経済産業委員会で「消費生活用製品安全法」改正案について質問いたしました。
先日の本会議に引き続いての質問になりますが、今回は運用上の課題を中心に、いくつか提言も交えながら質問しました。

北神質疑
2006年11月07日 経済産業委員会
○上田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本日、午前中に参考人質疑がありまして、私も大変勉強になりましたが、午後、採決の前に、残りわずかの時間、質問をさせていただきたいと思います。

 これまでの審議の中で、総論的な論点は大体いろいろ議論されてきましたが、きょう、私は、運用の面の話と、あと運用を実効あらしめるための体制整備の話と、時間があれば、罰則とか実際に企業側が法律を守るインセンティブづくりみたいな話と、四点目に消費者の意識の喚起のお話をしたいというふうに思います。

 まず、この前の代表質問でも質問をさせていただきましたが、パロマのガス瞬間湯沸かし器の一酸化炭素事故におきましては、実際、経済産業省にはこの事件が発覚する大分前から情報が入っていたというのが事実であります。それが役所の中の縦割りの担当の中で、なかなかその関連性とか全体像が見えなくて放置されてきたというのが事実だというふうに思います。それについては大臣も明確に責任をお認めになっているということでございます。

 こうした事態の反省から、今回の改正案におきましては、経済産業省の中にデータベースをつくったり一元管理をするという体制整備を進めるということになっております。これ自体も当然、大変結構なことでありまして、ぜひともしっかり進めていっていただきたいというふうに思います。

 しかし、経済産業省の中の縦割りの問題はさておきまして、経済産業省所管の製品評価技術基盤機構、通称NITEというものがあって、ここに既にそのような一元管理体制というものができているというふうに伺っております。実際にデータベースとかもつくっていると。

 これは、お配りしている資料の一ページ目にあると思いますが、そこの表がありまして、このNITEにおいては、右側にありますように、左の方の消費者から情報が直接間接に上がってきて、この製品評価技術基盤機構、NITEの方に情報が入ると、しっかりとそこで調査あるいは原因究明、場合によってはテストまでを行う。さらには、事故情報のデータベース化というものがある。そこでまたさらにそれが、経済産業省の方に情報が上がっていくということであります。

 申し上げたいことは、つまり、今回法案で新たに一元管理とかデータベース化とかそういった話が出ておりますが、実際に今までNITEの中でこういうことをやってきたわけですよね。これは経済産業省所管の独立行政法人ですから、今回の改正というのは、結局、NITEでやっていたことを経済産業省の中に持ち込むのか、あるいは同じように同時にやっていくのか、ちょっとその辺が私も不勉強なんですが。いずれにせよ、こういった一元管理体制が既にできていながらも、実際にこのパロマの事故において対応が極めておくれてしまった。

 したがって、質問としては、この字面だけ見ているとNITEでやっていることをまた経済産業省内でやるようなふうに受け取られるのですが、実際にどこがどういうふうに違ってくるのかということを質問したいというふうに思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、パロマ事件が起こった際、私、過去のパロマの事故報告書を全部めくって見ました。その結果、ほとんどが、事故原因の項目が調査中、そういう形になっておりまして、その後のフォローがなされておりませんでした。しかも、すべての事故報告書が紙ベースでなされておりまして、関係課の間でファクスでやりとりがなされていた、こういう状況にあったわけでございます。

 したがいまして、関係課の間で十分な情報の共有、連携というのがなされていなかった、かつ、人事異動で人がかわるたびにその情報が十分に後任者に移転されていなかった、このような結果になったのではないか、こういうふうに思っております。このような事態を生み出したことにつきましては、経済産業省といたしまして大いに反省をしているところでございます。

 したがいまして、このパロマ事故を教訓といたしまして、また、省内の事故情報を統合的に電子化いたしましてデータベースを構築いたしまして、省内の情報共有を徹底することといたしております。

 本データベースにつきましては、経済産業省に報告がありました事故情報の内容はもちろんのこと、事故情報に対する経済産業省の処理が適切に行われているかどうかがすべて一見してわかるようにするために、処理中、未処理あるいは処理済みといった対応状況も含めたものとして構築をしてございます。

 一方、先生御指摘の独立行政法人製品評価技術基盤機構におきましては、さまざまな情報提供者からの幅広い事故情報を四半期ごとに取りまとめてデータベース化してきたものでございまして、ただいま申し上げました事故情報の処理状況をリアルタイムでチェックするための経済産業省内のシステムとは目的を異にするものでございます。

 なお、今回の改正におきましては、消費生活用製品の安全性に関する技術上の調査を行うことをNITEの役割として明確に定めたところでございます。お尋ねのNITEのデータベースにつきましては、重大製品事故以外の事故情報を中心に扱うものとなりますが、経済産業省のデータベースと接続して相互に補完する役割を果たすことになると考えております。

○北神委員 はい、よくわかりました。今までは紙だけで、しかもその継続性が役所の人事異動とかでなかなかつながらなかった、そこを改善するということだというふうに思います。NITEと両方相互補完でやるということであります。

 次に、パロマの事故、きょうも参考人質疑の中で出てきましたが、製造されたガス機器というよりは、むしろその安全装置の部分が改造されて事故の発生につながってきたと。これは、パロマさんの方が暗黙の了解でそういうことを許していたのかどうかとか、その辺の責任の所在というのはなかなか、諸説あるというふうに思います。しかし、いずれにせよ、事実としては、いわゆる改造がなされて、ガス機器の心臓部である安全装置というものがいじられてしまったということだというふうに思います。

 当然、今回の法案は、このパロマのいわゆるガス瞬間湯沸かし器だけを対象にしたわけじゃなくて、それに拘泥する必要はないと思うんですが、これが一番大きなきっかけとなったわけで、そういった意味では、この改造という部分にやはり対応していく必要があるというふうに思います。

 私も、提案としては、今は製造事業者と輸入事業者に報告義務を課しているけれども、できるならば、実際に改造を行う修理事業者とか設置工事事業者、こういったところに報告義務を課すべきだと思いますが、一つ目の質問としては、なぜそこができないのか。この前も代表質問で大ざっぱな答弁を大臣からいただきましたが、ちょっと詳しい答えをぜひお聞きしたいというふうに思います。

 さらに言えば、この改造ということですが、考えてみるならば、このガス機器というのは一定の危険性を有する製品でありまして、その安全装置について自由にだれでも改造できるということ自体がちょっとおかしいんじゃないか。したがって、この改造、特に安全装置みたいなものの改造について一定の規制というものもつけ加えるべきじゃないかというふうに思いますが、これは具体的に、例えば、こういった改造は危険性があるから許されないとか限定列挙をするとか、そういったいろいろな具体的な方法があると思いますが、この二点について伺いたいと思います。

○広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の一連のパロマ事故の一因といたしまして、安全装置を不正に改造することに対する制度的な歯どめが働かなかったことが挙げられます。このため、この点について制度的対応を図り、安全装置の不正改造を防止することが必要であると考えております。

 現在、ガス消費機器のうち構造、使用状況等から見て工事の欠陥により災害が発生するおそれが多いものにつきましては、特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律によりまして、特定の工事を行う場合、設置工事業者には有資格者に工事の監督を行わせることが義務づけられております。

 このため、今般、半密閉式ガス瞬間湯沸かし器などの安全装置の機能を変更する工事につきましても、安全装置の機能を停止させるような不正改造を防止するという観点から、有資格者による監督を義務づけるため、この法律の施行規則を改正いたします。

 また、安全装置が容易に不正改造されない構造であることをガス瞬間湯沸かし器の製造または輸入時の技術基準として追加するため、ガス用品の技術上の基準等に関する省令などを改正いたします。

 現在、これらの省令改正のための所要の手続を行っているところでございまして、このようにして、ガス消費機器の不正な改造が行われないよう、万全を期していきたいと考えております。

○松井政府参考人 今先生の方から、修理事業者に報告の義務づけを行わないのか、こういう御質問がございましたので、お答えいたします。

 今回の改正案におきましては、製品の安全性に一義的な責任を有する製造・輸入事業者に対しまして、重大製品事故の報告義務づけを行い、設置・修理事業者には報告の義務づけは行わないことといたしました。

 設置・修理事業者につきましては、通常、製造事業者や販売事業者からの依頼を受けてサービスの提供を行うことが多いことから、製造事業者、販売事業者を超えて義務を課すことは適当ではない、こういうふうに考えておる次第でございます。

○北神委員 二つ目の質問の件についてはよくわかりました。規則とかそういったところを改正して、実際に事前の規制を強化していくということだというふうに理解します。

 最初の質問の方は、報告義務は、一義的には製造事業者、そして販売事業者がある、したがって、修理事業者は彼らの依頼によって仕事をするわけだから、彼らに義務を課さないということだというふうに思いますので、その販売事業者の部分についてさらに質問させていただきたいと思いますが、これも報告義務の対象範囲の話であります。

 今回の法案では、先ほど申し上げたように、製造事業者、輸入事業者に報告義務を課す、一方で、販売事業者等は報告義務は課されない。先ほど、一義的な責任は販売事業者にもあるというお話を審議官されました。違いますか、あれは。製造事業者にあるんだということですね。(松井政府参考人「はい」と呼ぶ)わかりました。たしか言われたと思いますがね。それは違うということで、私もちょっと驚いたんですが、販売事業者には一義的な責任はないということですね。

 ただ、私が申し上げたいのは、販売事業者が消費者に一番近い立場にある。経済産業省にしてみれば、やはり迅速な情報収集を行うためには、本当は販売事業者というものも対象にすべきではないかというふうに私は思うんです。これは、実際、アメリカの消費者製品安全委員会という、CPSCというところでも、製造事業者、輸入事業者、さらに流通事業者とか販売事業者も対象に含めている。そういうことを考えると、本来は迅速にやるべきだ、やるべきだし、そのためには、販売事業者にも報告義務を課す方が望ましいというふうに思います。

 この点について、何か、それは第一義的な理由、責任はないということだと思いますが、私は、だから、それは第一義的な責任はないかもしれないけれども、情報収集の迅速性を考えると対象にすべきじゃないか、何か、それがだめだという大きな理由があるのかどうかということをお尋ねしたいというふうに思います。

○松井政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、製品の安全性に一義的な責任を有する製造・輸入業者に対しまして、重大製品事故の報告義務づけを行いまして、販売事業者や設置・修理事業者には報告の義務づけは行わないことといたしました。これは、販売事業者につきましても、製品の安全性に一義的な責任を負う製造・輸入事業者から製品を購入、販売する立場にございまして、安全性の確保に関しまして、製造・輸入業者と同等の責任を負わせるのは適当ではないというふうに考えたためでございます。

 また、仮に販売事業者に報告義務を課した場合には、販売事業者は非常に多くの多種多様な製品を取り扱うため、販売後長期間にわたりましてその販売した製品すべてについて把握することは現実的に困難でございます。特に、多くの零細な販売事業者にとりましては過度な負担となりかねないということでございます。

 しかしながら、やはり消費者に一番近いところにおられるのが販売事業者でありまして、消費者から事故情報等々を受け入れる可能性は非常に多うございますので、消費者の方から事故情報を受け取った場合には製造事業者あるいは輸入事業者に通知をする、あるいは、そのような情報を得たことをほかの消費者の方にお知らせをして同じような事故を起こさないような警鐘を鳴らす、あるいは、同様の製品を消費者がお買いになるときにこのような問題があったというようなことを注意を申し上げる、さらには、常にやはり安全という観点から消費者に対して物を販売するという姿勢を徹底して、安全な製品の設計をメーカーに対して提案する、あるいは、安全性のすぐれた製品を仕入れるなどなど、さまざまな形で安全性の確保について努力をしていただくことをお願いしたい、こういうふうに考えております。

○北神委員 販売事業者に報告義務を課さない二つの理由として、一つは、第一義的な責任を負わない、それはそうかもしれませんが、要するに、人の生命あるいはその身体に係る安全を確保する話で極めて重要な話ということを考えると、情報収集をやはり迅速にしなければならない、次、もしかしたら、それがおくれてしまったら、だれかがけがをしたり、あるいは死んだりしてしまう、そういうことを考えると、私は、依然として必要だなというふうに思います。

 また、二つ目の理由は、たくさん多過ぎる、これも、確かに物すごく多いと思います。ただ、これはまた後ほど議論をしたいと思いますが、こういったいわば事後規制というものを整備するときに、これを実効性あらしめるものにするためには、それなりの、非常に、人材、人員確保、予算あるいはその司法的な権能みたいなものも備えるとか、そういったことが多分必要になってくると思うんですよ。また後で議論しますが、今の経済産業省の体制では、なかなか、恐らくそれは非常に物理的に難しいという状況が本音の理由じゃないかなというふうに勝手に解釈をしております。それは、だから、今回緊急な話ですから、別に異論を唱えるつもりはないんですが、そうした考えに基づいて、次善の策として運用面で何とか確保していかないといけない。

 というのは、今回の法案は、製造事業者と違って、販売事業者とか修理事業者については、何か製品事故があった場合には、製造事業者、輸入事業者に通知をする努力をしなければならないと、努力規定になっているわけですよね、義務というよりは。それはそれで次善の策としてはしようがないと思いますが、それを実際に可能にするというのはなかなか大変なことだというふうに思うんですよ。

 おっしゃったように、たくさん販売事業者というのもいるし、修理事業者、設置工事事業者を含めると巨大な数になってしまう。こういった人たちに通知をする努力というものを課すというのは、それは、放置して、努力規定だから別に勝手にやったらいいじゃないかということだったらほったらかしにしたらいいかもしれないけれども、やはりそういうわけにいかないわけですから、そういうことを考えると、やはりその体制整備というものをやっていかないといけないんじゃないか。

 具体的に言えば、恐らく販売事業者も、この法案が通ったとしても、実際にそういう法律が改正されたということもなかなか認知はされない。そういう意味では周知徹底というものも必要になってくるし、そういったことになれていなければ、その販売事業者において、窓口はどこにするのかとか、担当をどうするのかとか、あるいはその連絡体制というもののいわば危機管理マニュアルみたいなものもつくっていかないといけない。

 そういったことをしなければ、結局、法律だけ改正されて、通知義務があるよと言いながら、実際何も機能しないというおそれもあるというふうに思いますので、これはアメリカとか諸外国比較すれば、販売事業者も当然本当は報告義務を課すべきだと思うんですが、次善の策として、やはり運用面できちっとそこの体制を整備すべきだと思いますが、お考え、どうでしょうか。

○松井政府参考人 今、北神先生がおっしゃるとおりでございまして、我々といたしましては、この法律にございます販売業者の努力義務をしっかり実行していただくために、事故情報の収集、提供体制の整備を含めて、自主行動指針を経産省として策定いたしまして、これはさまざまな規模、態様がございます、さまざまな販売事業者の業界ごとに適切な形にその指針をうまくつくりまして、それに基づいてしっかりとした対応をとるように指導をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 この自主行動指針というのは、具体的に、簡単でいいですけれども、どういうことを規定しているんですか。

○松井政府参考人 先ほどの御質問でお答えいたしましたように、まず、そのようなクレームが来たら、その会社のトップまで早急にその情報を上げて、そしてそれをメーカーに通知すること、あるいは、当該情報を次のお客様の消費行動に警鐘を鳴らせるように一般消費者の方にそれをPRすること等々、具体的な安全情報の収集提供体制について自主行動指針をつくっていきたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 内容は恐らくそういうことでいいと思うんですが、なかなか数が多いから、人員が少ない中で周知徹底が非常に大事になってくると思いますので、そこをよろしくお願いしたいというふうに思います。

 あともう一つ、運用面での問題を取り上げていきたいと思うんです。

 例えば、消費者が古い電気製品なんかをずっと使用し続けていると、二十年前のものを使っていると、その電気製品をつくった会社が倒産あるいは廃業することもあり得るというふうに思います。あるいは、そんな長い間使っていなくても、景気が悪くて業績が悪ければ、その会社が、製造事業者が、あるいは輸入事業者が倒産、廃業に追い込まれる、そういうことも十分考えられるというふうに思います。その場合は、報告義務とかいっても、もう報告義務をするところがないので、そういった場合は、当然経済産業省がみずから乗り出して情報収集をして、分析をして、さらにまた消費者に周知徹底をしないといけないという大変な作業があるというふうに思います。

 これについてどのように運用面で考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の改正案におきましては、「主務大臣は、重大製品事故に関する情報の収集に努めなければならない。」旨の責務規定がございます。経済産業省といたしましては、この規定を踏まえて、警察等の関係省庁や消費者団体との提携、通達に基づく任意の事故情報収集制度の運用などを通じて、幅広く事故情報の収集に努めてまいることとしております。

 今先生御指摘のような、重大製品事故の報告を行う義務者である製造・輸入事業者が倒産やあるいは廃業をしてしまった場合の製品事故につきましても、これらを通じて必要な事故情報を収集して、消費者に周知するため、適切に公表を行ってまいる所存でございます。特に、NITEの組織などを使いまして、そのような場合には積極的に消費者に対して警鐘を鳴らすべく努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 私も想像はつかないんですけれども、どのぐらいそういう事例が出てくるのかわかりませんが、そういうことが起きたら今言われたような方法しかないんでしょうけれども、非常にこれも大変な作業だというふうに想像します。特に、今の体制の中ではなかなか厳しいものがあるんじゃないかというふうに思います。それについて、また後ほど議論したいと思います。

 もう一つ、その前に運用の問題として取り上げたいのは、今回の法案は、製品事故という定義上、製品の欠陥によって生じたものではないことが明白な事故については、要するに、製品そのものの欠陥によって発生した事故でない場合は、報告義務の対象になってこないというふうに理解しております、報告義務の対象から除外をされると。例えば製品を使って自殺を図るとか、そういったときは当然除外される。

 もう一つは、製品外の事故によって何か事態が発生した場合、例えば自転車に乗っていて自動車に当てられたとか、そういった場合は別に自転車のせいじゃないので、こういった場合は報告義務から外れるということであると思います。これは非常にわかりやすい例なんですが、実際、なかなかわかりにくい場合が現実には起こってくるということで、一般消費者がその製品の目的と違うような使い方をする場合や、あるいは使用している人に重過失がある場合、こういった場合は、結局それぞれ個別の判断に任せるということになると思うんですね、この法律の構成上。

 これがなかなか難しい部分で、例えば、今回話題となった家庭用シュレッダーで幼児が指を切断してしまった。これは、ある意味ではその目的、製品の欠陥、そこら辺は非常に判断が難しいんですけれども、目的外の使用をしているという部分もあるし、この場合は報告義務の対象になるという整理になっていると思います。一方で、てんぷらなべをこんろの上で火をつけて温めている、ちょっとそこから離れる、そして発火して火災になってしまう。これは重過失の場合になるんだろうと思いますが、この場合は、私が調べた感じでは報告義務の対象にならないというふうになっております。

 この辺は私もわかりやすい例を申し上げましたが、こういったいろいろ、私もなかなか想像力が乏しいので全部想定できないんですが、非常にわかりにくい部分も出てくると思うんですよね、実際の運用上。製造事業者、輸入事業者、あるいは通知の努力義務を持っている販売事業者、修理事業者にとって、これはどう判断したらいいのかどうか、非常にわかりにくいときも出てくると思います。

 そういった意味では、こういった個別の判断に任せられている部分については、ある程度わかりやすい基準というものを設ける必要があるのではないかというふうに思います。事業者もどの案件を報告したらいいのか困惑する。場合によっては、面倒くさいからこんなのはいいだろうというふうにだんだん人間の心理で報告をしないようになってくることも考えられるわけであります。

 こういったことを踏まえると、消費者保護の観点からすれば、製品に欠陥があるのか、あるいは製品事故の原因がその製品そのものにあるのかどうか疑わしいものについては、基本的に報告義務の対象とすべきだと思うんですね。これは非常に面倒くさい話かもしれませんが、やはりさっき言ったように人の命にかかわる話でもありますので、そういったところはできるだけ厳しく、疑わしきを罰するじゃないんですけれども、疑わしきについては報告義務を課すというふうにすべきだというふうに思います。

 この法案の趣旨並びに皆さんの今後の運用において、そういった、今私が申し上げた考え方が反映されるのかどうか、伺いたいというふうに思います。

○松井政府参考人 今回、法の対象となります製品事故は、事故の原因にかかわらず製品の使用に伴って生じた事故を幅広く対象としておりますが、先生御指摘のように、製品の欠陥によるものでないことが明らかな事故については対象外としております。

 それで、欠陥によるものでないことが明らかな事故とは、典型的には、これも先生が例示で挙げられましたように、製品の使用者が故意に人を傷つけた場合や自殺した場合、また、製品自体は安全に機能している状態で偶然交通事故に遭うなど、外的な要因により事故が起きた場合を考えております。

 また、著しい誤使用による事故などにつきましても、限定的に報告義務の対象から除外することが適当と考えております。ただし、このような場合につきましては、除外対象を明確にするため、具体的な事例を経産省のホームページ等で列挙し、これに明確に該当する場合のみ報告を要しない運用としたい、こういうふうに考えております。

 なお、具体的な事例を列挙する際には、事前に第三者委員会での意見を踏まえながら検討していくことを考えております。

 いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、製品の欠陥が原因かどうか疑わしいものは、基本的に報告義務の対象になるものと考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 今、ホームページに除外される部分について列挙するという話ですよね。それは、事前に第三者機関で諮ってからそういうものを載せるということでありますが、先ほどの参考人の話もありましたけれども、ホームページを見るという習慣もなかなかついていない事業者もあるだろうし、そういったところを本当に周知徹底していかないといけないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○松井政府参考人 先ほどの参考人の御質疑のときにも、経済産業省あるいはNITEのホームページは普通の方はごらんにならない、こういう御指摘もございました。

 したがいまして、我々は、新たに事故情報を集めたポータルサイトみたいなものを開発して、事故というものについてそこさえ見ればさまざまな情報にアクセスできる、このようなものをこれから検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

○北神委員 ぜひ、その辺、しっかりポータルサイトというものをつくって、それも、そういうものがあるよということを当然幅広く通知する必要があるというふうに思います。

 これは、私も決してけちをつけるつもりはなくて、あらゆるこういった企業を対象にする法律について、現場の、地元の企業とかの人たちはなかなか実際知らないという場合が非常に多いということを考えると、それは、補助金が出る話とかそういった件についてもそういうわけですから、ましてやこういう製品の安全について報告をするとか、こういった点についてはますます、自然とそういうものを探して情報を見ようというインセンティブはなかなかないと思いますので、普通以上にそこは通知の努力が必要だと思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 ここで視点を変えまして、もう少し大きな視点で議論をしたいと思います。

 今までも、運用の話をずっとさせていただいて、基本的に審議官の今の答弁を聞いていると、非常に運用面についてもいろいろと考えておられる。それを実際に実行する場合に、これはやはり人が必要なんですよね。これはもう物理的に大変な話だというふうに思います。ですから、そういった部分を含めて、この法律を通す、そしてその運用というものもどんどんこれから整備をしていく、そういった中で、机上の空論に終わらないためには、実際にそれなりの当局のマンパワーとか調査能力、そういったものが非常に求められるということだと思います。

 その前段としてちょっとお聞きしたいのは、この前もたしか牧原委員の資料にありましたが、製品事故というのが、パロマとかだけじゃなくて、全体として、ソニーのリチウム電池の話とか、いろいろ最近製品事故がふえてきているように見受けられます。これは、報道のニュースとかだけ見ていると、そういったものがどんどん出てくる。この前の牧原委員の資料を見ても、急にここ数年事故がふえてきている。これは、今までそういう情報が上がってこなかったのかどうかわからないんですが、私の皮膚感覚でいっても、非常に日本の製品事故というのが急増している。

 こういったことを考えると、一体この原因は何なのか。余りにもちょっと不思議な、突然事故がふえているというのは一体どういう原因に由来するのかということをお聞きしたいというふうに思います。

○松井政府参考人 お答え申し上げます。

 独立行政法人製品評価技術基盤機構の事故情報収集制度によりますれば、平成七年度に報告された製品事故が約千件なのに対しまして、平成十七年度における製品事故は約二千四百件に増加しております。この理由につきまして、十分に分析はできておりませんけれども、とりあえず幾つかの原因ではないかというふうに考えております。

 まず第一点目は、製品の機能の高度化が進み、さまざまな機能を持った製品が次々と市場に送り出されております。また、シュレッダーのように、事務用機器が家庭に普及するなど、消費者の使用形態の変化と多様化も進んでおります。このように、消費者が接する製品の種類と数が増加しているということが事故を増大させている一つの要因と考えられます。

 また、二つ目は、製造事業者も、機能の高度化やコストダウンを優先して、相対的に安定マージンの確保をおろそかにしていたという面も否めないというふうに考えられます。

 さらに、ひっくり返ったら、倒れたら火が消えるストーブ等々、フェールセーフ機能を備えた製品に消費者がなれてしまいまして、結果として消費者の製品の危険性に対する認識が若干弱まっているのではないかなということも考えられます。

 さらに加えまして、製品事故に対する消費者、世論の感度が高まってきており、製品事故と認識される事故が増加していることなどが考えられます。

○北神委員 いろいろな要因を挙げられました。恐らく、最初の消費者の多様化の話とか、製品がいろいろ高度化している、こういったことと、企業のコストダウンの話とか、これら全体を含めると、大分、橋本内閣の時代から言われているように、大競争時代に突入してしまっている、非常に企業間の競争というものが激しくなってきている、そういったところでなかなか品質管理とかそういったところがおろそかになってきているというのが一つの大きな原因だというふうに思います、そのコストダウンの話とかそういうのを含めると。

 そういうことを考えると、今後も恐らくなかなかこういった潮流というのはとめようがない、非常に競争も激化する時代にもう入って、それもなかなか変えることはできないという中で、絶えずコストダウンのインセンティブというのは非常に強くなってきている。

 私も代表質問で申し上げましたが、非正規雇用ですね、パートとか派遣社員、これは当然人件費が安くなるわけですよ。企業の方も、私なんか地元の中小企業の社長さんとかとお話ししていると、本当は正社員を雇いたいんだと。正社員を雇わないと、やはり品質がどんどん落ちていく、たくみの伝統というものがどんどん絶えてしまってくる、その危機感は一方であるんだけれども、でも、今回の業績を考えると、決算を考えると、どうしてもやはりそっちの方に、安易な方に流れてしまうと。そういう非常に熾烈な競争の中で、やむを得ず品質管理というものが、ある意味で犠牲になってきている部分もあるというふうに思うんですね。

 こういった時代がなかなかもう変わらない、そういう中で、やはり今回の法案も、まさにその象徴ですが、事後規制というものをきちっと整えていかないといけないということだというふうに思います。

 先ほど何回も申し上げておりますが、私もこの質問の中で、できるだけ皆さんにもわかりやすく、これはなかなか大変だと。法律で書くのは簡単だし、大体の総論的な論点についてはだれも異論はないというふうに思います。しかし、実際に運用をしたり、万全を期すということに当たっては、非常にたくさんの人が必要になってくるし、その人材も、ただ片手間に、ほかのことをやりながらこの製品安全の仕事もするとか、そういうのでなかなか対応できなくなってくるし、そういった意味では、当然、予算の裏づけというものも必要になってくる。

 そういう意味では、一つ申し上げたいのは、今の経済産業省の体制、この資料の二ページ目にありますが、これは、日米の報告義務制度の比較というもので、経済産業省の方でつくっていただいたんですが、左側が日本で右側が米国だと。いろいろ違いがあって、簡単に言えば、やはり米国の方がかなり権限を持っているし人員も持っている、そういった体制が非常に整備されている。当然、向こうの方が経済規模も二倍ぐらいですから、それは簡単には比較できないというふうに思うんですが、それにしても、日本の、例えば一番上の方の担当行政庁のところに経済産業省があって、組織人員、製品安全課が二十五名だと、二〇〇六年時点ですね。その下のNITEがありますが、これが、製品安全業務担当職員数が六十七名ぐらいだと。全部で九十二名ぐらいかかわっている。

 これは、当然、今回の法案は主務大臣に報告義務ということですから、経済産業大臣だけじゃなくてほかの省庁もかかわってくると思いますが、ほとんどが多分経済産業省だというふうに理解しております。右側のアメリカの方は、経済規模は大きいといえども、四百八十名ぐらいいて非常な規模だということです。これは、これに限ったことではなくて、何もこれは偶然の話でも何でもなくて、基本的に、私が申し上げているように、規制緩和をして、小さな政府になって、競争というものをどんどん促すような経済システムというものをつくる上で何よりも必要なのが事後規制なんですよね。アメリカは、あるいはイギリスもそうだと思いますが、そういった事後規制を非常に強化しているわけですよね、ずっと。

 このアメリカの消費者製品安全委員会もそうだし、向こうの公正取引委員会みたいなものも、日本の規模に比べたらもう巨大な規模と権能を持っている。さらに言えば、ホリエモンのあの問題でなった証券取引等監視委員会、これも、日本の方ではこの前改正をして、多少人員をふやしたり権限をふやしたりしておりますが、比べたらもう全然足りない。

 ですから、申し上げたいことは、やはり安全、安心を確保するためにはこの事後規制の整備が必要で、この法案だけでは足りないんですよね。やはり、これを実行して、きちっと監視をして取り締まる行政の権限というものを強化しなければならない。そういう意味で、今の経済産業省の体制というのは不十分ではないか。それは、なかなかそちらからそういうことを言うことはできないと思いますが、やはりそういう苦しさというものはあるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○渡辺(博)副大臣 ただいま委員御指摘の点は、まさに大変重要な問題だというふうに思っております。事後規制を強化していくことでありますから、そのためには人員の問題も大変重要なポイントであります。

 今回の一連の事件を教訓としまして、経済産業省としては、事故情報の適切な分析と処理の体制を強化するために、第一点は、省内の関係部局が事故情報を処理する体制を整備、例えば、保安・安全連絡会議というものを設置したり、そしてまた省内共通の、先ほどもお話ありましたけれども、データベースの構築をしております。第三点としまして、事故原因の分析等に知見を有する独立行政法人製品評価技術基盤機構、いわゆるNITEにおいて事故分析体制の整備、とりわけ事故のリスク情報分析室を設置しております。このような形で整備を講じたところであります。

 今回の法改正に基づく事故情報の報告制度を十分に機能させるためには、経済産業省としましても、製品安全担当部署について可能な限り体制の充実を図っていくことが大変重要だというふうに思っております。

 先ほどの資料の中には、いわゆるCPSCですね、アメリカの場合については四百八十名という大変多くの人数がおりますけれども、日本のいわゆる製品安全担当部局は確かに二十五名、そしてまたNITEの方は六十七名という状況であります。これは、経済産業省としましては、個別物資を所管する関係課室がございますけれども、こういった関係課室とも強力に連携していくことによって対応ができるのではないかというふうに思っています。ちなみに、全体の関係人数としては三百五十名おりますけれども、これがすべて安全の担当をするわけではありませんが、いざというときにはそういった体制も組めるということであります。またさらに、先ほどのいわゆるNITEや関係省庁との連携を深めていくことが大変重要だというふうに思っております。

 このような体制をしっかりと整備することによって、いわゆるCPSCに相当する対応ができるのではないか、そのように考えております。

○北神委員 なかなか副大臣も苦しい状況だというふうに思います。これもさっきから申し上げているように、緊急の話ですから、それは当然この法案を通していただいて、そういう、できる限り今の資源をフル動員してやっていただくしかないと思うんですが、今申し上げたような、長期的な、あるいは中期的な視点というものを大臣もぜひ持っていただきたいというふうに思うんです。

 今はみんなもう、行革、行革で、何か役人を減らしたらいいというふうに言われて、確かに無駄な部分とかそういったところは節減したらいいと思うんですが、本来は、本当に規制緩和というのをどんどん続けていって、競争というものをどんどん促進するような政策を打つのであれば、ますます事後規制、さらにその事後規制をバックアップする役所体制、行政というものを強化していかないといけないということです。

 もう一点だけ最後に質問させていただきたいと思います。

 これは、人員の話もそうですが、経済産業省のままこの法案、実際実行していくということになっておりますが、私は、その経済産業省というのは、これはやや問題があると思うんです。

 それは、一方で、経済産業省は産業を育成する政策を打っているわけです。もう一方では、製品安全の政策を打つ、行政をやる。これは、必ずしも矛盾しないかもしれないけれども、場合によっては利益相反が生じる場合もあるんですね。つまり、企業にとっては、こんな報告義務なんか、ある意味ではコストがかかるような話であるわけですよね。あるいは、そういった問題が出てしまったら、少なくとも短期的には被害を受けてしまう。そういった意味では、私は、産業を育成する立場と、製品の消費者保護の観点から製品の安全というものを図ることが、利益相反を生じることもあり得ると。

 そういうことを考えると、今すぐとは申し上げませんし、皆さんから、はい、そうですという答えも期待をしませんが、これも長期的に考えて、やはり独立のものをつくっていかなければならないというふうに思うんですが、この点について最後に質問したいと思います。

○渡辺(博)副大臣 御質問の趣旨は、いわゆる産業政策と、そしてまた安全に関する対策についての安全政策、これは利益相反するのではないかという御指摘だと思いますが、私は決してそのようには思っておりません。産業政策と製品の安全、消費者保護の政策、そういったものは、まさに私は表裏一体のものだというふうに感じております。

 例えば、多岐にわたるこの消費生活用製品について、安全な製品の設計、製造、そしてまた迅速な事故原因の究明、適切な再発防止措置の実施など、これを行うためには、個々の製品をめぐる事業環境も考慮に入れつつ適切に事業者を指導していく必要があるというふうに思っております。

 こうした観点から考えますと、生活用品の大宗を所管する経済産業省が消費生活用製品の安全行政に責任を持って対応することが、かえって効率的かつ実効的であるというふうに理解をしております。

○北神委員 これはいろいろ議論があるというふうに思いますし、もう、ちょっと時間がなくなってしまったので終わりにしたいと思いますが、やはり、米国でもイギリスでもこうやって独立して監視をするような行政機関を設けているというのは、もともとそういう利益相反のあった話で、今おっしゃったことは確かに一種の理念としてはあり得ると思うんですよ、企業が製品の安全のことを余り考えなければ自分たちが結局損をするんだと。でも、そんなことを言ったらパロマなんか出てこないわけですよ。やはり短期的に見たら、こんなことが出たら自分たちが被害を受けるとか責任逃れとか、そういった部分も出てくるわけですから、産業育成の観点からそういったのをかばうという発想もあり得るわけですよね。

 もう時間がないので、私はそういう考えを申し上げて、こういったことをぜひこれからも議論していきたいというふうに思っていますので、きょうの議論を踏まえてぜひ運用の面をしっかりやっていただきたいということを期待を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

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