「中小企業等協同組合法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきました。

北神質疑

2006年5月12日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 引き続きまして、中小企業等協同組合法等の改正法律案について御質問したいと思います。

 まず冒頭に、今回の法案は、制度の部分と運用の部分とあると思いますが、先ほど我が党の佐々木さんも言われたように、協同組合というのは、御存じのように非常に多岐にわたる、非常に大きいところもありますし、小さいところもある。制度上は、千人以上の組合員を抱える部分と千人未満というふうにきちんと分けてありますので、その部分も評価をしたいと思いますし、また、運用の部分でも、特に小さいところは柔軟に対応していただきたいということを冒頭申し上げまして、きょうは、制度の方についていろいろお尋ねしたいと思います。

 基本的に、協同組合といえども、今回の法案は共済事業についての規制を強化するという趣旨だというふうに思います。普通に考えれば、保険会社であろうとどこであろうと、同じような保険商品を扱うところだったら同じような規制が求められるというのが基本だと思います。先ほど長官からも御答弁があったように、事業協同組合の方は、自治のガバナンスの部分とかあるいは相互扶助の部分とか、そういったところを考えないといけないし、小規模の部分もある、扱っている商品も基本的には短期の部分とか損保系の商品が多いということで、そこでいろいろ規制を柔軟に対応していかなければならないということでございますが、きょうは、いわゆる事前規制の部分についてもお尋ねしたいと思いますし、あと、監督検査の体制が法案で制度上はきちっと整理されていても実際の現場はどうなっているのかということと、最後にセーフティーネットの部分についてお聞きしたいというふうに思います。

 まず、事前規制の部分で、兼業の禁止の規定がございます。これは、通常、保険を扱うときは、ほかのリスクの非常に高いような事業をしているとリスクが遮断されないとか、あるいは、一番大事なのは倒産リスクですね。倒産したときに、契約者が自分の持ち分をとられてしまう、全然違う事業の破綻によってリスクが契約者の方に来てしまうというところだと思いますが、今回は原則禁止をしているということでございます。ただし、行政庁が承認をすればほかの事業も可能となる。

 これについて、ガイドラインみたいなものがあるのかどうか、そして、その中身についてどのようなものになるのかというものを、まずお尋ねしたいというふうに思います。

○西野副大臣 委員の御指摘になりましたのは、兼業を原則として禁止をしておる趣旨だろうというふうに思いますが、これは、他の事業のリスク遮断をすることによって、当該の共済事業がむしろ健全性を保って、あわせて組合員の保護を図ろう、こういうところにあるというふうに思っておるところでございます。したがいまして、共済事業の健全運営ということに対して影響を及ぼさない事業でありますならば、この趣旨に決して反するものではないというふうに思っておるわけであります。

 例えば、ガソリンスタンドがあるといたしますれば、ガソリンを給油に来たと。あわせて、タオルでウインドーの前のごみをふき取ると。例えばそのタオルについての共同購入等々、仮に行ったとすれば、これは実はスタンド業と本来違う事業がタオル業であるわけでございますから、これらは、しかしながら、関連をいたすわけでございまして、こういう場合は、そういう意味ではむしろ兼業を閉ざしてしまうことによって組合員のいわば便益を損なうような可能性が出てくる、このように思われるものについてはこれを例外としたい、このように思っておるわけでございます。

 したがいまして、行政官庁がその当該をいたします事業に対して、その組合の業務が健全に、かつ適正な運営を決して妨げるものでない、そう認められる場合におきましては、これは兼業の承認を法律上明確に規定をして厳正な審査をしておる。言いかえれば、平たく言えば、限定されました事業についてはこれを認めておる、こういうことでございます。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

○北神委員 基本的にはガイドラインみたいなものをつくられるわけですよね、恐らく。それはないんでしょうか。そのガイドライン等、その中に、今言われたように、健全性を損なわないような事業だけを限定的に認めると。そういった部分について、簡単に言えば、リスクのない事業は認めるということだというふうに思います。

 こういうふうに申しますのも、少額短期保険業者という、基本的に今回の組合の共済事業と同列に論ずるべき少短というのがありますが、そこにおいては附帯業務しか認めていないと。今回の協同組合は、もちろんそもそもの趣旨がいろいろな中小企業者が集まっていろいろな事業をやっていくということですから、そこまで限定できないというのはよくよくわかるんですが、その承認の段階で、やはりリスクのないものについてのみ認める、そういう方針なりガイドラインなりが必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○西野副大臣 申し上げましたとおり、リスクを遮断するものでないという観念から、ガイドライン等につきましてはそれを示していきたいというふうに思っております。

○北神委員 では、ガイドラインというものはきちっとつくるということですね。

 もう一つは、それは原則禁止ということでありますが、今回の法案を見ますと、その施行後も五年間は猶予期間があるということでして、これも現実的に実際にいろいろな兼業をしている組合が現実にある。そういった中で、なかなかすぐには移行できないという事情があるというふうに思うんですが、ただ、五年間というのはまあまあ長い期間でして、その間にそういったリスクが飛び火するような事態というものもあるというふうに思うんですね。ですから、五年間というのはちょっと長過ぎるんじゃないか、その辺何とか短縮できないかということをちょっとお聞きしたいのですが、よろしくお願いします。

○古賀政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたとおり、もし非常にリスクの高い事業を長期間にわたって兼業を続けているというようなことがあれば心配な事態も出てくる、そういう御懸念というのも非常に理解のできるところでございます。

 ただ、一方で、今まで何の問題もなく、健全に二つの事業をやっておったと。共済の事業は結構大きなものになるので、今回の改正によって兼業が禁止されてしまう場合どういうふうに対応するかというところを現実的に考えてみますと、では、もう本業に近いような大きな事業をやめてしまえということを言わなくちゃいけないか、あるいは、もう一つ新しく立派な組合をつくってください、こういういずれかになるわけでございます。それは、リスクのあるものであれば、私どもとしては、これは健全な経営を確保するという観点からやむを得ないだろうというふうに思っておりまして、そういう意味では、そういう組合にとっては厳しい措置になるかと思います。

 その場合に、そうした組織を大幅に変更するというようなことにおいて、例えば新しい組合をつくるということになれば、またそのための資本金、出資金を集めると、これは組合員にまた新しい負担を課すというようなこと、対応が必要になるものですから、これを一年、二年ですぐやってくださいというのは、今まさに問題が起きているということであれば確かにそれはもう早くやらなくちゃいけない、こういうことになるかとは思いますけれども、今まで共済で問題が起きたのは一件だけでございまして、では現に今続々とそういうものが出てくるかというと、そういう状況でもないという中では、五年程度の間に、もちろんその間も万一財務状況が少し悪くなっていくよというようなことが見受けられれば、これはいろいろな監督の手段というのはございますので、そういったことも使いながら、五年という長い期間を設けたことによって何か不測の事態が起こるというようなことはないように十分気をつけながらやらせていただきたいということで、この五年というのはぎりぎり必要な期間かなというふうに考えております。

○北神委員 大体その事情というのはよくわかりましたが、その間に、そういうある程度リスクのある事業を兼業しているところについて特に注視をして、何かあったら対応していただくということだというふうに思います。

 では次に、募集の問題について移りたいと思います。

 いろいろこの共済に関係する事件が多発している中で、苦情件数もどんどんふえている。その大半がやはり募集をめぐる説明がきちっとなされていないというところが大きな原因だというふうに伺っておりますが、今回の法案で重要事項の説明義務というものが入るということであります。ただ、この保険というのは、御存じのように、極めて複雑な専門的な分野であります。保険会社とか、さっき申し上げた少額短期保険業者、こういったところが募集をするのと、組合で、中小企業者というのは一般の消費者よりは知識は高いというふうに思うんですが、こういった方が当然募集をするということになると思います。これについて、保険会社だったらいろいろな資格試験とか、そういった一定の資格要件みたいなのがあると思うんですが、今回、そういうもの、組合について募集人の資格というものをどのように考えているのか、その点について伺いたいと思います。

○古賀政府参考人 お答え申し上げます。

 今、募集人の質を上げていく必要がある、教育をしっかりやらなくちゃいかぬという御指摘でございまして、これは本当におっしゃるとおりだと思います。

 共済事業の内容が年々多様化し、あるいは複雑化していく傾向があるということでございまして、そういうことを踏まえれば、当然そういったことをよく考えていかなければいけないということだろうと思います。今回、代理店制度なども設けまして、それとともにかなりの行為規制をきっちりする、今までほとんどなかったというものを入れさせていただくということで、重要事項もしっかり説明しなさいというようなことをかなり具体的に規制をしていきたいというふうに考えております。

 そうした規制を課すということは当然その実効性を担保しなければいけないということで、これは単に規制で取り締まりますよと言っていれば済むというものではございませんので、おっしゃるとおり、共済募集人の質を上げるために、教育というものをいかに適切に行っていくかということが重要になってくるわけでございます。

 それで、複雑というふうに御指摘ございましたけれども、幸いにして、今共済組合が行っている事業というのは大部分が短期の掛け捨てというようなものが中心でございまして、ほかの保険会社がやっているものに比べれば比較的簡易なものが中心になっておりますので、そういう状況も踏まえまして、早目にそういう教育というのを進めていかなくちゃいけないということでございます。

 それを行っていくときに、組合の連合会というような組織もございますし、それから中小企業団体中央会というような、組合の全体を指導、教育なんかもやっている中央的な組織もございますので、こういったところでぜひ積極的にやっていただきたい。

 そのために、行政側としても、その中央会とかあるいは連合会、そういったところと十分連携をしながら、そういうところを通じて、各組合が募集人に対してどうやって教育をしていくのか、質を上げていくのかということをしっかり取り組んでもらうようにということで努力してまいりたいというふうに考えております。

○北神委員 ある程度行政から教育をして、その中央会とか連合会とかを通じてどんどん下におろしていくということだと思いますが、中央会というのはちょっとわからないんですが、連合会というのは比較的大きい共済事業をやっているところが多いと思うんですが、小さいところにも行き届くのかどうか。

 そして、行政側が指導するということですが、これは経済産業省が主になってやるのか。というのは、募集で多分重要なのは、いかに自分たちの共済が健全かということを説明しないといけない。後ほどまた質問させてもらいますけれども、保険でしたらソルベンシーマージン比率とか、非常に複雑怪奇な指標が用いられる。皆さん優秀だと思いますが、これは専門家で、例えば金融庁の保険に実際に携わった人とかそういった人がやはり動員されないと、こういうことをなかなかちゃんと説明がなされないんじゃないか。

 そういったところがやはりきちんと確保されなければ、募集人が幾らその教育を受けてもしっかり一般消費者とかあるいは組合員に説明義務を果たせないということだというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。

○古賀政府参考人 御指摘のとおり、連合会というものに所属している共済をやっている組合というのは、比較的大きなところが中心かと思います。

 小さなところで、連合会に入っていないようなところにつきましては、中央会というのはもちろん全国組織もございますけれども、各県ごとに県の中央会というものもございますので、そういうところを通じてその教育あるいはいろいろな法令の知識についての周知というものを図るということもございますし、それから都道府県に対しても、そういうことをしっかり指導してくださいということは、これはこの募集人の教育だけではございませんけれども、そういったことについてしっかりと連携しながら、十分にそういう実が上がるように努力をしていきたいというふうに考えております。

○北神委員 後半の、専門知識というものは、やはり金融庁とかそういうある程度専門的な知識を持った人たちがやるべきだというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。

○古賀政府参考人 おっしゃるとおり、この法律を、そもそも改正案をつくるときにも金融庁の方とは十分に相談をさせていただいておりまして、いろいろな知見もいただきながらやっておりますし、従来から、運用についてもいろいろ御指導いただいたり、いろいろ情報交換をさせていただくというようなこともやらせていただいております。

 今回、こういう本格的な規制体系を導入するということでございますし、それから保険業法の方も改正されたばかりということで、金融庁の方でもいろいろな取り組みもさらに深めておられますので、そういったことについて、私どもとしても、ぜひ金融庁が今まで培ってきましたノウハウあるいは教育についてのそういった手法とか、そういうものを十分教えていただくという姿勢でしっかりやっていきたいというふうに思っております。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

○北神委員 ぜひそこはお願いしたいというふうに思います。私も、ぎりぎり規制をどんどん強化すべきだとか、そういうふうに聞こえるかもしれませんが。

 次の質問なんですが、一つ懸念をしているのは、組合員だけだと、相互扶助だけの世界だったらまだそんなぎりぎり言わなくていいというふうに思うんですが、実際に今回の法案を見ていると、員外利用、つまり、その組合員以外の方にも募集をかけて共済に入ってもらうことができるというふうになっているんですね。これは二〇%まで認められている。多分、組合員の二〇%だということだと思いますが。

 それで、要は、これは相互扶助の理念からもやや逸脱する部分もありますし、そのリスクが外に波及する、一般消費者にも波及する。そういったことについて、私は、これは多分、もともとその組合のほかの事業について員外利用というものが二〇%決められていた、これが共済に自動的に適用されてそのままずっと続いているという経緯だというふうに思うんですが、やはり共済というのは、まさにこの法案の趣旨が物語っているようにリスクの高いものだ、したがって、ほかの事業とはやや話が違っていて、私は、基本的に員外利用というものは、すぐにかどうかはわかりませんが、徐々に減らしていかないといけないというふうに思うし、最後は禁止もしていいんじゃないかというふうに思うんですが、その点についていかがでしょうか。

○西野副大臣 組合員のこの利用に支障を来すというようなことになりますとこれは大変でございますので、そうでない限りにおいておおむね二〇%ぐらいまで、他の組合、現に農業協同組合等々もそうだろうというふうに思います。

 ただ、委員がお示しの、これは他の事業と違って共済事業であるという今御指摘でございますし、そこには経済的な裏づけも関係することだけに、そのあたりは非常に厳密に志さなければならぬというふうにも思うわけでございます。

 したがいまして、注視しなきゃなりませんけれども、今日までは、他の事業でこの二〇%の員外利用ということで特段弊害が起こったという例は余り聞いておらないところでございますので、今後注視して見守っていきたいというふうに思いますが、あくまでも組合でございますので、相互扶助というこの基本理念、そういう精神を逸脱することのないような事業展開というものに、しっかりと確保ができるように努めていくべきだというふうに思っております。

○北神委員 そもそも、員外利用を認める意義というのは何なんですかね、この共済について。何かメリットがあって、それがそのデメリットを上回るんだったらそれを認めるというのはわかるんですが、特に共済についてですね、それについて伺いたいと思います。

○古賀政府参考人 お答え申し上げます。

 やっている事業が保険ということでございますので、そうしますと、なるべく、できれば規模は大きい方がむしろ安定という意味では、大数の法則というようなことも言われますけれども、小さくやっているとむしろリスクが大きい、大きくやった方がリスクは下がるという面がございます。

 もともと共済、共済というか組合でいろいろな員外利用を認めたというのは、多くの場合は、例えば、家族従業員あるいは親類とか、それから取引先がかなり多いような場合に、その取引先の社長さんが、そういういいのがあるんだったら入れてくれよというようなところから始まってきたというふうに考えております。

 では、それが二割も要るのかということにももちろんなりますけれども、二割程度であれば、それがどんどん拡大していって、相互扶助の精神を失った何か違った営利目的だけの組織になってしまうのかというと、そういうことでもない。

 それから、共済についていえば、数がふえることはむしろ安定にはつながりますし、それから、この数が、員外利用がふえたから何か問題が起きたというような事例はもちろん一つもございません。

 それから、何か共済事業をやっている組合がすごくたくさん危ないのがあるというイメージが、一つ破綻しますとどうしても出てくるわけですけれども、必ずしもそういうことではなくて、かなり多くのところはむしろ健全にやっていただいているということでございまして、そういうところにしっかりした規制をかけて財務基盤を安定させる。そのときに、他の事業と同様に、二〇%程度員外利用を認めて規模を拡大することによって、合理化とかあるいは保険そのものとしての安定性というものに資するというようなことをやっていくというのは、むしろ合理的ではないかなというふうに考えているところでございます。

 先生が御指摘になりました、全然知らない人を無制限に、一般消費者にうまいことを言ってどんどんふやしていくんじゃないかというようなそういうイメージでとらえると、これはもうどんどん縮めた方がいい、こういう感じになってくるわけですけれども、そこはむしろ、健全な経営と、それから先ほど御指摘のありました、募集人が変なことを言ってだまして契約をとるというようなことがないようにしっかりした教育、こういうことをしっかりやっていくという前提でそういうものを認めていっていいんじゃないかなというふうに考えております。

○北神委員 保険の安定性、要するに、数がふえればふえるほど安定する、大数の法則ということですよね。それも、本当は生命保険とか長期契約の部分についてはそういうことが言えると思うんですが、さっきおっしゃったように、協同組合というのは基本的には短期の損保的な商品が多い。

 そういった中で、普通そういうのは、大数の法則というよりは再保険とか再々保険で基本的にリスクを守っていくということだというふうに思いますので、二〇%員外利用で資産運用が安定するとはちょっと思えないんですが、事情は、多分、今までほかの事業について二〇%と決めていたから、今回、共済事業について自動的にそうなったということであると思います。それで、今言われたように、一般の消費者にどんどんふやしていくようなことさえ起きなければいいというふうに思って、私もそのとおりだと思います。現状問題がなくて、これからどんどんふやしていく、拡大していくようなことがなければ別に問題ないのかもしれません。

 この法案で、もう一つ懸念しているのは、共済の募集について共済代理店というものを設けている。この共済代理店というのは、組合の委託を受けて、当該組合のために共済契約の締結の代理あるいはその媒介をするということなんですよ。これは、平たく言えば、信金とか信組とか金融機関が恐らくその窓口になって協同組合の共済を募集する。こういうものを設けていること自体、あれ、どんどんふやしていくつもりなのかなというふうに思わざるを得ないんですよね、だからお聞きしているんですけれども。

 だから、そんなものを何で設けるのかなと。限りなく、相互扶助の精神からややずれてしまって、営利目的の方に移っていくような印象さえ受けるんですよ。それは、そもそも協同組合の設立の趣旨から、精神から反することではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○古賀政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、今回の改正の中には、金融機関による共済商品の募集を可能にするような措置というものが含まれております。ただ、もちろん、この場合であっても二〇%というのは引き続きかかっているという前提ですから、何かそれによって今までの枠が外れて拡大するということになるわけではございません。

 それと、例えば、銀行の窓口で、一二〇%もう枠がいっぱいになっちゃっている組合があって、それでそれよりもっと拡大したい。そのときに、組合員を獲得することを銀行に頼んで、例えば融資先だから組合員になってくれるんじゃないかというようなことで組合員を獲得する、一緒にやってもらうというようなことになると、今まさに御指摘いただいたように、何か、相互扶助ということじゃなくて、全然関係ない人をどんどんかき集めてくるんだ、こういうことになってしまうものですから、そこのところは、当然、もちろんそういうことをやりたいというところもあるわけですけれども、あくまでも二〇%の枠があいていれば銀行でやってもらってもいいですよ。ただ、枠がいっぱいになっているのに、組合員になるところまで銀行にやってもらいます、これはやめてくださいということになっております。

 ですから、組合員勧誘まで含めて銀行がやるというようなことはやらせないという形になっておりますので、今までの枠が何か変わるということではないというふうに考えております。

○北神委員 なかなか納得しにくい部分がありますが、私の提言とさせていただきたいと思うんですが、やはり、共済代理店制度というのもいまいち相互扶助の精神から反するし、実際に何も問題が起きなければいいんじゃないかという話もあるかもしれませんが、基本的に、共済事業というのは組合員の相互扶助そして自治ガバナンスのもとでやるということだと思っていまして、後ほどまた質問させてもらいますが、そういったものにやはりどんどん限定していくべきだというふうに思いますので、ぜひ、共済代理店制度とかあるいは二〇%ルールも含めて、今後検討していただきたいというふうに思います。

 次に、もう一つの規制である最低出資金の話に移りたいと思います。

 これも、健全性を図るために今度は最低一千万円以上ということになっておりますが、これは少ないといえば少ないというふうに思うんですね、保険金額で一千万円超える商品もあると思いますので。その点について十分と言えるのかどうか、お聞きしたいと思います。

○西野副大臣 最低出資総額の件だと思いますが、これは、この法律が制定された当初は、昭和三十二年当初のようでございまして、この当時はスタートは二百万であったわけでございますが、その後、物価指数の上昇に伴って、出資率につきましても出資総額についてもそれにスライドをいたしておるところでございまして、昭和三十二年ぐらいから今日までで総額にしましたらおおむね五・七倍ぐらいだということになりますと、単純に掛けまして今お示しの一千万、こういうことに相なっておるわけでございます。

 しかも、これはまた他の例でございますが、保険業法におきまして、少額短期保険業者の最低資本金額もございます。これなんかもちょうど一千万でございまして、それとこれと同じだということではありませんが、他の類似したものと比較をした中で、現実的なものではないのかな、妥当的なものではないのかな、このように思っておる次第でございます。

○北神委員 少額短期保険業者も確かに最低出資金が一千万円以上だということですが、これもさっきの話とかかわってくるんですが、これは協同組合で相互扶助の精神でやるということなんですが、少額短期保険業者の方は、最低出資金は確かに一緒だ、でも一方で、給付金の限度額とかが決められているわけですよね。死亡金については三百万、ほかのものについては一千万円、給付金の方は限度が決められているんですよ。それで、例えば期間も一年のものしか認められない。

 いろいろなそういう規制がある中で最低出資金は一千万円で大丈夫だろうという判断だと思うんですが、今回の協同組合の方は、むしろそういう方向で限定すべきだと私は思うんですが、これは青天井なんですね、給付金額も。つまり、幾らでも設定できる、短期、長期というのも自由に選択することができる。長期は、それでも二割ぐらい現状あるわけですから、そんな少ないとは言えないというふうに思います。

 ですから、そういったことを考えて、特に少短との比較において本当にこの一千万円で大丈夫なのかなという懸念があるんですが、いかがでしょうか。

○古賀政府参考人 今御指摘いただきましたとおり、確かに、少額短期保険業者の場合に給付金の限度額があるとかそういう違いがあるということは事実でございます。

 ただ、これは、今これから一千万円に上げていただこうということで、かなり大変な負担をしていただくことになるところもある。もう既にもちろん一千万というところもあるわけですけれども。そういうような現状ということも考えますと、先ほど来の御指摘の中には、むしろ逆に今度の規制でせっかくやっている保険事業が続けられなくなるなんという、そんなことはちょっと行き過ぎじゃないかというような御指摘もいただいておりますし、そうした御意見というのはこれまでの私どもの議論の中でもいろいろいただいているところでございます。

 そういう中で、もちろん最低出資金というのがそれだけで健全性の確保のメルクマールになるということでなく、これはあくまでも一つの手段でございまして、特に事業を始めるときに、ある程度の規模のことをやるのに、その出資金、全然ゼロでやるというのも、ゼロと言ったらおかしいですが、非常に少ないというのもいかがなものかということがございますので、その程度は必要かと思っておりますけれども、この最低出資総額の規制のほかに、特に大きなものについては、先ほど来お話に出ておりますような財務の健全性の基準とかそういったことによって、全体としての財務の健全性を担保していくという考え方になっておりますので、そういう意味では、いろいろな現実的な問題をどうやってクリアしていくかということと、それからそれ以外のいろいろな規制をしっかりやっていくということをあわせて考えれば、この一千万円というところが現実的に最も妥当なところかなというふうに考えております。

○北神委員 いろいろ苦しい事情があるというふうに思います。でも、その規制を私は評価はしているんですよ。これは、今までゼロだったところを、こういう規制を設けてたくさんある協同組合をまとめてこういうことをするのは大変なことで、大臣初め皆さんも大変な御苦労があったというふうに思いますが、そこはもう今後の課題ということで私は申し上げているつもりです。

 もう時間がないので、一番大事なことは、こういった規制を、いろいろなちょっと緩い部分とか穴があいている部分とかある。それは現実の今の協同組合を見るとしようがない。そういう考えに立った上で、実際に監督検査を、これはほとんど都道府県が所管行政庁になるというふうに思うんですが、本当にこれをできるのか。

 これは大臣もぜひ聞いていただきたいんですが、きのうレクの際に、今の都道府県の検査監督の体制は何人ぐらいいるのかとお聞きしたところ、わからないと。わからないのに、これはかなり厳しい、大変な規制だと思うんですよ。これは監督、そして随時検査をすることも可能だという規定も入っていますが、そんな体制がどこにあるのかと。あるのかもしれませんよ。でも、それを把握していないということは、やはり極めて問題だというふうに思いますし、これは施行が来年ですからまだ一年ありますけれども、その点についてどういうふうにお考えかというのをぜひお聞きしたいというふうに思います。

○二階国務大臣 お尋ねのように、都道府県を単位とする組合の多くは各都道府県の所管となっておるわけでありますが、都道府県が所管する組合が破綻し県民の皆さんに大変大きな迷惑を及ぼした事例というものもあるわけでありますから、これは議員の御指摘のとおりだと思っております。

 都道府県における監督体制の整備は重要であり、各都道府県に対しましても、認識を共有していただくべく各県の知事等との間の連携も十分とってまいりたいと思っております。

 経済産業省といたしましても、法の円滑な施行に向けて、監督実務のマニュアルをきちっと作成して、各都道府県の担当部局を支援する。そして、必要に応じて、人員の体制、また金融庁と我が省との間の人事交流等も十分考えております。人事交流も事務的に進めておるようでありますが、はかどらないようであれば、私から直接大臣に申し上げて、直ちにそういう体制をとりたいと思います。

 質問に伺った者が何と答えたかわかりませんが、私が責任を持って対応いたします。

○北神委員 ありがとうございます。

 本当に私は、これはいい方向で動いていると思いますので、現場の体制というもの、受け皿というものがきちっとなされなければならない、大臣のリーダーシップでぜひそこをお願いしたいというふうに思います。

 最近、いろいろな法律が目まぐるしくどんどん改正されて、受け皿を全然整えないうちに法律ばかりがどんどん変わっていく。これは、今回のこれだけに限らずそういった傾向がありますが、そこがないと結局絵にかいたもちになりますので、ぜひそこの体制についてしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 そして、人事交流のところも、金融庁の検査のノウハウとか、共管にするとまでは言いませんが、やはりそこをぜひ活用していただきたい。そういうことをしなければ、せっかくこういう規制を設けているのになかなか実行に移せないという問題があるというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 セーフティーネットの問題で、保険会社は保険契約者保護機構という、銀行でいえば預金保険機構というところに、みんな負担金とか払って、もし会社が破綻したときに契約者が損をしないように、ちゃんと保護するように積み立てをするという仕組みがあります。

 少額短期保険業者の方は供託金を積む、供託金を積んで破綻をした場合にちゃんと契約者を守るということになっているわけでありますが、今回、協同組合についてはそういったセーフティーネットがない。そのかわり、何か問題が生じて財務状況が悪化すれば給付を削減することができる、保険金をですね。あるいは追徴、組合員からさらに、ちょっと今お金が足りないからもっともらうぞということができる。これをもってセーフティーネットのかわりにするということなんですが、これは私はセーフティーネットの趣旨から全然ずれていると思うんですよ。これは単なる破綻防止をするための措置であって、要するに、財務状況が悪くなって、保険金を減らすぞと。それで財務状況を改善するとか、組合員から追徴してお金をどんどん取り立てていく。それで破綻を防ぐという意味では有効かもしれませんが、これは結局、契約者にとって、どんどん損をするわけですよね。だから、これはセーフティーネットじゃないんじゃないか。

 そういった意味で、むしろちゃんとしたセーフティーネット、供託金制度みたいなものを設けるべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○片山大臣政務官 委員御指摘のとおり、今回のこの法改正につきましては、共済事業を行いますすべての組合に対して共済の掛金の追徴があり得べしよということと、共済金の削減があり得べしよというようなことに関する事項を定款に書いてくれということを法律で義務づけておるわけでございますが、今までは、実態として、仮にお金が足りなくなったら、これはやらざるを得なかったわけですね、ほかに何もないから。それを今回法律にしたわけでございます。

 組合員の制度というか趣旨、今回もこれはずっと議論しているわけでございますが、組合員が痛みを分かち合いながら共済事業を継続させるという相互扶助においた精神に基づく一連の制度なんだということを考えますと、やはりこういったことがあり得べしよということを定款に書いておけば、逆に、身の丈に合ったような加入者になり、身の丈に合ったような組合になっていくということがあるわけでございます。

 供託金というのは、もちろん保険業法の改正で導入されたもので、単に一千万円以上外積みということでございますので、これは現実に、厳密に他業種のようなセーフティーネットの算定ができているということではないわけですよ、それはもう委員はお詳しいから御存じでございますが。

 だから、額が大き過ぎるようなものを積ませることにすると、組合が相互扶助の小さい制度であることを考えると、圧迫してしまうし、また、これが少な過ぎると実効性がないということで、なかなかその辺がもう認めがたいようなもので、ですから今回、実効性を確保するのが難しいので導入を見送ったということでございまして、全く考えていなかったということはないんですが、組合が相互扶助の制度ということであれば、こういったことを定款に記載することを義務づけることによって、おのずと身の丈、健全経営の方になっていくという形で維持をしてまいりたいということで、導入後はこの趣旨を十分に理解していただけるように適切に指導してまいりたいと考えております。

○北神委員 なかなか現実的に難しいということだというふうに思いますが、これもあわせて、先ほど申し上げていることと同じように、今後の検討課題としていただきたいというふうに思います。

 最後の質問になりますが、協同組合について、共済事業の中で基本的にどんな商品を扱ってもいい、例えば共済計理人を置くのも、長期契約とか配当をするような商品を扱うときには必ずつけないといけないとか、そこら辺は非常に自由になっている。

 私は、一番冒頭に申し上げたように、やはりこの協同組合の、先ほどどんどん皆さんから話があるような相互扶助の精神に基づくのであれば、基本的には、自動車保険とかあるいは火災保険とか、そういう自分たち中小企業者の業務にかかわるような、言ってみれば損害補償的なそういったものに限定すべきではないかと。先ほど言った少額短期保険業者の話もそうですが、一年のものに限って保険金の給付の金額も限定していくべきではないかというふうに思いますが、これが多分、いろいろな規制がありますけれども、そこさえ確保すれば、そんなに問題はない。そして、それこそ協同組合にふさわしい共済事業だというふうに思うんですが、これも、中期的な課題として、その方向に持っていくべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○片山大臣政務官 確かに、委員御指摘のようなお考えというのは当然あり得ると思います。

 現時点で長期にわたって共済掛金を積み立てるような共済商品を取り扱っている組合は、今のところほとんどないという状態ではあるんですが、今確実に、現実に禁止しているわけではないわけですが、現実に規模を見てみると、ほとんど難しいかなという気もいたします。他方、相互扶助の精神で、協同ということですから、ここに厳密な業法規制、何とか業法のような行政規制を持ってくるのも、これはなかなか難しいんですよね。

 ですから、今回はそのようになっているわけでございますが、健全な運営を確保するという目的は、今回の法改正の目的でございますので、当然、組合がこういう契約期間が長期のものを扱う場合には、共済計理人、アクチュアリーのような者の関与を義務づけるとか、いろいろなことをすることによって全体の健全性が図られるようにやってまいりますし、中長期的には委員御指摘のようなことも当然考えていくということだと思います。

○北神委員 ありがとうございました。

 基本的に、今回の改正というのは非常に大きく前進したものだと思いますが、そういった穴とか、協同組合の精神にふさわしいような共済事業にこれからしていくべきだということを再度要請いたしまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

全議事録

「証券取引法の一部を改正する法律案」など関連3法案について、有識者に対しての参考人質疑に立ちました。

北神質疑

2006年4月28日 財務金融委員会
 引き続きまして、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 私はもともと経済産業委員会の方に属していまして、本日、委員長そして理事の皆さんに質問の機会を与えていただいたことに御礼申し上げたいと思います。

 また、両参考人のお二方も、お忙しいところ、ありがとうございます。

 時間がないのでもう質問に入りたいと思いますが、商品先物について大田参考人の方からお話がございました。確かに今回の法案は、横断的に類似の金融商品を対象としてすき間なく利用者保護を図る、そういった趣旨であるわけでございます。その趣旨自体は非常にいいものだと私も評価をしたいと思いますが、具体論に入ると、まさにこの商品先物というものがこぼれ落ちているのではないか、そういったことが論点になるというふうに思います。

 それで、早速質問に入りたいと思いますが、先ほど不招請勧誘の禁止の話がありまして、これは営業の自由という観点からいえば、それを適用するのに極めて抑制的であるべきだと岩原先生からお話がございまして、私もそれはそのとおりだというふうに思います。しかし、商品先物と同じような金融商品的な性質を持っているデリバティブとか、そういったところに不招請勧誘禁止の規定が適用されているわけでございますから、その辺の整合性が問題になるのではないかというふうに思っております。

 そして、岩原先生から、危険性が極めて高い、実際にその被害の件数が出ている、あるいは一般の利用者に余り取り扱ってもらいたくないような商品についてそういう不招請勧誘の禁止を設けるべきだという話がありましたが、先ほどの大田参考人の話から聞きますと、実際、統計的に見ても、株式よりも苦情件数というものが多いわけでありますよね。それは確かに大分減ってきているというか、七千件から四千件まで減少しているという部分は認めますが、やはり四千件というのは非常に多い苦情件数だというふうに思います。

 そこで、多分、政府の話とかを聞いておりますと、不招請勧誘というのは、商品先物につきましては、いわゆる再勧誘の禁止の規定が既に適用されているんだ、だから、実質、不招請勧誘の禁止をしなくても同程度の利用者保護を図れるということだと思いますが、その点について両参考人の御見解を伺いたいと思います。

○岩原参考人 お答え申し上げます。

 私、商品先物についてそれほど実態は詳しくないのでございますけれども、私が申し上げることができるのは先ほどの一般論でございまして、本当に危険なものであれば、これはやはり再勧誘の禁止と不招請勧誘の禁止というものは違いがあることは確かでございまして、不招請勧誘の禁止の方がより強い利用者保護になるわけでありますから、私は、確かに商品先物について非常に被害が多く発生しているということは承知しておりまして、ぜひ規制当局としては、そういうことが起きないように、より実効的な法律の適用をしてその問題を防いでいただきたいと思っております。

 不招請勧誘についても、そういったきちんとした法の執行がなされてもなおその問題が残るというような実態があれば、それはやはり考えていく必要があるのかなと思っております。

 以上です。

○大田参考人 お答えします。

 再勧誘の禁止というのは、平成十年の商品取引所法の中で、これは法律自体ではなくて、省令の中に禁止行為が既に入っていたわけですね。ですから、平成十一年四月からその法律が施行されて、それで先ほど私が言いましたように、国民生活センターの被害がずっとふえているわけですよね。ですから、再勧誘の禁止で防げるかどうかということは、この件数を見れば明らかなとおり、防げないということはもう明らかなんですね。

 今回、平成十六年改正で十七年五月に施行された商品取引所法では、再勧誘の禁止が商品取引所法の中の禁止行為に格上げされただけなんですね。ですから、それでとても被害が防止できるとは思わないわけです。

 それから、今回、資料三で出していますけれども、改正商品取引所法の施行後の相談事例においても、断っても勧誘してきているという事例がいっぱい挙がっております。

 ですから、再勧誘の禁止で防げるということは絶対ないということは、これはもうデータで明らかであるというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 岩原先生からは非常に率直な御意見を伺いましたし、大田先生から、現場の件数、実際の苦情件数が減っていない、したがって、再勧誘の禁止の規定というのは余り実効性がないんじゃないかという話でございます。

 もう少し厳しく見ると、実際に件数は減っていないので、理論的に考えると、不招請勧誘の禁止の規定を入れても実際変わらないかもしれない。つまり、申し上げたいのは、再勧誘というか不当勧誘の禁止の規定というもので、実質、不招請勧誘の禁止と同じぐらいの効果を期待できるのか。その点についてお聞きしたいんですね。

 それは、条文を言うとちょっと難しいんですが、簡単に言いますと、例えば、家に訪ねて商品先物の勧誘をする。我々も選挙中体験をするんですが、そこに勧誘お断りという札が張ってあるとなかなか入りにくいということもありますが、そういう札があると勧誘しちゃいけないとか、あるいは電話で勧誘するときには意思確認義務というものを課している。つまり、電話口で、これからこの商品先物の勧誘をしたいと思うけれどもいかがですかと。そこで断られたらそれ以上勧誘ができない、そういう規定があるわけですよね。そういった、ある意味では念入りにいろいろな制約を課している。

 そういったことを踏まえて、大田先生、まさにこれは現場の声、現場の感覚が大事だと思うんですが、そういったことがあってもやはり不招請勧誘の禁止が必要かどうか。その点について御説明願いたいと思います。

○大田参考人 お答えします。

 先ほど先生が言われたものは勧誘受諾確認義務と言われているものでありまして、勧誘を受ける際に、勧誘を受けていいですかということをあらかじめ確認しなければいけないというふうなルールが平成十六年の改正で行われたわけです。

 ただし、では、それと不招請勧誘がどう違うかということは、私たち現場で見ると明らかなんですね。

 ということはなぜかといいますと、勧誘受諾確認義務が履行されたかどうか、これは例えば裁判の現場でも争いになるわけですが、業者はどのような形で対応しているかといいますと、勧誘の際にはそういう受諾確認義務を果たしていないにもかかわらず、後で、勧誘を受諾するという書面をその勧誘に応じた人からとって、だから勧誘受諾確認義務は尽くしたんだ、こういうような形で答弁してくるわけですね。

 ですから、その勧誘受諾確認義務というものと、要するに勧誘してはいけないルールというのは、実際の実務の場面では極めて大きな差があります。ですから、勧誘受諾確認義務は、確かに再勧誘の禁止からさらにもう一歩前進したものであって、それなりに評価できるわけですが、ただ、不招請勧誘とは大きな差がある、こういうふうに理解しております。

○北神委員 ありがとうございます。

 今お話ししているのは、要は、不招請勧誘の禁止の適用を商品先物に及ぼすべきかどうか。そこで、消極的な理由として、多分、政府の考え方が、いや、もう不当勧誘の禁止の規定があるからこれで利用者保護を図れるんだということだというふうに思いますが、今の大田先生の現場の感覚でいえば、そんなことはない、やはり不招請勧誘の禁止というものが非常に大事だ、そういうことをしなければ、非常にふえている苦情件数というものも減っていかないし、商品先物という極めてリスクの高い商品というものが一般の利用者にどんどん不当に普及をしてしまうということが明らかになったというふうに思います。

 ただ、今消極的な理由の話をしていたわけでありまして、御存じのように、商品先物というのは普通の金融商品とはちょっと違う。先ほどリスク回避の部分で、現物の側面もあるし、一方でデリバティブ的な、金融商品的な側面もあると。

 そういったことを考えますと、私も素人で本当にわからないんですが、この不招請勧誘の禁止というものを適用した場合に、利用者にとってあるいは業界にとって、さらに岩原先生に直接お聞きしたいのは、商品先物市場の公正性とか効率性とか、そういったところに何か不都合が生じるのかどうか。つまり、不招請勧誘の禁止というものを商品先物に設けたら、非常に大きな問題が生じるよということがあるのかどうかというのをお聞きしたいというふうに思います。

 先ほどの営業の自由の、この話はもうクリアしていると思うんですよ。ほかの金融商品と大体同じ機能を持っていたら同じように利用者保護を図るというのは、まさにこの法案の趣旨であるわけですから。さらに今申し上げているのは、商品先物の特性に応じて、不招請勧誘の禁止を設けることによって何か不都合が生じるのかということをお聞きしたいというふうに思います。

○岩原参考人 大変申しわけないんですけれども、私、正直申しまして商品先物取引については余り詳しくないので、もし不招請勧誘の禁止のルールが商品先物取引に導入されたときにどんな不都合が生じるかというところまでは、正直ちょっとわからないとしか申し上げられないと思います。

○北神委員 大田先生も、同じ質問で。

○大田参考人 お答えします。

 商品先物について、先ほど私申し上げましたとおり、個人の、一般大衆の人たちの参加者が九割だということですが、これはほかの国ではないことなんですね。ですから、日本のこれまでの商品先物市場が、そういった、つまりそれまで全くかかわりのない人に勧誘して、もうかりますよと言ってやらせている人たち九割で成り立っている市場であるということ自体がそもそも問題でありまして、そういった勧誘で入ってくる人たちを排除して、本来自発的に入ってくる、いわゆるリスクヘッジのために入ってくる人たちの広い市場にすることがむしろ望ましいことであります。

 逆に言えば、一般の、経験のない、いわゆる取引については何も知らない人にそこまでして市場に参加していただかなきゃいけないのかどうか。そういった人たちが入らない市場であった方が非常に公正な価格形成ができるわけですから、本来はそういう方向に向かわなきゃいけないものだというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。この論点についてはこれまでにしたいというふうに思います。

 次に、商品先物につきまして、まさにこれは、金融庁の所管ではなくて経済産業省とか農林水産省が監督、検査の責任を持っている、権限も持っているということでございます。

 私も、大分前ですけれども財務省の方で金融関係の仕事もさせていただいたことがあって、当時から投資サービス法の議論がされていて、当時から商品先物の話も議論になっていた。私も直接やっていなかったので別に詳しいわけではないんですが、そして、そのときから経済産業省、当時通産省とか農林省との一種省庁間の緊張感みたいなものがあったというふうに思います。

 単なる権限の争いだったら、こんなものは無視をしてあるべき姿に持っていくというのが我々の責任だというふうに思いますが、ただ、先ほど申し上げたように、商品先物というのは普通の金融商品と違う側面がありますので、やはりそこはきちっと検討すべきだというふうに思いますので、そういった観点から御質問をしたいというふうに思います。

 それで、我々が単純に考えるのは、先ほどお話があったように、商品先物は非常に被害の件数が多い、そしてほかの商品、デリバティブとかそういったものと類似の性質を持っている中で、今の経済産業省とか農林水産省の監督、検査体制というのは極めて貧弱なものであるわけでございます。経済産業省は本省と地方の部門を含めて合計四十七名しかいない。金融庁はちなみに三百以上いるわけですよね。農水省の方も本省と地方を合わせて大体三十八名ぐらいだ。これは非常に少ないわけでございます。

 ですから、いわゆる投資サービス法の対象にしなくても大丈夫なんだ、今の経済産業省と農林水産省がきちっと監督して検査をすれば大丈夫なんだ、仮に百歩譲ってそういったことを考えるとしても、少なくとも今の体制では厳しいものがあるわけでございます。

 したがって、普通の発想でいけば、金融庁と共管にしたらいいんじゃないかというふうになるわけです。つまり、ある程度の体制が充実していて専門性を持っている金融庁の人たちも、現物じゃなくてむしろ金融商品としての機能の部分に着目をして、商品先物についてきちっと監督そして検査をしていくというふうに思うんですが、これについて、岩原先生、大田先生ももしよろしければ、お考えをお聞かせ願えればと思います。

○岩原参考人 そういう監督行政の、実際は余り存じませんのできちんとしたことは申し上げられないんですけれども、ただ、何よりも、本来は農水省、経産省がきちんと監督するのが本筋だと思っておりまして、先生おっしゃるとおり、実物の側面もある以上そちらの面についての配慮も必要ですから、本筋であれば経産省や農水省がきちんと監督するのが一番望ましいと思います。

 共管にした場合の問題としては、一つは、共管にしたときいわば二重の監督を受けることになるので、基本的には、監督を受ける側としては、二重の監督というのはいろいろ問題が生じることが多いのでできれば避けたいということがあると思います。

 もう一つは、確かに金融庁は相対的に言えば経産省や農水省よりも検査官等たくさんの人員をそろえていますが、ただ一方で、金融庁もどんどん職務が大きくなって、先ほど申し上げましたようにSECと比べると逆に十分の一しかないわけで、金融庁だってゆとりがあるわけではありませんので、共管にしたときに金融庁が一体どこまでのことができるかということも、実際の問題としては検討する必要があるのかなと思っております。

 以上です。

○大田参考人 農水省、経産省がこれまでずっと商品先物について監督をしてこられたわけですが、その結果が今の状況なわけですよね。ですから、それを見れば、やはりこれでは不十分だというふうに言わざるを得ないわけです。

 それから、私個人的に思いますのは、農水省、経産省というのは、いわゆる商品先物市場を広めて育成していく、振興していくという方向での立場もあるわけですね。ですから、そういったものと、それから顧客側に立っていろいろな問題をチェックする、ここはやはり少し独立した形でやっていただかないといけないのかな、これは私の個人的な意見もあります。

 ですから、そういった意味でも、農水省、経産省の監督下だけではもう不十分だ、もう少し別な形で、少し独立したチェックをする必要もあるのではないかというふうに考えております。

○北神委員 わかりました。

 岩原先生がおっしゃるのは、二重の監督の危険性があるのと、今金融庁の体制それ自体が不十分だと。その後者の部分はおっしゃるとおりで、多分ここにおられる委員の皆さんも、人員の拡充というものを図っていかなければならないと。共管の部分は、これはたしか共管の部分はあるんですよね、不動産関係とかそういったいろいろの、あるので、それがどういうふうに機能しているかというのは検証していかなければならないと思いますが、いずれにせよ、今、大田先生もお話がありましたように、市場育成というか業界育成の立場と利用者保護の立場というのは確かに利益相反するところもありますので、そこのところをやはり我々も考えていかなければならないというふうに思います。

 それで、もう用意した質問は大体終わってしまったんですが、最後にもう一点だけお伺いしたいのは、大田先生に対してですが、この商品先物というのは、先ほど申し上げたように、実物の部分と金融商品の部分がある。多分、大田先生はすべてのそういう投資商品の苦情案件というものを扱っているというふうに思うんですが、不招請勧誘の禁止の話も出ましたが、何かほかにこの商品先物について特別に配慮をしなければならない、それに応じてちょっと異なった規制をかけないといけないとか、そういった点があるかどうかというのをお聞きしたいと思います。

○大田参考人 ちょっと難しい質問なんですけれども、今までの繰り返しになるかもしれないんですけれども、商品先物については先ほどから私何回も申し上げておりますように、その市場への参加者がどういう人たちがふさわしいのか、これをやはり考えていかなきゃいけないと思うんですね。

 日本の商品先物の今までの流れは、昭和三十年代以降、勧誘によって一般の人たちが多数参加する市場であったわけですが、本来こういう市場が望ましいのかどうか。商品先物というもともとの機能を考えるとハイリスク・ハイリターンな金融商品でありますから、そういったところにどのような人たちが参画したらいいのか。

 それから、当然価格形成という機能もあるわけですから、一般の人たち、そういう勧誘された人たちが九割入ってくる市場でそういうことができるのかどうか、そういった観点をもう少し考えていただく必要が出てきているんじゃないかというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 本日の審議で出てきた話で、不招請勧誘の禁止というものを商品先物に適用すべきではないかという話と監督体制の話について、ぜひ今後の審議の中で議論していただければというふうにお願いを申し上げまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

○小野委員長 以上で北神圭朗君の質疑を終了といたします。

全議事録

18日に引き続き「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案(内閣提出第32号)」について、質問を致しました。

北神質疑

2006年4月21日 経済産業委員会
○石田委員長 質疑の申し出がありますので、
順次これを許します。北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本法案の採決の前の最後の時間をいただいて、民主党を代表して質問させていただきたいと思います。

 本日は、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案の話でありますが、三法を合わせてまちづくり三法ということでございますので、きょうは、そういった総体としても質問をさせていただきたいというふうに思いますし、これまでも審議を重ねていく中で、ある程度制度的な問題点とか技術的な問題点、そういった話も出ましたので、やや大所高所からお話をできればというふうに思っております。

 今回の法案は、これまでの中心市街地活性化対策がなかなか成果を上げられなかった、その失敗に対する反省に立った、そういった流れにあるというふうに思っておりますが、いろいろな失敗した原因はあるかというふうに思いますが、特に、中心市街地から郊外に向けて無秩序に、無計画に人口とか都市機能というものが流出してしまった。そしてその中で、中心市街地において人口の減少あるいは高齢化が高まってきたということが非常に大きな課題だというふうに思います。

 しかしながら、私は、大変基本的な話ではございますが、郊外に人口や都市機能が流出するというのは、ある意味ではそれぞれ各自が、住民とかあるいは商業の方とか経営者とか、そういった方が合理的な選択の結果として、郊外の方に行く方が合理的だ、そういう選択の結果だというふうに思います。

 もちろん、無計画あるいは無秩序に郊外に行くということは都市計画的な観点から余り望ましくないということは私も思いますが、考えてみたら、一国の都でも時代によっていろいろ変遷する。奈良にあったり京都にあったり東京に来たり、そういった中心というものが移動する部分もありますし、東京でも、繁華街でも、一時期は新宿が盛り上がっていたり次は渋谷だったり六本木だったり、いろいろと変遷をする。

 そして、実際にアメリカでも、郊外においてゲートシティーというものが多数できてきている。これ自体がいいか悪いかというのはいろいろ議論はあると思うんですが、そういったところで完結した共同体というものも実際にできて機能しているというふうに思いますし、日本においても、従来から多摩ニュータウンとか千里ニュータウンとか、そういったこともあるわけですよね。

 そういったことからいえば、我々は、経済産業委員会に携わる者として商店街というものを中心、対象として考えているわけでございますが、一般の人からしてみれば、なぜ中心市街地にそんな力を入れなければならないのか、税金やあるいは法律の規制をかけなければならないのかといった疑問が生じるのは自然だというふうに思いますので、ぜひそこの部分で、ある意味では郊外においてしっかりとしたまちづくりということも可能であるわけでございますから、そういったことを踏まえて、なぜ中心市街地なのかという御見解を伺いたいというふうに思います。

    〔委員長退席、上田委員長代理着席〕

○加藤政府参考人 お答えいたします。

 これからのまちづくりに当たっては、今後の人口減少あるいは超高齢社会に対応するために、都市機能の無秩序な拡散を防止して、都市の既存ストックを有効活用したコンパクトなまちづくりを推進することが必要であるというふうに考えております。そのための拠点といたしまして、これまで公共交通ネットワークの拠点として整備され、また既存の都市ストックが確保されていて、地域の核としての歴史、文化を有している中心市街地が活性化されることが望ましいというふうに考えております。

 ただ一方で、地域によっては、先生御指摘のように、郊外に新たな拠点が既に形成されていたり、あるいは形成されつつあるというところもございます。そこを新たなまちづくりの拠点とするケースがあるということを否定するものではございません。

 いずれにいたしましても、これからのまちづくりは、地域が適切に判断をして都市機能の適正立地を確保する必要があるというふうに考えております。このため、今回の都市計画法の改正により、広域的に都市構造やインフラに大きな影響を与える大規模集客施設について、これまでの土地利用の原則を逆転させまして、一たん立地を制限した上で、立地する場合には都市計画の手続を経るということにいたしております。その過程を通じて、地域がどういう町がいいのか、どういう町をつくっていくことがふさわしいのかということをそれぞれお決めいただく、こういう制度に改めることとしたものでございます。

○北神委員 中心市街地はいろいろな、もう既にインフラがそろっているとか文化的な蓄積があるとか、そういったお話だというふうに思います。ただ一方で、郊外というものも、既にあるところというのはそれは尊重していくという話だというふうに思います。

 どっちを選ぶかとかそういった単純な話ではないのかもしれませんが、国としてどういった地域でまちづくりを行っていくかという際に一つ重要な視点というのは、こういう財政の一番厳しい時代でありますから、そういった中で経済効率性というものもやはり考えていかなければならない。その際に、やはり新たにまちづくりをするためには、もちろん既に蓄積されている部分もあるかもしれませんが、上下水道をそろえたり道路整備をしたり整地をしたり、いろいろな一種公共事業的なこともしないといけない。そういった一種社会インフラの生活資本のコストというものが一方である。

 他方で、こういう考え方が適切なのかわかりませんが、投資をする市町村の側からしてみれば、そこから資本整備をして、投資をして、人が住んで、まちづくりが行われて、ある意味では見返りというものが、例えば固定資産税の税収とか、そういった部分があるというふうに思うんですね。これは余り極端に突き詰める必要はないと思うんですが、やはり財政が厳しい中でどういった地域が本当にまちづくりにふさわしいかという経済効率性的な観点からいえば、そういったことを考えなければならない。

 ただ、今、地区別に、地区といってもどんな範囲かというのはいろいろあると思いますが、まちづくりにふさわしい地区別に、固定資産税の税収の数字というのは多分大体わかると思うんです。社会資本、上下水道とか生活資本の整備の部分、こういったところのコストという部分を考えて、その二つを合わせて一種収支みたいなふうに考えて、そういったことを一つの指標として参考にする必要はあるんじゃないかというふうに思うんですが、その点について政府としてどうお考えか。そして、そういった指標が大事なんだったら公表することも考えられるのかということをあわせてお聞きしたいというふうに思います。

○荒木政府参考人 お答えいたします。

 市町村がまちづくりを行いますための投資の際には、ただいまお話ございますように、費用対効果という観点からの検討は十分行う必要がある、大切であると考えております。

 地方自治法の規定には、御案内のとおり、その第二条におきまして、地方団体がその事務の処理に当たっては最少の経費で最大の効果を上げるようにという規定があるわけでございまして、これは地方自治運営の基本原則を示しておるわけで、今お話ございますような上下水道あるいは社会基盤整備全般につきまして、インフラ投資を行う際には、当然こういった基本原則にのっとってやることが必要かと思います。

 今お話ございました、それによります固定資産税の税収がどれだけということは、地域を区切って計算をするというのはなかなか難しい面があるかと思いますが、私ども財政運営等を指導する立場としましては、やはりこれらの投資を行う際に、議会の審議を通じまして、建設費あるいは特に将来の維持管理費等について十分情報提供をしまして、収支見通し等もよくお示しして十分な御審議をいただく。当然、それは市民、県民の方々にも情報が提供されるということになりますので、そういったことを通じまして、慎重に投資について御審議いただくというのが大事かと思います。

 また、当然、始まった事業について収支の状況等について、決算も毎年度行いますが、中長期の収支見通しについても情報公開等に努めていくことが大事であろうと考えております。

○北神委員 ぜひそういった取り組みを進めていただきたいというふうに思いますし、できればそういう指標を、ある程度、もちろんいろいろな仮定を置かなければならないと思うんですけれども、地区別にそういう指標というものもあれば、市町村にとっても物すごい参考になると思うんですよね、ここだったら非常に固定資産税。というのは、結局、郊外に行くと固定資産税の税収というのは恐らく取れないというふうに私は直観的に思うんですね、数字がなかなかわからないからそういったことは検証できないんですが。今回の法案も、ある意味では、市町村にとって非常に財政的に厳しい、余り郊外に無秩序に流出してしまうと、そういうところにも上下水道とか敷かないといけない、そういうところにも道路整備をしないといけない、大変なことになるというふうに思うんですよね。

 そういった視点も多分背後にあるんじゃないかというふうに推測するわけでございますが、そういったことをはっきりさせるためにも、ぜひそういったことを検討していただきたいというふうに思います。

 もちろん私も郊外をおろそかにすることはよくないというふうに思います。郊外も郊外で尊重しないといけないと思いますが、先ほどお話がございましたように、文化的な側面、共同体的な側面、あるいは、さっき申し上げたようなコスト的な面でいっても、中心市街地というのがやはり一つの重要なまちづくりの拠点になるというふうに思うわけでございます。

 これは、もともとは商店街を活性化するという話で来たというふうに思うんですね。ただ、結局は商店街の補助だけではなかなか成果が上がらないということで、よりいいまちづくりをやらなければならない。そして、それは、究極はやはり共同体の復活を図らなければならないということだというふうに思うんです。これは、矮小化しようと思えば矮小化できる話で、商店街を活性化するためにちょこっと施設を呼び寄せて、多少人がふえたらいいな、あるいは通行人がふえたらいいな、そういったことももちろん一つの方向性だというふうに思うんですが、私はそれは非常にもったいないなと。

 というのは、この話は、そもそも大店法の規制緩和、アメリカの、はっきり言えば外交的な、通商政策的な圧力のもとで行われてきた話だというふうに思いますし、そういった中で、いわば自由化の一つの流れとして大店法の規制緩和というものが行われて、その結果、中心市街地の小規模の店舗というものがだんだん廃れてきた、商店街も廃れてきた。何よりも大事なのは、商店街をいわば中核とするような中心市街地の共同体というものが崩れつつある、あるいは崩壊しつつある、それが私は非常に大事だというふうに思っております。

 そういった意味で、この自由化の中で、自由化というのはしょせん裸の資本の論理であるわけでございますから、そこには価値観とか人情とか、あるいは思想とか道徳とかコミュニティーとか、そういったものはないわけですよね。この資本の論理によってそういったものが破壊されていっているのが、ある意味ではこの中心市街地の象徴的な問題だというふうに私はとらえているわけです。これは大げさと言われれば大げさかもしれませんが、私は、これは戦略的に考えることは非常に大事なことだというふうに思っております。

 やや歴史的な話になるかもしれませんが、そもそも一九三〇年代、大分前、昭和初期ですね、このときにも世界的な自由化路線というものがありました。その結果というか、その状況の中で大恐慌という事態が生じたわけでございますが、実は、そのときに各国がそれぞれ、自分たちの経済秩序のみならず、自分たちの文化とか生活様式、考え方、価値観、こういったものを守る、守らなければならない、そういった事態に直面したというふうに私は見ているんですね。

 その際に、ある国は国家共産主義をとってみたり、これは裸の資本に対する防衛なんですよ、ある国は国家社会主義、ナチズムとかそういった形態をとった。そして、アングロサクソンの国家はケインズ政策という、ある意味ではこれも国家管理主義的な経済政策というものをとって、それぞれが裸の自由主義路線に対して防衛対策をとったというふうにとらえるわけでございます。

 我が国においては、やや国家社会主義に近いところで、統制経済的な方法をとったというふうに思うんですね。これはまさに、経済産業省の親の親である商工省の岸信介大先生、この人が象徴するような革新官僚たちがこういった統制経済のシステムというものを戦時経済という要請の中でつくろうとした。

 そういった中で、皮肉なことに、戦時経済の要請でつくろうとしたわけでございますが、実際に完成を見たのが戦後であるわけですね。田中角栄のシステムだというふうによく言われるんですけれども、それは私は間違いだと思って、岸信介が最後に業界団体とかそういうものを全部整備して、今のいわば自民党の、小泉さんの前ぐらいの政治を支えてきた仕組みというのをつくったのが、私は、岸信介さんとかそういった経済産業省的な発想だというふうに思うんです。

 今の小泉さんがやろうとしている構造改革、あるいはアメリカの相当な影響力のもとで行われているこの自由化路線の中で、まさに野口悠紀雄先生なんかが言うのは、いわゆる四〇年体制ですか、この統制経済の仕組みというものがだんだんと突き崩されてきていると。そういった中で、共同体の崩壊とかそういったものが生じているわけでございます。

 私は、もちろん自由化路線、部分的にはこれは必要だというふうに思いますし、ある程度合わせていかなければならない。効率性のことも先ほど申し上げたように考えていかなければならないけれども、国の政治というものはそんなものが最終目的ではなくて、やはり国民の生命財産のみならず、私たちの生活のあり方とか文化とか感性とか、そういったところまで守るというのが私は政治の役割だというふうに思っているわけでございます。

 そういった中で、やや壮大な話になるんですが、まちづくりの話というのは、私はそういう観点でとらえなければならないというふうに思っているわけですね。むしろとらえた方がいいんじゃないかと。

 この裸の資本の論理の中で、地域的な弱者とか経済的な弱者とか、そういった人たちをどうやって救うのか。あるいは、共同体の中で、それこそ教育の、しつけの問題とか、そういったものがだんだんとひずみが入ってきている、そういったことをどうやって救っていくのか、救済していくのか、守っていくのか。私たちの文化をどうやって防衛していくのかということがこのまちづくりの一つの観点だというふうに思うわけでございます。

 したがって、今審議している法案は、これはこれでいいというふうに私も思うんですが、今後求められていることは、この方向性というものをより明確に力強く推進していくことではないかというふうに思っているわけでございます。

 そういった点について、経済産業大臣としてではなくて、むしろ一政治家として、県議も経験されて地域や地方を知り尽くされている二階さんの、私が今申し上げたようなことに対する見解というものをお伺いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○二階国務大臣 ただいまるるお示しをいただきました文化的価値観、これをこれからのまちづくりの上においてしっかりと加味していかなくてはならないのではないか、そういう御意見であったかと思います。私もただいまの委員の御発言に対して大変共鳴を覚えながら伺っておりました。

 また、海外でよく、日本にお越しになった海外の首脳の皆さんの感想などを聞いてみますと、みんな京都がいい、こう言うんですね。なぜ京都がいいと言うのかということですが、やはり私は、今議員の御意見を聞いておりながら、歴史あるいは文化、そうした、他の地域の追随を許さないといいますか、まねすることができないような深みのようなものがそれぞれの地域にあるわけですね。京都のみならず、いろいろな地域にそういう町がある。

 このまちづくりというのは、法律も役に立った場合もあるかもしれませんが、私は、その地域に住む人々の文化的水準によって醸し出されてきた歴史の歩みであろうと思うわけです。このごろそれが改めて見直しが始まっておりまして、観光地づくりというと、すぐ何かきらきらしたものを設置して、そこに観光客を呼ぶというふうな、一時そのような風潮もなくはなかったんですが、近ごろはやはり、かつての歴史的なそれぞれの地域のものを掘り起こすといいますか、改めて再評価して、みんながそれに対して誇りを持って取り組んでいこうということが言われております。

 近ごろ、観光地でも成功している例は、やはりそうしたその地域特有のもの、言いかえれば文化であり、歴史であろうと思います。お示しのとおりでございます。そういうことに対して積極的に対応してきた、努力をしてきた地域が、今、観光として新たに花開こうとしているわけであると思います。

 ですから、これからの時代は、やはり文化ということに関しての改めて地域挙げての取り組み。今まで文化といいますと、すぐ、文化ホールをつくるとか、我々のところには演劇を楽しむような、そういう音響装置の整った劇場がないとかというようなことがよくどこの町でも言われたものでありますが、一通りそういうことが大体設置された今日、みんなが改めてこれからの時代に対して、町をどうしていくか、地域をどうしていくか、観光客を呼ぶためにどうするかということに対して立ちどまって考えるとすれば、私は、ただいま議員がおっしゃったようなことについて、お互いに、それぞれの地域の皆さんが、自分の足元をもう一度積極的に見直してみるということから生まれてくるのではないかと思っております。

    〔上田委員長代理退席、委員長着席〕

○北神委員 ありがとうございます。

 おっしゃることも非常に私も思いを共有しておりまして、まさに地域の人々がそういった認識を持って自分たちでつくっていかなければならないし、国としても、行政としても、やはりそういった後押しをしていく必要もあるし、整備をしていく必要があるというふうに思いまして、今回の法案というのはそういった側面が非常に強いし、私はそこの部分を今後強めていかなければならないというふうに思っているわけです。

 具体的には、先ほどもお話がありましたように、実際にコンパクトシティーという理想が掲げられているわけですよね。ですから、商店街活性化の部分よりも、むしろ私は、都市計画的な側面というものをこれから強化していかなければならない、それがひいてはそういう商店街の活性化とか経済の活性化につながるというふうに思いますし、まさにそういう思いで皆さんもこの法案をつくられたというふうに思うわけでございます。

 そういった意味で、今回の法案は、その都市計画的な部分についていろいろ工夫もされている、例えば郊外に大店舗が流出しないように原則禁止にするとか、そういったこともしているし、逆に、流出してしまった公共公益施設とか住宅というものを呼び戻すためにいろいろな税制の優遇措置とかインセンティブづくりを用意している、そういった部分はよくわかるんです。それは非常に大事なことです。

 ただ、この都市計画をやる上で、都市計画の皆さんが一番よくわかっていることだというふうに思いますが、一番問題となるのは、そして日本においてなかなか都市計画というものが進んでこなかった最大の理由というのは、地権者との利害調整という部分だというふうに思います。やはり、住民の皆さんを説得する、彼らを巻き込んでいかなければ難しいと。

 私も司馬遼太郎の本を読み返したんですよ、「土地と日本人」というのかな、ちょっと忘れましたけれども。彼はふだん冷静な口調で語るんですけれども、この土地の問題になると非常に激高して、公有地にすべきだとか、そういった主張をされているんですよ。司馬遼太郎の趣旨というのは、やはり土地というのは単なる財産じゃない、公共の部分が非常に強いものだと。

 しかしながら、これは日本の昔からの歴史的な経緯なのかわかりませんが、あるいは田中角栄の列島改造からのいわゆる土地というものを投機の対象として見てしまう、そういった部分からきているのかわかりませんが、やはり地権者がなかなか協力をしないわけですよね。ごねればごねるほど後でもっとたくさんの補助をもらえる、そういった知恵みたいなものが身についてしまって、これが都市計画の古典的な問題であるわけでございます。

 そして、このまちづくりの法案の話も、そこの部分が、私が勉強した限りでは余り手当てされていない。そこを手当てしなければ、幾ら郊外への流出をとめても、幾ら税制の優遇措置で誘致をしようとしても、そこで本当にさっき申し上げたような共同体を復活するために、コンパクトシティーなるものをきちっとまじめにやるのであれば、本当はそこの部分を手当てしなければ絵にかいたもちになってしまうんじゃないかというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。

○加藤政府参考人 都市計画は、合理的な土地利用の実現を図るために、土地の権利に対して制限を行うというものであります。

 このため、都市計画の決定等に当たりましては、必要に応じた公聴会の開催ですとか都市計画の案の公告縦覧、それと住民の意見書の提出、第三者機関であります都市計画審議会の議決といった手続を経なければならないということにされております。

 御指摘のとおり、先生今おっしゃられたとおり、都市計画の決定に当たる現場では、こういう手続を踏んで個々の都市計画を決めていくわけでございますが、大変な労力を現場の第一線では使っているということが実態であります。ただ、実態でありますが、土地の権利に一定の制限を、都市計画の内容といたしまして地権者の方に制限を課すものである以上、地権者を含みます地域の住民の意見を反映させるために必要なものであると考えております。

 また、私どもとしては、こうした都市計画は、先ほども先生おっしゃられた、そのとおりでありますが、地域の労力を傾けて都市計画を決める、その都市計画を決めたものは、一つの言ってみれば地域の財産という意味合いも持つものでありますから、それはみんなで守っていただいて、いいまちづくりに貢献していただく、これが都市計画のねらいであるというふうに考えております。

○北神委員 まさに、地域の財産であるわけですよね。ですから、都市計画というものは公共性の非常に高いことだと思うんですよ。

 しかし、今おっしゃられた手続の意義とか意味合いはよくわかるんですよ。ただ、それは教科書どおりの話でありまして、現実には、本当にこういうちゃんとした経済的な合理性のある土地の制約とかあるいは収用、収用まで入れれば収用というものがあって、そういう提案をしても、最後の最後までごねたり、あるいはなかなか協力をしない、そういった地権者がいるわけですよね。ですから、今おっしゃったようなことが本当に現実に行われるのであれば、実際、日本というのは、都市計画が先進諸国同様もう少し進められているはずなのに、なかなか進められないというのがそこの部分だというふうに思うんですよ。

 役所としてはなかなか答えにくいと。憲法の制約ももちろんあります、財産権の問題もあります、内閣法制局もにらみをきかせていると思います。しかし、この問題は、やはり本当にコンパクトシティーというものをやって、これが私が今申し上げていたように、一種、国家の一つの重要な戦略として位置づけるのであれば、私は高速道路をつくると同じぐらいの公共性の高いものだというふうに思うんですよ。

 そういった意味で、地権者を、もちろんできるだけそれは巻き込んで、今回の法案にあるように協議会の中に入れて、NPOの団体やいろいろな関係者といろいろ話し合って、一丸となってまちづくりを進めるということになればいいですけれども、そのぐらいの制度づくりだったら、やはり最後は、本人の意思によって変わる変わらないがあるんですよね。そうすると、やはりこういうものは、ある意味では、行政の権限の集中というんですか、私権をある程度制限するための権力というものが前提になるというふうにはっきり申し上げたいというふうに思うんですよ。

 そういった中で、これはあくまで提案ですが、例えば、地権者が理不尽に協力をなかなかしない、そしてほかの人たちは基本的には合意がなされていて、まちづくり、都市計画というものをこれでいこう、そして都市計画決定の手続を踏んでいこうというふうに決まっても、なかなか協力しないという地権者がいる場合に、そういった方に対して、課徴金とかペナルティーとかそういったものを科す。これは大変過激な話かもしれませんが、そういったことも多分私は先進国では行われているというふうに思うんですね。それじゃないと、ニューヨークなんかに行ってホテルの上から整然とした町並みを見て、私の友達が、これは相当な地上げをやったんだなというふうにコメントを漏らした友達もいましたが、やはりそのぐらいやっていると思うんですよ、公共の福祉の名前のもとで。そういったことは考えられないのかということをちょっとお聞きしたいというふうに思います。

○加藤政府参考人 先ほども答弁させていただきましたが、都市計画は、土地の権利に対して必要な制限を行うというものでございますので、先ほども答弁させていただきましたが、都市計画の必要な手続を踏んで都市計画の内容を決めていただくということになっております。

 それで、今申し上げましたようなこうした手続を経て、地域の判断で都市計画の内容が決められるものでございますので、一方で、都市計画の実現のための手段としては、都市計画法でも、例えば、道路とか公園とかの施設決定ですとか、区画整理とか再開発といった市街地開発事業があるわけでございますが、その都市計画の内容を実現するために、今申し上げたような事業については、例えば道路ですとか都市公園などの都市計画事業については、事業認可を受けることにより収用権が付与されるということになっておりまして、その収用権に基づいて強制力を持った事業執行ができるということになっておりますし、また、公的主体が実施いたします土地区画整理事業や市街地再開発事業につきましても、事業の実施に当たって地権者の同意は法律上の要件とはされておりません。

 また、地権者が構成する組合による区画整理事業ですとか再開発事業につきましても、事業計画の決定等に際しまして地権者の三分の二以上の同意が必要とされておりますけれども、憲法が保障する私有財産権との関係から、当該要件の緩和につきましては非常に厳しい面があるというふうに考えております。

○北神委員 手続があるのはよくよくわかっております。要するに、それをさらに踏み込めないかという話なんですね。

 これは、通告はなかったんですが、二階大臣、もういろいろ経験されていると思います。この土地の問題というのは最も大変な問題で、まちづくりをする上で一番ネックになるというふうに思うんですね。そして今、日本の場合は、成田でも紛争をまだしているがごとく、本当に土地に対しては非常に公共性というものがなかなか及ばない、及ぼすことができない、そういったジレンマがあって、しかしながら、今後、人口減少がある、財政も厳しい、そしてこの共同体というものを、先ほど申し上げたように、戦略的にもし復活しなければならないということであるならば、やはりここの部分に踏み込まなければなかなか厳しいというふうに思うんですね。ですから、そこは政治家としてどのようにお考えかということをお聞かせ願えればというふうに思います。

○二階国務大臣 今、成田のお話が出ましたが、私も運輸政務次官などを経験したことがございます。もう随分以前のことで、たしか海部内閣であったかと思います。大野明運輸大臣のもとで、私は政務次官として現場にも再々赴いたこともございます。まさに命がけの交渉であったわけであります。そして、政務次官でただ一人、自分の自宅の方にも警備がつく、こういうふうな状況での生活でありました。これは私だけではなくて、その方の担当者の方々、これは、成田は少し他の例とは異なるわけではありますが、土地に対する問題、そしてお互いの、地域の皆さんの執念のようなものを感じながら、これは法律だけでは解決しないな、そういう問題もありました。

 そしてまた、今、公共事業問題が非常に関心が高まっておるところでありますが、道路などは、もう一息頑張れば開通できて他の地域も活用できるというような場面でも、最後のところがネックになって、そしてなかなか解決できない。そして、何とかかんとか言っておっても、最後のところは頑張った人が粘り勝ちみたいな例があるわけですね。多くの皆さんに迷惑をかけながら、その人が粘り勝ち。

 私は若いころ、議員からもお話出ましたから申し上げるんですが、地方で県会議員をやっておりましたときに、この県の中で用地買収ができなくて公共事業が滞っているようなところが何カ所あるかということを聞いたら、やはり九十カ所ぐらいあると言った。それから随分歳月がたっておりますが、今尋ねても、九十とは言わぬでしょうけれども、その半分ぐらい滞っている場所がある。私は、そういう地域は、これは和歌山県のみならずでありますが、工事を手控えるといいますか、地域の合意ができなければ、やはりそういうところはもうやらないというふうなことをきちっとやっていくこと、そして、法改正も含めて、国民的合意のもとにここのところを考えなければ、日本の都市づくり、まちづくりというものは進まないという問題点は、私は議員のおっしゃるとおりであろうと思います。

○北神委員 率直な御答弁、ありがとうございます。まさにそういうことで、もう時間がございませんので、いろいろ提案もしたかったんですが、ぜひ土地の私有権の制限、私ももちろん、今大臣がいみじくもおっしゃったように、執念という言葉ですね、こういうものも確かにあるんですよ。そして、それは、先祖代々の土地だとか、あるいは農地解放の後に、土地というものは何とか守らなければならない、そういった意識もある一方で、単なる財産として長く持って、景気が回復すれば、それを売ればたくさんお金が入るとか、そういった部分とか、いろいろこの問題は根深い、そして総合的に検討しなければならないというふうに思います。

 最後に大臣に御質問したいのは、今おっしゃっていたように、この法案というのは単なる商店街の補助の話ではなくて、やはり、私たちの文化とかコミュニティーを守るための一つの重要なきっかけになり得る話だというふうに思いますので、ぜひとも、経済産業省、国土交通省だけじゃなくて、文化人とか経済人とか都市計画の専門家とか、あるいは思想家とか宗教関係の人とか歴史家とか、そういったものを含めて、今示されている、今兆候としてある流れというものをさらに力強く進めていきたいというふうに思いますし、具体的には、審議会なのか知りませんが、そういった場というものをつくっていく、これは大臣がやられるのかどうかわかりませんが、そういう提案を例えば内閣でしていくとか、そういったことをぜひお願いしたいというふうに思うんですが、その辺、お考えはいかがでしょうか。

○二階国務大臣 私も先ほどから御質問をお伺いしながら考えておったわけでありますが、おっしゃるように、文化人であるとか芸術家とか歴史家、それぞれ地域にも立派な方々が多くいらっしゃるわけであります。そうした方々の経験や知見をやはりまちづくりに生かしていくということは大変重要なことでありますから、ただいま法律で提起しております協議会等につきましては、これはこれで、もうしっかり取り組んでおる地域もおられるようでありますから、今考えておられるとおりお進めいただくことにして、国全体としてこうした問題に対して経済産業省が意見を尋ねられれば、そういうことに明確にお答えすることができる、方針を示すことができるような、そういう審議会という形をとるか、もう少し柔らかい形でも、しっかりと現実に対応できるようなことを考えていくべきではないかと思っておりますので、総合的にそうした専門家のアドバイザーを集めるなどというようなことを考えてみたいと思います。

○北神委員 ありがとうございます。

 これで終わりにしたいというふうに思いますが、せっかく今回の法案でも地域活性化の協議会がありまして、そこに今度はNPOとか地権者とかいろいろ巻き込んで、恐らく現場の意見としていろいろ出てくると思うんですね。そういった具体的な意見と、さっき申し上げた大所高所の意見とをあわせて検討すれば、そしてそういう方向性を打ち出していただければ大変ありがたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

全議事録

「日本国憲法改正国民投票制度とメディアとの関係」について、日本雑誌協会の方々にご意見を伺いました。

北神質疑

2006年4月20日 憲法調査会
○中山委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日は、雑誌協会の皆様方に貴重なお話をいただきまして、まずは感謝申し上げたいと思います。

 本日は、私、先ほども雑誌といわゆる放送の話が出まして、先週も当委員会で放送協会の皆さんの御意見も聞いたり議論をしたりしたわけでございますが、雑誌と放送の最も大きな違いの一つは、放送の方は放送法という法律によってある程度公正中立性とか政治的な中立性とか、そういったものが担保されているというか、縛りがかかっている。一方、雑誌の方はそういった法律がない。いろいろ内部的な、第三者機関とかそういったものはあるというふうに思いますが、そういったことを踏まえていろいろお話を伺いたいというふうに思います。

 それで、雑誌はいろいろなジャンルがあるというふうにおっしゃっておられますが、特にこの憲法改正、あるいは私たち民主党は国民投票法案は憲法だけじゃなくていろいろな喫緊の政策課題、そういったものも対象にすべきだというふうに主張しておりますが、その中で、特に私は個人的に、問題となり得るのは週刊誌かなというふうに思っております。本日は、協会の立場であられるというふうに思いますが、特に週刊誌について、皆さんの経験とかそういったものを踏まえていろいろお聞かせ願えればというふうに思っております。

 まず、週刊誌というものは、グラビアから芸能ネタから、いろいろなものが雑多に入っているわけでございますが、きょう問題にしたいのは、政策的な記事とか憲法改正に関する記事、そういった性質の記事の部分なんですが、そういったことについて週刊誌というのは非常に微妙な位置づけだと思うんですよ。

 というのは、外国にも、広範に読まれて、かつ、いわゆるオピニオン雑誌でもないし専門性の高い雑誌でもない、新聞でもない、一方でスポーツ新聞みたいな、そういった位置づけでもない。アメリカに、例えばナショナル・インクワイアラー、ああいう雑誌がありますよね。宇宙人の死体が車のトランクで見つかったとか、エルビス・プレスリーはまだ生きているとか。

 そういった記事を載せている雑誌は非常に限られた人たちが読むし、みんな一定の距離感を持ってその記事を読むんだと思うんですが、日本の週刊誌というのは、官僚の人たちも読んでいるし、国会でも週刊誌のネタをベースに質疑をしたりする。一方で、「中央公論」とか「世界」とか、そういったまじめな、まじめななんて言ったら失礼ですけれども、やはりちょっと距離を置いて読むわけですよね、週刊誌の方は。

 それは、もちろん週刊誌の一つの、ニッチを求めて、そういった戦略的にやっている部分もあると思うんですが、問題は、どういうふうに位置づけを考えているのかという具体的な意味合いで、公正中立というのは、例えば新聞とか総合雑誌とか、そういったところは多分比較的厳格に考えておられる。週刊誌の方は、まあこのぐらいだったら許されるんじゃないかとか、ほかの新聞とか総合雑誌に比べて差別化を図っていると思うんですが、その辺、どういうふうに週刊誌の方々は考えているのかなということをお聞きしたいと思います。

○鈴木参考人 今おっしゃったことが当たっているところは多くて、週刊誌というのは世界に冠たるといいますか、ほかに類を見ない。週刊誌といっても総合週刊誌ですね、週刊誌というジャンルは、実際には一週間に一回出るものはすべて週刊誌ですから。ただ、日本で言う週刊誌というのは、今おっしゃったような、想像されているような数誌だと思うんですが。

 週刊誌が提供しているものの一つには、さっきちょっと申し上げたこととも関連するんですけれども、物の見方というのがありますね。週刊誌的な、週刊誌に載っているということで皆さんが共通の理解を持つ。プラスの部分もマイナスの部分もあると思うんですが、皆さんもよくそういう発言をされる。それだけ週刊誌が今までこの社会で果たしてきた役割が大きいんじゃないかなと私は思っています。

 週刊誌の中にさまざまな意見が載る、それは月刊誌も含めて、さっきちょっと申し上げたように、右から左まで、あるいは前から後ろから、いろいろな形で意見が載りますけれども、一つは、今のようなこういう憲法問題について語るときは、だれがどういう意見を持っているのかということを明確にする必要があると思います。だれが言っているんだ、あるいはだれがこういう主張を持っているんだ、あるいはどういう集団がどういう考えを持ってこういうことをしているのか。そういう部分に関してはきちんと、だれがということが必要だと思います。

 それから、週刊誌の持っているもう一つの側面としては、週刊誌にはそれぞれの主張がありますね。週刊誌あるいは出版社というのは報道機関であり言論機関なわけですから、自分たちが言明すべきことはきちんと言明をしていこう、それについては我々の意見である、こういうふうにしていただきたい、あるいはこういうことを期待するということはきちんと各誌述べていると思います。

 それで、そういうものが明確でないと、記事というのはどっちつかずになるのか、あるいは論点が明確でなかったり、もっと言えばおもしろくなかったりということで、読者の鉄槌が下るというのか、買ってくれなくなるわけですね。そこが、さっき申し上げたように、週刊誌が毎週毎週の試験を受けているというのか、あるいは毎週毎週点数をつけられているゆえんだと思います。

○北神委員 ありがとうございます。

 多様な論点あるいは事実関係をはっきりさせる、さらには週刊誌それぞれの、雑誌の主張というものをしっかりとするというようなお話でしたが、私が特にお聞きしたいのは、言論の責任という部分があると思うんです。そして、新聞とかほかの総合雑誌みたいなところはかなりそういう緊張感みたいなものが見られるんですけれども、週刊誌について、別に私、週刊誌に取り上げられたとか、ここで復讐を図ろうとか、そういうつもりは全然、全くそういう経験もないんですが、そういうことではなくて客観的に。

 というのは、これは日本の言論の一つの特性だというふうに思っておりまして、週刊誌だけじゃなくてテレビとかでも、お笑い芸人とかあるいはスポーツ選手までも政治に関していろいろコメントするというのは、余りほかの国では見られないんですよ。

 これは私はビートたけし現象というふうに言っているんですけれども、お笑い芸人が政治的なコメントを例えば何か発言をして、政策的な意見を述べたときに、それがある期間を経て、結局それは間違っていた、間違った判断だった、そういうことが判明したときに、その言論の責任というものを追及しようとすると、いやいや、おれはお笑い芸人だ、君は何でそんなまじめにおれに責任を追及しようとしているんだ、こういう非常に言い逃れられる、無責任な部分が出てくると思うんですね。

 週刊誌はそこまでとは思わないんですが、どちらかというと雑誌の中でそういった部分が強い。これはもちろん、皆さんおっしゃるように表現の自由というものは極めて大事なことだし、それを保障するというのは大事だというふうに思うんですが、そういった微妙な部分について週刊誌にはやや緊張感がない部分が見られるんではないかというふうに思うんですが、そういったところについてどういうふうにお考えかというのを教えていただければと思います。

○鈴木参考人 テレビのことは私は答える立場にありませんので。ただ、今の感想として言わせていただくと、スポーツ選手の国会議員の方は発言権がないのかなというんで、皆さん大変だろうなというのは感想として持ちます。彼らは発言には責任を持っていないというふうにも受け取れますので、それはちょっと今の感想なんですけれども、雑誌というのはそういうふうにいろいろな考え方を持つということの証左かもしれません。

 今の責任感とか緊張感ということでいえば、週刊誌というのは、多くの人に読んでいただくために、言ってみれば平仮名で書いているようなところがあります。つまり、漢字で書いてあれば難しくて正しいことであって、平仮名や片仮名で書いてあることは真実を伝えていないのかということにもつながると思うんです。

 これは随分昔に教科書で読みましたけれども、野口英世の母の手紙なんというのは、片仮名と、漢字も入っていましたかね、そういうもので、読まれて実に大きな感動を与えるというふうに教わった覚えがあります。それと同じで、週刊誌というのは、たくさんの人に伝えるためにさまざまな工夫をして、それは写真を使っていたり、あるいは、時に漫画を使っていたり、風刺をしたり、相手に自分の真意を伝えるためにさまざまな工夫を凝らします。それをもってまじめであるかないかという御判断は、読者にゆだねるしかないわけです。

 それから、責任ということに関していえば、新聞あるいはテレビと決定的に違うところがありまして、すべての週刊誌は、ごらんになっていただけばわかりますけれども、毎号後ろに編集人と発行人の名前を載せております。要するに、その人が責任を持つということですね。その号についてのすべての責任はその二人が持つわけですから、これをもって無責任だと言われるのは非常に、なかなかそれが伝わっていないのかなということは考えてまいりたいと思います。

○北神委員 わかりました。その発行人、編集人のいわゆる個人的な責任が明確になっているという部分は私も勉強になったというふうに思います。

 別にきょうは週刊誌批判をするつもりは全くなくて、こういった憲法の問題で、あるいは重要な政策課題で、先ほど山参考人の方から、なかなか言論の自由を濫用する想定ができない、そういう具体的な想定ができないというお話がありましたが、極端な話をすれば、例えば憲法改正をするという記事があって、そこに何か戦争の場面の写真を載せたり、そういったことも一つの誘導的な意図としてあり得るわけですし、逆に言えば、憲法を改正しない方がいいという立場だったら、すごく田園的な写真がそこに載っていたり、これは写真だけの話ですが。そういった意味で、ある意味では非常に短絡的な結論というものを載せるということは、一つ読者の意見形成をゆがめる可能性も出てくるというふうに思うんです。

 そこは別に厳密にどうするか、法的にやるかどうかという話はいろいろあると思うんですが、具体的に、週刊誌の中でそういったことに対して、特に憲法の問題というのは、今まで日本の戦後の歴史の中あるいは日本の歴史の中で国民投票にかけるという事例はなかったわけですから、ある意味では国の形を決める話であり、国家権力をいかに制約するかという極めて大事な話の中で、今の時点で憲法の話が議論の俎上にのっているところで、雑誌の編集者の中とかあるいは会社の中で、これについてどういう考え方で取り組んでいくかということは議論されているのかどうか、お聞きしたいと思います。

○山参考人 私が知っている限りはほとんど聞いたことがございません。週刊誌というのがこういうテーマを取り上げるときには、先ほどちょっと、憲法を改正されるとあなたも戦場に行かなければいけなくなるという考え方は事実をゆがめるのか否か。これは私ども、そういう記事があったとしても事実をゆがめているとは思いません。例えばそういう編集方針があったとしても、それも一つの見方です。憲法改正、自衛軍というのを、例えば自民党の五十周年の改正草案の中で九条二項を削除して自衛軍ということ、これは別に、自衛軍というのがすぐ戦争ということで結びつくかどうかというと議論の分かれるところですし、それは自衛軍を創設するということは戦争につながるじゃないかという考え方だってあるわけですね。

 それで、戦争というので、今度は、今イラクに派兵されている自衛隊の問題なんかでも、これに関しても、私どもからすれば、もっとちゃんと報道しろよということを言いたいですね。物すごい報道規制があるような気がしてしようがないし、それに関して週刊誌はおかしいじゃないかと何度も何度も書いていますよね。実際に、イラクの自衛隊は何をしているんだと。

 それから、犠牲になられた外務省の方々についても、あの報道はアメリカと日本のできレースじゃないのかという記事があった場合に、それはそういう見方があっても構わないわけですね。犠牲になられたのは、何で殺されたのかということに関しての情報が、例えば米軍の誤射ではないのかというようなのが何度も記事になりましたけれども、そういうものも一つの情報としてもたらされた場合には何らかの形での取材を始めますよね。それで取材を始めた結果、そういう疑いもあるという記事をつくるのは構わないと思います。

 それと同じように、憲法改正に関しても、これは、例えば私の手元にありますけれども、週刊文春だ、週刊新潮だ、現代だ、ポストだと、それぞれが憲法改正に対しての、どんな論者を選ぶのか、この改正されることによって何がどうなるのかということに対するさまざまな見方の記事をさまざまな方法で報ずることは何らゆがめることにならないと思いますけれども、そこのところは私は先生とは全然違います。

○北神委員 私もいろいろな意見があっていいというふうに思うんですよ。

 それで、さっきの話だったら、我が党も実はメディア規制というのは設けない、基本的に自由にするという立場なんですね。その一つの理由として、今おっしゃったように、例えば憲法九条を改正して即戦争状態になるというようなことが虚偽かどうか、あるいは公正かどうかということは、ある程度の期間を置かないと、なかなか一義的には判断できない、それはおっしゃるとおりだと思うんですよ。ただ、その結論に至るまでのある程度の論理とか、そういったものはやはり非常に大事だと。

 そして、申し上げたいのは、そういった結論とか意見とか、そういったものはいろいろあっていいというふうに思うんですが、センセーショナリズムにならないかどうか。この部分が、先ほど申し上げているように、特に私が感じる感じでは、週刊誌の場合、非常に微妙な部分がある。

 だから、そこをぜひまたお聞きしたいんですけれども、どこからどこまでセンセーショナリズムになるのかというのは非常に難しい抽象的な話だというふうに思いますが、恐らく、週刊誌の記者や編集長の中でそこの区分というものに対する考え方とか、そういったものがあるのではないかというふうに思うんですが、そこはいかがでしょうか。

○山参考人 ありません。

 センセーショナリズムだと思って、もし、オオカミ少年じゃありませんけれども、そういう報道を繰り返すと、やがて読者は離れていきますよね。おまえ、何をやっているんだということで批判が来ると思います。それぞれの編集長なり編集者なりが同じことを繰り返して、読者がそれを信じるというふうな意味でいいますと、やはりこういう記事のつくり方に対しておかしいと思ったらどんどん離れていくわけですね。

 先生おっしゃるような意味でいいますと、割と週刊誌は残酷なんですよ。正直言って、売れるということが読者の支持があるというふうに考えるとすれば、この読者の支持は簡単に離れますし、ある記事で支持がついた場合は、その連載の記事とか追及の記事が非常に歓迎される場合は、社会はぜひこれはもっと追及してほしいと願っているというふうに見るわけですね。

 ですから、編集長の判断によって、この記事のインパクトといいますか影響力といいますか、そういうものがどのようにあるかということは各編集長の判断なんですね。それで、その編集長の判断がずれている場合、荒唐無稽だとか、あるいは、こんなことはまさかないだろうとか、こんな記事のつくり方はおかしいということになりますと、それは読者の反応にすごく端的にあらわれるものなんです。ですから、さっき生き物と言いましたけれども、簡単に休刊、廃刊ということもあり得ます。

 ですから、我々としても、さっき緊張感が非常に足りないんじゃないかということをおっしゃっていましたけれども、緊張感はかなり大きいものがございます。編集も、正直言って、週刊誌の編集部に何年かいますと、どこか体を壊します。それぐらい忙しいですね。ですから、その辺から考えますと、割と少人数で、限られた期間に集中的な取材をしますから、やはりなかなか緊張感のある職場だと、私も二十年いましたけれども、そう思っております。隣の鈴木は編集長も経験していますので、かなりそれを経験していますので言えると思うんですけれども。

 答えになっているかどうかわかりませんけれども、そのような感想を持ちます。

○北神委員 皆さんのお話を伺っていると、責任の問題というのは基本的には市場原理だということですよね。そこの記事で信頼を失ったりしたら読者が離れて廃刊に追い込まれるとか、そういったことだというふうに思います。

 それで、緊張感がないというのは、決して皆さんが一生懸命やっていないとかそういう意味合いでは全然なくて、営業的には非常な緊張感があるというふうに思いますが、言ってみれば、私が申し上げたいのは言論の責任という部分について緊張感があるかどうかということでありまして、それも断言するつもりはないんですよ、私も。皆さんが持っていないということを申し上げるつもりはないんです。

 一つ、言論の責任の部分でぜひ皆さんにむしろ教えていただきたいのは、よく報道の中立性とか公正性とかいうふうに言われておりまして、特に新聞なんかは割と中立な立場を意識的にとろうとする。これは一見すごくいいようにも見えるんですが、実は、その中立の名のもとで体制擁護をしたり、あるいは中立の名のもとで反体制的な誘導をしたり、いろいろ微妙な操作というものができるというふうに思っているんですね。

 先ほども、雑誌の編集長が非常に強い権限を持っていて、編集長の方針というものが、絶対的まではいかないかもしれないけれども非常に重要だというお話もありましたが、私が思うに、例えばイギリスのロンドン・エコノミストという雑誌とかあるいは新聞でもアメリカのニューヨーク・タイムズとか、こういったところは割と、例えば大統領選挙でも、我々は、ニューヨーク・タイムズは共和党を支持するとか、あるいは民主党の候補者を支持するとか、明確にするんです。

 これは中立性に違反するように見えるかもしれないけれども、実は、その方が読者も、ああ、この雑誌はこういう立場なんだ、この雑誌は憲法改正反対なんだということが明確にわかっていれば、その中に含まれている記事についても割と距離感というものを調整できるし、割と正当に判断する手だてにもなる。

 もう一つ、利点として申し上げれば、はっきりとスタンスを明確に打ち出していてそれが後になって結果的に間違っていたときには、そこに具体的な言論の責任というものが生じると思うんですよ。つまり、ニューヨーク・タイムズの例で言えば、我々はクリントンを推したけれどもクリントンは結局こういう失敗をして国民の支持を失ってしまった、我々は当初推していた理由はこうこうだったけれども、結局ここでこういう点について判断を間違えて、我々もある意味では判断の間違いをしてしまったという意味で、はっきりと社論を前面に出していた方が言論の責任というものが明確になるという部分があると思うんです。

 その点について、まず、週刊誌が実際に、例えば憲法の問題について統一した見解で、いろいろな雑多な、評論家を使って意見を載せるんじゃなくて、統一した、改正賛成、九条改正賛成だといった一貫した方針のもとで編集をするのか。そして、する場合にせよしない場合にせよ、その方が公正中立とか言論の責任の観点からいいのかどうかという皆さんのお考えをちょっと伺いたいというふうに思います。

○山参考人 ニューヨーク・タイムズ、ロンドン・エコノミストという雑誌が持っている社会的なオピニオン誌としての受けとめ方、あるいはその言論機関としての役割、これは明らかだと思います。これはもう社会的に認知されておると思いますね、その雑誌はそういう立場の雑誌だと。

 日本の週刊誌は、言論機関としての認知は、されている要素もあると思うんですけれども、娯楽性とか、あるいは中の記事に関する信頼性あるいは信用性、あるいは中の記事をどういうふうにとらえるかといった場合に、言論機関として受けとめられている要素というのは、一部はあると思いますけれども、言論機関としてこの雑誌のこの方針は、ニューヨーク・タイムズと同じように、世の中に対して真っ当な形、真っ当と言うと語弊がありますけれども、世の中の方向性を決めるというふうな形での受けとめられ方はしておらないと思うんです。

 だからといって言論機関としての責任がないのかといいますと、そうじゃないんです。つくっている記事記事に関しては、その記事がもし人を傷つけたり、あるいは社会の方向性に対して、社会のやはりある常識とかあるいは世論に対して全くのでたらめなことをやったり、とんでもない侵害をしていた場合には、その責任問題には当然つながっていきます。

 ですから、言論機関として記事の特徴は、さっきもちょっと言いましたけれども、例えばテレビではこう放送されて新聞ではこういうふうな見方をされているけれども、いや、それは一面であって、本当に、これをやっているこの方は幼い日はこういうふうなことをやっていて、こういう問題点もあるよみたいなことを書いたり記事にしたりするわけですね。

 ですから、さっき、大衆ジャーナリズムと言ったらちょっとあいまいになりますけれども、興味本位な部分もあるんです。要するに娯楽的な要素もあります。あるいは、さっき私がちょっと言いましたけれども、スキャンダルを歓迎するような傾向にある大衆の要望、欲望にこたえるような要素もあります。

 ですから、正面から言論に対置するかどうかとなりますと、編集方針としてそういう編集長もいるし編集者もいると思いますけれども、日本の週刊誌の場合はそういう百貨店といいますかいわゆるデパートのような、いろいろなものがあることによってどの嗜好でもって買うか買わないかを判断されたりするわけであって、言論の方向性でもって買うということは、大きな枠ではあると思うんです。でも、それは私はちょっと、ニューヨーク・タイムズと比較して余りにもいいかげんではないのかと言われたら、そういう要素もあるだろうなとしか答えようがないです、率直なところ。

○北神委員 率直な御意見、ありがとうございます。

 冒頭申し上げた週刊誌の微妙な位置づけというのはまさに今言われたことで、政策的な発信もしているんだけれども、一方では娯楽性とか読者が求めているようなスキャンダルな部分とかそういった部分も含めているという意味で、非常に日本独特の言論形態ですので、そこが一番私なんかはちょっと懸念しているところもあるんですけれども。ただ、別にきょうは何も結論を出すつもりもございませんし、率直にいろいろお話をしたかったので、いろいろ無礼な発言もあったと思いますが、他意はございませんので、きょうはいろいろと勉強になりまして、ありがとうございました。

 ちょっと時間、早目かもしれませんが、終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

全議事録

「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法及び石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案(内閣提出第29号)」について質問を致しました。

北神質疑

2006年4月5日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 先日も当委員会で質問をさせていただいたわけでございますが、もともと産業政策とかエネルギー政策に関心もありましたが、先輩議員の圧力もこれありまして、当委員会に先週の水曜日から正式メンバーとなりましたので、よろしくお願い申し上げます。

 本日は、NEDO及びいわゆる石特ですね、石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 今回の法案は、京都議定書目標達成計画に基づいて国内での取り組みというものが優先される、最大限努力して、それでもなお排出削減目標に届かなければ、不足する排出削減量についてNEDOによってクレジット取得業務というものを実施するための改正だというふうに理解しております。私は、地元が京都ということでございまして、この京都で締結された議定書に基づく環境対策を実効性のあるものにぜひしていただきたい、そして私もぜひ頑張っていきたいという強い思いがございます。

 他方、この京都メカニズムなるものは、環境対策の側面からいえば決して王道とは言えない。まず、やはり王道というのは、国内での削減努力というものがあると。

 しかし、王道ではないかわりに、この京都メカニズムというものは、環境対策に限らない広がりがあるというふうに思っております。一つは、当委員会でも何度も審議に上がってきた事項でございまして、国内の企業のビジネスチャンスの拡大ということが挙げられると思います。もう一つは、先ほども大畠議員が語っておられましたが、外国に対する技術移転を通じての外交政策、外交的な側面というものもあるのだろうと。少なくとも、私は、その点について、本日強調して議論をしていきたいというふうに思います。

 運用次第では、この京都メカニズムというものも、世界で最もすぐれた環境技術、エネルギー技術を誇る日本が、その優位性を保って、あるいは優位性を生かして、諸外国との外交というものをより国益にかなったものにできるのではないか、そういった外交的な視点から、非常に大事な課題だというふうに思っております。

 今申し上げたのは、ある意味では変則的なとらえ方なのかもしれません。しかし、そういった視点も大事だというふうに私は思っておりまして、ぜひそこは、二階経済産業大臣におかれまして、今回の京都メカニズムに係る改正法律案の意義をどのようにお考えなのかというものをお聞かせ願いたいと思います。

○二階国務大臣 地球温暖化防止のために京都議定書の約束達成ということは我が国にとってはもう極めて重要なことでありますので、政府挙げて最大限努力をしてまいりたいというのが決意の第一であります。

 このため、政府として、京都議定書の発効を踏まえ、平成十七年四月、京都議定書目標達成計画を閣議で決定しておりますことは御承知のとおりであります。この計画に基づきまして、まず、先ほどお述べになりましたように、国内での取り組みに最大限努力する、私もこのことが重要だと思っております。地球の裏側で何かをやるということだけではなくて、やはり私たちとしては、国内の環境問題を他の国の模範になるようなことに仕上げていかなくてはならないと思っております。

 なお、そうした努力をしてもなお目標達成に不足するその差につきまして、議定書で既に認められておりますとおり、京都メカニズムによる対応をすることになっておることはこれまた御承知のとおりであります。

 この法律案は、京都メカニズムのもとで、政府が、温室効果ガス排出削減量等、いわゆるクレジットを取得するための制度を構築するものであります。予算としては五十四億円、そしてまた国庫債務負担行為として百二十二億円お認めを願っておりますので、これらを最大限活用しまして、より効果が上がるように努力をしてまいりたいと思いますが、あわせて、先ほど御質問の中でもお述べになりましたビジネスチャンスやあるいは海外への技術移転、そうしたことも踏まえて、日本の国際的な地位の確立に環境を通じて努力をしてまいりたい、このように思っております。

○北神委員 今、経済産業大臣から、主にCO2削減の観点から今回の法律案の意義をお聞きしました。それはもうおっしゃるとおりで、第一義的にはこれは環境対策としてとらえるべきだ、附属的にビジネスチャンスの拡大とか技術移転の部分があるというふうにおっしゃったことだと思いますが、私は、それはそれで本当に一番大事な部分で、最大限政府としても努力すべきだというふうに思います。

 しかし、一方で、先ほど申し上げたように、日本の政府があらゆる手だてを尽くして総合的な外交政策というものを実行するのであれば、その外交政策というのは当然そういうものであるべきだというふうに私は思いますが、本法律案の運用の段階において、やはりそういう外交的な見地というものも加味していくべきじゃないか、いや、むしろそういうことが可能で、そういったことをやるべきではないかというふうに思っているわけでございます。

 抽象論に聞こえるかもしれませんが、具体的に言えば、日本の環境技術、省エネ技術、こういったものをどういった国に積極的に移転するのか。そして、そうすることによって、当然そうした国と外交的な連携が深まるわけでございます。逆に言えば、積極的に移転しない国もあるかもしれない。そういった国とは疎遠になるかもしれないし、場合によっては外交的な牽制になる側面もあるというふうに思うわけでございます。私が申し上げているのは、そういう外交的な視点だということでございます。

 そうした視点から、今回の京都議定書の京都メカニズムのスキームというものは、基本的には、民間会社がそれぞれプロジェクトを見つけてきて、それをNEDOに認定していただく、そこでこのクレジットの話が進むわけですよね。

 そういった意味では、私は、もちろん法律でがんじがらめにすることは必要ないと思いますが、民間会社にプロジェクトあるいはホスト国の選別、決定をただ放任するというかお任せするのではなくて、ある程度政府の方針というものがあるべきではないかと。

 具体的には、今回のクレジット取得スキームの中で、対象となるホスト国について戦略的な色づけというものも可能であるし、すべきではないかというふうに私は思っているんですが、これを政務官の方に伺いたいと思います。

○片山大臣政務官 先ほどから我が国のエネルギー戦略についての御質問も相次いでおるわけですが、私どもも新国家エネルギー戦略というのを今策定中でございまして、先般大臣の方から経済財政諮問会議でも中間報告をいただいて、小泉総理の方からも、非常に重要な問題であるというお話をいただいておるわけです。

 そういった中でも、エネルギー戦略の中でさまざまな協力の分野が重要だと。特に、アジア、中国、インドを中心としたBRICs的な中進国になりそうな途上国であったり、あるいは一般の、我が国が従来から援助対象としてきた途上国であったり、そういったところに日本の冠たる新エネルギーや省エネルギーの技術も提供していかなければいけないし、また原子力の問題もあるということは盛り込まれております。

 今般、今回法律でお願いしております、NEDOがクレジットを取得するというこのメカニズムでございますが、やはり前回の御審議のときにも御質問にお答えしておりますが、原則公募によってプロジェクト事業者を選定するということにしておりまして、その選定に当たっては、やはり確実性と費用対効果を考えております。それはもう委員にまさに釈迦に説法でございますが、今回初めてこういったスキームをお願いして、また予算もお願いしているということでございますので、確実性と費用対効果ということをまず最優先に考えております。

 事業者の選定に当たっては、まず、その排出削減事業の成否、要するにできなかったらそこからはクレジットにカウントしてもらえない最終結果になりますので。それから財務能力とか提案された価格の問題もございますし、ここに厳正な評価をしなければいけないんですが、さらに、こういった要素に加えて、事業が行われる国の政治経済状況も十分要素に入れるということになります。ですから、政情不安定であるとかそういった問題は、そこである程度評価に入ってくることにはなると思います。

 いずれにしましても、政府といたしましては、クレジット取得の可能性をまず広げていかなければなりませんので、我が国企業の排出削減事業の実施の円滑化を含めまして、今まで以上に、おっしゃったような点も踏まえ、発展途上国との協力には主体的に取り組んでいくということになると思います。

○北神委員 今、プロジェクトの公募によって、選定基準として、当然税金が入っているから、そのコストの面というものもしっかり見ないといけない、あとホスト国の政治経済の安定度というものも見ないといけない、それは本当におっしゃるとおりであると思います。

 しかし、私が申し上げたいのは、これは極端な例ですけれども、例えば、北朝鮮というのはちょっとおかしな話かもしれませんが、北朝鮮ほど日本にとって懸念を示すような存在じゃないかもしれませんけれども、ある程度、今後、近い将来の中で、東南アジアの国あるいは発展途上国の中で、あるいは中国とかこういった国が日本と外交的に緊張関係になっていくことも当然想定できるわけでございます。

 そういったときに、ただただ純粋に環境、CO2の視点とかあるいはそのコストの面とか、そういった観点だけでは、私は、これは国の政策であるわけですから、そういった点についてはやはり国益というものを踏まえていかなければならないし、総合的な外交戦略というものが我が国に余り見えていないというふうに思いますが、やはりそういった観点からもこの京都メカニズムというものをとらえなければならないし、このプロジェクトの選定、ホスト国の選定というものも、その中に、運用の面で、運用の段階でそういった視点というものを加味していただきたいというふうに思います。

 そういった趣旨ですので、ぜひそういった視点からプロジェクトあるいはホスト国の認定というものをとらえていただきたいということでございます。

 それで、今、発展途上国という話がありましたが、そういった発展途上国は、今、残念ながら、京都議定書のスキームの中に入っていない。今申し上げた技術移転を通じた外交についても、やはり彼らがこの枠組みの中に入った方が当然この日本の優位性というものも確保できるわけですよね。向こうもある程度CO2 の削減というものも義務づけられる中で、日本に対する省エネ、エネルギーの技術というもののニーズも高まる、そういったところに日本というのは外交上のレバレッジというものが生じるわけでございます。

 そういった意味で、先ほど大畠委員からも話がありましたが、既にお隣の中国とかインドとかさらにはブラジルとか、こういった発展途上国、先ほど大臣から、都合よく使い分けて、時々発展途上国、時々先進国という話もありましたが、もう事実上巨大な工業国家として世界有数のCO2の排出国となっているわけです。こうした国が京都議定書のスキームの中に入ってもらって、我が国が今回の京都メカニズムのこの枠組みというものを、私が申し上げている視点からいえば、外交戦略的に活用することが可能になる、そしてこういった国との重要な一種交渉手段となるというふうに思うんですが、ぜひ早急に、中国とかインドとかブラジルとか、こうした発展途上国を京都議定書の枠組みの中に入れていただきたい。

 その辺の大臣の努力というか、そういったものをぜひお聞かせ願いたいというふうに思います。

○二階国務大臣 ただいまの御指摘は、先ほどの大畠議員の御質問に続いて、大変もっともなことであります。

 何分、この超大国が、面積の面におきましては、今の仰せのブラジルを加えれば大変な面積を地球上有するわけでありますが、それらの国々がこの地球温暖化問題に積極的に参画、またそれなりの役割を果たしていただけるかどうかということが地球温暖化の防止に対してどれほどの効果を及ぼすかということになるわけであります。

 先ほどお話のありましたところはもう答弁を繰り返しませんが、ブラジルからは、エタノールをぜひ日本で活用してほしいなどということを、外務大臣やあるいはエネルギー担当大臣からしばしばお話があり、近くエネルギー担当大臣も日本にお越しになります。私は、その際、バイの会談におきまして、今御質問にありましたような点につきまして、我が国の国会でもこの問題が取り上げられておる、貴国のエネルギー問題そして環境問題に対してこのような意見があるということをしっかり御紹介をして、お考えをいただくように努めてまいりたいと思います。

○北神委員 ぜひその点について強く要請したいというふうに思います。

 これは、発展途上国だけではなくて、当然、先ほどこれも大畠さんから話がありましたが、アメリカの方も一番CO2を産出している国である、しかも最初にこの枠組みの中に入っていて、聞くところによると、京都メカニズム自体が割とアメリカの、当時は民主党ですか、民主党政権が推奨していた。

 当然、私も初めて法案を読ませていただいたときに、環境対策というよりは何となくアングロサクソン的な、何でもビジネスに変えていくような、そういった発想が色濃いなというふうに思ったわけでございますが、どうも、経緯的に見ると、これはアメリカを枠組みの中に入れていくための一つの呼び水みたいなものであったというふうに聞いております。そして、そういったことをしながら、結局、京都議定書の中から逃げてしまった、経済がマイナスになるからと。

 まさに京都メカニズムというのは、その点、経済的なところも配慮しているわけですよね。国内の企業にとってもある程度ビジネスチャンスがふえていく。そういった視点というものを、私も今までの経緯というものを詳しくわからないんですが、アメリカを引き入れるためには、もう一回こういったところをもっと強調したり、実際、日本でも件数がもう既に挙がっているわけでございますし、ヨーロッパとかでもいろいろな国がもう既に実績を上げている。

 こういった側面というものを強調すべきでもあるし、さっき申し上げた発展途上国と一緒に入る。アメリカの一つの懸念というのは、発展途上国が入らないのであれば我々も入る必要ない、そういったことも言っているらしいので、ぜひ、そういった二点を踏まえて、アメリカもぜひ入っていただかなければ本来の京都議定書の目的というものは達成できないわけですから、その点についてもう一度、大臣の、あるいは政務官の決意をお聞きしたいと思います。

○片山大臣政務官 この法案の御審議に入りましてから、一連の御質問の中でその件は非常に大きく取り上げておりまして、御承知のように、昨年十二月のCOP11それからCOP/moP1におきまして将来枠組みについて一定の合意は得られたわけでございますが、それは御承知のように完全に十分なものではありません。

 条約のもとでの対話を開始するということについては、御指摘のような米国それからCO2削減により大きな貢献が期待されるような途上国も含めて参加するということについては一定の合意は得られたのですが、新しいコミットにつながる交渉を開始するものではないということになっておりますし、後は、先進国の第二約束期間の削減目標の交渉ですとか議定書全体のレビューのための準備ということについては合意が得られたのですが、結局は、先進国の第二約束期間の削減目標の交渉という部分の交渉ということ以外には開始のめどが立っていないわけでございます。

 ただ、ことしになりましてから、ブッシュ政権は、エネルギー問題についてかなり軟化というか変化を見せておりまして、GNEPのようなこともありましたし、それから、諸外国との対話また政府高官の発言等を見ましても、先ほどの御質問で核燃料サイクルの問題もありましたが、やや、クリーンエネルギーに対する大変な関心も高まっておりますし、また国際協力についても、やはり米国としても今までのとおりでいいのかというような機運が上がってきております。

 ここは、今現在はそういうコミットメントにつながる交渉ができているわけではないのですが、まずアメリカにおいては国内の目標をつくるという方向で動いていただけないのかというお話と、アジア太平洋パートナーシップというのが本年一月、シドニーで行われまして、西野副大臣が御出張されて、ここでも一定のセクターがあったわけで、これは官民セクター協力でございますが、日、米、豪、中国、インド、韓国の六カ国でございますので、こういった枠組みもうまく動かしながら、何とかそういった方向で努力したい。こういう方向につきましては、政府全体で一致しているものと考えております。

○北神委員 ぜひ、この件については、日本側に大義名分があるわけでございますから、堂々とアメリカに対して主張していただきたいというふうに思います。

 先ほども福沢諭吉の独立自尊という言葉もございましたが、これは私の個人的な考えですが、本来日本というのは、それ以前に、聖徳太子のときから隣国の隋帝国に対して対等であると。それが日本の国是だというふうに私は思っているわけでございまして、そういった意味では、決してアメリカというのは、先ほど大臣からも強く、我が国は従属国ではないと。当然のことでございます。

 私は、別にあえていわゆる自虐的な観点から言っているわけでもないし、逆に言えば、ただただ、現実を見据えずに、いや、日本とアメリカは対等なんだ、日本は主権国家なんだということを言っているのも、現実をやや冷徹に見ていなくて、ある意味では思考停止に陥っている、そういった部分もあるというふうに思っております。やはり独立の気概というものを持ち直して、こういった問題についてアメリカに対して強く申し入れるべきだというふうに思っているわけでございます。

 これは、私が今申し上げている外交的な視点でいえば、京都議定書に入る入らない、こういった部分もありますし、今回の京都メカニズムの中に、実際にどういった国を技術移転の対象とするか、そういった運用の部分についても外交的な配慮が必要なんじゃないか、そういった趣旨を申し上げた次第でございます。やや大上段にかぶったわけでございますが、ぜひ、こうした外交的な視点を政府にもあわせ持っていただきたい、そういうふうに思っているわけでございます。

 これからちょっと細かい具体論に入りたいというふうに思いますが、まずは、今回の京都メカニズムの改正法律案に関する財源論についてお聞きしたいと思います。

 今回の法律案は、NEDOが行うクレジット業務の取得に必要な事業の一部について、平成十八年度の予算に限っていえば、八億円ほどは一般会計から歳出をするということになっておりますが、大半の四十六億円については石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計、石特とこれから言いますが、石特から支出することになっております。

 まず、あえて石特を活用する趣旨というのはどういうところにあるのか、お聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人 京都メカニズムの活用は、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、国民各界各層が最大限努力してもなお京都議定書の約束達成に不足する分についてのクレジット取得を制度化するということでございます。

 このクレジットの取得は、エネルギーの利用及び産業活動に対する制約を避け、環境及び経済の両立を目指すというものだと考えております。

 石特会計制度の趣旨は、環境配慮と経済成長の両立を可能とするエネルギー需給構造の構築を図るということでございますので、クレジットの取得は、エネルギー利用に対する制約を避けるためのもので、石特会計制度の趣旨に沿ったものであるというふうに考えております。

○北神委員 基本的に、私は、この法律案については大枠は賛成でありますが、ちょっとこの財源のとり方についてやや戸惑いを覚えているわけでございます。

 今、石特で使う趣旨の話もされたわけでございますが、御存じのように、現在、行政改革特別委員会というものが開かれて、行政改革の流れの中で最も大きな目玉として特別会計の改革というものが議論されているわけでございます。そういった状況で、今回の改正法律案では石特で財源措置を行っている。

 私も、今お話がありましたが、絶対特別会計を使っちゃだめだと言うつもりはございませんが、今いわゆる特別会計の改革というものがいろいろ議論されている。当然、経済産業省としてもそういったことに対して敏感であるはずだというふうに思いますが、そういった中で、先ほど趣旨の話もありましたが、あえて特別会計というものを活用した趣旨について、もう一遍再度お聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人 平成十八年度の石特会計予算におきましては、厳しい財政事情の中で、特別会計改革の推進とエネルギー政策の遂行という両面を念頭に置きまして、事業の効率化、重点化を図り、歳出も大幅に削減しております。石特会計の歳出予算につきまして言いますと、十七年度の六千四百三十二億円に対しまして五千七百八十億円と、六百五十二億円の削減を図っているわけでございます。

 今回のクレジット取得につきましては、エネルギー政策上極めて重要な政策であるということで、今申し上げましたような事業の効率化、重点化、あるいは歳出の大幅削減という中で厳しく選別した施策の一つとして歳出根拠を与えるということをお願いしている次第でございます。

○北神委員 一生懸命これまでも特別会計の歳出を削減してきたという趣旨だというふうに思います。

 あと、エネルギー対策にとって非常に重要な政策だから特別会計というものが正当化されるというお話でございますが、特別会計というのは、御存じのように、受益と負担の原則というものがなければならない。そういったところについて、この石油特別会計を活用するに当たって、今回のスキームの中でどこに受益があって、どこに負担があるのか、それをお聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人 先ほど申し上げましたように、京都メカニズムの活用は、国民各界各層が最大限努力してもなお約束達成に不足する差分についてのクレジット取得ということでございますので、このクレジット取得は、エネルギー利用に対する制約を避けるためというふうに考えられます。したがいまして、エネルギーの利用者がその財源を負担する石特会計に計上するということが適当だというふうに考えております。

 ちなみに、先ほど先生からもお話ございましたけれども、予算をお願いしているうち約八六%分を特別会計でお願いしておりますけれども、これは、エネルギー使用による二酸化炭素の排出状況が約八六%、それ以外の代替フロンその他の温室効果ガスが残りの一四%ということで、この比率を反映させて特別会計と一般会計に計上しているということでございます。

○北神委員 一つ私がこの特別会計を使っておられるのを見まして思ったのは、国内の省エネ対策に特別会計を使って、それによってCO2が削減される、それによってその受益というものが国内に生ずる、こういったことで今までも省エネ対策に石特を使っているというのは私も承知しているわけでございますが、今回のスキームというのは一種バーチャルな制度でありまして、外国に技術、省エネ対策というものを移転して、あるいは省エネ対策というものを実施して、外国におけるCO2の削減というものを図るわけであります。そのクレジットというものを日本で取得して、あたかも日本の目標を削減するということになっているわけでございますが、そういった点でいえば、これはちょっと考え方が違うのかもしれませんが、受益と負担という関係がやや飛躍しているんではないか、あいまいじゃないかというふうに思うんですね。

 その点についてちょっと見解をお願いしたいと思います。

○片山大臣政務官 委員は、特会、財政法の問題についても大変お詳しいので御質問をいただいているわけでございますが、まさに今回NEDOがクレジット取得を行うというこの京都メカニズムのスキームにつきましては、海外で行われる部分をカウントできるという、最後にこの京都メカニズム部分が入ったわけですね。認められるということは、いろいろな努力を総合的に行った上でどうしてもそれが目達できない場合はそちらを使っても構わないということでございまして、やはり総合的には、いろいろな努力を国内で、さまざまな努力、今までも御説明させていただきました努力を行うわけですが、今後の目標達成期間までの間におきましては、産業界のことですから変動等もあり得ますので、そういったことを踏まえて、京都メカニズムを使う分につきましては、それが効率的にかつ確実的に実施できるようにすることの方が、我が国全体のエネルギーの需給が逼迫しないという意味からも適切ではないかという判断で、そういった条約上の枠組みに合意し、今回も法律をお願いしているわけでございます。

 また、特会の改革が今回、通称行革プログラム法につきまして非常に重要な要素になっておりますが、全体の特会の数が、三十一から、二分の一から三分の一になるというのは、私の承知しております限りでは、戦後、昭和二十二年に財政法ができて以来これだけのドラスチックな改革を行ったことがない中で、私どもが所掌しております両エネルギー特会につきましても六百億円ぐらいを一般会計に貢献させていただくとともに、二〇〇七年度をめどに両特会を統合するということも考えております。特に剰余金や積立金の点検につきましては厳しく行い、また、前国会でも指摘されました広報予算等につきましては、多くのものをゼロ項目にもさせていただきました。

 また、余剰の問題につきましては、やはり備蓄の問題等のタイムラグがあるということを今までは申し上げてきたわけですが、さらにそれを厳しく、できる限りのところまで抑えさせていただいて、全体におきまして相当な減額を、具体的には歳出削減分、当省分だけで六百五十一億という前例のないものですが、させていただいた上で、新エネ、省エネ対策と並んで、今回の環境と経済の両立という意味からでのエネルギー確保、エネルギー逼迫にならないような責任あるエネルギー政策の中で、この計上はやはり必要欠くべからざる重要なもの、取捨選択を重ねて、選択と集中をした上でも重要なものということでお願いをしているわけでございます。

○北神委員 私が今申し上げた受益と負担のところについてちょっと政務官は触れられなかったんですけれども、要はこれ、国内の省エネ対策だったら私はわかるんですよ。要は、エネルギー利用者にとって、日本の環境がよくなる、空気がきれいになる、そういった受益があると。

 でも、これは外国に対して削減を求めるものであって、あるいは促進するものであって、外国の受益にはなるかもしれないけれども日本の受益にはならないというふうに考えているわけですけれども、これはどういうふうに整理されているのかお聞きしたいと思います。

○肥塚政府参考人 いわゆる石特会計におきましては、例えば石油資源の開発でございますとかいうことで、エネルギーの開発あるいは導入といったようなものにも使われておりますけれども、今先生のお話の省エネルギーは、エネルギーの利用を全体として効率化させる、あるいは減少させるということを通じてエネルギーの制約を避けていくという効果なんだろうと思います。

 したがいまして、省エネルギーについても、エネルギーの利用者が負担している。そういう意味でいいますと、海外でクレジットを取得するということも、国内におけるエネルギー利用に対する制約を避けるという意味では同じだというふうに考えておりまして、したがって、エネルギーの利用者がその財源を負担する石特会計でお願いしているというふうに考えております。

○北神委員 つまり、その事業者にとって便益があるということですね、エネルギー制約がなくなるということで。

 今いろいろ御説明を聞きましたが、特別会計についてちょっと、百歩までいかないかもしれないけれども、十歩ぐらい譲って、これはふさわしい、あるいは特別会計を使う十分な条件がそろっているということかもしれませんが、私が申し上げたいのは、消極的な理由としてはそういったことも、特別会計を使っても問題ないということは言えるかもしれません。しかし今、特別会計の改革の議論の流れの中で、逆に言えば、一般会計を使ったらだめだということもないと思うんですよね、実際に今回も一般会計も一部使っているわけでございますし。

 そういったことからいえば、今回の法律案についてどうこう申し上げるつもりはないですが、これまた来年度も予算措置というものもあると思います。そういったときにぜひこういった論点も踏まえて議論をしていただきたいなというふうに思いますが、いかがでございましょうか。

○肥塚政府参考人 私どもとしましては、石特会計の制度、趣旨自身が環境配慮と経済成長の両立を可能とするような、省エネルギーを含めましてですけれども、エネルギー需給構造の構築を図るということが特会制度の趣旨だというふうに考えておりますので、クレジットの取得も、そういう意味では特別会計の趣旨に沿ったものではないかというふうに考えています。

○北神委員 しつこいようでございますが、石油特別会計も剰余金がたくさん生じている。先ほど削減をされてきたという話もありましたが、去年の、ちょっとファクスの上の方が切れていて正確にはあれなんですけれども、平成十七年十一月の財政制度等審議会においても、確かに、石油特別会計において、「一般会計からの繰入れを縮減している。」そして、「この結果剰余金は縮減しているが、なお高い水準にある。」というふうにも指摘されているわけですよね。

 だから、要らぬ誤解というか、そういったことを避けるためにも、一般会計で措置するというのも非常に賢明な判断かなというふうに思うんですが、もう質問の時間もあれなので、それについてぜひ議論いただきたいということを要請申し上げまして、本日は、外交的な視点、そして財源論について質問をさせていただきましたが、そういった点についてまた今後も検討いただきたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

全議事録

日本国憲法に関する調査特別委員会(憲法調査会)
日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件

北神質疑
2005年10月13日 憲法調査会
○中山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。新参者でございますので、よろしくお願いいたします。

 けさも笠井委員から、憲法とは何ぞや、そういった質問が参考人の方々にございましたが、私は、大別して、一つは、確かに人権を守って国家権力を制限するというルールづくりという部分もあると思うんですが、一方で、やはりその国の国民の歴史とか伝統とかそういったものを踏まえて、どういった国づくりをしていくんだ、そういったいわば理念的な部分も当然あるんだというふうに思います。その後者の部分を踏まえて申し上げたいのは、やはり私は基本的にはこの憲法改正をすべきだと。そして、それは極論すれば、条文、内容に問題が一切なくても改正をすべきだと。

 簡単に言いますと、今の憲法の文章を見ますと、これは翻訳でありまして、非常に日本語としてでも極めて奇異な表現とか文言とか語彙とかが散見されるわけでございます。私は、はっきり言って、一切憲法の中身に問題がなくても、日本語で全面的に書き直すべきだというふうに思います。それは、国民の歴史、伝統というものを踏まえるという意味でもありますし、そこまでいかなくても、基本的になじみやすい、国民にわかりやすい、そういった憲法をつくるのが大事だというふうに思っております。

 もう一つは、前文の部分につきまして、そこで日本の歴史、伝統を踏まえた国のあるべき姿というものをぜひとも書くべきだというふうに私は思っておりますし、今、内容の話でありますが、これは手続の部分とも密接に関連することでありまして、全面改正にするのか、あるいは溶け込み方式にするのか、そういった論点にもかかわってきますし、さらに言えば、全面改定をする場合に、一括方式でやるのか個別方式でやるのか、そういった部分にもかかわってきますので、ひとまず、私の憲法に対する思いというものを述べさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

全議事録