「意匠法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきました。

北神質疑
2006年5月31日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 先週の金曜日に引き続きまして、知的財産権の質問をさせていただきたいと思います。

 前回は、産業戦略全体の中で知的財産権の戦略というものを考えるべきだ、そのためには審査体制というものを充実していく、さらには、企業分野に応じて審査体制というものを重点配分するとか、あるいはそういった案件について迅速な審査というものを進めていくべきではないかという議論をさせていただきましたが、本日は、まず、そもそも、我が国の特許に関して言えば、その特許の審査の対象となるものが限定され過ぎているのではないかというお話をさせていただきたいと思います。

 具体的に、御存じのように、特許の審査となるものは発明に限られる。この発明とは何ぞやというふうに申しますと、特許法の第二条に「「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」というふうにあります。これでは、特許の対象概念というものが、言ってみれば、高度な技術的創作に限られてしまうということになってしまいます。そういうことでいえば、例えば、さほど高度な技術を使っていなくても、いろいろな既存の技術、手法を組み合わせてつくった商品とか、あるいは農業の方法とか、あるいはビジネスモデルとか、さらには医療技術、こういったものがそもそもその審査の対象にならないという部分があるというふうに思います。

 例えば、私も、たまたま先週末、地元京都の方でいろいろ歩いていますと、中小企業の社長さんで、床の間をコンパクトにしてマンションにも設置できるような、そういった商品を開発されている方がいるんですね。これは北山杉を使ってやるんですが、別に特別な技術を使っていると思わないんですよ。木があって、北山杉の柱がありまして、それに畳をちょっとくっつけて、多少ねじのつけぐあいが何か特殊な技術を使うみたいなんですが。これも今出願しているらしいんですが、まだ特許請求はしていないみたいですが、こういったものも、場合によっては、私も素人なのでわからないんですが、高度な技術を使っていないということで、そもそも窓口で却下されてしまうおそれもあるのではないかというふうに思います。

 他方、アメリカの方では、御存じのように、全く限定されていないんですね。発明でもいいし発見でもいいし、いろいろなものが対象になっている。もちろん、ヨーロッパの方では日本に近い制度だということも承知しておりますが、日本も知財というものを戦略的に優位に進めていくのであれば、できるだけ間口を広げて、裁量の余地があった方がいいのではないか。つまり、最終的に特許として認めるかどうかは別にして、入り口の間口というものを広くして、知的財産権の審査対象を広範なものにした方がいいのではないかというふうに思うのですが、長官、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、桝屋委員長代理着席〕

○中嶋政府参考人 今御質問いただきました特許の保護対象の範囲の問題でございますけれども、まず、いわゆるビジネス方法の保護の現状についてお答え申し上げます。

 確かに、御指摘ございましたように、アメリカでは、いわゆる純粋ビジネス方法とよく言うんですけれども、自然法則を利用していないような発明であっても、特許の対象になる可能性はございます。ただ、ちなみに、アメリカという国はやや特異な国でございまして、これはビジネス方法とは言えないと思いますけれども、ブランコのこぎ方とかあるいはゴルフのパターの仕方とか、そういうのも場合によって特許になっている例があるようでございまして、そういう意味では、先進国の中でもやや特異な例がございます。

 話をもとに戻しますと、日本では、いわゆる純粋ビジネス方法というのは特許の対象にはなってございません。ただ、日本でも、ビジネスの方法につきましてソフトウエアによる情報処理が具体的に実現されているような場合には、これは特許として保護対象となっております。こういった、ビジネスの方法についてある一定の範囲では、つまり、ソフトウエアによる情報処理とか、ある一定の範囲内においては認めていくという扱いにつきましては、ヨーロッパも日本と同様でございます。

 ビジネス方法について特許対象としてどう扱うかということは、実は平成十三年に産業構造審議会でも、産業界あるいは学者先生初め関係者を集めて議論をかなり徹底的にしました。結論としては、純粋なビジネスの方法につきましてまで特許を与えるということになりますと、ビジネスの仕方についての独占を過度に強めて、自由な競争を阻害するとの懸念も示されまして、今の日本の特許法の発明の定義を直ちに改正すべきだという結論には至りませんでした。

 それからまた、委員が例示で挙げていらっしゃった医療方法の保護の現状についてお答え申し上げますと、日本では、人の生命、身体の保護と密接な関係を有します人間を手術あるいは治療とか診断する方法については、産業上利用することができる発明には該当しないという形で、特許を付与しないという運用を行っております。

 実は、これはまさに御指摘ございましたけれども、ヨーロッパにおいても、日本と同様に、人間それ自身を手術、治療または診断する方法については特許の対象としておりません。他方、アメリカにおきましては、日欧と異なって、こういった方法につきましても特許の対象になる場合があるということは御指摘のとおりでございます。

 この医療方法の特許のあり方につきましても、平成十五年から十六年にかけまして、これは政府の知的財産戦略本部の中で、医療関連行為の特許保護の在り方に関する専門調査会という場で検討いたしました。結果として、医師に係る技術についてはやはり慎重な配慮が必要であろうということから、特許の対象にすることからは除外されましたけれども、他方で、医療機器とかあるいは医薬に関する技術については、特許の保護の拡大を図るということになったわけでございます。

 日米欧の中でも、特許の保護対象というのはおおむね同じではございますけれども、細かいところを見ますと、やはり御指摘のように違いは確かにございます。したがいまして、特許庁といたしましては、これまでも、いわゆるプログラム特許といったようなものは新たな分野として特許付与の対象にしてきたところでございますけれども、今後も、いろいろ新しく出現する技術を的確に保護の対象に取り入れていくべく、具体的な技術の動向やあるいは国際的な議論の動向なども踏まえて、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

○北神委員 アメリカの制度が特異だということとか、あるいは間口を広げても、パターの仕方とか、余り産業振興にはつながらない、そういった部分もあると思うんですが。

 これも、私も本当に不勉強で聞きかじりなんですが、アメリカにカーマーカー特許というのがあって、カーマーカーというのはインドの数学者の名前らしいんですが、要は、冷戦時代にレーガン大統領が、ソ連との対決の中で、SDI、スターウオーズ構想というものを考えていた。つまり、弾道ミサイルを撃たれたときに、宇宙の衛星からレーザーか何かで撃ち落とす。弾道ミサイルが飛んでくる中でレーザーを命中させるというのが、非常に高度な、アルゴリズムとか何かそういう数学の方法を使ってやらなければならない。そして、そのインド人のカーマーカーさんがその法則というか数学のやり方というのを考えついた。こういったものもアメリカでは特許の対象になったらしいんですね。これもまた、SDIの構想だけじゃなくて、こういった数学の方法を産業の部分にも応用されているというふうに聞いているんです。

 ですから、これがもし日本の特許の対象からすぐ、もう窓口から外されちゃう、これは何ら高度な技術を伴うものではなくて、単なる数学の方法論にすぎないということで却下されて、本来だったら、もしかしたら潜在的に産業にも適用される可能性があるものをみすみす逃してしまうのは非常に残念だな、そういった観点から私は申し上げております。ただ一方で、長官おっしゃったような問題点もよくわかっておりますので、法律を改正して発明という定義をさらに広げるとか、あるいはもう無制限にするとか、そこまではいかなくても、長官おっしゃったように、運用上にできるだけ新しい、産業に結びつくようなものはどんどん対象にしていただきたいなというふうに申し上げたいと思います。

 次は、今まで知財戦略の攻めの話ばかりをさせていただきました、あるいは攻めるための体制の整備みたいな話もさせてもらいましたが、一方で、防衛の話も大事だというふうに思います。すなわち、模倣品の話でございます。

 これも、野田委員とか、先週の金曜日に質問があったと思いますが、私も経済産業省の方から伺ったら、中国に対して、平成十七年の六月二十三日に、中国における知的財産権侵害実態調査というものを日本の企業に行っている。いろいろな問題点が浮かび上がった。それについて中国に、こういう問題点があるけれども、政府としてはどうですかというふうに尋ねたところ、返事が来なかった。それを受けて、今度はWTOの、さっきも長官が話されましたが、TRIPs協定、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づいて情報提供要請を行った。これは昨年、平成十七年の十月二十七日に行ったということでございますが、これでアメリカもスイスも同じような請求をしたというふうに伺っております。

 何を申し上げたいかといいますと、単独で日本が中国に模倣品の取り締まりをちゃんと徹底してくれとか、あるいはアメリカが中国に対してやるとかヨーロッパが中国に対してやるとか、単独でやると、無視をされたり回答しなかったり、あるいは、場合によっては、日本がそんなにうるさいことを言うんだったら、もう日本とは取引はしない、むしろアメリカとかヨーロッパと積極的にやりますよとか、そういった外交の戦術でなかなか踏み込むことができないということがあると思いますので、日本とアメリカとヨーロッパが大体同等の、知的財産保護の制度とか意識の水準が同じだというふうに思いますので、やはりこの三極で連携をして中国に申し出るべきだというふうに思うんですね。

 さっきのTRIPs協定の話も、これはアメリカとスイスも日本と同様に中国に情報提供を迫っているみたいなんですが、これは連携してやっているのか、それとも、たまたま偶然個別でやっているのか、その点についてお伺いしたいのと、それに合わせて、三極で連携すべきではないか。この前も特許庁を視察させていただいたときに三極の会談をやっておられましたが、まさにそういったところで事前に連携を深めて、それで、もちろん強硬な姿勢だけではだめだと思うんですが、どのように中国にちゃんと模倣品を取り締まってもらうのか、総合的に検討した方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

    〔桝屋委員長代理退席、委員長着席〕

○西野副大臣 委員がお示しのとおり、中国におけます日本企業にとりましては文字どおり最大の知的財産権侵害の被害が生じておるところでございまして、特許庁の試算によりますと約九兆円、中国の国務院のデータによりますと約三兆円、これだけの被害が及んでおるという甚大なものであります。

 このため、今先生からは二国間、三極間というお話が出ておりますが、我が国としましては、まず二国間の協議につきましては、中国への官民合同のいわゆるミッションの派遣等をこのところ、二〇〇二年にもあるいは二〇〇四年、二〇〇五年。実はこのミッションは今週の末、本年度ミッションを派遣することになっておるところでございまして、そういう中で、中国政府に対しまして、模倣品とかあるいは海賊版と言われるものに対する取り締まり、罰則の強化を図っていきたいというふうに思っております。

 特に、欧米で、具体的におっしゃいましたが、米国とかスイスとも当然ながら連携をしまして、お示しのとおり、WTOにおけます知的所有権関係の協定、そういうものに基づきまして情報提供を要請いたしておるところでございまして、さらに、その理事会の中でも、中国政府に対し取り締まりの強化を実は要請するなどして連携を深めておるところでございまして、今後とも、中国初め欧米との関係も密接に持ちながら、この知的財産の保護強化ということに取り組んでいきたいと思っております。

○北神委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 今、西野副大臣のお話によれば、WTOのTRIPs協定に基づいた行動というのは一応連携をしてやったという話だと思いますが、ぜひそういうパターンで続けていった方が効果があるのではないかというふうに思いますので、お願いしたいと思います。

 また、外国における模倣品対策については、国内のそれに応じる体制というものも充実していかなければならない。先日はその審査の体制の充実の話をさせてもらいましたが、特に模倣品の話というのは大変な金額の損失があるわけですよね。今、副大臣からお話があったように、日本の計算でいけば十兆円も被害があるということでございます。中国だけではなくて、ロシアとかほかの国にもこういった問題があるわけでございます。

 これもたまたまなんですが、アメリカの外交問題評議会というシンクタンクのある研究員のアメリカ人のシーガルさん、カモメですけれども、シーガルさんという人とお話をさせてもらったんですが、彼が言うには、アメリカもやはり外国における模倣品対策というのは非常に真剣に取り組んでいると。具体的に、たしかアメリカの商務省の中に専ら国際的なこういった模倣品対策に対応する特別の担当官を設けた、さらには、アメリカの在北京大使館の中にも専ら中国における模倣品対策に専念する担当を設けていると。こういった気合いの入れようなんであります。

 私は日本も、もうこれほど次から次へと日本の企業が中国において痛い目に遭っているわけでございますから、こういった政府の体制整備というものも図らなければならないというふうに思うのでありますが、通告はちょっとないので恐縮なんですけれども、この点についていかがでありましょうか。

○中嶋政府参考人 模倣品対策でございますけれども、実は政府全体の知的財産推進計画をここ三年やってくる中で、各省統一的な体制を組もうということで、経済産業省の製造産業局の中に模倣品の対策室というのを設けまして、そこが国内におきましては一元的な窓口になってやっておるわけでございます。

 一元的な窓口というのは、当然そこを中心に外務省とかほかの省庁とも連携をとって当たるということでございますし、それから、海外におきましても、実はアメリカの場合は、やはりアメリカの各国の大使館に担当者を置いているわけでございますけれども、日本の場合も、日本の各国の大使館に担当者を置くと同時に、ジェトロなども活用いたしまして海外でも連携をとって対応していくということで、政府全体として、国の中でも外でも体制を組んでおるところでございます。

○二階国務大臣 ただいまの中国の模倣品の問題につきまして、私は先般北京に伺いましたときに商務大臣と直接このことを議題として取り上げて日本側の要請を申し上げたところでありますが、中国側も、これは日本のためにとか国際社会のためにだけではなくて、我が国自身としても、模倣品、つまり知的財産権を守るということに関してのやはり学習が大事で、違反をする人たちに対して全国五十の箇所で取り締まり本部を設置する、こういうお話でありました。

 したがって、私は、先般東京で行われました省エネ・環境フォーラムにおきまして、八百五十名ぐらいの方々がおられる前で、今議員御指摘のミッションを近く派遣するということも正式に申し上げております。

 だんだんと話し合いが軌道に乗ってきたところでありますが、これから我が国として、技術的にどんな面で協力できるかというようなところは、これはもう積極的に乗り出していって協力をする、そういうことで、一歩一歩前へ進めていきたいと思いますが、今回の官民の合同のミッションはそれなりの成果を上げてこられるものと期待をしているところであります。

○北神委員 ありがとうございます。

 体制もしっかりされているということと大臣もそういう決意で臨んでいるということを聞いて、引き続きそういう方向で頑張っていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、その関連でいえば、中小企業の問題ですね。中小企業に限定すれば、中小企業の方々も中国でいろいろな痛い目に遭っているというふうに伺っております。そういった場合、基本的には訴訟とかで権利侵害行為の差しとめとか逸失利益の回復というものを目指すというのが通常の手段だというふうに思うんですが、残念ながら、御存じのように、中小企業の経営体質の中で、経営体質というよりかは体力の限界の中で、なかなか訴訟を行うというのが厳しい、海外における人的あるいはコスト的にも非常に負担が大きいということで非常に困っているという現場の声も伺っております。

 こういった点について、政府として、今度の法案もいろいろ水際で模倣品をとめるとか輸出輸入の両面において防止をするという話がありますが、こういった中小企業の訴訟に関する救済措置みたいなことは考えられないのかな。そもそもノウハウもないし、中国における人脈もなかなかない。さらに言えば、金銭的な問題もあるというふうに伺っておるんですが、いかがでしょうか。

○西野副大臣 海外におけます中小企業の受けます模倣被害というものはこれまた大変でございまして、特許庁が二〇〇四年に実施をいたしました調査によりますと、中小企業の割合は実に二四%に達している、こういうことでございます。そうすると、四社に一社は被害を受けている、こういう単純な計算になるわけでございますが、これは大変なことだというふうに思っております。したがいまして、中小企業が受けます知的財産の被害というものを戦略的に保護する必要があるというふうに思いますし、その仕組みについて整備をすることも重要であるというふうに思っております。

 具体的に申し上げますならば、先生がお示しのように、現地でそういう被害を受けたと。例えば、それを調査するについても、あるいはその他の、裁判をするにしても、中小企業としてはそれだけの資金的な余裕もなかなかない。こういうのが実態であろうかというふうに思いますが、政府といたしましては、例えば、調査をいたします場合、調査会社に委託をいたすわけです、ジェトロを通じてやるんですが、そういうものに対する支援制度を実施いたしております。

 さらにまた、国内において、知的財産に関するいわば駆け込み寺といいますか相談に行く窓口、商工会とか商工会議所にそういう相談窓口を置きまして、そして、そういう相談がありましたときは、会議所が弁理士等しかるべくスムーズに専門家を紹介するとかつなげていくとか、そういう体制を講じておるところでございまして、今後とも引き続いて、これらの知的財産の保護のために、中小企業のために可能な限りの支援は続けていきたいというふうに思っております。

○北神委員 ありがとうございます。

 ぜひそういう方向で、あと周知徹底も、そういった制度がいろいろあるということもなかなか知らない方もあるような感じもしますので、周知徹底の方もお願いしたいというふうに思います。

 今、技術流出の話、海外における模倣品の話をさせてもらいましたが、もう一つ、これは野田委員も先週の金曜日に質問されましたが、出願の公開制度についてちょっとお尋ねしたいと思います。

 あのときの質疑の中で、出願をして、それを一年六カ月たったら公開をして、そこで外国人がみんなそれを見て、いろいろな技術を、ある意味では自分たちのものにしていくというような現象がある、そこでいろいろな技術流出が行われているということでございます。あのときのたしか政務官の答えによりますと、重複研究とか重複出願の弊害を避けるためにこの公開制度というものはあるという話であったわけでございます。一方、現実の問題として技術流出というものが行われているのであれば、わざわざ出願の段階ではなくて、例えば、特許が取られた、認められた後に公開する、そういったものだけに限定して公開すると。たしかアメリカなんかはそういう方法で、最近変わったかもしれませんが、やっていると。

 ただ、何も合わせる必要はないと思うんですよ。技術流出というものを重く見るのであれば、何でわざわざ出願の段階で公開をするのかな。重複研究、重複申請というものを避けるのも大事だけれども、自分の価値判断の中では、やはり技術流出の方が重たいのではないか。今後、一方では、審査体制というものを充実すればある程度対応できる話であるわけでございますから、その点について、やはりもう一歩踏み込んで検討していただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○片山大臣政務官 前回も野田委員の方から類似の御指摘がございまして、まず、技術流出ということにつきましては、まさに非常に重要な問題でございますので、その防止を図るために、企業は、開発した技術を公開が前提となる特許権の取得の対象にするのか、あるいは、ノウハウとして対外的に秘匿するのかを慎重に選択していただくということがまず必要になるわけでございます。

 特許権の取得を選択した場合には、海外でも権利化していただく、そういったことが一番あるわけですが、より戦略を持って取り組んでいただくことが必要でございまして、さらに、ノウハウとして秘匿するということを選択した場合には、営業秘密として徹底した管理を行う。それから、その後他者が特許権を取得したとしても、この間もそのお話が出ましたが、無償で通常の実施権が得られる制度、いわゆる先使用権の制度を活用していただくということがあるわけでございます。

 この先使用権制度につきまして、現在、私どもの特許庁の方で、法曹界ですとか産業界等からいろいろな有識者の参加も得まして、この先使用権の要件や範囲、それから立証手段を明確にするためのガイドラインを作成する、それもできるだけ早く作成するということをやっておりまして、これを早く完成させ、周知させて、委員御指摘のとおりに、まず技術流出を防止するような手だてを企業側がとりやすいようにするということをやってまいりたいと考えております。

 その上で、さらに、出願の公開制度でございますが、やはりこれは、アメリカも含めまして、国際調和ということがございますし、それから、審査請求期間ですとか審査期間が存在することによりまして特許の付与に時間を要するという状況下にありましては、やはり、長期にわたってこの内容が全く公開されないという状況になりまして、その間、無駄な投資とか無駄な出願がどうしてもある。その出願から時間を経た技術が、ある日突然、これが特許ですよということで公開されるということになってしまうわけでございまして、多くの第三者が常に不安定な状況で事業をやっていくということになる、逆から見るとやはりそういう問題がございます。

 ですから、いろいろなことを総合的に勘案すると、やはり、当面、出願公開制度というのは今後ともあった方がいいというのが今のスタンスでございますが、技術流出につきましては、最大限、その防止を図るために、今急いでいるところでございます。

○北神委員 もう時間が来ましたので終わりますが、ぜひ、技術流出の点についてもしっかりと取り締まっていただきたいということで、知財戦略というものを産業戦略の中で位置づけて、攻めの部分と守りの部分というものをしっかり対応していただきたいなということを申し添えまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。

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