「意匠法等の一部を改正する法律案」について質問させていただきました。

北神質疑

2006年5月26日 経済産業委員会
○石田委員長 次に、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 質問に入る前に、先日、特許庁の視察に行かせていただきまして、大臣、副大臣、政務官、そして特許庁長官を初め関係者の皆さんに御礼を申し上げたいと思います。

 非常に勉強になりまして、審査官たちが特殊なコンピューターで審査をしている状況とか、ちょうど欧州と米国と日本側で国際会議を、多分その三つだと思うんですが、三極の会談をしている場面も見させていただきました。

 昼飯のときに大変おいしいお弁当が出て、普通は四角い箱なのが丸い箱で、俗に丸弁というふうに言われると思うんですが、これも意匠法上独創性があるのか、豆腐も四角いのを丸く切っただけではなかなか認められないという説明を受けた直後だったので、そういうマニアックな特許の世界にいざなわれたような気分でございました。

 そうした経験を踏まえて、本日質問をさせていただきたいと思います。

 意匠法の改正案でございますが、法案の個々の中身というよりは、先ほど野田委員からも冒頭お話がございましたが、経済戦略上どうなのかということをお聞きしたいと思います。

 言うまでもなく、特許制度、知的財産権というのは、普通は、自由主義経済の中では独占をできるだけ排するという中で、いわば例外的に、個人や企業の発明に対して排他的な独占権を付与する。なぜそういう例外的なことをするのかといいますと、御存じのように、特許法の第一条にありますように、「発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」と。

 つまり、さっきもマニアックな世界だと申し上げましたが、この勉強をしていると、だんだん細かい世界に入っていってしまって、そもそも特許というのは、国家の産業戦略の手段としてあるということを忘れがちでございます。

 一方で、この十数年間、政府も政治家も官僚もメディアも経済評論家も、私に言わせれば、極端な小さな政府病というものにかかってしまっている。国の産業政策とかいったものは過去の遺物だ、そして国が産業政策に介入すべきではないとかそういった、私に言わせれば、誤った考え、認識というものがはびこってしまっている。

 現実に、アメリカの今の経済の足腰の強さとかいったものも、レーガン、ブッシュ政権時代の行革路線、そういったこともあるんですが、レーガン時代に考案され、クリントン政権のときに採用されたヤング・プランという、まさに総合的な産業戦略に大きくよっているものだというふうに思っております。それに引き続き、アメリカでは、第二のヤング・レポートということで、イノベート・アメリカという産業戦略に関する政策が打ち出されている。

 こうしたことから、今の政府のように歳出歳入改革とか公務員削減、こういうのも大事な部分もあると思うんですが、こういった消極的なことばかりではなくて、将来への大胆な投資、環境整備というものをしなければならないというふうに思っております。

 そういった大戦略の中で知的財産権の戦略を考える必要性、これについては、大臣を初め経済産業省の皆さんや特許庁の皆さんも基本的には同じ認識だと思いますが、先ほどの野田委員の質問と多少重複しますが、経済戦略の中で知的財産権というものをどう位置づけるのか。先ほど大臣は、技術というものが大事だからそういうものを保護していかないといけないという話だったんですが、できればもう少し具体的に、どういう位置づけにあるのかということをお答えいただければと思います。

○二階国務大臣 まず、北神議員から、特許庁においでをいただきまして特許庁職員を激励いただいたということは、大変ありがたいことだと思っております。

 私は、かつて運輸省の政務次官を務めたときに、大臣の代理で気象庁へ参りました。気象庁へ政務次官クラスから上の者が来たことはないんだ、よく来てくれたということでありましたので、そんなに言ってくれるなら改めて一日気象庁ということで、朝から晩まで気象庁で過ごさせていただくから、自分もある程度勉強して出直してくるということで参りまして、気象庁の皆さんからいろいろなことを伺ったことがあります。

 特許庁も、大変重要な国の施策を担っておるわけでありますが、その割に、目立ってとか華やかだとか、その瞬間瞬間の仕事には余り恵まれないわけでありまして、しかし、国の産業の重要な部分を担っておるという自負心を持ってみんなが頑張っておるわけであります。そこに委員各位がお出ましをいただいたこと、特許庁長官も大変喜んで報告をしておりましたが、今後とも、相変わらずこういうところにもしっかり光を当てていただきたい。

 そして同時に、その産物として、産業財産権の活用企業について、この前百選というのを皆さんにもお示しをさせていただいたわけでありますが、この中で、私も幾つか存じ上げております企業もあります。

 これを見ておりますと、やはり、すばらしい発展を続けておる企業というのは特許の数も多いし、それから取得する特許の率が高いんですね。特許は、出すのは、幾らでもだれでもある一定の要件を整えれば出せるわけでありますが、なかなか特許に至るまで、時間ももちろんかかりますが、必要性を認められるというところに到達できないのも数々あるわけであります。その点において、優秀な企業は率が高い、しかも国際的にもそれが堂々と認められておるということでありますから、私どもは、これから新経済成長戦略を基本に据えて、これからの日本経済の再生に向けて積極的なチャレンジを行おうとしているわけでありますが、その際、議員も御指摘になられたとおり、特許という問題をかなり大きな位置づけをして対応してまいりたいと思っておる次第であります。

 日本経済を語る場合には、議員も御承知のとおり、人口減少だ、そして高齢化社会だということは決まり文句のように言われるわけでありますが、そうしたことはわかり切ったことでありまして、さて、それでうずくまってしまっておるわけにはいかない、そこから我々はやはり立ち上がっていかなくてはならない。そういう意味で、知的財産の問題等は重要な役割を果たす分野である。したがって、人の問題につきましても、何でも減らせばいいというのではなくて、重要なところ、お国のために役に立つ分野についてはむしろもっと人をふやすぐらい、充実していくぐらいのことがなくてはならない。

 それと同時に、やはり特許のスピードアップですね。これも、特許というのは申請して長く待たされるものだということが世間の相場になっておりますが、こういうことは一日も早くぬぐい去って、新しく、みんなが意欲に燃えて特許申請をしてくださるようにしていきたいと思っております。

 また、対外的な問題で一つ例を挙げれば、ロシアのエネルギー担当大臣とエネルギーの問題について話し合った際に、日本でもロシアに進出する、投資をする企業の中に、ロシアに対しての苦情がやはり多いんだ、しかし、一企業でロシア政府に苦情を言っていっても、それが日本と同じようなルールで取り扱われるかどうかということは常に明らかではない。

 したがって、ロシアの側にも日本の側にも苦情相談所を設けようじゃないか、相互にその苦情相談所で話し合っていくというふうにしてはどうかという話をしましたら、大賛成だ、こう言われるから、大賛成と言うたままでまた半年も無為に過ごすというのではいかぬので、きょうはお互いの責任者を決めようではないかということを申し上げましたら、向こうは直ちに責任者の名前を提示して、ここに同席しております、自分の、大臣の最も信頼する人物を充てる、こう言われましたから、私もあらかじめ考えてはおったんですが、直ちに我が国の方では長谷川審議官をこれに充てるということで、しっかり対応する。

 そうしますと、先般、その苦情が一件見事に解決ができました。その解決できたということを、日本側や日本の関係者が喜ぶだけではなくて、ロシア側が喜んでいるんです。これでお互いに信頼関係に基づいて事業を展開していくことができる、日本のためだけではなくて、ロシアにとってもありがたいということでありました。

 先ほど来、中国の問題も出ておりましたが、各国との間で知的財産権をめぐって問題をスムーズに解決するためにどうすればいいか、こういうことも考えていきたいと思っておりますが、いずれにしましても、これからの日本経済を日はまた上るというところへ持っていくためには、知的財産権は重要な役割を果たしてくれるであろうということを期待している次第であります。

○北神委員 大変力強い決意のほどをお聞かせいただきました。また、産業戦略の中で、知的財産権について、人員を集中的にふやさなければならないとか、審査の迅速性の話とか、あるいは対外的な交渉の話も具体的にお述べになられました。

 そこで、これは大臣というよりは事務方でも結構なんですが、もう一つ踏み込んで、産業戦略といっても、新経済成長戦略というものもぱらっと読ませていただきましたが、横断的な部分で知的財産の部分をとらえている。基本的に、出願されたものについては迅速にどんどん審査していくとか、あるいは横断的に教育、人を育てていかないといけないとか、そういった話はございますが、私は、それと同時に、やはり縦の部分、つまり、日本の今後十年、二十年を担っていくリーディング産業というのは何なのか。たしか、新成長分野、潜在的成長分野とかなんかそういうものも指定されていると思いますが、そういったものも大変大事だ。アメリカのヤング・レポートも、やはりIT産業とか投資銀行を中心とした金融とか、そういったものをアメリカの二十一世紀を担う産業だという位置づけの中で戦略を組み立てている。

 戦後の日本も、造船、鉄鋼、その次は電機、自動車、そういった国際的競争力の大変強い企業が経済を牽引している。そういった事実がありますので、ただ規制緩和をして、何か民間からきっといいものは出るとか、そういった待ちの構えではなくて、積極的に焦点を定めてやっていくべきだと思いますが、そういった分野について、知的財産権をどのように考えていくべきか、どのように対応していくべきかということについて、見解がございましたら教えていただきたいと思います。

○大辻政府参考人 お答え申し上げます。

 新経済成長戦略におきましては、我が国産業の国際競争力の強化を大きな柱に挙げております。

 具体的には、将来の国際的な市場展開をねらえる分野といたしまして、燃料電池や情報家電などのいわゆる戦略七分野に加えまして、次世代知能ロボットや、がん克服のための先進的な医療機器、次世代環境航空機などを挙げておりまして、こうした産業の競争力を強化したいというふうに考えております。

 このため、企業における研究開発のみではありませんで、基礎的な研究や複数分野の融合した研究開発が重要だと考えております。例えば、燃料電池では分子レベルでの材料工学が必要であり、また、がん克服のためには医療と物理、化学などの融合が不可欠ということで、こうした研究開発に重点的に取り組むこととしております。

 その際、加えて、こうした研究開発の成果を知的財産といたしまして保護したり、また、国際標準の獲得により成果を広めるなど、市場化のための施策も重要と認識しております。

 新経済成長戦略におきましては、特に知財政策として、特許審査の迅速化、それから特許情報の有効活用、国際的な市場展開に必要な世界的な特許制度の調和、また技術ノウハウの管理強化などの分野を盛り込んでいる次第でございます。

 このような知財政策のみならず、人材育成、資金供給の円滑化などのさまざまな施策を組み合わせることによりまして、我が国を世界のイノベーションセンターとするとともに、アジア等近隣諸国の発展に貢献し、ともに成長していくということを目指してまいりたいと考えております。

○二階国務大臣 ただいま北神委員の御質問を拝聴しながら、私も大変同感だという思いをしておりますのは、ただ単に知的財産の問題がどうだとか、あるいは、できるだけ自由に闊達にみんなやっていただければ、その中から新しい発明が生み出されてくるんだというふうな、単に楽観的といいますか、自由放任的に、待ちの姿勢、言葉は何か新しいことを言っているように聞こえますが、実際は待ちの姿勢。私は、それではこの科学技術の進歩に役所がついていけない、後追いで走っていくようなことになってはならない。

 そういう意味で、今説明申し上げたような、次世代のいわゆる燃料電池の問題等にしましても、あれは慶応大学が中心になって、いろいろな企業の協力、参加をいただいて、今時速三百七十キロで走れる自動車に到達し、これは実験段階ですから当然のことでありますが、一台二億円ぐらいかかるわけであります。これではまだ一般にというわけにもまいりませんので、今考えていただいているのは、百台ぐらいつくって三千万円ぐらいでどうかというんですが、これもちょっと高過ぎる。そうすれば、これは我々素人の考えでありますが、三百台つくって千万円ぐらいにならないかというためには、やはり経済産業省が先頭に立ってこのプランを後押ししなきゃいけない。それは、フレーフレーということを言っているだけではなくて、基本的に、経済的あるいは予算的な支援をしていかなくてはならない。

 大蔵省御出身の北神議員が一番詳しいところでありますが、予算は既に決まってしまっておるわけでありますから、今直ちにというわけにはいかないというのは、これは常識ですが、我々は、その常識を破ってでも現在経済産業省に与えられておる予算の中から幾らかでも捻出して、この問題に対して対応する、その激励が関係者の一層の奮起を促すであろう。

 小泉総理もこのことに対して大変御熱心にサポートしていただいておりますので、私は、一例でありますが、そうしたこともこれから役所が先頭を切ってやっていくということでなければ、後の、説明を聞いて解説して回るだけの役所であってはならない、私はそう考えておる次第であります。

○北神委員 本当にありがとうございます。

 そのことについてきょう触れる予定はなかったんですが、まさに技術立国ということで、二十五兆円ぐらい大学の研究機関とか国立研究所とかそこに投資をする、そこから民間に技術移転がなされるということをも予定しているわけですが、それも本当に、大臣が今おっしゃったとおり、ただそこでほったらかしていてもなかなか民間に移転できないわけですよね。今、慶応大学の車の話もありましたが、なかなかコストが高過ぎると。

 ですから、そういった意味で、私は、今言われたように、政府が率先してその車のコストをより安くするためにバックアップするとか、あるいは、例えば特別な繊維の開発がなされて非常に防火にいいものができた、それだったら消防庁の消防士の服のために政府が調達するとか、そこまでやはり力を入れていかなければなかなか民間の技術移転というものは図れないというふうに思いますので、僣越ながら、そういった姿勢で臨んでいただければ本当にいいというふうに思います。

 それで、もう一つ私がきょう申し上げたいのは、ではそういったいろいろな分野を決めておられる、成長七分野、さらには次世代のロボットとか環境技術とか医療技術とか、こういったことに関連して、特許庁の中の予算とか人員の配分というものも本当は考えていかなければならない、あるいはもうお考えになっているのかもしれませんが。特許庁の組織という資料を見ますと、特許審査第一部、第二部、第三部、第四部と、それでこれが、物理、光学に関する発明の審査、機械に関する発明の審査、化学に関する発明の審査、情報通信に関する発明の審査と。

 そもそもこの縦割りでいいのかとか、今後の産業に合わせて、つまり私が申し上げたいのは、例えばロボットに力を入れるんだったら、それに関係する専門家の審査官というものを集中的に育てるとか、そこに予算と人員を充てるとか、そういった内部の機構の改正というものもしていかなければならないんじゃないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○中嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 特許庁内の人材配置、具体的には審査官の配置でございますけれども、やはり、技術進歩の動向に応じまして、具体的には出願・審査請求動向に対応して、全体としてバランスをとって適切に配置するように、これは当然でございます。

 この点は、政府全体の知的財産推進計画二〇〇五におきましても、審査官を技術分野の社会的重要性や出願・審査請求動向の見通し等を踏まえて重点的に配置するというふうに決められてございます。例えば、最近ですと、バイオの関連の分野で審査官を増員しておりますし、また、御指摘のロボットなどにつきましても、一つのグループをつくって審査に当たっております。

 それから、審査官の質の向上につきましても、法律的な研修は当然でございますけれども、常に最先端の技術動向にキャッチアップするということから、民間企業との交流、例えば、民間に一時的に派遣をして、民間の専門家から最先端の技術動向を教えていただくとかいうような研修も行っておりますし、また他省庁への出向とか、あるいは、場合によっては在外大使館でも勤務するとか、さまざまな機会を設けることによりまして、ある意味で広い産業政策的な観点も含めて、かつ最先端の技術動向にもキャッチアップした的確な審査を行うように取り組んでおります。

○二階国務大臣 ちょうどいい機会ですから申し上げておきたいと思いますが、がん対策の問題につきまして、今、国会でもいろいろ御論議をいただいておるところでありますが、特に現在の内閣におきましては、がん対策の問題では、川崎厚労相、そして小坂文科相、それにこの私、三人ががん対策の担当閣僚ということに相なっておるわけでありまして、先般も三閣僚が集いましてこれからの対策等についてお互いに議論をし合ったわけであります。私どもの方は、御案内のように、医療機器の方の部分を担当するわけでありますが、これも、日本の中小企業の皆さんがしっかり頑張ってがん医療の対策につきまして大きな貢献をしておるという事実を承知いたしております。

 そこで、今議員御指摘のように、それではがん対策についてどれだけの知見を持った人が特許庁に存在するかということになりますと、これはそんなにがんの大家を大勢特許庁に常に雇っておくというわけにもまいりません。そこで、どんな形にすれば医療機器の進歩とそして現場の医療の状態、何を必要とするか、現場の声もやはりお聞きしなければならない。そういう意味でこれから、がん対策一つとらえてみましても、大変膨大な情報と知見が必要なわけでありまして、そうしたことと特許行政との間をどう円滑につないでいくかという問題について、私どもは問題意識を持って対応していきたいと思っておりますので、これはぜひ超党派で御理解、御協力をお願いしておきたいと思う次第であります。

○北神委員 ありがとうございます。

 我々も、私の一存では何も決められませんが、我が党も多分、そういった問題意識を持って協力をしていきたいというふうに思います。

 今、機構の中の予算とか人員の配置の話をしましたが、もう一つ申し上げたいのは、個別の、今後のリーディング産業、これから力を入れなければならない産業に応じて特許の審査をどう考えるかということにつきまして、優先順位をつけるという観点もあると思うんですね。

 これはなかなか難しくて、基本原則は、出願されて、そして審査請求のあったものについて公平にすべて対応していくということが原則だとは思うんですが、これも、経済戦略というものを非常に大事にして、知財というものを極めて密接にそれに連関するという位置づけを考えるのであれば、例えば、先ほどのバイオとかロボットについてはある程度優先的に審査をしてどんどんと進めていく。というのは、これもやはり時間の競争でございまして、アメリカとかヨーロッパとか、同じ分野について研究者たちが心血注いで研究をしているわけでございまして、日本としては、大臣が先ほどおっしゃったように、人口減少、高齢化の中で、知恵で勝負するしかないということでございましたら、やはりそういったところに力を入れていくべきではないか。

 私が調べましたところ、アメリカなんかでは、たしか公益の事業とか環境、エネルギー開発に関連するものについては審査を優先するということになっておりまして、私もまだ詳しくは勉強していないんですが、産業戦略的な観点がどこまであるのかちょっとわかりません。

 ただ、一方で、韓国では、輸出促進に関連する案件とか、あるいは認定されたベンチャー企業とか、これはちょっと産業戦略から外れますが、防衛関連の特許とかについては優先的に審査を進めるという事例があるわけでございますから、そういったことも我が国において考えられるんではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

○中嶋政府参考人 今の御指摘の点でございますけれども、もちろん常に最先端の技術動向、重点分野とか意識するわけでございますけれども、具体的に利用可能な制度といたしまして、早期審査制度というのがございます。

 これは、原則としてはもちろん出願の順番に応じてすべて平等に扱っていくということが大原則でございますけれども、特に、例えば中小企業の場合、あるいは企業の大小を問わず国際出願に関係しているものである場合、多分こういう技術最先端の分野というのは、先ほどからお話が出ておりますように国際出願も同時にされている場合が多いと思うんですけれども、そういったような場合、あるいは大学とかTLOとかそういった関係者からの出願の場合には、早期出願を申請していただいて、優先的に早く審査するという制度もございます。

 そういうことの御利用を普及させていきながら、常にどういう制度がいいのか引き続き考えていきたいというふうに思っております。

○北神委員 ぜひそういった観点で、ほかの国の事例を調べて、もし本当にそういうことを産業戦略的にやっている部分もあるんであれば、別に外国に倣う必要もないですし、日本として力を入れるという意味でそういったことも十分考えられるんではないかというふうに思いますので、提言したいと思います。

 時間がなくなってきましたので。今、人員配置とか、そういった重点配分のお話をさせていただきましたが、今後、請求期間を七年から三年に縮小したり、先ほど牧原委員とか野田委員からもお話がございました分割審査制度というものも導入される中、審査件数が大変急増していく。これは当然、人員確保というものが極めて大事な話。いろいろ大ぶろしきを広げて私も質問させていただきましたが、ここの部分が確保されなければ、口で戦略的とか言っても、なかなかままならないわけでございますから、大変大事な部分だというふうに思っております。

 ところが、冒頭申し上げたとおり、今、日本の風潮は、行政改革の御旗のもとでただただ公務員を削減すればいい、これは私たちも、もちろん民主党もそういうことを強く主張しておりますし、無駄なところを削るというのは、民間が血を流しながらリストラをしている中、これはやむを得ない部分だというふうに思うんですが、ただ、やはりめり張りをつけていかなければならない。

 今申し上げたように、この産業戦略なるものが日本の二十一世紀の活力の非常に大きな柱だというふうに私は思うわけでございますが、もしそうであるならば、この富を増大していく基本的な官庁である、経済産業省もそうですが、知的財産の面でいけば特許庁については力を入れていかなければならないというふうに私は思っております。ただ単純に、一律に各役所にキャップをつけて人員削減をするというのは、私は、余りにも短絡的、そして戦略性が全くない行政改革だというふうに思っております。

 これは総務省の局長だと思いますが、ぜひ特許庁については、特別扱いというのもあれですけれども、やはり戦略的に見ていかなければならない。特許庁について、今の人員の、一種、定員の枠みたいなものがどうなっているのか。私は、それを基本的に外して、短期的に急増させていくべきだと思うんですが、いかがお考えでしょうか。

○藤井政府参考人 私ども行政管理局では、ここ四十年来、厳しい定員管理というのをやらせていただいているわけですが、その中でも、政府全体の合理化、効率化を進めながらも、行政需要の増大しているところには的確に対応するという方針で対応してきたところでございます。特に、現在、総人件費抑制の観点から、純減を五%以上図る、そういう重い課題の中で定員管理をやっているところなんですが、そういう中でもやはりめり張りのきいた再配置をするということが極めて重要な課題と思っております。したがいまして、今後とも、引き続き厳しい純減を図りつつも、やはりめり張りをつけて対応するというようなことでやりたいと思っております。

 特許庁の件につきましては、これは従来、特許庁でも、増大する行政需要の中で、いろいろ情報システム化を図るとか、あるいは組織内の定員配置を見直すとか、あるいは業務委託を進められるとか、みずからいろいろ努力していただいているというふうに理解しております。その中でも、やはり本当に必要な増員については、私どもとしても、よく相談した上で的確に対応させていただいたというふうに考えております。とりわけ、近年、これは特許庁の方からも御説明があるかもしれませんが、任期つきの審査官の制度なんかもつくっていろいろ工夫をしていただいております。

 今後のことについては、まず来年度の要求をお聞きしてからということになりますが、そういったことも踏まえながら的確に対応していくという考えでおります。

○北神委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。これは特許庁だけの話ではなくて、要は、今後の日本の経済社会の変化に応じてどういった行政サービスがこれから強く求められるのか、そういった視点を持っていないと本当に問題だと私は思います。

 今議論になっている金融の世界では、証券取引等監視委員会とかあります。つまり、どんどん経済の事前規制というものを外して自由化するということは、より準司法的な機能というものが役所に求められていく。つまり、今までは事前規制で、ある程度そこで行政が民間にコントロールを及ぼすことができたんですが、それを自由化しちゃうと、基本的に自由だ、ただ法律やルールを守りなさいと。これが難しいんですね。つまり、そこで本当にみんなが法律やルールを遵守しているかということをずっと監視しないといけない。これは大変な労力でありますし、それをさらにまた取り締まって罰則をしないといけないということは、アメリカのSECと日本の証券取引等監視委員会の人員の数の違いからいっても明白だというふうに思っております。

 そういった意味で、例えば公正取引委員会とか、そういった分野も本当は強化していかなければならないだろうし、きょう話題になっている特許庁についても、今後、産業戦略というものをしっかり考えていかなければならない、それにふさわしい人員配置をしていかなければならないというふうに思います。

 最後に、これもできれば大臣にお答えいただきたいんですが、今申し上げていることは非常に横断的な話でございます。いろいろな産業分野にもかかわっていることでございますし、今言った、行政改革の人員を特許庁についてはふやしていかなければならない、選択と集中というものも図っていかなければならないということを考えると、経済産業省も頑張っていただかなければならないんですが、私は、本当は、これは政府を挙げてやっていかなければならない大事な問題が、まさにこの産業戦略だというふうに思っているわけでございます。

 ところが、知的財産権については、総理大臣が本部長で、政府を挙げて横断的にやっておられるわけでございますが、産業戦略について、これがないのではないかと。

 昔、何か小渕さんか橋本さんのときにあったような気がしますけれども、私は、知的財産よりもまず産業戦略というものが、総理大臣を本部長ぐらいにして、役所横断的にして、まさにその中でいろいろな分野について、どこに徹底的に力を入れていくのか、そのための行政のバックアップ体制とかいったものをどう戦略的に考えるのか、そういったことをしなければならないと思うんですが、肝心の大もとがないので、そこをぜひ今後つくっていくように大臣の方からも働きかけをお願いしたいなというふうに思います。いかがでしょう。

○二階国務大臣 先ほど来、我が特許庁につきまして大変御理解の深い御支援の弁をちょうだいし、力強く思っておるところであります。また、改めて私もその責任を痛感しているところであります。

 先ほど総務省からも大変御理解の深い御答弁がありましたが、定員純減につきましては、これは小泉内閣のもとで決定されたことでありますから、それはそれで遵守していくことは当然のことでありますが、たびたび議員からも御指摘のとおり、つまり、めり張りのきいた人事配置ということを行っていく必要があるわけであります。

 そこで、今度は経済産業省の中で配置転換等を含めて対応していくということになりますと、特許庁だけが膨らんでいきますと他の方へしわ寄せが来るようなことになって、極めて役人的な発想でありますが、他の部分に迷惑を及ぼさないような範囲でということになりますと、ただいま議員が御指摘のように、特許庁というものに対しての認識、産業政策に対してどう考えるかということ、これも私は、またいろいろな会議等でその主張を述べていきたいと思っております。

 経済産業省の中で人事配置といってみたところで、仮にある一定の人員を特許庁へ配置してみても、どれほど役に立つかということを考えれば、私はやはり、OBの活用とか、あるいはまた民間にお願いできるところは民間にもお願いする、そうしたことを十分駆使して対応していきたい、現在の状況に合うような形で取り組んでいきたい。

 しかし、行く行くの理想は、特許庁というものの存在を、もう少し政治として、あるいは国全体として大きくとらえていく必要がある。これが我が国経済産業の発展に大きく役に立つ時代が来る、また現に来ておる、このように判断をいたしますので、委員各位の御協力をいただきながら、経済産業省としても真剣な取り組みを行ってまいりたいと思っております。

○北神委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、終了いたします。ありがとうございました。

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