算についてのお問い合わせですけれども、確かに、先ほど御指摘ありましたように、経済の問題から子供の教育に格差が生じてはいけない、経済の面からの格差が生じないように学ぶ権利の機会の保障をしっかりしていかなければならないという観点で、我々の日本国教育基本法の法案におきましては、公教育に対する財政支出を国民総生産との関係で比率を示して、しっかりと確保していくようなことも盛り込んでおりますし、今御指摘のありましたような、幼児教育そして高等教育における漸進的な無償化、これを進めていくということも法律に示しております。

 ただ、今御指摘のありましたように、厳しい財政状況と両立する形でこれらを責任のある形で保障していかなければならないんですけれども、それに関しては、個別補助金の全廃を通じた地方分権とか、あるいは、特別会計、独立行政法人の見直し等を通じた抜本的な無駄の廃止とともに、今おっしゃいました、まさに予算の重点配分、我々の民主党の予算案におきましては、これまでも、コンクリートから人へ、あるいは物から人へといった形で、予算を本当に未来に必要な部分に重点配分していくという考え方を示しておりまして、こういう考え方を透徹することによって、財政健全化とともに、教育に関するしっかりとした予算手当ても可能になるものというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 方法はいろいろあると思うんですよ。ただ、教育という、百年の計、人づくりの最も重要な政策について、時の財政運営に余り左右されるというのはやはり問題である。やはり、こういう教育基本法みたいなものに明示的に規定するというのも一つの考えだというふうに思います。

 その点について、もう最後の質問になりますが、大臣と官房長官にお尋ねしたいというふうに思います。どういうふうにお考えかということですね。

○伊吹国務大臣 財務省の魔術から抜け出して見事なチョウになられた先生の御質問です。

 骨太の案は、現時点の財政の状況を前提にして考えているんじゃないかと私は思うんですよ。政権によってそこにはいろいろな肉づけが行われますよね。ですから、従来の概算要求枠にプラスしてこういう枠をつける、あるいはこの特枠で要求の別をつくっていいと。それを使って文部科学省は今もちろんプラス要求をかなりしておるわけですね。ですから、その要求が実現できるように私は全力を尽くしたいと思います。

○塩崎国務大臣 先ほど、よくぞ言っていただいたなという気分になったのは、安倍政権は何しろ成長を重視していこうということであって、財政再建ができた要因の中で一番は成長だというお話が先ほどありました。したがって、成長なくして財政再建なしというのがあの総裁選のときからのキャッチフレーズであり、また、成長なくして、多分主張する外交も、それから、言ってみれば日本の将来もないんだろう。教育も同じことであって、そこのところにまず一番の重きを置いていこうというのが安倍政権の基本であります。

 あとは、先ほど申し上げたように、限られた資源をどう割り振るのかというのが、まさに政治そのものであり、予算そのものであり、そしてまた、この国会での議論というのはそこが最も重要であるわけでありますので、我々としても、最大限努力をしながら、財政再建と、それから、重要である教育の政策にどれだけ重点配分ができるのかというのに挑戦をしていきたい、こう思っております。

○北神委員 どうもありがとうございました。

 最後に、文部大臣、予算要求をする際にプラスの要求をされているというふうに伺いましたが、特に奨学金とか私学助成とか、要は、機会の平等というものをできるだけ実現できるようなそういったところに力を入れていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

全議事録

経済産業大臣に法案は「消費生活用製品安全法」について質問させていただきました。

北神質疑
2006年10月24日 本会議
 消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出)の
趣旨説明に対する質疑

○議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。北神圭朗君。

    〔北神圭朗君登壇〕

○北神圭朗君 民主党の北神圭朗でございます。

 ただいま議題となりました内閣提出の消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案に関して、民主党・無所属クラブを代表して、経済産業大臣に質問いたします。(拍手)

 まず初めに、背景にある製品事故についてお伺いいたします。

 最近、パロマ製ガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故や家庭用シュレッダーによる幼児の指切断事故など、大変痛ましい事故が相次いでおります。今回の改正案は、こうした事故が発生した場合に、製造事業者等に報告を義務づけるという内容になっておりますが、そもそもパロマの事故については、経済産業省は大分前から既に情報をガス事業者から知らされていたはずであります。具体的には、二十八件あった事故のうち、二十件についても報告がなされておりました。にもかかわらず、都市ガスやLPガスなど縦割りの担当ごとに情報が細分化をされ、事故の共通性と関連性が把握できなかったため、二十年という長きにわたって放置されていたのが事の真相であります。その結果、この間に何の対応もなされず、残念ながら、二十一名もの方々が亡くなってしまっているんです。

 こうした点について、パロマの一酸化炭素中毒事故に対する経済産業省の責任をどう認識しておられるのか、お伺いいたします。(拍手)

 私は、何もいたずらに犯人捜しをしているわけではありません。むしろ、今申し上げた事例が示すとおり、単に政府が事故の情報を把握しさえすれば事が済むのではないということを申し上げているんです。依然として、政府が情報を断片的に処理するのであれば、幾ら報告義務が課されても、問題の本質は変わりません。やはり、事故の原因について横断的かつ継続的な分析、評価を実施することが肝要であります。実際に情報がありながらもパロマの事故への対応が極めておくれてしまったことへの反省に立ち、事故情報の分析・評価体制をどう整備していくのか、お伺いいたします。

 また、重大製品事故に関する情報の多くは、当然ながら警察にも連絡が入ります。例えば、パロマの事故についても、経済産業省は、警視庁から連絡を受けて改めて過去の報告書を分析し直し、その結果、明らかになったものであります。さらには、内閣府所管の独立行政法人国民生活センターにおいても、消費者からさまざまな情報が寄せられております。したがって、省庁の壁を乗り越えて、製品の所管省庁と警察との連携体制、さらには国民生活センターといった関係機関との連携体制を構築すべきではないでしょうか。この点についてどう認識しておられるのかについても、あわせてお伺いいたします。

 次に、事故情報の報告が義務づけられる対象について質問いたします。

 今回の法案においては、製造・輸入事業者に対し重大製品事故の報告を義務づける一方で、小売事業者、修理事業者、設置工事事業者についてはこうした報告義務が課されないことになっております。これらの事業者については、より緩やかな形で、製造事業者等に情報を通知することに努めることを求めるのみとなっております。

 しかしながら、今回のパロマの事故を見ると、実は、一部には修理事業者による安全装置の改造がなされたために不完全燃焼に至り、一酸化炭素中毒事故が発生しているのです。そうだとするならば、こうした改造を実際に行う修理事業者や設置工事事業者についても報告を義務づけ、その責任を明らかにすべきではないでしょうか。何ゆえ、これらの事業者については努力規定しか設けず、報告義務を課さないことにしたのでしょうか。

 さらに、流通のプロセスが非常に多様、複雑になっております。こうした中で、明らかに消費者により身近な存在である小売事業者、修理事業者、設置工事事業者に報告を義務づけることなく、一体政府の迅速な情報把握は可能なのでしょうか。こうした点を含め、製造・輸入事業者のみに事故報告を義務づけることとした理由と根拠について、御説明いただきたいと思います。

 ところで、近年、規制緩和ということで、事前規制から事後規制へということが言われております。にもかかわらず、小泉政権のもとでは、事前規制の緩和を行っても、本来はあわせてやらなければならない市場のルールや法律を遵守させるための事後規制の整備を怠ってまいりました。

 本改正案は、そういう意味では、遅きに失しているものの、製品の安全に係る事後規制の整備という位置づけができます。その必要性について異論はありませんが、今回のように国民の生命や身体に対する危害が生じる場合にあっては、事故が発生してから事後的に対応をとっても遅過ぎるんです。確かに事故の拡大は防げても、被害者にとっては取り返しのつかない状況になってしまいます。したがって、重大な製品の事故の発生が予見されるような製品については、安全性を確保する観点から、製品の規格を厳格化するなど、いわば事前規制の強化が必要な場合もあるのではないかと考えますが、この点についての見解をお伺いいたします。(拍手)

 また、製品の安全性との関連で、我が国のものづくり技術の現状についてもお伺いいたします。

 我が国が、工業立国、貿易立国を実現し、世界第二位の経済大国となったのは、まさにものづくり産業における高い技術水準と品質管理のおかげであります。今後も、IT革命などさまざまな構造変化に直面しつつも、こうしたものづくり産業こそが我が国経済の生命線であると言っても過言ではないのです。しかしながら、今回のパロマのみならず、最近は、ソニー、トヨタ、松下電器といった国際的な企業から地元の中小零細企業に至るまで、相次いで製品事故が発生しております。これは憂慮すべき事態であり、日本のものづくりの現場は果たして大丈夫なのかと心配を強く感じざるを得ません。

 この背景の一つに、労働市場の安易な規制緩和という流れの中で、非正規雇用の増加に伴って、ものづくり技術が空洞化してきていることが挙げられるのではないでしょうか。

 そもそも、ものづくりの基盤は人にあります。長期間にわたる経験と蓄積の中で、これまで諸先輩方が培ってきた技術やノウハウが後輩たちに順々に継承され、一層高度なものへと洗練、発展されてきたんです。これが我が国の強みでした。ところが、最近、経営者はコスト削減のためにパートや派遣社員などの非正規労働者をふやしてしまっております。人材が入れかわり立ちかわり行き来しているような職場で、我が国が誇るべきたくみの伝統の連綿たる流れに断絶が生じつつあるのではないでしょうか。幾ら同じマニュアルや同じ機械を使ったとしても、現場の人次第で製品の質が大きく異なってくることは言うまでもありません。

 大局で見れば、政府そして経営者も、ここ十数年間、小さな政府、民営化、規制緩和なる旗のもとで効率を追い求めてきました。和魂洋才の精神のもとで、こうした英米の経済、経営の考え方を国益のために活用するのは、これは大いに結構であります。しかし、同じまねるのであれば、もう少し本場の全体像、そして細部の戦略、戦術までを勉強してからまねていただきたいと切に願うところであります。(拍手)

 英米両国においては、規制緩和はあくまで一手段として柔軟に行われております。逆に、国民の安全、安心を確保するためには、分野によっては、規制を強化し、のみならず、それを取り締まるために役所の権限をも拡大し、人員を増強する場合すらあるわけであります。これは決して、小さな政府に何ら矛盾することではなく、むしろ補完するものであります。

 同時に、外来の制度思想を導入する場合には、我が国の伝統的価値観、思想にふさわしい形でやらなければなりません。これでは、目先の利益を追い求める余り、日本資本主義の父、渋沢栄一が論語の道徳思想に基づいて経営方針を立てたという「論語と算盤」の精神を放棄してしまったのではないでしょうか、日本は。

 周知のとおり、そもそも経済という言葉は、経国済民に由来します。すなわち、国を治め、人民を救うという意味であります。つまり、効率も大事です、大事ですが、それはあくまで手段であり、経済産業政策の究極の目的は、済民、国民の生活の安心と安全を守ることにあります。

 こうした民族に脈々と流れている知恵と理想を忘れ、軽々しく外来の小さな政府だの民営化だの規制緩和だのを中途半端な、軽薄な、こっけいな、歪曲された形で取り入れて、明治の鹿鳴館の社交婦人のごとく踊らされている我が国の現状は、まことに目を覆いたくなるばかりであります。せっかく内閣もかわりましたので、ここ数年間はびこってきた軽佻浮薄な鹿鳴館経済学とそろそろ決別するときがやってきたのではないでしょうか。(拍手)

 いずれにせよ、製品事故の頻発が我が国の製造業、さらには政府の経済産業政策の根本方針が抱える潜在的な問題をあぶり出していることは間違いないと考えます。こうした点を踏まえ、我が国のものづくり技術をめぐる現状をどう評価し、今後どう対応していこうとするのか、お伺いいたします。

 最後に、近年、経済の国際化が急速に進展しており、我が国にも膨大な海外製品が流入しております。海外製品は、国内製品以上に品質が千差万別であります。中には余り品質のよろしくないものも含まれている可能性は、これは否定できません。国境をまたいだ製品の行き来が活発化している中で、海外製品の安全性についてどう確保されていかれるのか、御説明いただきたいと思います。

 いずれにせよ、最近の製品事故の頻発は、国民の間に不安を招いております。私たち民主党は、これまでも、食品衛生法や薬事法などの改正も含めた包括的な危険情報公表法案を提出してまいりました。平成十三年の臨時国会に提出した折には、残念ながら全く議論が行われないままに終わってしまいましたが、その間に今回のような事態が発生してしまっているのです。また、前回の国会において、建築物をも対象にした形で、消費生活用製品等及び特定生活関連物品に係る危険情報の提供の促進等に関する法律案を提出しております。

 いま一度、経国済民の原点に立ち返って、国民が安心して安全な生活を送れるようにすることこそが政治の果たすべき使命であります。行政に対して適切な対応を求めていくとともに、我々もまたこの問題に全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

全議事録

決算行政監視委員会第3分科会
農林水産大臣に質問させていただきました。

北神質疑
2006年6月6日 決算行政監視委員会第三分科会
 次に、北神圭朗君。

○北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。遅くまで御苦労さまでございます。

 きょうは、地元の農業関連の要望事項を中心に、大臣を初め皆さん方に質問をしたいと思います。

 まず、お米の検査制度についてお尋ねしたいと思います。

 これは、地元のお米の生産農家から切実なる訴えがございましたので取り上げさせていただきたいと思いますが、御案内のとおり、今、現体制のもとで、米の産地とか銘柄とかあるいは産年については、直接市場に出す場合、それをはっきりと表示させたい場合は、国の指定の登録検査機関による検査が不可欠となっている。これは昔、役所、つまり食糧事務所がやっていたというふうに聞いておりますが、最近は官から民と、行革の流れの中で、民間による検査というものが可能になっている。基本的に我々の地域では、京都でございますが、JAさんが中心にこの検査をやっているというふうに聞いております。これはこれで別に異論はないんです。

 ところが、冒頭申し上げた私の地元の農家の方が言うには、どうも今の検査の実効性が非常に疑わしいと。それはどういうことかといいますと、例えば、産地なんかについて、どこの地域の田んぼでとれたということが、JAさんの検査官に本当に見抜かれているのか、よくわかっているのかということが疑わしいと。なぜなら、その方に言わせると、あらかじめ、米を入れる袋に産地とか銘柄とか産年というものを書くことを要求されて、それを持っていくと、検査官はそれを見て、手に何かとって見るみたいですけれども、それで、ああ、いいよということで、何も別に科学的な検査もしないし、本当にこれは意味があるのかということが非常に疑わしいということでございます。

 それで、要するに、そこで検査料を払ったり、結局、売りに出す米を全部持っていかないといけない。三十キロぐらい持っていって、そしてまた持って帰らないといけない。そういったいろいろな御苦労があるということなんですが、極端なことを言えば、大阪でとれた米を京都のコシヒカリだというふうに書いて持っていったらそのまま通るんじゃないかとその人は思うというふうに言っています。

 これは、私も実際体験したこともないし、実際現場を見たこともないので、真相は正直わかりませんが、こういった指摘がありまして、言うまでもなく、こういったことであるならば、この検査というものはほとんど形骸化しているんではないかというふうに思われます。こうしたケースについて、検査官の質の問題なのか、あるいは検査制度そのものの実効性の問題なのかわかりませんが、こういった指摘についてどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。

○岡島(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 農産物検査における米の産地、品種の証明につきましては、農産物検査員が把握しております個別生産者ごとの品種別作付面積情報をもとにするということでございまして、今委員御指摘のケースでございますと、JAの方々が検査員になられておりますから、まさにJAの方々、それぞれの各農家の方々がどれだけの作付面積を持っておるかというのは当然承知されている。それをもとにいたして、検査の際に、玄米の目視鑑定によって異品種の混入が認められないこと、あるいは、産地ごとの品種の特性でありますとか特徴でございますとかが明確であること、あるいは、生産者から請求があった品種別受検予定数量と矛盾しない、そういったことを確認した場合のみ証明を行うこととしております。

 また、産年につきましては、経年変化によって肌ずれとかいろいろな形状変化も出てきますので、玄米の目視鑑定あるいは生産者別の作付情報によるほか、必要に応じましては、試薬を用いた新鮮度判定により証明を行うこととしております。

 また、国といたしましては、登録検査機関に対して適切な農産物検査が実施されるよう、農産物検査員が品種の特性、特徴の把握や鑑定訓練の反復実施などを行うよう指導しているところでございます。

○北神分科員 これはなかなか、どこまで実効性が担保されるのか難しいところだと思いますし、私も専門家でもないのでよくわからないんですが、よく役所の方と話していると、農協の人というのは地元に根差して、よくよくわかっているんだ、圃場整備の段階から、作付からずっと見ているから、その人が持ってきているものだったら、大体現場感覚を知っているという話なんです。

 それはそれでわかるんですけれども、逆に言うと、その程度の検査なのかなということもありまして、それで、何でこういうことを申し上げるのかといいますと、別に検査することが悪いとかそういう考えはないんですが、一方で、野菜とかについて、これも同じように銘柄とか、産年というのかどうかわかりませんが、品種とか、そういったものについて表示をして売りに出している場合もあるんですが、野菜については検査は義務づけられていないというふうに聞いておりまして、例えば、京都のコシヒカリはちゃんと検査を通さないと表示できない。でも、京野菜という名前をつけたら、別にそれは検査を通さなくていいと。この米と野菜のバランスもよくわからないなということでありますが、その点、いかがでしょうか。

○中川政府参考人 食品の品質表示のお尋ねでございますけれども、食品の品質表示、これはJAS法に基づきます、それぞれの品質表示基準に定められております。

 野菜などの一般的な生鮮食品につきましては、これは通常、市場を通じまして現物の取引が行われておりまして、その際の伝票などを見ますと、産地ですとか、あるいは品種というものが、名称でございますが、わかります。これを確認して、それを根拠として表示するということになっているわけでございます。品種名や産年なども、それがきちっと確認できる場合には表示をすることができる、そういう決まりになってございます。

 一方、米でございますけれども、日本人の主食としての重要性を踏まえまして、産地それから品種、産年あるいは等級といったものにつきまして、現物を見なくても全国広く取引ができるような仕組みがつくられておりまして、その基準として農産物検査によります証明が活用されてきた、そういうこれまでの経緯がございます。

 こうした米の商品特性に加えまして、近年、特に消費者の方々がお米を購入される際に、これはどこの産地で、どういう品種で、何年産のものかといった、そういう高い関心も有しておられますので、そういった点を踏まえまして、米の表示につきましては玄米及び精米の品質表示基準というのが別途定められております、これは平成十二年からでございますけれども。そういう米の品質表示基準に従って、その場合の根拠としまして、農産物検査による証明を表示の根拠というふうにしているわけでございます。

○北神分科員 つまり、野菜はJAS法に基づいてやっている、米の方は別途その平成十二年の法改正によって新たに検査体制というのを設けられたのか、そういうことですか。

○中川政府参考人 少し言葉が足りませんでした。米については、従来は食糧法という法律に基づいて品質表示がされておりました。それを、JAS法の体系の中に平成十二年に取り込んだということでございます。

○北神分科員 私も不勉強なのでよくわからないんですけれども、米は特別扱いだということだと思います。野菜の方は、野菜も全国で現物を見なくても取引できるようになっているというふうに思いますが、主力商品だということで、趣旨はよくわかりました。

 次にお尋ねしたいのは、今度はJAの検査の検査料についてです。

 これは、普通考えると、検査したい場合は、お米をJAに持っていって検査していただいて、それに応じて正規の検査料を払うということなんですが、どうも、その私の地元の人に言わすと、そうでもないと。実際には、検査を受けるに当たって、わざわざJAさんから検査の対象となる米を買い取ってもらって、それで一応検査をして、それでまた売り渡すというような手続を経ている。それで、これは資料をお渡ししているかもしれませんが、契約外流通米の売渡申込書兼誓約書というものに署名しろと。それによって、一たんJAさんが買い取って、それで検査して、また売る。

 それだけだったらまだ、まあ余り被害はないのかもしれませんが、そのよくわからない回りくどい手順によって、検査料だけじゃなくて、それに伴う何か諸経費みたいなものがついてくる。それは、さっき申し上げた売渡申込書兼誓約書に書いてあるんですけれども、米六十キロにつき九百円払わないといけない。そして、その方は、三十キロだから大体四百五十円、毎回検査するたびに余計に払っていると。

 これも本当だとするならば、よくわからない話でありまして、行政改革で役所からJAさんに移した、民間に移したのはいいのかもしれないんですが、逆に、少なくとも農家の人にとってはコストが高くなっているということですが、この点についてどうでしょうか。

○岡島(正)政府参考人 まず、検査手数料そのものにつきましては、登録検査機関の検査手数料について、これは農産物検査法第二十一条第一項に基づいて登録検査機関が業務規程に定めて、農林水産大臣に届け出ることとされております。

 登録検査機関が届け出る検査手数料につきましては、同法第二十一条第二項において、農産物検査に係る必要な経費を適切に反映したものであり、かつ特定の者に差別的な取り扱いをするものでないこととしており、届け出に係る業務規程が農産物検査の適正かつ確実な実施上不適当と認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができるとされております。

 それから、先ほど委員が例で挙げておられましたけれども、労力を提供するとか、そういったことも間々あるかと思いますけれども、業務規程において、農産物検査を円滑かつ効率的に行う観点から、検査を請求している請求者に対して、受検準備など検査に必要な荷役労働力の提供などを求めることができるとされているところでございます。

 この場合にあっても、登録検査機関の業務規程の届け出に際して、農林水産省としては、登録検査機関の請求者に対する要求が、検査を円滑かつ効率的に行う観点から妥当なものであるかなどを審査することとしております。これが検査手数料でございます。

 それから、委員から事前にいただきました、ここにあります、平成十六年産契約外流通米の売渡申込書兼誓約書というもの、内容を拝見させていただきました。

 ここの部分と、受検、検査を受けるということの関連というのは、この誓約書上は出てまいらないということでございまして、私ども、検査は検査として、もちろん、検査を受けたいということであれば登録検査機関は断れないということになっております。それと、この売渡申込書との、ちょっと因果関係はわかりませんので。この誓約書を、この字面だけ拝見させていただくと、これはこれで一つの民間間の契約であるというふうに考えております。

○北神分科員 まさに、多分そこにこの問題の核心があるというふうに思っておりまして、確かにこの申込書兼誓約書というものは全く別のものであるというふうに思うんですが、その方に言わすと、やはり検査を受ける際に同意を求められる、それは多分何も法律で決まっている話でもないし、JAさんが、これはそうだとするならば、勝手にやっているということなんですが。

 申し上げたいのは、その方は結局、米を自分でつくって、それでなかなか、JAさんに別に何も敵対心もない人で、一部はJAさんを通じて市場に流通させているみたいですけれども、やはりJAさんの買い取り価格、米価が非常に安い、だからそこにずっと頼っていたら到底生活ができないと。趣味でやっている人とか、兼業農家で土日だけやっている方とか、そういった方は別に問題ないかもしれないけれども、それを自分の生活の糧にしている人は、やはりこれでは到底自分の生活がもたないというところで、やむを得ず直売の方でやっていると。

 これは、JAさんも別に悪意があるかどうかわかりませんが、一方でJAさんも非常に経営が厳しいし、これから生き延びていかないといけない。そして、本来だったら自分たちを通してやってほしい、買い上げて、そしてまた市場で自分たちで売って、その差額を利益として欲しいという、その経営的な配慮もある、配慮というか経営的な考えもあると思いますが、やはりそういったことを不当に要求するというのは非常に問題だというふうに思っておりまして、これは、私、数人から聞いておりまして、そんな多い数ではないんですが、やはりこういうことをしていることも何か推測ができるかなと。最近、メール問題で余りはっきりと言っちゃうとあれですけれども、いろいろな話を聞いていると、そういった感じを受ける。

 皆さんに申し上げたいのは、皆さんもなかなか実態がわからないというふうに思いますが、こういった声がある中で、やはり、特別な監査なのかどうかわかりませんが、一遍そういう実態を、うちの地元だけじゃなくて、全国的にどういうことが行われているのか、ある意味ではJAさんの優越的な立場を濫用している、そういったことが行われていないかをチェックすべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○岡島(正)政府参考人 まず、法律上の規定でございますけれども、登録検査機関に対しましては、農産物検査法第二十条第一項の規定に基づいて、「登録検査機関は、農産物検査を行うべきことを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、農産物検査を行わなければならない。」ということになっております。

 まさに今御指摘のような点につきまして、登録検査機関、これは全国ベースで見ますと、検査機関数だけで申し上げますと、JAが約半分ぐらいで、残りはいわゆる集荷業者の方々も結構登録検査機関になっておられるということでございまして、その方々が適切に検査をしていただくように、私どもとしても、例えば研修の場でございますとかいろいろな機会に指導もしております。そういった機会も通じながら、今御指摘の点についても考えてまいりたいというふうに思っています。

○北神分科員 ぜひそうしていただきたい。私も、別にJAさんに対して何も異論はなくて、これから地域に根差した機関としていろいろな役割があると思いますが、まさにそうだからこそ、そういった不当なことが行われていたら、きちっとそれをチェックしていただきたいというふうに思いますので、ぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次のテーマに移りたいと思いますが、鳥インフルエンザの問題でございまして、私の選挙区がたまたま丹波町、今は京丹波町という町に合併をしておりますが、二年前に、一昨年前に起きたそこの鳥インフルエンザの事件の後処理、そして今後の課題について、若干御質問したいと思います。

 まず、これは地元の自治体の要望でございますが、問題が発生した元浅田農産船井農場の土地がある、そこをいろいろな対応をされたということでございますが、そこの土地が、今一応京丹波町の役場の方に所有権が移っております。ところが、そこにはいまだに鶏舎が十棟ぐらい残っていますし、堆肥舎が三棟、そして倉庫等が三棟あって、また多くの機械設備器具等が残っているという状態でございます。

 これについて、周辺の住民からすれば、私も現場へ何度も行かせていただいておりますが、だだっ広いところに鶏舎があったりする、それが環境面とかあるいは防犯面、例えば火をつけたり、そういった人が出てきたり、そういった面において、住民の気持ちからしてみれば、ちょっと気持ちが悪い、もう二年たちますので、早く撤去してほしいと。

 しかしながら、この撤去費用、本来だったらこれは京丹波町がやる話かもしれませんが、その撤去費用が数億円にも及ぶ莫大な経費を要するということでございまして、今の自治体の厳しい財政を踏まえたら、この撤去については、やはり国に頼らざるを得ないという状況でございます。

 そこで、これは鳥インフルエンザの話とはある意味では別だという皆さんの立場もよくよく私もわかった上で、お願いとして聞きたいんですが、ぜひ大臣にお聞きしたいんですが、そういった法的な仕組みがない、鳥インフルエンザとまた別の話で、この残された建物とか器具とか、そういったものを撤去するのは自分たちでやれという話かもしれませんが、こういった状況の中で、ぜひ何らかの国の対応策というものが考えられないか、そこを検討していただけないか、そういった点についてお尋ねしたいんですが、いかがでしょうか。

○中川政府参考人 事実関係を含めて、私の方からまずお答え申し上げたいというふうに思います。

 今先生おっしゃいましたように、浅田農産の土地建物は、破産管財人の方から京丹波町の方に寄附をされたというふうに理解をしております。

 家畜伝染病、そういう防疫上の対応からいたしますと、既に平成十六年の四月にかけまして現場での対応が終わっているわけでございますから、そういう視点からいたしますと、その建物なりそれから土地についていろいろ必要な措置が仮にあったとしても、それはやはり地元の京丹波町の方でお考えをいただくということが基本で、私ども、今ある制度からいたしますと、農林水産省として具体的に何か援助ができるということにはなっておりません。

 ただ、発生農場の跡地利用につきまして、京都府や京丹波町を初めとする地元の皆様方の考えが、今これは現地で検討されていると承知しておりますけれども、そういったお考えがまとまった段階で、何か農林水産省の行政の目的とそこが合致をするということで、そういうものができる、そういう状態であれば、私どもとしてもできるだけ知恵は出したいというふうに思っているところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。今の制度上はなかなか難しいという話だと思いますが、これも考えようによっては自然災害みたいなものだと思うんですよ、住民にとっては。別に自分たちが何か悪いことをしてそういうふうになったわけではなくて、鳥インフルエンザという外的な要因で、浅田農産が届け出を怠ったとかそういう瑕疵はあったと思いますが、住民にしてみれば、これはある意味では降ってきた話だと。

 これは結局、鳥インフルエンザで、もう全国的に何カ所もこういうことが起きて、同じような事態で、鶏舎が残っていたり器具が残っていたり堆肥舎が残っている、そうしたら多分国として制度をつくって対応すると思うんですが、残念ながらというか、今の状態ではそれが数少ないからなかなかそういう話にはなっていないというのが現実で、本質的には私は国が力をかしていただいて十分正当性のある話だというふうに思いますので、先ほど地元の要望がまとまったらいろいろ考えていただけるという言葉がありましたので、ぜひその点、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、事件の発生した浅田農産船井農場の方で、鶏の死体とか鶏ふんというものが、一応応急的な措置として埋却されたり消毒されたりしておりますが、これについては、地元住民の不安を完全に払拭するためには最終的な処理が必要だというふうに思います。

 これは今、京都府の山田知事を初め京都府がいろいろ取り組んでいるというふうに思いますが、これも本当に毎回恐縮な話でございますが、やはり府の方も財政が非常に厳しい、この点についても国に頼らざるを得ない状況にあるということが実情でございます。

 この最終処理に当たっての費用負担について、国としてどこまで負担できるのか、できるだけしてほしいというのが本音でございますが、その点についてどういう状況か、お尋ねしたいと思います。

○中川政府参考人 これは、平成十六年の二月に鳥インフルエンザが発生しました際に、地元の方々との了解のもとに、とりあえず隣接地に埋却をしたという経緯がございます。そういうこれまでの経緯を踏まえますと、最終処分につきましては、京都府と連携をいたしまして、家畜伝染病予防法に基づきます防疫措置の一環として適切に実施をしていく必要があるというふうに思っております。

 三年間は埋却をするということになりますけれども、一定の期間が経過した後につきまして、最終的な処分をする際の費用につきましては、家畜伝染病予防法に基づきまして、国がその必要な費用の二分の一を京都府の方に支援をする、国としても二分の一は負担をする、そう考えております。

○北神分科員 ありがとうございます。ぜひその方向で進めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 あともう一つは、今、後処理の話をさせていただきましたが、今後の対策についてお尋ねしたいというふうに思います。

 今までの、うちの地元も含めて、割とメーンとして問題になったのは、鳥と鳥の間の感染の話であります。これについては、もうかなり自治体も国も危機意識というものを持っているし、予防対策とか危機管理対策というものも相当考えておられるというふうに思います。

 ところが、今後は、御存じのように、人と人との間の感染をするウイルスというものがこれからの課題だということだというふうに思いますが、これはある試算によれば、全世界的にもしこういう事態が発生すれば、最大一億何千万人亡くなる、スペイン風邪とかそういうどころの騒ぎではないという話も聞くわけでございますから、非常に欧米の方でも大変な危機感があるというふうに聞いております。

 この人―人のウイルスがどのように発生するかというのはまだまだ科学的な解明を待つところだというふうに思いますが、私が聞いている感じでは、豚の中に人に関する感染ウイルスと鳥のウイルスというものが入って併存して、そこで人と人の間にうつるようなウイルスの変異というものが起きる説が有力ではないかと。あとは、人と鳥の間を行ったり来たりして、それがまた突然変異で人―人のウイルスに変わるという話も聞いておりますが、その辺については割と消毒とかそういった対策ができているというふうに思いますが、豚の部分がまだできていないような気がいたします。

 そういったことを考えますと、今、養鶏場については防護ネットみたいなものを張って施設外からの動物の侵入というものを防ぐ、そういった対策がとられているというふうに思いますが、これも素人考えで恐縮ですが、そうであるならば、今後、人―人のウイルスというものが重大な課題となるのであれば、豚のいる養豚場とかそういったところにもそういう防護ネットというものを張るというのも、一つの予防策として考えられるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○中川政府参考人 確かに、豚は、人インフルエンザウイルスにも、それから鳥インフルエンザウイルスにも、両方のウイルスに対して感受性を持っているということが知られております。

 しかし、日本の豚からこれまでに鳥インフルエンザウイルスが分離をされたということは、まだ知見としてありません。そういうことは確認をされておりません。しかしながら、養豚は養豚としてやはり衛生的な飼養管理をしていくというのは当然のことでございますし、家畜伝染病予防法に基づきます飼養衛生管理基準、これは飼養者の方が当然守っていただくべき基準ですけれども、その中にも、窓や出入り口等の開口部にネットその他の設備を設けるということで、ネズミですとかいろいろな害虫が豚舎内に入らないように、そういうことをきちっと心がけていただくというのは飼養者の義務としてあるわけでございます。

 農林水産省といたしましては、豚に鳥インフルエンザが感染するということを防ぐというだけではなくて、全体として衛生的な豚の飼養が行われるようにということがまず第一だというふうに思っておりますし、また鳥インフルエンザの防疫の観点からいたしますと、豚にかかるというその前に、早く、日本に鳥インフルエンザが侵入したら、それを見つけて、そして摘発、淘汰をするということが、まず防疫対応上の第一の取り組みではないかというふうに思っているところでございます。

○北神分科員 鳥インフルエンザが入ってきて、それを見つけて退治するというのはなかなか難しいというふうに思うんですが、むしろ、そういう感染する場である養豚場とかそういったところを守ったらいいというふうに思いますので、これはもう追及しませんが、そういったことを含めてひとつ検討いただければというふうに思います。

 もう時間がございませんので、せっかく厚生労働省さんにも来ていただいておりますので、最後に、実際、人―人のウイルスというものが発生して、できればその予防対策として今申し上げたようなことが大事だというふうに思いますが、それが功を奏せず実際に広がってしまうというときに、私もテレビでしかわからないんですが、タミフルという薬というものが一時期話題になった。そういった、一〇〇%効くかどうかというのはわからないらしいですが、今のところそれが一番効くのではないかということですので、ただ、その当時、ことしの初めぐらいですかね、その問題がテレビや新聞とかで話題になったときには、日本は絶対量が少ないという問題があったというふうに思います。

 もうせっかく、今余り騒がれなくなったわけでございますが、まさにこういった機会にぜひ備蓄の方を進めていかなければならないというふうに思うんですが、その辺の状況はどうでしょうか。

○岡島(敦)政府参考人 昨年十一月に、新型インフルエンザ対策行動計画というものを策定いたしました。その中で、抗インフルエンザウイルス薬タミフルを二千五百万人分備蓄するということを決めております。

 その内容としましては、政府と都道府県でそれぞれ一千五十万人分ずつ備蓄するということになっておりまして、これまでのところ、既に政府備蓄としまして二百五十万人分を備蓄しております。そして、十八年度内には七百五十万人分を備蓄する予定でございます。

 それから、都道府県備蓄量の千五十万人分につきましては、十八、十九年度に備蓄をすることとしておりまして、各都道府県におきまして備蓄計画が策定されております。

 これらのほかに、国内流通量を含めまして、十九年度中には二千五百万人分の備蓄が完了する予定でございます。

○北神分科員 基本的にそれでもう大体、問題が発生したときに対応できる数だということでしょうか。

○岡島(敦)政府参考人 実際に発生した場合に、新型インフルエンザの効果といいますか、強さというのはどの程度あるかということは、発生してみないとわからないわけでございますけれども、アメリカの一定の試算に基づきまして、発生するであろう量ということを前提といたしまして、人口の約二〇%分の備蓄量ということで対応します。

 そして、さらに言いますと、我が国はタミフルを普通のインフルエンザにこれまでも使ってきている、ほとんど世界で一番使っている国でございまして、例えば十一月ごろのインフルエンザの流行期に入る前の段階で見ますと、タミフルの国内流通量は千二百万人分ございます。それと合わせまして、備蓄も完了いたしますと二千五百万人分もふえることになりますので、必ず、絶対とは申し上げられませんけれども、必要量は確保できるものというふうに考えております。

○北神分科員 もう時間でございます。最後にもう一度、JAの米の検査の体制をちょっと実態調査をしていただきたいということと、もう一つは、京丹波町の鶏舎とか機械設備、堆肥舎、その辺の撤去費用について、ひとつ国のお力添えをいただきたいということをお願い申し上げまして、終わりといたします。

 ありがとうございました。

○平田主査 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。
2006年6月5日 決算行政監視委員会第四分科会
 次に、北神圭朗君。

○北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、この分科会におきまして質問の機会を与えていただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 きょうは、分科会ということでございまして、北側国土交通大臣及び国土交通省の皆様方に、地元のことでちょっとお尋ねしたいということでございます。

 大きく二点ございまして、まず最初に、これは京都府とか、大阪府もたしか共同で要望していると思うんですが、関西副首都構想の推進というものがございます。

 これについてはもう重々御承知だと思いますが、我が国においては、皇居を中心に大体三キロメートル範囲内に政府とか政治機能、行政機能、経済、金融機能、こういったものが非常に狭い範囲の中に集中をしている。こういった現状の中で、最近、ニュースとかでも、大地震の話とか大変な自然災害の話もございますが、そういった大地震などの大規模な災害、あるいは今の時代におきましてはテロの問題というものもあります。

 こういった事態が発生したときに、余りにも狭い範囲の中で日本の中枢機能というものが集中していると、場合によっては首都機能みたいなものが麻痺する事態も考えられるというふうに思います。一瞬にして、東京都内はもちろん、全国津々浦々への重要な情報の流れとかお金の流れ、あるいは政府の行政機能、警察機能なんかは特に大事だと思いますが、そういったことも含めまして、こういった事態について我々も備えていかないといけないというふうに思っているわけでございます。

 そこで、危機管理的な観点から、こうした場合に、首都機能を代替する副首都というものも考えていく必要があるのではないかということでございます。

 ほかの先進国などを見れば、国家戦略的にやっているかどうかは別として、政治首都と商業首都というものが分かれているということもよく見受けられるところでございます。国土狭き日本においてはなおさら副首都というものを、そういう国家危機管理的な観点から明確に位置づけて、準備していくことが必要ではないかというふうに私も思っているところでございます。

 そこで、では、どこがその地域にふさわしいのかという話でございます。

 これは、私も京都出身でありますし、大臣も大阪選出だということでございますが、余り利害関係者ばかりで議論していても偏った議論になるとは思いますが、そういったことだけではなくて、客観的に見ても、関西においては、国の出先機関、地方機関とか総領事館というものも集積している。そして交通基盤というものもある程度は整っている。私の地元、京都はとりわけ、迎賓館というものもついこの間できましたし、国会図書館の関西館などの施設も充実している。

 そういったことを考え合わせると、手前みそかもしれませんが、客観的に見て、私は、関西においてこそ低コストで副首都機能というものを整備することができるのではないかということでございます。そして、そういったことで、京都府も大阪府も、たしか兵庫県も参加していると思いますが、関西を副首都として位置づけること、さらには、既存施設や交通基盤等の必要最小限の整備というものも同時に推進することを訴えているところでございます。

 この質問については、この前、予算委員会の分科会で谷垣財務大臣にもお尋ねしたところで、谷垣さんも京都出身ということで割と前向きな答弁をいただいたんですが、そのときに、実際、内閣府の方にお尋ねしたら、中央防災会議というところで大体マグニチュード七・三の大地震というものを想定しなければならない、そういったことが起きると、壊滅状態になるわけではないけれども、やはり政府の重要な施設が被災に遭ったり、あるいは企業の事業の推進がままならないといった事態が容易に想定できるという答弁もございました。

 ですから、これは決してSF、ファンタジーの世界ではなくて、国のまじめな危機管理的な発想から大事だというふうに思うんです。これは国土交通大臣というよりは一政治家ということなのかもしれませんが、この点についてどのようにお考えかということをお聞きしたいというふうに思います。

○北側国務大臣 私は首都機能移転も担当しておりまして、まさしくこの問題は、各省庁の中で国土交通省が一番深くかかわらないといけない問題であるというふうに認識をしております。

 実を言いますと、私、きのうも大阪であるシンポジウムがありまして、そのシンポジウムの中で、大阪の太田知事とも御一緒だったんですが、これは前々から聞いておりますけれども、昨日も大阪府の知事から同じく、このバックアップ機能について、やはり大阪が担うことがふさわしいのではないか、こういう御意見の開陳がシンポジウムでもあったところでございます。

 安全、安心な国土をつくっていくという観点からは、やはり首都圏に政治、行政、金融等々、国家の中枢機能が集中しております。ここが万一、例えば首都圏の直下型地震等でその機能が麻痺をしてしまうことになった場合に、これは日本の政治経済に大変な打撃を与えるだけではなくて、世界の経済にも大きな影響を与えてしまうと私は思います。

 そういう意味で、私は、この首都の中枢機能についてのバックアップ機能をきちんと確保しておくということは、これは国として当然やっておかなきゃいけない危機管理だというふうに思っているところでございまして、どこがふさわしいかというのはまさしくこれからの議論だと思うんですけれども、そうしたことをきちんと検討しておくことが大事だと思う。ちなみに、日本銀行はやはり大阪にバックアップ機能を持っております。

 委員のおっしゃったように、大阪には、関西にはと言った方がいいかもしれません、各省庁の出先機関がすべて集中をしておりますし、総領事館もございます。そういう意味では、非常に少ないコストでそうしたバックアップ機能について果たせるような地域ではないかという御指摘は十分傾聴に値するものだというふうに思っているところでございますが、まさしくこれはこれからの議論として進めていきたい。

 今、国土交通省では、昨年通していただいた法律、国土形成計画法に基づきまして、国土形成計画を策定する作業をやっております。全国計画につきましては、ことしじゅうには中間的な取りまとめもさせていただきますし、来年には閣議決定もしたい。そして、その上で広域の地方計画についても策定をしていく、こういう流れになるわけで、これからの我が国の国土形成のビジョンについて取りまとめ作業を今まさしくしているところでございます。

 きょう委員のおっしゃったこうしたバックアップ機能を、首都機能の一部を万が一のときにしっかり担っていくというふうな問題についても、これは非常に重要な課題として論議をさせていただきたいと思っているところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。大変力強い答弁をいただきました。

 お立場上なかなか難しいところもあると思いますが、まずは副首都機能というものが大事だという大方針の上で、どこの地域がふさわしいという中で大臣みずから主張することはなかなか難しいかもしれませんが、客観的にどこが一番ふさわしいかというのはおのずと議論の中で明確になっていくというふうに私は思いますので、本日は北側大臣からも積極的なお話もいただきましたし、この前、谷垣財務大臣にも非常に前向きの言葉もいただきました。私はそれほどの力がなくて微力でございますが、ぜひその議論にも参加していきたいというふうに思っていますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それで、またこの副首都機能というのは、既存の施設とか交通基盤についても必要最小限と、この財政が厳しい状況の中で非常に控えめな文言となっておるわけでございます。私もそういう姿勢が非常にいいというふうに思うんですが、もう一つの次のテーマは、まさに私の地元の道路の話でございまして、これは京都中部阪神連絡道路というものでございます。

 これについてはもともと、亀岡市というのが私の選挙区にございまして、十万弱の地方都市でございますが、ここと北大阪が隣接をしている。今国道四百二十三号線というのがありますが、これが非常な山道でございまして、曲がりくねったりして、非常に狭い道であるということでございます。

 そして一方で、御存じのように、全国的な高速道路網の整備計画の中で京都縦貫自動車道の整備というものも今進められているわけでございますが、亀岡の市民あるいは口丹波地域、その北側の、綾部までは行かないんですが、園部町とか八木町とか丹波町とかそういった地域でございますが、そこから阪神地域の高速道路につながるためには二つしかルートがなくて、一つは綾部市までずっと北の方に上がっていって近畿自動車道というものを利用する、あるいはずっと南の方に行って、京都府の乙訓郡というところまで行って高速道路につながる、この二つのルートしかないという中で、もともと熱い要望が亀岡を中心に上がってきているわけでございます。

 これにつきましては、国土交通省さんの方から平成十年六月に、当時の建設省でございますが、いわゆる地域高規格道路の候補道路の指定を受けているところでございます。

 そういった中で、もともとの経緯はそういったことであるわけでございますが、本日は、私も冒頭申し上げた関西副首都構想の中で、この亀岡というのはまた京都市内の、これも私の選挙区なんですが、西の方の洛西地域の西京区、右京区、嵐山とか桂離宮とかそういったところがある地域なんですが、そこと隣接していまして、縦貫道というのも亀岡を抜けて西京区に入って、そこで今のところ終わっている。したがって、北大阪の方から、伊丹空港とかもあると思いますが、そこから亀岡、そして縦貫道で行けばもう物の十分ぐらいで京都の西の方に入れる。そういった状況の中で、亀岡の活性化だけではなくて、関西全体を副首都構想と考える中で、より緊密な連携というものが図れるのではないか、そういった観点でお話をできればというふうに思います。

 まず、先ほど申し上げたように、京都中部阪神連絡道路の候補路線というものの指定を受けまして、ちょうどことし、今六月ですから、八年の歳月が流れようとしているわけでございますが、調査等を初めとした本件の進捗状況についてお伺いしたいというふうに思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただきました京都中部阪神連絡道路は、第二名神自動車道と高規格幹線道路でございます京都縦貫自動車道を連絡する延長約三十キロメートルの道路の構想でございまして、委員も御指摘いただきましたが、平成十年六月に地域高規格道路の候補路線に指定をさせていただいております。現在、京都府と協力をさせていただきまして、基礎的な調査を実施させていただいているところでございます。

 具体的には、並行している国道四百二十三号ともう一つ四百七十七号があるということでございますが、それぞれ九千台、日交通量でございますが、一万台近い交通量があるということでございます。また、峠越えというようなことで、隘路になっている箇所等につきましての調査を進めさせていただいております。

 いずれにしましても、京阪神地域全体の道路ネットワークの観点から見た本路線の必要性等を検討させていただいているというところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 その基礎調査の中に、ルートの決定とか事業計画とか、そういった話というのはまだ当分出てこないような状況でしょうか。まだ基礎的なデータの収集とかそういった状況なのか。済みません、通告にはなかったんですが、そのことも答えられればお願いできればと思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 地域高規格道路につきましては、候補路線といいますのは、先ほど必要性と申し上げましたが、整備を進めることの妥当性、緊急性等についての検討を進めさせていただいているということでございます。それから、整備の妥当性、緊急性が高いと認められたものを計画路線として指定をさせていただいているということでございまして、今現在まだ、計画路線にいつというようなところまでは至っておらないという状況でございます。

○北神分科員 理解できました。

 そして、その中でまさに候補路線、計画路線に引き上げていただきたいというのが地元のまずの手順としての要望なんですが、先ほど必要性、緊急性という話があって、これはなかなか抽象的な言葉なので、そこを満たすのにはどうしたらいいのかという声もございまして、これもその具体的な基準というものを明確に答えるのはなかなか難しいかもしれませんが、ちょっとその辺、できる限りの範囲で結構なので、教えていただければというふうに思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 地域高規格道路というのは、高規格幹線道路網を補完するというような役割がございます。

 これまで、規格の高いというようなことで、自動車専用道路的なところをイメージしてきておりますが、この地域の周辺ネットワークといいますと、先ほど、亀岡から京都に抜けるというお話をいただきましたが、京都の南側、西側も含めて、京都第二外環状道路といったようなもの、京都縦貫自動車道とリンケージするわけでございますが、そうした道路も計画されているということでございますので、この地域にどうした規格の道路がいいというようなことを、原点に返って、京都府また大阪とも協力しながら詰めさせていただいているというところでございます。

 明確な基準とかいうような前提となって、その道路の性格等を今詰めさせていただいているということでございますので、その上で、熟度が高まってきた場合には、費用対効果とかそういったものをはじきながら、どう事業化していくかというようなことについて判断をさせていただければと思っておるところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 地元としては、亀岡の市民としては、ぜひとも、第二名神の計画もあると思いますが、そこを起点として、そして亀岡の中心を走っていく京都縦貫道、これを終点としてつなげてそういったルートをお願いしているところなんですが、なかなか財政の厳しい中、非常に難しい話かもしれません。

 先ほど申し上げたように、関西副首都構想の中で、阪神と京都のつながりとか、あるいは地元の、これは十万都市の亀岡なんですが、一方で田園地帯というか農村地帯というものもたくさんありまして、そもそもこの地域高規格道路の三つの求められている機能の中で、交流とか連携とか連結とかあると思うんですが、恐らく、中核都市と大都市をつなぐ連携の部分が非常に強いのではないか、そういった意義も私はあるというふうに思うんです。

 大臣にぜひお伺いしたいのは、今一連のお話を伺って、この京都中部阪神連絡道路についてどう見ているのか、どのような意義を感じられているのか、そこをお尋ねしたいというふうに思います。

○北側国務大臣 先ほど道路局長から答弁しましたように、京都縦貫道と第二名神を連絡する道路、ですから、道路というのはネットワークでございますので、道路ネットワークの効率を高める効果だとか、また、事故や災害があった場合の代替路として意義があるというふうに私も思います。

 ただ、御承知のとおり、第二名神そのものも、今、当面着工しないという区間もあるぐらいでございまして、そういう意味では、ある意味ではこの第二名神をどうするんだということについて早く結論づけていかないといけないなとも思っているところでございます。

 いずれにしましても、京都縦貫道それから第二名神等の関連する道路の整備状況、交通状況等も踏まえつつ、京都、大阪の両府と国とが協力をして、この道路の必要性についてしっかりと検討を進めさせていただきたいと思います。

○北神分科員 ありがとうございます。

 私もこの話をいろいろ勉強していて、やはり第二名神の話が一つの前提になるのではないか、同時進行的にやりたいというのは我々の要望なんですが、そういったところもなかなか難しいかというふうに思います。

 今大臣から、第二名神について結論を早く得られなければならないなという御感想がございましたが、まさに第二名神の、今計画中、進行中だと思うんですが、進捗状況というのはどうなっているのかというのを、事務局で結構ですが、お尋ねしたいと思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 今大臣の方から御答弁ございましたが、高槻から八幡ジャンクションにつきましては抜本見直しというようなことになっておりますが、高槻から西の方、神戸間につきましての整備状況をお話しさせていただきたいと思います。

 そもそも第二名神高速道路は、名古屋市と神戸市を起終点とする全体百七十四キロメートルの高速自動車国道であるということでございますので、第二東名高速道路と一体となって、三大都市圏を相互に結び、人の交流と物流を支える大動脈ということでございますので、新しい世紀の国土の軸となる重要な路線ということでございますし、また、今お話ございましたが、災害時などを含めても、代替路線として不可欠な路線であると考えておる次第でございます。

 高槻から神戸間、約四十キロメートルございますが、ことし二月に開催されました第二回国幹会議の議を経て、西日本高速道路株式会社が整備する区間として決定されております。現在、会社におきまして、用地買収に向けた測量、土質調査及び地元設計協議を行っているということでございます。

 当該区間につきましては、宝塚トンネルというようなところも大きな渋滞を起こす頻度が高いということでございますので、地元の御理解と御協力を得ながら西日本会社において事業が促進され、一日も早い供用を目指して私どもも全力を挙げて取り組ませていただきたいと考えておるところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 なかなかこの話も、道路整備全体が我が党を含めて大変厳しい目が向けられている中で、非常に決定が困難な部分もあるというふうに思うんですが、この話についてレクをしているときも、役所の方でも認識が余りなされていないなというふうにも見受けられましたし、ぜひ、亀岡市、京都府でこういった要望があるということを御認識いただきまして、厳しい状況の中でその実現に御努力いただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 最後に、こうした道路整備のお願いとか私もさせていただいているわけでございますが、一般論として、現実に、私は何度も申し上げたように、今財政状況が非常に厳しい。その中でもとりわけ公共事業、その中でも道路整備というものに対して非常に厳しい声がある中で、私は、もちろんいわゆる無駄なものというものは、これは当たり前の話で、減らさないといけないし、そういったものをつくってはいけないということだというふうに思います。

 しかし一方で、何が何でも一律に支出をカットして、公共事業はすべて悪いという話も全く、これはどこの国を見てもおかしな話であるというふうに思って、賛同しがたいものがあるというふうに思っております。さらに言えば、財政の引き締めだけで本当に国というものが発展するのか、栄えるのか、そういったことも私は極めて疑問に思っているわけでございます。

 もともと私も大蔵省の方で十年ぐらい勤めていましたが、やはり大蔵省のそういった視点だけで国を動かされると非常に縮小均衡の事態になってしまうなというのが私の率直な考えでございまして、活力のない経済社会の中で税収の自然増収とか考えると、財政再建でさえ本当に可能なのか。単に歳出をカットして歳入を引き上げるだけで財政再建ができるというのは、私が勉強したところでは、古今東西そんな例はない。やはり経済の活力というのは大事だし、その下支えになる公共事業、道路も含めて、そういったものも大変大事だというふうに思っております。

 そういった非常に難しい状況の中で私も本日こういった質問をさせていただいたわけでございますが、大臣におかれましては、無駄でない道路、そして無駄な道路、私は、この基準というものがはっきりできれば一番いいのではないか。そうしていかないと、一律全部だめだという話になってしまう。しかし、これはなかなか難しい質問だと思いますが、大臣の経験とかを踏まえまして、どのようにその基準というものをお考えになっているのかというのをお聞かせいただきたいというふうに思います。

○北側国務大臣 与党の中でもいろいろな意見がありますけれども、民主党の中もいろいろな意見があるんだなということがきょうよくわかりました。

 私は、まず、無駄な道路という表現が実を言うと余り好きじゃないんですね。私も一昨年九月から国土交通大臣に就任してから、国土交通省というのは本当に幅の広い役所でございますが、私のところにあるさまざまな御要望、やはり圧倒的に道路が多いんですね。圧倒的です。それも、北海道から九州、沖縄まで、どの地域、私がいろいろな地域へ行っても、地元の知事さん、首長さん、経済界の方々、どこに行っても、この道路がというお話を必ずと言っていいほどお聞きするわけですね。そういう意味で、道路整備というのは、我が国においてはまだまだやらなきゃいけないところが多いと私は認識をしております。

 とともに、一方で財政の問題がございます。財政も危機的な状況の中で、やはりこれから、これは道路だけではなくて公共事業すべてそうだと思うんですが、優先順位というものを明確にしていく。必要性の程度、緊急性の程度等々、これは総合的に勘案をして、そこはきちんと数値で出していかないといけないと私は思いますが、総合的に勘案して、やはり優先順位、プライオリティーというものをつけていくことだというふうに思っているところでございます。

 御承知のとおり、今、道路特定財源の見直しの論議がこれから本格的に始まってまいります。もう一つは、この道路特定財源の問題と同じく、公共事業をこれからどうするのという議論もあるんですね。幾ら道路特定財源について確保しても、シーリング、委員は専門ですから、シーリングの方で毎年何%制約だというふうにキャップをかぶせられてしまいますと、幾ら道路特定財源があっても道路に使えないわけでございまして、この道路特定財源をどうしていくかという問題と、今後公共事業、道路投資をどうしていくんだという話と、二つはもちろん関連しておりますが、一応別の問題として議論がこれから進んでいくところだというふうに考えております。

 そういう中にあって、ぜひ、この道路特定財源の見直しの問題であれ、公共事業、特に道路投資の今後のあり方にせよ、やはり足が地についた議論をしていただく必要があると思っておりまして、そういう意味では、余り観念論、抽象論で議論するだけではなくて、例えば、これは私、去年お願いしたんですけれども、各整備局単位ぐらいで、関西なら関西で、整備目標についても具体的なイメージを出してもらいたい、そうした方が議論がしっかりできると。

 例えば、これから十年間で、仮に今までの予算というものをそのまま、同じような予算でどの程度の事業が、コスト縮減も加味してどの程度進んでいくのか、そういう絵をきちんとやはり示した方がいいですね、そうしないとなかなか地についた議論にならないので、それをぜひやりましょうと。

 それと、これからは、これも社会資本全体に言えることなんですが、維持管理コストがすごくかかってくるんですね。やはり、従来整備されてきた道路等につきまして維持管理を適切にやっていかないと、結果としてライフサイクルが短くなってしまって国民負担が大きくなってしまうという問題もありますし、あと、橋の問題なんかでいいますと、例えば昭和三十年代、四十年代につくった橋が、今やもう四十年以上たつのも出てきているわけですね。そうすると、いずれ近い将来更新をしなきゃいけません。その更新コストについてもきちんとこれからは念頭に置いていく必要がある。だから、新規の事業だけではなくて、維持管理コストが必要です、これからどんどんふえてきますよ、いずれ更新コストがふえてきますね、そういうこともある程度試算を出していただきたいなと。

 それとあと、優先順位の問題としていいますと、例えば、これは首都圏でも関西でもそうだと思いますが、日本の道路というのは環状が十分できていないんですね、環状道路が。都心に行く道路は割と比較的できているんですが、環状道路ができていない。これが非常に道路渋滞だとか環境の悪化につながっている。こういうのはやはり優先順位が高いねだとか、それから空港とか港湾とか、こういうところのアクセスになる道路というのも、これまた、これからの国際競争を維持向上させていくという観点からも非常に優先度が高いねというふうに、それぞれ、これから優先順位が高くなる考え方、手法としてどんなものがあるかということもぜひ議論をお願いしたいと。

 そういうことを、実を言うと、先般、国土交通省で、道路局を中心に取りまとめを案として、あくまでたたき台です、これは何か決めたということではありません、今後の議論の参考にぜひしていただきたいということで、道路整備の中期ビジョン案というのをつくらせていただいたところでございまして、こうしたものを参考にしていただいて今後の御議論を、政府・与党内でもしっかりやりたいですし、国会内でもぜひお願いをしたいというふうに思っているところでございますので、議員におかれましても、一度ぜひ話をお聞きいただければありがたいと思っているところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 もう時間が過ぎましたので終わりたいと思いますが、私も去年初当選をして初めてこういう道路の話とか多少勉強させてもらったんですが、最後の大臣の答弁、非常に勉強になりました。ぜひ、そういった方向で我々も議論に参加していって、ちゃんとした道路整備というものを戦略的に、そしてコストをできるだけ安くして進めていければというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

○柴山主査代理 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

全議事録

決算行政監視委員会第4分科会
国土交通大臣に質問させていただきました。

北神質疑
2006年6月5日 決算行政監視委員会第四分科会
 次に、北神圭朗君。

○北神分科員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、この分科会におきまして質問の機会を与えていただきましたことを心から感謝申し上げたいと思います。

 きょうは、分科会ということでございまして、北側国土交通大臣及び国土交通省の皆様方に、地元のことでちょっとお尋ねしたいということでございます。

 大きく二点ございまして、まず最初に、これは京都府とか、大阪府もたしか共同で要望していると思うんですが、関西副首都構想の推進というものがございます。

 これについてはもう重々御承知だと思いますが、我が国においては、皇居を中心に大体三キロメートル範囲内に政府とか政治機能、行政機能、経済、金融機能、こういったものが非常に狭い範囲の中に集中をしている。こういった現状の中で、最近、ニュースとかでも、大地震の話とか大変な自然災害の話もございますが、そういった大地震などの大規模な災害、あるいは今の時代におきましてはテロの問題というものもあります。

 こういった事態が発生したときに、余りにも狭い範囲の中で日本の中枢機能というものが集中していると、場合によっては首都機能みたいなものが麻痺する事態も考えられるというふうに思います。一瞬にして、東京都内はもちろん、全国津々浦々への重要な情報の流れとかお金の流れ、あるいは政府の行政機能、警察機能なんかは特に大事だと思いますが、そういったことも含めまして、こういった事態について我々も備えていかないといけないというふうに思っているわけでございます。

 そこで、危機管理的な観点から、こうした場合に、首都機能を代替する副首都というものも考えていく必要があるのではないかということでございます。

 ほかの先進国などを見れば、国家戦略的にやっているかどうかは別として、政治首都と商業首都というものが分かれているということもよく見受けられるところでございます。国土狭き日本においてはなおさら副首都というものを、そういう国家危機管理的な観点から明確に位置づけて、準備していくことが必要ではないかというふうに私も思っているところでございます。

 そこで、では、どこがその地域にふさわしいのかという話でございます。

 これは、私も京都出身でありますし、大臣も大阪選出だということでございますが、余り利害関係者ばかりで議論していても偏った議論になるとは思いますが、そういったことだけではなくて、客観的に見ても、関西においては、国の出先機関、地方機関とか総領事館というものも集積している。そして交通基盤というものもある程度は整っている。私の地元、京都はとりわけ、迎賓館というものもついこの間できましたし、国会図書館の関西館などの施設も充実している。

 そういったことを考え合わせると、手前みそかもしれませんが、客観的に見て、私は、関西においてこそ低コストで副首都機能というものを整備することができるのではないかということでございます。そして、そういったことで、京都府も大阪府も、たしか兵庫県も参加していると思いますが、関西を副首都として位置づけること、さらには、既存施設や交通基盤等の必要最小限の整備というものも同時に推進することを訴えているところでございます。

 この質問については、この前、予算委員会の分科会で谷垣財務大臣にもお尋ねしたところで、谷垣さんも京都出身ということで割と前向きな答弁をいただいたんですが、そのときに、実際、内閣府の方にお尋ねしたら、中央防災会議というところで大体マグニチュード七・三の大地震というものを想定しなければならない、そういったことが起きると、壊滅状態になるわけではないけれども、やはり政府の重要な施設が被災に遭ったり、あるいは企業の事業の推進がままならないといった事態が容易に想定できるという答弁もございました。

 ですから、これは決してSF、ファンタジーの世界ではなくて、国のまじめな危機管理的な発想から大事だというふうに思うんです。これは国土交通大臣というよりは一政治家ということなのかもしれませんが、この点についてどのようにお考えかということをお聞きしたいというふうに思います。

○北側国務大臣 私は首都機能移転も担当しておりまして、まさしくこの問題は、各省庁の中で国土交通省が一番深くかかわらないといけない問題であるというふうに認識をしております。

 実を言いますと、私、きのうも大阪であるシンポジウムがありまして、そのシンポジウムの中で、大阪の太田知事とも御一緒だったんですが、これは前々から聞いておりますけれども、昨日も大阪府の知事から同じく、このバックアップ機能について、やはり大阪が担うことがふさわしいのではないか、こういう御意見の開陳がシンポジウムでもあったところでございます。

 安全、安心な国土をつくっていくという観点からは、やはり首都圏に政治、行政、金融等々、国家の中枢機能が集中しております。ここが万一、例えば首都圏の直下型地震等でその機能が麻痺をしてしまうことになった場合に、これは日本の政治経済に大変な打撃を与えるだけではなくて、世界の経済にも大きな影響を与えてしまうと私は思います。

 そういう意味で、私は、この首都の中枢機能についてのバックアップ機能をきちんと確保しておくということは、これは国として当然やっておかなきゃいけない危機管理だというふうに思っているところでございまして、どこがふさわしいかというのはまさしくこれからの議論だと思うんですけれども、そうしたことをきちんと検討しておくことが大事だと思う。ちなみに、日本銀行はやはり大阪にバックアップ機能を持っております。

 委員のおっしゃったように、大阪には、関西にはと言った方がいいかもしれません、各省庁の出先機関がすべて集中をしておりますし、総領事館もございます。そういう意味では、非常に少ないコストでそうしたバックアップ機能について果たせるような地域ではないかという御指摘は十分傾聴に値するものだというふうに思っているところでございますが、まさしくこれはこれからの議論として進めていきたい。

 今、国土交通省では、昨年通していただいた法律、国土形成計画法に基づきまして、国土形成計画を策定する作業をやっております。全国計画につきましては、ことしじゅうには中間的な取りまとめもさせていただきますし、来年には閣議決定もしたい。そして、その上で広域の地方計画についても策定をしていく、こういう流れになるわけで、これからの我が国の国土形成のビジョンについて取りまとめ作業を今まさしくしているところでございます。

 きょう委員のおっしゃったこうしたバックアップ機能を、首都機能の一部を万が一のときにしっかり担っていくというふうな問題についても、これは非常に重要な課題として論議をさせていただきたいと思っているところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。大変力強い答弁をいただきました。

 お立場上なかなか難しいところもあると思いますが、まずは副首都機能というものが大事だという大方針の上で、どこの地域がふさわしいという中で大臣みずから主張することはなかなか難しいかもしれませんが、客観的にどこが一番ふさわしいかというのはおのずと議論の中で明確になっていくというふうに私は思いますので、本日は北側大臣からも積極的なお話もいただきましたし、この前、谷垣財務大臣にも非常に前向きの言葉もいただきました。私はそれほどの力がなくて微力でございますが、ぜひその議論にも参加していきたいというふうに思っていますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それで、またこの副首都機能というのは、既存の施設とか交通基盤についても必要最小限と、この財政が厳しい状況の中で非常に控えめな文言となっておるわけでございます。私もそういう姿勢が非常にいいというふうに思うんですが、もう一つの次のテーマは、まさに私の地元の道路の話でございまして、これは京都中部阪神連絡道路というものでございます。

 これについてはもともと、亀岡市というのが私の選挙区にございまして、十万弱の地方都市でございますが、ここと北大阪が隣接をしている。今国道四百二十三号線というのがありますが、これが非常な山道でございまして、曲がりくねったりして、非常に狭い道であるということでございます。

 そして一方で、御存じのように、全国的な高速道路網の整備計画の中で京都縦貫自動車道の整備というものも今進められているわけでございますが、亀岡の市民あるいは口丹波地域、その北側の、綾部までは行かないんですが、園部町とか八木町とか丹波町とかそういった地域でございますが、そこから阪神地域の高速道路につながるためには二つしかルートがなくて、一つは綾部市までずっと北の方に上がっていって近畿自動車道というものを利用する、あるいはずっと南の方に行って、京都府の乙訓郡というところまで行って高速道路につながる、この二つのルートしかないという中で、もともと熱い要望が亀岡を中心に上がってきているわけでございます。

 これにつきましては、国土交通省さんの方から平成十年六月に、当時の建設省でございますが、いわゆる地域高規格道路の候補道路の指定を受けているところでございます。

 そういった中で、もともとの経緯はそういったことであるわけでございますが、本日は、私も冒頭申し上げた関西副首都構想の中で、この亀岡というのはまた京都市内の、これも私の選挙区なんですが、西の方の洛西地域の西京区、右京区、嵐山とか桂離宮とかそういったところがある地域なんですが、そこと隣接していまして、縦貫道というのも亀岡を抜けて西京区に入って、そこで今のところ終わっている。したがって、北大阪の方から、伊丹空港とかもあると思いますが、そこから亀岡、そして縦貫道で行けばもう物の十分ぐらいで京都の西の方に入れる。そういった状況の中で、亀岡の活性化だけではなくて、関西全体を副首都構想と考える中で、より緊密な連携というものが図れるのではないか、そういった観点でお話をできればというふうに思います。

 まず、先ほど申し上げたように、京都中部阪神連絡道路の候補路線というものの指定を受けまして、ちょうどことし、今六月ですから、八年の歳月が流れようとしているわけでございますが、調査等を初めとした本件の進捗状況についてお伺いしたいというふうに思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただきました京都中部阪神連絡道路は、第二名神自動車道と高規格幹線道路でございます京都縦貫自動車道を連絡する延長約三十キロメートルの道路の構想でございまして、委員も御指摘いただきましたが、平成十年六月に地域高規格道路の候補路線に指定をさせていただいております。現在、京都府と協力をさせていただきまして、基礎的な調査を実施させていただいているところでございます。

 具体的には、並行している国道四百二十三号ともう一つ四百七十七号があるということでございますが、それぞれ九千台、日交通量でございますが、一万台近い交通量があるということでございます。また、峠越えというようなことで、隘路になっている箇所等につきましての調査を進めさせていただいております。

 いずれにしましても、京阪神地域全体の道路ネットワークの観点から見た本路線の必要性等を検討させていただいているというところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 その基礎調査の中に、ルートの決定とか事業計画とか、そういった話というのはまだ当分出てこないような状況でしょうか。まだ基礎的なデータの収集とかそういった状況なのか。済みません、通告にはなかったんですが、そのことも答えられればお願いできればと思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 地域高規格道路につきましては、候補路線といいますのは、先ほど必要性と申し上げましたが、整備を進めることの妥当性、緊急性等についての検討を進めさせていただいているということでございます。それから、整備の妥当性、緊急性が高いと認められたものを計画路線として指定をさせていただいているということでございまして、今現在まだ、計画路線にいつというようなところまでは至っておらないという状況でございます。

○北神分科員 理解できました。

 そして、その中でまさに候補路線、計画路線に引き上げていただきたいというのが地元のまずの手順としての要望なんですが、先ほど必要性、緊急性という話があって、これはなかなか抽象的な言葉なので、そこを満たすのにはどうしたらいいのかという声もございまして、これもその具体的な基準というものを明確に答えるのはなかなか難しいかもしれませんが、ちょっとその辺、できる限りの範囲で結構なので、教えていただければというふうに思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 地域高規格道路というのは、高規格幹線道路網を補完するというような役割がございます。

 これまで、規格の高いというようなことで、自動車専用道路的なところをイメージしてきておりますが、この地域の周辺ネットワークといいますと、先ほど、亀岡から京都に抜けるというお話をいただきましたが、京都の南側、西側も含めて、京都第二外環状道路といったようなもの、京都縦貫自動車道とリンケージするわけでございますが、そうした道路も計画されているということでございますので、この地域にどうした規格の道路がいいというようなことを、原点に返って、京都府また大阪とも協力しながら詰めさせていただいているというところでございます。

 明確な基準とかいうような前提となって、その道路の性格等を今詰めさせていただいているということでございますので、その上で、熟度が高まってきた場合には、費用対効果とかそういったものをはじきながら、どう事業化していくかというようなことについて判断をさせていただければと思っておるところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 地元としては、亀岡の市民としては、ぜひとも、第二名神の計画もあると思いますが、そこを起点として、そして亀岡の中心を走っていく京都縦貫道、これを終点としてつなげてそういったルートをお願いしているところなんですが、なかなか財政の厳しい中、非常に難しい話かもしれません。

 先ほど申し上げたように、関西副首都構想の中で、阪神と京都のつながりとか、あるいは地元の、これは十万都市の亀岡なんですが、一方で田園地帯というか農村地帯というものもたくさんありまして、そもそもこの地域高規格道路の三つの求められている機能の中で、交流とか連携とか連結とかあると思うんですが、恐らく、中核都市と大都市をつなぐ連携の部分が非常に強いのではないか、そういった意義も私はあるというふうに思うんです。

 大臣にぜひお伺いしたいのは、今一連のお話を伺って、この京都中部阪神連絡道路についてどう見ているのか、どのような意義を感じられているのか、そこをお尋ねしたいというふうに思います。

○北側国務大臣 先ほど道路局長から答弁しましたように、京都縦貫道と第二名神を連絡する道路、ですから、道路というのはネットワークでございますので、道路ネットワークの効率を高める効果だとか、また、事故や災害があった場合の代替路として意義があるというふうに私も思います。

 ただ、御承知のとおり、第二名神そのものも、今、当面着工しないという区間もあるぐらいでございまして、そういう意味では、ある意味ではこの第二名神をどうするんだということについて早く結論づけていかないといけないなとも思っているところでございます。

 いずれにしましても、京都縦貫道それから第二名神等の関連する道路の整備状況、交通状況等も踏まえつつ、京都、大阪の両府と国とが協力をして、この道路の必要性についてしっかりと検討を進めさせていただきたいと思います。

○北神分科員 ありがとうございます。

 私もこの話をいろいろ勉強していて、やはり第二名神の話が一つの前提になるのではないか、同時進行的にやりたいというのは我々の要望なんですが、そういったところもなかなか難しいかというふうに思います。

 今大臣から、第二名神について結論を早く得られなければならないなという御感想がございましたが、まさに第二名神の、今計画中、進行中だと思うんですが、進捗状況というのはどうなっているのかというのを、事務局で結構ですが、お尋ねしたいと思います。

○谷口政府参考人 お答えいたします。

 今大臣の方から御答弁ございましたが、高槻から八幡ジャンクションにつきましては抜本見直しというようなことになっておりますが、高槻から西の方、神戸間につきましての整備状況をお話しさせていただきたいと思います。

 そもそも第二名神高速道路は、名古屋市と神戸市を起終点とする全体百七十四キロメートルの高速自動車国道であるということでございますので、第二東名高速道路と一体となって、三大都市圏を相互に結び、人の交流と物流を支える大動脈ということでございますので、新しい世紀の国土の軸となる重要な路線ということでございますし、また、今お話ございましたが、災害時などを含めても、代替路線として不可欠な路線であると考えておる次第でございます。

 高槻から神戸間、約四十キロメートルございますが、ことし二月に開催されました第二回国幹会議の議を経て、西日本高速道路株式会社が整備する区間として決定されております。現在、会社におきまして、用地買収に向けた測量、土質調査及び地元設計協議を行っているということでございます。

 当該区間につきましては、宝塚トンネルというようなところも大きな渋滞を起こす頻度が高いということでございますので、地元の御理解と御協力を得ながら西日本会社において事業が促進され、一日も早い供用を目指して私どもも全力を挙げて取り組ませていただきたいと考えておるところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 なかなかこの話も、道路整備全体が我が党を含めて大変厳しい目が向けられている中で、非常に決定が困難な部分もあるというふうに思うんですが、この話についてレクをしているときも、役所の方でも認識が余りなされていないなというふうにも見受けられましたし、ぜひ、亀岡市、京都府でこういった要望があるということを御認識いただきまして、厳しい状況の中でその実現に御努力いただきたいということをお願い申し上げたいというふうに思います。

 最後に、こうした道路整備のお願いとか私もさせていただいているわけでございますが、一般論として、現実に、私は何度も申し上げたように、今財政状況が非常に厳しい。その中でもとりわけ公共事業、その中でも道路整備というものに対して非常に厳しい声がある中で、私は、もちろんいわゆる無駄なものというものは、これは当たり前の話で、減らさないといけないし、そういったものをつくってはいけないということだというふうに思います。

 しかし一方で、何が何でも一律に支出をカットして、公共事業はすべて悪いという話も全く、これはどこの国を見てもおかしな話であるというふうに思って、賛同しがたいものがあるというふうに思っております。さらに言えば、財政の引き締めだけで本当に国というものが発展するのか、栄えるのか、そういったことも私は極めて疑問に思っているわけでございます。

 もともと私も大蔵省の方で十年ぐらい勤めていましたが、やはり大蔵省のそういった視点だけで国を動かされると非常に縮小均衡の事態になってしまうなというのが私の率直な考えでございまして、活力のない経済社会の中で税収の自然増収とか考えると、財政再建でさえ本当に可能なのか。単に歳出をカットして歳入を引き上げるだけで財政再建ができるというのは、私が勉強したところでは、古今東西そんな例はない。やはり経済の活力というのは大事だし、その下支えになる公共事業、道路も含めて、そういったものも大変大事だというふうに思っております。

 そういった非常に難しい状況の中で私も本日こういった質問をさせていただいたわけでございますが、大臣におかれましては、無駄でない道路、そして無駄な道路、私は、この基準というものがはっきりできれば一番いいのではないか。そうしていかないと、一律全部だめだという話になってしまう。しかし、これはなかなか難しい質問だと思いますが、大臣の経験とかを踏まえまして、どのようにその基準というものをお考えになっているのかというのをお聞かせいただきたいというふうに思います。

○北側国務大臣 与党の中でもいろいろな意見がありますけれども、民主党の中もいろいろな意見があるんだなということがきょうよくわかりました。

 私は、まず、無駄な道路という表現が実を言うと余り好きじゃないんですね。私も一昨年九月から国土交通大臣に就任してから、国土交通省というのは本当に幅の広い役所でございますが、私のところにあるさまざまな御要望、やはり圧倒的に道路が多いんですね。圧倒的です。それも、北海道から九州、沖縄まで、どの地域、私がいろいろな地域へ行っても、地元の知事さん、首長さん、経済界の方々、どこに行っても、この道路がというお話を必ずと言っていいほどお聞きするわけですね。そういう意味で、道路整備というのは、我が国においてはまだまだやらなきゃいけないところが多いと私は認識をしております。

 とともに、一方で財政の問題がございます。財政も危機的な状況の中で、やはりこれから、これは道路だけではなくて公共事業すべてそうだと思うんですが、優先順位というものを明確にしていく。必要性の程度、緊急性の程度等々、これは総合的に勘案をして、そこはきちんと数値で出していかないといけないと私は思いますが、総合的に勘案して、やはり優先順位、プライオリティーというものをつけていくことだというふうに思っているところでございます。

 御承知のとおり、今、道路特定財源の見直しの論議がこれから本格的に始まってまいります。もう一つは、この道路特定財源の問題と同じく、公共事業をこれからどうするのという議論もあるんですね。幾ら道路特定財源について確保しても、シーリング、委員は専門ですから、シーリングの方で毎年何%制約だというふうにキャップをかぶせられてしまいますと、幾ら道路特定財源があっても道路に使えないわけでございまして、この道路特定財源をどうしていくかという問題と、今後公共事業、道路投資をどうしていくんだという話と、二つはもちろん関連しておりますが、一応別の問題として議論がこれから進んでいくところだというふうに考えております。

 そういう中にあって、ぜひ、この道路特定財源の見直しの問題であれ、公共事業、特に道路投資の今後のあり方にせよ、やはり足が地についた議論をしていただく必要があると思っておりまして、そういう意味では、余り観念論、抽象論で議論するだけではなくて、例えば、これは私、去年お願いしたんですけれども、各整備局単位ぐらいで、関西なら関西で、整備目標についても具体的なイメージを出してもらいたい、そうした方が議論がしっかりできると。

 例えば、これから十年間で、仮に今までの予算というものをそのまま、同じような予算でどの程度の事業が、コスト縮減も加味してどの程度進んでいくのか、そういう絵をきちんとやはり示した方がいいですね、そうしないとなかなか地についた議論にならないので、それをぜひやりましょうと。

 それと、これからは、これも社会資本全体に言えることなんですが、維持管理コストがすごくかかってくるんですね。やはり、従来整備されてきた道路等につきまして維持管理を適切にやっていかないと、結果としてライフサイクルが短くなってしまって国民負担が大きくなってしまうという問題もありますし、あと、橋の問題なんかでいいますと、例えば昭和三十年代、四十年代につくった橋が、今やもう四十年以上たつのも出てきているわけですね。そうすると、いずれ近い将来更新をしなきゃいけません。その更新コストについてもきちんとこれからは念頭に置いていく必要がある。だから、新規の事業だけではなくて、維持管理コストが必要です、これからどんどんふえてきますよ、いずれ更新コストがふえてきますね、そういうこともある程度試算を出していただきたいなと。

 それとあと、優先順位の問題としていいますと、例えば、これは首都圏でも関西でもそうだと思いますが、日本の道路というのは環状が十分できていないんですね、環状道路が。都心に行く道路は割と比較的できているんですが、環状道路ができていない。これが非常に道路渋滞だとか環境の悪化につながっている。こういうのはやはり優先順位が高いねだとか、それから空港とか港湾とか、こういうところのアクセスになる道路というのも、これまた、これからの国際競争を維持向上させていくという観点からも非常に優先度が高いねというふうに、それぞれ、これから優先順位が高くなる考え方、手法としてどんなものがあるかということもぜひ議論をお願いしたいと。

 そういうことを、実を言うと、先般、国土交通省で、道路局を中心に取りまとめを案として、あくまでたたき台です、これは何か決めたということではありません、今後の議論の参考にぜひしていただきたいということで、道路整備の中期ビジョン案というのをつくらせていただいたところでございまして、こうしたものを参考にしていただいて今後の御議論を、政府・与党内でもしっかりやりたいですし、国会内でもぜひお願いをしたいというふうに思っているところでございますので、議員におかれましても、一度ぜひ話をお聞きいただければありがたいと思っているところでございます。

○北神分科員 ありがとうございます。

 もう時間が過ぎましたので終わりたいと思いますが、私も去年初当選をして初めてこういう道路の話とか多少勉強させてもらったんですが、最後の大臣の答弁、非常に勉強になりました。ぜひ、そういった方向で我々も議論に参加していって、ちゃんとした道路整備というものを戦略的に、そしてコストをできるだけ安くして進めていければというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

○柴山主査代理 これにて北神圭朗君の質疑は終了いたしました。

全議事録

「意匠法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきました。

北神質疑
2006年5月31日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 先週の金曜日に引き続きまして、知的財産権の質問をさせていただきたいと思います。

 前回は、産業戦略全体の中で知的財産権の戦略というものを考えるべきだ、そのためには審査体制というものを充実していく、さらには、企業分野に応じて審査体制というものを重点配分するとか、あるいはそういった案件について迅速な審査というものを進めていくべきではないかという議論をさせていただきましたが、本日は、まず、そもそも、我が国の特許に関して言えば、その特許の審査の対象となるものが限定され過ぎているのではないかというお話をさせていただきたいと思います。

 具体的に、御存じのように、特許の審査となるものは発明に限られる。この発明とは何ぞやというふうに申しますと、特許法の第二条に「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」というふうにあります。これでは、特許の対象概念というものが、言ってみれば、高度な技術的創作に限られてしまうということになってしまいます。そういうことでいえば、例えば、さほど高度な技術を使っていなくても、いろいろな既存の技術、手法を組み合わせてつくった商品とか、あるいは農業の方法とか、あるいはビジネスモデルとか、さらには医療技術、こういったものがそもそもその審査の対象にならないという部分があるというふうに思います。

 例えば、私も、たまたま先週末、地元京都の方でいろいろ歩いていますと、中小企業の社長さんで、床の間をコンパクトにしてマンションにも設置できるような、そういった商品を開発されている方がいるんですね。これは北山杉を使ってやるんですが、別に特別な技術を使っていると思わないんですよ。木があって、北山杉の柱がありまして、それに畳をちょっとくっつけて、多少ねじのつけぐあいが何か特殊な技術を使うみたいなんですが。これも今出願しているらしいんですが、まだ特許請求はしていないみたいですが、こういったものも、場合によっては、私も素人なのでわからないんですが、高度な技術を使っていないということで、そもそも窓口で却下されてしまうおそれもあるのではないかというふうに思います。

 他方、アメリカの方では、御存じのように、全く限定されていないんですね。発明でもいいし発見でもいいし、いろいろなものが対象になっている。もちろん、ヨーロッパの方では日本に近い制度だということも承知しておりますが、日本も知財というものを戦略的に優位に進めていくのであれば、できるだけ間口を広げて、裁量の余地があった方がいいのではないか。つまり、最終的に特許として認めるかどうかは別にして、入り口の間口というものを広くして、知的財産権の審査対象を広範なものにした方がいいのではないかというふうに思うのですが、長官、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

○中嶋政府参考人 今御質問いただきました特許の保護対象の範囲の問題でございますけれども、まず、いわゆるビジネス方法の保護の現状についてお答え申し上げます。

 確かに、御指摘ございましたように、アメリカでは、いわゆる純粋ビジネス方法とよく言うんですけれども、自然法則を利用していないような発明であっても、特許の対象になる可能性はございます。ただ、ちなみに、アメリカという国はやや特異な国でございまして、これはビジネス方法とは言えないと思いますけれども、ブランコのこぎ方とかあるいはゴルフのパターの仕方とか、そういうのも場合によって特許になっている例があるようでございまして、そういう意味では、先進国の中でもやや特異な例がございます。

 話をもとに戻しますと、日本では、いわゆる純粋ビジネス方法というのは特許の対象にはなってございません。ただ、日本でも、ビジネスの方法につきましてソフトウエアによる情報処理が具体的に実現されているような場合には、これは特許として保護対象となっております。こういった、ビジネスの方法についてある一定の範囲では、つまり、ソフトウエアによる情報処理とか、ある一定の範囲内においては認めていくという扱いにつきましては、ヨーロッパも日本と同様でございます。

 ビジネス方法について特許対象としてどう扱うかということは、実は平成十三年に産業構造審議会でも、産業界あるいは学者先生初め関係者を集めて議論をかなり徹底的にしました。結論としては、純粋なビジネスの方法につきましてまで特許を与えるということになりますと、ビジネスの仕方についての独占を過度に強めて、自由な競争を阻害するとの懸念も示されまして、今の日本の特許法の発明の定義を直ちに改正すべきだという結論には至りませんでした。

 それからまた、委員が例示で挙げていらっしゃった医療方法の保護の現状についてお答え申し上げますと、日本では、人の生命、身体の保護と密接な関係を有します人間を手術あるいは治療とか診断する方法については、産業上利用することができる発明には該当しないという形で、特許を付与しないという運用を行っております。

 実は、これはまさに御指摘ございましたけれども、ヨーロッパにおいても、日本と同様に、人間それ自身を手術、治療または診断する方法については特許の対象としておりません。他方、アメリカにおきましては、日欧と異なって、こういった方法につきましても特許の対象になる場合があるということは御指摘のとおりでございます。

 この医療方法の特許のあり方につきましても、平成十五年から十六年にかけまして、これは政府の知的財産戦略本部の中で、医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会という場で検討いたしました。結果として、医師に係る技術についてはやはり慎重な配慮が必要であろうということから、特許の対象にすることからは除外されましたけれども、他方で、医療機器とかあるいは医薬に関する技術については、特許の保護の拡大を図るということになったわけでございます。

 日米欧の中でも、特許の保護対象というのはおおむね同じではございますけれども、細かいところを見ますと、やはり御指摘のように違いは確かにございます。したがいまして、特許庁といたしましては、これまでも、いわゆるプログラム特許といったようなものは新たな分野として特許付与の対象にしてきたところでございますけれども、今後も、いろいろ新しく出現する技術を的確に保護の対象に取り入れていくべく、具体的な技術の動向やあるいは国際的な議論の動向なども踏まえて、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

○北神委員 アメリカの制度が特異だということとか、あるいは間口を広げても、パターの仕方とか、余り産業振興にはつながらない、そういった部分もあると思うんですが。

 これも、私も本当に不勉強で聞きかじりなんですが、アメリカにカーマーカー特許というのがあって、カーマーカーというのはインドの数学者の名前らしいんですが、要は、冷戦時代にレーガン大統領が、ソ連との対決の中で、SDI、スターウオーズ構想というものを考えていた。つまり、弾道ミサイルを撃たれたときに、宇宙の衛星からレーザーか何かで撃ち落とす。弾道ミサイルが飛んでくる中でレーザーを命中させるというのが、非常に高度な、アルゴリズムとか何かそういう数学の方法を使ってやらなければならない。そして、そのインド人のカーマーカーさんがその法則というか数学のやり方というのを考えついた。こういったものもアメリカでは特許の対象になったらしいんですね。これもまた、SDIの構想だけじゃなくて、こういった数学の方法を産業の部分にも応用されているというふうに聞いているんです。

 ですから、これがもし日本の特許の対象からすぐ、もう窓口から外されちゃう、これは何ら高度な技術を伴うものではなくて、単なる数学の方法論にすぎないということで却下されて、本来だったら、もしかしたら潜在的に産業にも適用される可能性があるものをみすみす逃してしまうのは非常に残念だな、そういった観点から私は申し上げております。ただ一方で、長官おっしゃったような問題点もよくわかっておりますので、法律を改正して発明という定義をさらに広げるとか、あるいはもう無制限にするとか、そこまではいかなくても、長官おっしゃったように、運用上にできるだけ新しい、産業に結びつくようなものはどんどん対象にしていただきたいなというふうに申し上げたいと思います。

 次は、今まで知財戦略の攻めの話ばかりをさせていただきました、あるいは攻めるための体制の整備みたいな話もさせてもらいましたが、一方で、防衛の話も大事だというふうに思います。すなわち、模倣品の話でございます。

 これも、野田委員とか、先週の金曜日に質問があったと思いますが、私も経済産業省の方から伺ったら、中国に対して、平成十七年の六月二十三日に、中国における知的財産権侵害実態調査というものを日本の企業に行っている。いろいろな問題点が浮かび上がった。それについて中国に、こういう問題点があるけれども、政府としてはどうですかというふうに尋ねたところ、返事が来なかった。それを受けて、今度はWTOの、さっきも長官が話されましたが、TRIPs協定、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づいて情報提供要請を行った。これは昨年、平成十七年の十月二十七日に行ったということでございますが、これでアメリカもスイスも同じような請求をしたというふうに伺っております。

 何を申し上げたいかといいますと、単独で日本が中国に模倣品の取り締まりをちゃんと徹底してくれとか、あるいはアメリカが中国に対してやるとかヨーロッパが中国に対してやるとか、単独でやると、無視をされたり回答しなかったり、あるいは、場合によっては、日本がそんなにうるさいことを言うんだったら、もう日本とは取引はしない、むしろアメリカとかヨーロッパと積極的にやりますよとか、そういった外交の戦術でなかなか踏み込むことができないということがあると思いますので、日本とアメリカとヨーロッパが大体同等の、知的財産保護の制度とか意識の水準が同じだというふうに思いますので、やはりこの三極で連携をして中国に申し出るべきだというふうに思うんですね。

 さっきのTRIPs協定の話も、これはアメリカとスイスも日本と同様に中国に情報提供を迫っているみたいなんですが、これは連携してやっているのか、それとも、たまたま偶然個別でやっているのか、その点についてお伺いしたいのと、それに合わせて、三極で連携すべきではないか。この前も特許庁を視察させていただいたときに三極の会談をやっておられましたが、まさにそういったところで事前に連携を深めて、それで、もちろん強硬な姿勢だけではだめだと思うんですが、どのように中国にちゃんと模倣品を取り締まってもらうのか、総合的に検討した方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

○西野副大臣 委員がお示しのとおり、中国におけます日本企業にとりましては文字どおり最大の知的財産権侵害の被害が生じておるところでございまして、特許庁の試算によりますと約九兆円、中国の国務院のデータによりますと約三兆円、これだけの被害が及んでおるという甚大なものであります。

 このため、今先生からは二国間、三極間というお話が出ておりますが、我が国としましては、まず二国間の協議につきましては、中国への官民合同のいわゆるミッションの派遣等をこのところ、二〇〇二年にもあるいは二〇〇四年、二〇〇五年。実はこのミッションは今週の末、本年度ミッションを派遣することになっておるところでございまして、そういう中で、中国政府に対しまして、模倣品とかあるいは海賊版と言われるものに対する取り締まり、罰則の強化を図っていきたいというふうに思っております。

 特に、欧米で、具体的におっしゃいましたが、米国とかスイスとも当然ながら連携をしまして、お示しのとおり、WTOにおけます知的所有権関係の協定、そういうものに基づきまして情報提供を要請いたしておるところでございまして、さらに、その理事会の中でも、中国政府に対し取り締まりの強化を実は要請するなどして連携を深めておるところでございまして、今後とも、中国初め欧米との関係も密接に持ちながら、この知的財産の保護強化ということに取り組んでいきたいと思っております。

○北神委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 今、西野副大臣のお話によれば、WTOのTRIPs協定に基づいた行動というのは一応連携をしてやったという話だと思いますが、ぜひそういうパターンで続けていった方が効果があるのではないかというふうに思いますので、お願いしたいと思います。

 また、外国における模倣品対策については、国内のそれに応じる体制というものも充実していかなければならない。先日はその審査の体制の充実の話をさせてもらいましたが、特に模倣品の話というのは大変な金額の損失があるわけですよね。今、副大臣からお話があったように、日本の計算でいけば十兆円も被害があるということでございます。中国だけではなくて、ロシアとかほかの国にもこういった問題があるわけでございます。

 これもたまたまなんですが、アメリカの外交問題評議会というシンクタンクのある研究員のアメリカ人のシーガルさん、カモメですけれども、シーガルさんという人とお話をさせてもらったんですが、彼が言うには、アメリカもやはり外国における模倣品対策というのは非常に真剣に取り組んでいると。具体的に、たしかアメリカの商務省の中に専ら国際的なこういった模倣品対策に対応する特別の担当官を設けた、さらには、アメリカの在北京大使館の中にも専ら中国における模倣品対策に専念する担当を設けていると。こういった気合いの入れようなんであります。

 私は日本も、もうこれほど次から次へと日本の企業が中国において痛い目に遭っているわけでございますから、こういった政府の体制整備というものも図らなければならないというふうに思うのでありますが、通告はちょっとないので恐縮なんですけれども、この点についていかがでありましょうか。

○中嶋政府参考人 模倣品対策でございますけれども、実は政府全体の知的財産推進計画をここ三年やってくる中で、各省統一的な体制を組もうということで、経済産業省の製造産業局の中に模倣品の対策室というのを設けまして、そこが国内におきましては一元的な窓口になってやっておるわけでございます。

 一元的な窓口というのは、当然そこを中心に外務省とかほかの省庁とも連携をとって当たるということでございますし、それから、海外におきましても、実はアメリカの場合は、やはりアメリカの各国の大使館に担当者を置いているわけでございますけれども、日本の場合も、日本の各国の大使館に担当者を置くと同時に、ジェトロなども活用いたしまして海外でも連携をとって対応していくということで、政府全体として、国の中でも外でも体制を組んでおるところでございます。

○二階国務大臣 ただいまの中国の模倣品の問題につきまして、私は先般北京に伺いましたときに商務大臣と直接このことを議題として取り上げて日本側の要請を申し上げたところでありますが、中国側も、これは日本のためにとか国際社会のためにだけではなくて、我が国自身としても、模倣品、つまり知的財産権を守るということに関してのやはり学習が大事で、違反をする人たちに対して全国五十の箇所で取り締まり本部を設置する、こういうお話でありました。

 したがって、私は、先般東京で行われました省エネ・環境フォーラムにおきまして、八百五十名ぐらいの方々がおられる前で、今議員御指摘のミッションを近く派遣するということも正式に申し上げております。

 だんだんと話し合いが軌道に乗ってきたところでありますが、これから我が国として、技術的にどんな面で協力できるかというようなところは、これはもう積極的に乗り出していって協力をする、そういうことで、一歩一歩前へ進めていきたいと思いますが、今回の官民の合同のミッションはそれなりの成果を上げてこられるものと期待をしているところであります。

○北神委員 ありがとうございます。

 体制もしっかりされているということと大臣もそういう決意で臨んでいるということを聞いて、引き続きそういう方向で頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、その関連でいえば、中小企業の問題ですね。中小企業に限定すれば、中小企業の方々も中国でいろいろな痛い目に遭っているというふうに伺っております。そういった場合、基本的には訴訟とかで権利侵害行為の差しとめとか逸失利益の回復というものを目指すというのが通常の手段だというふうに思うんですが、残念ながら、御存じのように、中小企業の経営体質の中で、経営体質というよりかは体力の限界の中で、なかなか訴訟を行うというのが厳しい、海外における人的あるいはコスト的にも非常に負担が大きいということで非常に困っているという現場の声も伺っております。

 こういった点について、政府として、今度の法案もいろいろ水際で模倣品をとめるとか輸出輸入の両面において防止をするという話がありますが、こういった中小企業の訴訟に関する救済措置みたいなことは考えられないのかな。そもそもノウハウもないし、中国における人脈もなかなかない。さらに言えば、金銭的な問題もあるというふうに伺っておるんですが、いかがでしょうか。

○西野副大臣 海外におけます中小企業の受けます模倣被害というものはこれまた大変でございまして、特許庁が二〇〇四年に実施をいたしました調査によりますと、中小企業の割合は実に二四%に達している、こういうことでございます。そうすると、四社に一社は被害を受けている、こういう単純な計算になるわけでございますが、これは大変なことだというふうに思っております。したがいまして、中小企業が受けます知的財産の被害というものを戦略的に保護する必要があるというふうに思いますし、その仕組みについて整備をすることも重要であるというふうに思っております。

 具体的に申し上げますならば、先生がお示しのように、現地でそういう被害を受けたと。例えば、それを調査するについても、あるいはその他の、裁判をするにしても、中小企業としてはそれだけの資金的な余裕もなかなかない。こういうのが実態であろうかというふうに思いますが、政府といたしましては、例えば、調査をいたします場合、調査会社に委託をいたすわけです、ジェトロを通じてやるんですが、そういうものに対する支援制度を実施いたしております。

 さらにまた、国内において、知的財産に関するいわば駆け込み寺といいますか相談に行く窓口、商工会とか商工会議所にそういう相談窓口を置きまして、そして、そういう相談がありましたときは、会議所が弁理士等しかるべくスムーズに専門家を紹介するとかつなげていくとか、そういう体制を講じておるところでございまして、今後とも引き続いて、これらの知的財産の保護のために、中小企業のために可能な限りの支援は続けていきたいというふうに思っております。

○北神委員 ありがとうございます。

 ぜひそういう方向で、あと周知徹底も、そういった制度がいろいろあるということもなかなか知らない方もあるような感じもしますので、周知徹底の方もお願いしたいというふうに思います。

 今、技術流出の話、海外における模倣品の話をさせてもらいましたが、もう一つ、これは野田委員も先週の金曜日に質問されましたが、出願の公開制度についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 あのときの質疑の中で、出願をして、それを一年六カ月たったら公開をして、そこで外国人がみんなそれを見て、いろいろな技術を、ある意味では自分たちのものにしていくというような現象がある、そこでいろいろな技術流出が行われているということでございます。あのときのたしか政務官の答えによりますと、重複研究とか重複出願の弊害を避けるためにこの公開制度というものはあるという話であったわけでございます。一方、現実の問題として技術流出というものが行われているのであれば、わざわざ出願の段階ではなくて、例えば、特許が取られた、認められた後に公開する、そういったものだけに限定して公開すると。たしかアメリカなんかはそういう方法で、最近変わったかもしれませんが、やっていると。

 ただ、何も合わせる必要はないと思うんですよ。技術流出というものを重く見るのであれば、何でわざわざ出願の段階で公開をするのかな。重複研究、重複申請というものを避けるのも大事だけれども、自分の価値判断の中では、やはり技術流出の方が重たいのではないか。今後、一方では、審査体制というものを充実すればある程度対応できる話であるわけでございますから、その点について、やはりもう一歩踏み込んで検討していただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○片山大臣政務官 前回も野田委員の方から類似の御指摘がございまして、まず、技術流出ということにつきましては、まさに非常に重要な問題でございますので、その防止を図るために、企業は、開発した技術を公開が前提となる特許権の取得の対象にするのか、あるいは、ノウハウとして対外的に秘匿するのかを慎重に選択していただくということがまず必要になるわけでございます。

 特許権の取得を選択した場合には、海外でも権利化していただく、そういったことが一番あるわけですが、より戦略を持って取り組んでいただくことが必要でございまして、さらに、ノウハウとして秘匿するということを選択した場合には、営業秘密として徹底した管理を行う。それから、その後他者が特許権を取得したとしても、この間もそのお話が出ましたが、無償で通常の実施権が得られる制度、いわゆる先使用権の制度を活用していただくということがあるわけでございます。

 この先使用権制度につきまして、現在、私どもの特許庁の方で、法曹界ですとか産業界等からいろいろな有識者の参加も得まして、この先使用権の要件や範囲、それから立証手段を明確にするためのガイドラインを作成する、それもできるだけ早く作成するということをやっておりまして、これを早く完成させ、周知させて、委員御指摘のとおりに、まず技術流出を防止するような手だてを企業側がとりやすいようにするということをやってまいりたいと考えております。

 その上で、さらに、出願の公開制度でございますが、やはりこれは、アメリカも含めまして、国際調和ということがございますし、それから、審査請求期間ですとか審査期間が存在することによりまして特許の付与に時間を要するという状況下にありましては、やはり、長期にわたってこの内容が全く公開されないという状況になりまして、その間、無駄な投資とか無駄な出願がどうしてもある。その出願から時間を経た技術が、ある日突然、これが特許ですよということで公開されるということになってしまうわけでございまして、多くの第三者が常に不安定な状況で事業をやっていくということになる、逆から見るとやはりそういう問題がございます。

 ですから、いろいろなことを総合的に勘案すると、やはり、当面、出願公開制度というのは今後ともあった方がいいというのが今のスタンスでございますが、技術流出につきましては、最大限、その防止を図るために、今急いでいるところでございます。

○北神委員 もう時間が来ましたので終わりますが、ぜひ、技術流出の点についてもしっかりと取り締まっていただきたいということで、知財戦略というものを産業戦略の中で位置づけて、攻めの部分と守りの部分というものをしっかり対応していただきたいなということを申し添えまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。

全議事録

「意匠法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきました。

北神質疑

2006年5月26日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 質問に入る前に、先日、特許庁の視察に行かせていただきまして、大臣、副大臣、政務官、そして特許庁長官を初め関係者の皆さんに御礼を申し上げたいと思います。

 非常に勉強になりまして、審査官たちが特殊なコンピューターで審査をしている状況とか、ちょうど欧州と米国と日本側で国際会議を、多分その三つだと思うんですが、三極の会談をしている場面も見させていただきました。

 昼飯のときに大変おいしいお弁当が出て、普通は四角い箱なのが丸い箱で、俗に丸弁というふうに言われると思うんですが、これも意匠法上独創性があるのか、豆腐も四角いのを丸く切っただけではなかなか認められないという説明を受けた直後だったので、そういうマニアックな特許の世界にいざなわれたような気分でございました。

 そうした経験を踏まえて、本日質問をさせていただきたいと思います。

 意匠法の改正案でございますが、法案の個々の中身というよりは、先ほど野田委員からも冒頭お話がございましたが、経済戦略上どうなのかということをお聞きしたいと思います。

 言うまでもなく、特許制度、知的財産権というのは、普通は、自由主義経済の中では独占をできるだけ排するという中で、いわば例外的に、個人や企業の発明に対して排他的な独占権を付与する。なぜそういう例外的なことをするのかといいますと、御存じのように、特許法の第一条にありますように、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」と。

 つまり、さっきもマニアックな世界だと申し上げましたが、この勉強をしていると、だんだん細かい世界に入っていってしまって、そもそも特許というのは、国家の産業戦略の手段としてあるということを忘れがちでございます。

 一方で、この十数年間、政府も政治家も官僚もメディアも経済評論家も、私に言わせれば、極端な小さな政府病というものにかかってしまっている。国の産業政策とかいったものは過去の遺物だ、そして国が産業政策に介入すべきではないとかそういった、私に言わせれば、誤った考え、認識というものがはびこってしまっている。

 現実に、アメリカの今の経済の足腰の強さとかいったものも、レーガン、ブッシュ政権時代の行革路線、そういったこともあるんですが、レーガン時代に考案され、クリントン政権のときに採用されたヤング・プランという、まさに総合的な産業戦略に大きくよっているものだというふうに思っております。それに引き続き、アメリカでは、第二のヤング・レポートということで、イノベート・アメリカという産業戦略に関する政策が打ち出されている。

 こうしたことから、今の政府のように歳出歳入改革とか公務員削減、こういうのも大事な部分もあると思うんですが、こういった消極的なことばかりではなくて、将来への大胆な投資、環境整備というものをしなければならないというふうに思っております。

 そういった大戦略の中で知的財産権の戦略を考える必要性、これについては、大臣を初め経済産業省の皆さんや特許庁の皆さんも基本的には同じ認識だと思いますが、先ほどの野田委員の質問と多少重複しますが、経済戦略の中で知的財産権というものをどう位置づけるのか。先ほど大臣は、技術というものが大事だからそういうものを保護していかないといけないという話だったんですが、できればもう少し具体的に、どういう位置づけにあるのかということをお答えいただければと思います。

○二階国務大臣 まず、北神議員から、特許庁においでをいただきまして特許庁職員を激励いただいたということは、大変ありがたいことだと思っております。

 私は、かつて運輸省の政務次官を務めたときに、大臣の代理で気象庁へ参りました。気象庁へ政務次官クラスから上の者が来たことはないんだ、よく来てくれたということでありましたので、そんなに言ってくれるなら改めて一日気象庁ということで、朝から晩まで気象庁で過ごさせていただくから、自分もある程度勉強して出直してくるということで参りまして、気象庁の皆さんからいろいろなことを伺ったことがあります。

 特許庁も、大変重要な国の施策を担っておるわけでありますが、その割に、目立ってとか華やかだとか、その瞬間瞬間の仕事には余り恵まれないわけでありまして、しかし、国の産業の重要な部分を担っておるという自負心を持ってみんなが頑張っておるわけであります。そこに委員各位がお出ましをいただいたこと、特許庁長官も大変喜んで報告をしておりましたが、今後とも、相変わらずこういうところにもしっかり光を当てていただきたい。

 そして同時に、その産物として、産業財産権の活用企業について、この前百選というのを皆さんにもお示しをさせていただいたわけでありますが、この中で、私も幾つか存じ上げております企業もあります。

 これを見ておりますと、やはり、すばらしい発展を続けておる企業というのは特許の数も多いし、それから取得する特許の率が高いんですね。特許は、出すのは、幾らでもだれでもある一定の要件を整えれば出せるわけでありますが、なかなか特許に至るまで、時間ももちろんかかりますが、必要性を認められるというところに到達できないのも数々あるわけであります。その点において、優秀な企業は率が高い、しかも国際的にもそれが堂々と認められておるということでありますから、私どもは、これから新経済成長戦略を基本に据えて、これからの日本経済の再生に向けて積極的なチャレンジを行おうとしているわけでありますが、その際、議員も御指摘になられたとおり、特許という問題をかなり大きな位置づけをして対応してまいりたいと思っておる次第であります。

 日本経済を語る場合には、議員も御承知のとおり、人口減少だ、そして高齢化社会だということは決まり文句のように言われるわけでありますが、そうしたことはわかり切ったことでありまして、さて、それでうずくまってしまっておるわけにはいかない、そこから我々はやはり立ち上がっていかなくてはならない。そういう意味で、知的財産の問題等は重要な役割を果たす分野である。したがって、人の問題につきましても、何でも減らせばいいというのではなくて、重要なところ、お国のために役に立つ分野についてはむしろもっと人をふやすぐらい、充実していくぐらいのことがなくてはならない。

 それと同時に、やはり特許のスピードアップですね。これも、特許というのは申請して長く待たされるものだということが世間の相場になっておりますが、こういうことは一日も早くぬぐい去って、新しく、みんなが意欲に燃えて特許申請をしてくださるようにしていきたいと思っております。

 また、対外的な問題で一つ例を挙げれば、ロシアのエネルギー担当大臣とエネルギーの問題について話し合った際に、日本でもロシアに進出する、投資をする企業の中に、ロシアに対しての苦情がやはり多いんだ、しかし、一企業でロシア政府に苦情を言っていっても、それが日本と同じようなルールで取り扱われるかどうかということは常に明らかではない。

 したがって、ロシアの側にも日本の側にも苦情相談所を設けようじゃないか、相互にその苦情相談所で話し合っていくというふうにしてはどうかという話をしましたら、大賛成だ、こう言われるから、大賛成と言うたままでまた半年も無為に過ごすというのではいかぬので、きょうはお互いの責任者を決めようではないかということを申し上げましたら、向こうは直ちに責任者の名前を提示して、ここに同席しております、自分の、大臣の最も信頼する人物を充てる、こう言われましたから、私もあらかじめ考えてはおったんですが、直ちに我が国の方では長谷川審議官をこれに充てるということで、しっかり対応する。

 そうしますと、先般、その苦情が一件見事に解決ができました。その解決できたということを、日本側や日本の関係者が喜ぶだけではなくて、ロシア側が喜んでいるんです。これでお互いに信頼関係に基づいて事業を展開していくことができる、日本のためだけではなくて、ロシアにとってもありがたいということでありました。

 先ほど来、中国の問題も出ておりましたが、各国との間で知的財産権をめぐって問題をスムーズに解決するためにどうすればいいか、こういうことも考えていきたいと思っておりますが、いずれにしましても、これからの日本経済を日はまた上るというところへ持っていくためには、知的財産権は重要な役割を果たしてくれるであろうということを期待している次第であります。

○北神委員 大変力強い決意のほどをお聞かせいただきました。また、産業戦略の中で、知的財産権について、人員を集中的にふやさなければならないとか、審査の迅速性の話とか、あるいは対外的な交渉の話も具体的にお述べになられました。

 そこで、これは大臣というよりは事務方でも結構なんですが、もう一つ踏み込んで、産業戦略といっても、新経済成長戦略というものもぱらっと読ませていただきましたが、横断的な部分で知的財産の部分をとらえている。基本的に、出願されたものについては迅速にどんどん審査していくとか、あるいは横断的に教育、人を育てていかないといけないとか、そういった話はございますが、私は、それと同時に、やはり縦の部分、つまり、日本の今後十年、二十年を担っていくリーディング産業というのは何なのか。たしか、新成長分野、潜在的成長分野とかなんかそういうものも指定されていると思いますが、そういったものも大変大事だ。アメリカのヤング・レポートも、やはりIT産業とか投資銀行を中心とした金融とか、そういったものをアメリカの二十一世紀を担う産業だという位置づけの中で戦略を組み立てている。

 戦後の日本も、造船、鉄鋼、その次は電機、自動車、そういった国際的競争力の大変強い企業が経済を牽引している。そういった事実がありますので、ただ規制緩和をして、何か民間からきっといいものは出るとか、そういった待ちの構えではなくて、積極的に焦点を定めてやっていくべきだと思いますが、そういった分野について、知的財産権をどのように考えていくべきか、どのように対応していくべきかということについて、見解がございましたら教えていただきたいと思います。

○大辻政府参考人 お答え申し上げます。

 新経済成長戦略におきましては、我が国産業の国際競争力の強化を大きな柱に挙げております。

 具体的には、将来の国際的な市場展開をねらえる分野といたしまして、燃料電池や情報家電などのいわゆる戦略七分野に加えまして、次世代知能ロボットや、がん克服のための先進的な医療機器、次世代環境航空機などを挙げておりまして、こうした産業の競争力を強化したいというふうに考えております。

 このため、企業における研究開発のみではありませんで、基礎的な研究や複数分野の融合した研究開発が重要だと考えております。例えば、燃料電池では分子レベルでの材料工学が必要であり、また、がん克服のためには医療と物理、化学などの融合が不可欠ということで、こうした研究開発に重点的に取り組むこととしております。

 その際、加えて、こうした研究開発の成果を知的財産といたしまして保護したり、また、国際標準の獲得により成果を広めるなど、市場化のための施策も重要と認識しております。

 新経済成長戦略におきましては、特に知財政策として、特許審査の迅速化、それから特許情報の有効活用、国際的な市場展開に必要な世界的な特許制度の調和、また技術ノウハウの管理強化などの分野を盛り込んでいる次第でございます。

 このような知財政策のみならず、人材育成、資金供給の円滑化などのさまざまな施策を組み合わせることによりまして、我が国を世界のイノベーションセンターとするとともに、アジア等近隣諸国の発展に貢献し、ともに成長していくということを目指してまいりたいと考えております。

○二階国務大臣 ただいま北神委員の御質問を拝聴しながら、私も大変同感だという思いをしておりますのは、ただ単に知的財産の問題がどうだとか、あるいは、できるだけ自由に闊達にみんなやっていただければ、その中から新しい発明が生み出されてくるんだというふうな、単に楽観的といいますか、自由放任的に、待ちの姿勢、言葉は何か新しいことを言っているように聞こえますが、実際は待ちの姿勢。私は、それではこの科学技術の進歩に役所がついていけない、後追いで走っていくようなことになってはならない。

 そういう意味で、今説明申し上げたような、次世代のいわゆる燃料電池の問題等にしましても、あれは慶応大学が中心になって、いろいろな企業の協力、参加をいただいて、今時速三百七十キロで走れる自動車に到達し、これは実験段階ですから当然のことでありますが、一台二億円ぐらいかかるわけであります。これではまだ一般にというわけにもまいりませんので、今考えていただいているのは、百台ぐらいつくって三千万円ぐらいでどうかというんですが、これもちょっと高過ぎる。そうすれば、これは我々素人の考えでありますが、三百台つくって千万円ぐらいにならないかというためには、やはり経済産業省が先頭に立ってこのプランを後押ししなきゃいけない。それは、フレーフレーということを言っているだけではなくて、基本的に、経済的あるいは予算的な支援をしていかなくてはならない。

 大蔵省御出身の北神議員が一番詳しいところでありますが、予算は既に決まってしまっておるわけでありますから、今直ちにというわけにはいかないというのは、これは常識ですが、我々は、その常識を破ってでも現在経済産業省に与えられておる予算の中から幾らかでも捻出して、この問題に対して対応する、その激励が関係者の一層の奮起を促すであろう。

 小泉総理もこのことに対して大変御熱心にサポートしていただいておりますので、私は、一例でありますが、そうしたこともこれから役所が先頭を切ってやっていくということでなければ、後の、説明を聞いて解説して回るだけの役所であってはならない、私はそう考えておる次第であります。

○北神委員 本当にありがとうございます。

 そのことについてきょう触れる予定はなかったんですが、まさに技術立国ということで、二十五兆円ぐらい大学の研究機関とか国立研究所とかそこに投資をする、そこから民間に技術移転がなされるということをも予定しているわけですが、それも本当に、大臣が今おっしゃったとおり、ただそこでほったらかしていてもなかなか民間に移転できないわけですよね。今、慶応大学の車の話もありましたが、なかなかコストが高過ぎると。

 ですから、そういった意味で、私は、今言われたように、政府が率先してその車のコストをより安くするためにバックアップするとか、あるいは、例えば特別な繊維の開発がなされて非常に防火にいいものができた、それだったら消防庁の消防士の服のために政府が調達するとか、そこまでやはり力を入れていかなければなかなか民間の技術移転というものは図れないというふうに思いますので、僣越ながら、そういった姿勢で臨んでいただければ本当にいいというふうに思います。

 それで、もう一つ私がきょう申し上げたいのは、ではそういったいろいろな分野を決めておられる、成長七分野、さらには次世代のロボットとか環境技術とか医療技術とか、こういったことに関連して、特許庁の中の予算とか人員の配分というものも本当は考えていかなければならない、あるいはもうお考えになっているのかもしれませんが。特許庁の組織という資料を見ますと、特許審査第一部、第二部、第三部、第四部と、それでこれが、物理、光学に関する発明の審査、機械に関する発明の審査、化学に関する発明の審査、情報通信に関する発明の審査と。

 そもそもこの縦割りでいいのかとか、今後の産業に合わせて、つまり私が申し上げたいのは、例えばロボットに力を入れるんだったら、それに関係する専門家の審査官というものを集中的に育てるとか、そこに予算と人員を充てるとか、そういった内部の機構の改正というものもしていかなければならないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○中嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁内の人材配置、具体的には審査官の配置でございますけれども、やはり、技術進歩の動向に応じまして、具体的には出願・審査請求動向に対応して、全体としてバランスをとって適切に配置するように、これは当然でございます。

 この点は、政府全体の知的財産推進計画二〇〇五におきましても、審査官を技術分野の社会的重要性や出願・審査請求動向の見通し等を踏まえて重点的に配置するというふうに決められてございます。例えば、最近ですと、バイオの関連の分野で審査官を増員しておりますし、また、御指摘のロボットなどにつきましても、一つのグループをつくって審査に当たっております。

 それから、審査官の質の向上につきましても、法律的な研修は当然でございますけれども、常に最先端の技術動向にキャッチアップするということから、民間企業との交流、例えば、民間に一時的に派遣をして、民間の専門家から最先端の技術動向を教えていただくとかいうような研修も行っておりますし、また他省庁への出向とか、あるいは、場合によっては在外大使館でも勤務するとか、さまざまな機会を設けることによりまして、ある意味で広い産業政策的な観点も含めて、かつ最先端の技術動向にもキャッチアップした的確な審査を行うように取り組んでおります。

○二階国務大臣 ちょうどいい機会ですから申し上げておきたいと思いますが、がん対策の問題につきまして、今、国会でもいろいろ御論議をいただいておるところでありますが、特に現在の内閣におきましては、がん対策の問題では、川崎厚労相、そして小坂文科相、それにこの私、三人ががん対策の担当閣僚ということに相なっておるわけでありまして、先般も三閣僚が集いましてこれからの対策等についてお互いに議論をし合ったわけであります。私どもの方は、御案内のように、医療機器の方の部分を担当するわけでありますが、これも、日本の中小企業の皆さんがしっかり頑張ってがん医療の対策につきまして大きな貢献をしておるという事実を承知いたしております。

 そこで、今議員御指摘のように、それではがん対策についてどれだけの知見を持った人が特許庁に存在するかということになりますと、これはそんなにがんの大家を大勢特許庁に常に雇っておくというわけにもまいりません。そこで、どんな形にすれば医療機器の進歩とそして現場の医療の状態、何を必要とするか、現場の声もやはりお聞きしなければならない。そういう意味でこれから、がん対策一つとらえてみましても、大変膨大な情報と知見が必要なわけでありまして、そうしたことと特許行政との間をどう円滑につないでいくかという問題について、私どもは問題意識を持って対応していきたいと思っておりますので、これはぜひ超党派で御理解、御協力をお願いしておきたいと思う次第であります。

○北神委員 ありがとうございます。

 我々も、私の一存では何も決められませんが、我が党も多分、そういった問題意識を持って協力をしていきたいというふうに思います。

 今、機構の中の予算とか人員の配置の話をしましたが、もう一つ申し上げたいのは、個別の、今後のリーディング産業、これから力を入れなければならない産業に応じて特許の審査をどう考えるかということにつきまして、優先順位をつけるという観点もあると思うんですね。

 これはなかなか難しくて、基本原則は、出願されて、そして審査請求のあったものについて公平にすべて対応していくということが原則だとは思うんですが、これも、経済戦略というものを非常に大事にして、知財というものを極めて密接にそれに連関するという位置づけを考えるのであれば、例えば、先ほどのバイオとかロボットについてはある程度優先的に審査をしてどんどんと進めていく。というのは、これもやはり時間の競争でございまして、アメリカとかヨーロッパとか、同じ分野について研究者たちが心血注いで研究をしているわけでございまして、日本としては、大臣が先ほどおっしゃったように、人口減少、高齢化の中で、知恵で勝負するしかないということでございましたら、やはりそういったところに力を入れていくべきではないか。

 私が調べましたところ、アメリカなんかでは、たしか公益の事業とか環境、エネルギー開発に関連するものについては審査を優先するということになっておりまして、私もまだ詳しくは勉強していないんですが、産業戦略的な観点がどこまであるのかちょっとわかりません。

 ただ、一方で、韓国では、輸出促進に関連する案件とか、あるいは認定されたベンチャー企業とか、これはちょっと産業戦略から外れますが、防衛関連の特許とかについては優先的に審査を進めるという事例があるわけでございますから、そういったことも我が国において考えられるんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○中嶋政府参考人 今の御指摘の点でございますけれども、もちろん常に最先端の技術動向、重点分野とか意識するわけでございますけれども、具体的に利用可能な制度といたしまして、早期審査制度というのがございます。

 これは、原則としてはもちろん出願の順番に応じてすべて平等に扱っていくということが大原則でございますけれども、特に、例えば中小企業の場合、あるいは企業の大小を問わず国際出願に関係しているものである場合、多分こういう技術最先端の分野というのは、先ほどからお話が出ておりますように国際出願も同時にされている場合が多いと思うんですけれども、そういったような場合、あるいは大学とかTLOとかそういった関係者からの出願の場合には、早期出願を申請していただいて、優先的に早く審査するという制度もございます。

 そういうことの御利用を普及させていきながら、常にどういう制度がいいのか引き続き考えていきたいというふうに思っております。

○北神委員 ぜひそういった観点で、ほかの国の事例を調べて、もし本当にそういうことを産業戦略的にやっている部分もあるんであれば、別に外国に倣う必要もないですし、日本として力を入れるという意味でそういったことも十分考えられるんではないかというふうに思いますので、提言したいと思います。

 時間がなくなってきましたので。今、人員配置とか、そういった重点配分のお話をさせていただきましたが、今後、請求期間を七年から三年に縮小したり、先ほど牧原委員とか野田委員からもお話がございました分割審査制度というものも導入される中、審査件数が大変急増していく。これは当然、人員確保というものが極めて大事な話。いろいろ大ぶろしきを広げて私も質問させていただきましたが、ここの部分が確保されなければ、口で戦略的とか言っても、なかなかままならないわけでございますから、大変大事な部分だというふうに思っております。

 ところが、冒頭申し上げたとおり、今、日本の風潮は、行政改革の御旗のもとでただただ公務員を削減すればいい、これは私たちも、もちろん民主党もそういうことを強く主張しておりますし、無駄なところを削るというのは、民間が血を流しながらリストラをしている中、これはやむを得ない部分だというふうに思うんですが、ただ、やはりめり張りをつけていかなければならない。

 今申し上げたように、この産業戦略なるものが日本の二十一世紀の活力の非常に大きな柱だというふうに私は思うわけでございますが、もしそうであるならば、この富を増大していく基本的な官庁である、経済産業省もそうですが、知的財産の面でいけば特許庁については力を入れていかなければならないというふうに私は思っております。ただ単純に、一律に各役所にキャップをつけて人員削減をするというのは、私は、余りにも短絡的、そして戦略性が全くない行政改革だというふうに思っております。

 これは総務省の局長だと思いますが、ぜひ特許庁については、特別扱いというのもあれですけれども、やはり戦略的に見ていかなければならない。特許庁について、今の人員の、一種、定員の枠みたいなものがどうなっているのか。私は、それを基本的に外して、短期的に急増させていくべきだと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

○藤井政府参考人 私ども行政管理局では、ここ四十年来、厳しい定員管理というのをやらせていただいているわけですが、その中でも、政府全体の合理化、効率化を進めながらも、行政需要の増大しているところには的確に対応するという方針で対応してきたところでございます。特に、現在、総人件費抑制の観点から、純減を五%以上図る、そういう重い課題の中で定員管理をやっているところなんですが、そういう中でもやはりめり張りのきいた再配置をするということが極めて重要な課題と思っております。したがいまして、今後とも、引き続き厳しい純減を図りつつも、やはりめり張りをつけて対応するというようなことでやりたいと思っております。

 特許庁の件につきましては、これは従来、特許庁でも、増大する行政需要の中で、いろいろ情報システム化を図るとか、あるいは組織内の定員配置を見直すとか、あるいは業務委託を進められるとか、みずからいろいろ努力していただいているというふうに理解しております。その中でも、やはり本当に必要な増員については、私どもとしても、よく相談した上で的確に対応させていただいたというふうに考えております。とりわけ、近年、これは特許庁の方からも御説明があるかもしれませんが、任期つきの審査官の制度なんかもつくっていろいろ工夫をしていただいております。

 今後のことについては、まず来年度の要求をお聞きしてからということになりますが、そういったことも踏まえながら的確に対応していくという考えでおります。

○北神委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。これは特許庁だけの話ではなくて、要は、今後の日本の経済社会の変化に応じてどういった行政サービスがこれから強く求められるのか、そういった視点を持っていないと本当に問題だと私は思います。

 今議論になっている金融の世界では、証券取引等監視委員会とかあります。つまり、どんどん経済の事前規制というものを外して自由化するということは、より準司法的な機能というものが役所に求められていく。つまり、今までは事前規制で、ある程度そこで行政が民間にコントロールを及ぼすことができたんですが、それを自由化しちゃうと、基本的に自由だ、ただ法律やルールを守りなさいと。これが難しいんですね。つまり、そこで本当にみんなが法律やルールを遵守しているかということをずっと監視しないといけない。これは大変な労力でありますし、それをさらにまた取り締まって罰則をしないといけないということは、アメリカのSECと日本の証券取引等監視委員会の人員の数の違いからいっても明白だというふうに思っております。

 そういった意味で、例えば公正取引委員会とか、そういった分野も本当は強化していかなければならないだろうし、きょう話題になっている特許庁についても、今後、産業戦略というものをしっかり考えていかなければならない、それにふさわしい人員配置をしていかなければならないというふうに思います。

 最後に、これもできれば大臣にお答えいただきたいんですが、今申し上げていることは非常に横断的な話でございます。いろいろな産業分野にもかかわっていることでございますし、今言った、行政改革の人員を特許庁についてはふやしていかなければならない、選択と集中というものも図っていかなければならないということを考えると、経済産業省も頑張っていただかなければならないんですが、私は、本当は、これは政府を挙げてやっていかなければならない大事な問題が、まさにこの産業戦略だというふうに思っているわけでございます。

 ところが、知的財産権については、総理大臣が本部長で、政府を挙げて横断的にやっておられるわけでございますが、産業戦略について、これがないのではないかと。

 昔、何か小渕さんか橋本さんのときにあったような気がしますけれども、私は、知的財産よりもまず産業戦略というものが、総理大臣を本部長ぐらいにして、役所横断的にして、まさにその中でいろいろな分野について、どこに徹底的に力を入れていくのか、そのための行政のバックアップ体制とかいったものをどう戦略的に考えるのか、そういったことをしなければならないと思うんですが、肝心の大もとがないので、そこをぜひ今後つくっていくように大臣の方からも働きかけをお願いしたいなというふうに思います。いかがでしょう。

○二階国務大臣 先ほど来、我が特許庁につきまして大変御理解の深い御支援の弁をちょうだいし、力強く思っておるところであります。また、改めて私もその責任を痛感しているところであります。

 先ほど総務省からも大変御理解の深い御答弁がありましたが、定員純減につきましては、これは小泉内閣のもとで決定されたことでありますから、それはそれで遵守していくことは当然のことでありますが、たびたび議員からも御指摘のとおり、つまり、めり張りのきいた人事配置ということを行っていく必要があるわけであります。

 そこで、今度は経済産業省の中で配置転換等を含めて対応していくということになりますと、特許庁だけが膨らんでいきますと他の方へしわ寄せが来るようなことになって、極めて役人的な発想でありますが、他の部分に迷惑を及ぼさないような範囲でということになりますと、ただいま議員が御指摘のように、特許庁というものに対しての認識、産業政策に対してどう考えるかということ、これも私は、またいろいろな会議等でその主張を述べていきたいと思っております。

 経済産業省の中で人事配置といってみたところで、仮にある一定の人員を特許庁へ配置してみても、どれほど役に立つかということを考えれば、私はやはり、OBの活用とか、あるいはまた民間にお願いできるところは民間にもお願いする、そうしたことを十分駆使して対応していきたい、現在の状況に合うような形で取り組んでいきたい。

 しかし、行く行くの理想は、特許庁というものの存在を、もう少し政治として、あるいは国全体として大きくとらえていく必要がある。これが我が国経済産業の発展に大きく役に立つ時代が来る、また現に来ておる、このように判断をいたしますので、委員各位の御協力をいただきながら、経済産業省としても真剣な取り組みを行ってまいりたいと思っております。

○北神委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終了いたします。ありがとうございました。

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