「証券取引法の一部を改正する法律案」など関連3法案について、有識者に対しての参考人質疑に立ちました。

北神質疑

2006年4月28日 財務金融委員会
 引き続きまして、北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 私はもともと経済産業委員会の方に属していまして、本日、委員長そして理事の皆さんに質問の機会を与えていただいたことに御礼申し上げたいと思います。

 また、両参考人のお二方も、お忙しいところ、ありがとうございます。

 時間がないのでもう質問に入りたいと思いますが、商品先物について大田参考人の方からお話がございました。確かに今回の法案は、横断的に類似の金融商品を対象としてすき間なく利用者保護を図る、そういった趣旨であるわけでございます。その趣旨自体は非常にいいものだと私も評価をしたいと思いますが、具体論に入ると、まさにこの商品先物というものがこぼれ落ちているのではないか、そういったことが論点になるというふうに思います。

 それで、早速質問に入りたいと思いますが、先ほど不招請勧誘の禁止の話がありまして、これは営業の自由という観点からいえば、それを適用するのに極めて抑制的であるべきだと岩原先生からお話がございまして、私もそれはそのとおりだというふうに思います。しかし、商品先物と同じような金融商品的な性質を持っているデリバティブとか、そういったところに不招請勧誘禁止の規定が適用されているわけでございますから、その辺の整合性が問題になるのではないかというふうに思っております。

 そして、岩原先生から、危険性が極めて高い、実際にその被害の件数が出ている、あるいは一般の利用者に余り取り扱ってもらいたくないような商品についてそういう不招請勧誘の禁止を設けるべきだという話がありましたが、先ほどの大田参考人の話から聞きますと、実際、統計的に見ても、株式よりも苦情件数というものが多いわけでありますよね。それは確かに大分減ってきているというか、七千件から四千件まで減少しているという部分は認めますが、やはり四千件というのは非常に多い苦情件数だというふうに思います。

 そこで、多分、政府の話とかを聞いておりますと、不招請勧誘というのは、商品先物につきましては、いわゆる再勧誘の禁止の規定が既に適用されているんだ、だから、実質、不招請勧誘の禁止をしなくても同程度の利用者保護を図れるということだと思いますが、その点について両参考人の御見解を伺いたいと思います。

○岩原参考人 お答え申し上げます。

 私、商品先物についてそれほど実態は詳しくないのでございますけれども、私が申し上げることができるのは先ほどの一般論でございまして、本当に危険なものであれば、これはやはり再勧誘の禁止と不招請勧誘の禁止というものは違いがあることは確かでございまして、不招請勧誘の禁止の方がより強い利用者保護になるわけでありますから、私は、確かに商品先物について非常に被害が多く発生しているということは承知しておりまして、ぜひ規制当局としては、そういうことが起きないように、より実効的な法律の適用をしてその問題を防いでいただきたいと思っております。

 不招請勧誘についても、そういったきちんとした法の執行がなされてもなおその問題が残るというような実態があれば、それはやはり考えていく必要があるのかなと思っております。

 以上です。

○大田参考人 お答えします。

 再勧誘の禁止というのは、平成十年の商品取引所法の中で、これは法律自体ではなくて、省令の中に禁止行為が既に入っていたわけですね。ですから、平成十一年四月からその法律が施行されて、それで先ほど私が言いましたように、国民生活センターの被害がずっとふえているわけですよね。ですから、再勧誘の禁止で防げるかどうかということは、この件数を見れば明らかなとおり、防げないということはもう明らかなんですね。

 今回、平成十六年改正で十七年五月に施行された商品取引所法では、再勧誘の禁止が商品取引所法の中の禁止行為に格上げされただけなんですね。ですから、それでとても被害が防止できるとは思わないわけです。

 それから、今回、資料三で出していますけれども、改正商品取引所法の施行後の相談事例においても、断っても勧誘してきているという事例がいっぱい挙がっております。

 ですから、再勧誘の禁止で防げるということは絶対ないということは、これはもうデータで明らかであるというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 岩原先生からは非常に率直な御意見を伺いましたし、大田先生から、現場の件数、実際の苦情件数が減っていない、したがって、再勧誘の禁止の規定というのは余り実効性がないんじゃないかという話でございます。

 もう少し厳しく見ると、実際に件数は減っていないので、理論的に考えると、不招請勧誘の禁止の規定を入れても実際変わらないかもしれない。つまり、申し上げたいのは、再勧誘というか不当勧誘の禁止の規定というもので、実質、不招請勧誘の禁止と同じぐらいの効果を期待できるのか。その点についてお聞きしたいんですね。

 それは、条文を言うとちょっと難しいんですが、簡単に言いますと、例えば、家に訪ねて商品先物の勧誘をする。我々も選挙中体験をするんですが、そこに勧誘お断りという札が張ってあるとなかなか入りにくいということもありますが、そういう札があると勧誘しちゃいけないとか、あるいは電話で勧誘するときには意思確認義務というものを課している。つまり、電話口で、これからこの商品先物の勧誘をしたいと思うけれどもいかがですかと。そこで断られたらそれ以上勧誘ができない、そういう規定があるわけですよね。そういった、ある意味では念入りにいろいろな制約を課している。

 そういったことを踏まえて、大田先生、まさにこれは現場の声、現場の感覚が大事だと思うんですが、そういったことがあってもやはり不招請勧誘の禁止が必要かどうか。その点について御説明願いたいと思います。

○大田参考人 お答えします。

 先ほど先生が言われたものは勧誘受諾確認義務と言われているものでありまして、勧誘を受ける際に、勧誘を受けていいですかということをあらかじめ確認しなければいけないというふうなルールが平成十六年の改正で行われたわけです。

 ただし、では、それと不招請勧誘がどう違うかということは、私たち現場で見ると明らかなんですね。

 ということはなぜかといいますと、勧誘受諾確認義務が履行されたかどうか、これは例えば裁判の現場でも争いになるわけですが、業者はどのような形で対応しているかといいますと、勧誘の際にはそういう受諾確認義務を果たしていないにもかかわらず、後で、勧誘を受諾するという書面をその勧誘に応じた人からとって、だから勧誘受諾確認義務は尽くしたんだ、こういうような形で答弁してくるわけですね。

 ですから、その勧誘受諾確認義務というものと、要するに勧誘してはいけないルールというのは、実際の実務の場面では極めて大きな差があります。ですから、勧誘受諾確認義務は、確かに再勧誘の禁止からさらにもう一歩前進したものであって、それなりに評価できるわけですが、ただ、不招請勧誘とは大きな差がある、こういうふうに理解しております。

○北神委員 ありがとうございます。

 今お話ししているのは、要は、不招請勧誘の禁止の適用を商品先物に及ぼすべきかどうか。そこで、消極的な理由として、多分、政府の考え方が、いや、もう不当勧誘の禁止の規定があるからこれで利用者保護を図れるんだということだというふうに思いますが、今の大田先生の現場の感覚でいえば、そんなことはない、やはり不招請勧誘の禁止というものが非常に大事だ、そういうことをしなければ、非常にふえている苦情件数というものも減っていかないし、商品先物という極めてリスクの高い商品というものが一般の利用者にどんどん不当に普及をしてしまうということが明らかになったというふうに思います。

 ただ、今消極的な理由の話をしていたわけでありまして、御存じのように、商品先物というのは普通の金融商品とはちょっと違う。先ほどリスク回避の部分で、現物の側面もあるし、一方でデリバティブ的な、金融商品的な側面もあると。

 そういったことを考えますと、私も素人で本当にわからないんですが、この不招請勧誘の禁止というものを適用した場合に、利用者にとってあるいは業界にとって、さらに岩原先生に直接お聞きしたいのは、商品先物市場の公正性とか効率性とか、そういったところに何か不都合が生じるのかどうか。つまり、不招請勧誘の禁止というものを商品先物に設けたら、非常に大きな問題が生じるよということがあるのかどうかというのをお聞きしたいというふうに思います。

 先ほどの営業の自由の、この話はもうクリアしていると思うんですよ。ほかの金融商品と大体同じ機能を持っていたら同じように利用者保護を図るというのは、まさにこの法案の趣旨であるわけですから。さらに今申し上げているのは、商品先物の特性に応じて、不招請勧誘の禁止を設けることによって何か不都合が生じるのかということをお聞きしたいというふうに思います。

○岩原参考人 大変申しわけないんですけれども、私、正直申しまして商品先物取引については余り詳しくないので、もし不招請勧誘の禁止のルールが商品先物取引に導入されたときにどんな不都合が生じるかというところまでは、正直ちょっとわからないとしか申し上げられないと思います。

○北神委員 大田先生も、同じ質問で。

○大田参考人 お答えします。

 商品先物について、先ほど私申し上げましたとおり、個人の、一般大衆の人たちの参加者が九割だということですが、これはほかの国ではないことなんですね。ですから、日本のこれまでの商品先物市場が、そういった、つまりそれまで全くかかわりのない人に勧誘して、もうかりますよと言ってやらせている人たち九割で成り立っている市場であるということ自体がそもそも問題でありまして、そういった勧誘で入ってくる人たちを排除して、本来自発的に入ってくる、いわゆるリスクヘッジのために入ってくる人たちの広い市場にすることがむしろ望ましいことであります。

 逆に言えば、一般の、経験のない、いわゆる取引については何も知らない人にそこまでして市場に参加していただかなきゃいけないのかどうか。そういった人たちが入らない市場であった方が非常に公正な価格形成ができるわけですから、本来はそういう方向に向かわなきゃいけないものだというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。この論点についてはこれまでにしたいというふうに思います。

 次に、商品先物につきまして、まさにこれは、金融庁の所管ではなくて経済産業省とか農林水産省が監督、検査の責任を持っている、権限も持っているということでございます。

 私も、大分前ですけれども財務省の方で金融関係の仕事もさせていただいたことがあって、当時から投資サービス法の議論がされていて、当時から商品先物の話も議論になっていた。私も直接やっていなかったので別に詳しいわけではないんですが、そして、そのときから経済産業省、当時通産省とか農林省との一種省庁間の緊張感みたいなものがあったというふうに思います。

 単なる権限の争いだったら、こんなものは無視をしてあるべき姿に持っていくというのが我々の責任だというふうに思いますが、ただ、先ほど申し上げたように、商品先物というのは普通の金融商品と違う側面がありますので、やはりそこはきちっと検討すべきだというふうに思いますので、そういった観点から御質問をしたいというふうに思います。

 それで、我々が単純に考えるのは、先ほどお話があったように、商品先物は非常に被害の件数が多い、そしてほかの商品、デリバティブとかそういったものと類似の性質を持っている中で、今の経済産業省とか農林水産省の監督、検査体制というのは極めて貧弱なものであるわけでございます。経済産業省は本省と地方の部門を含めて合計四十七名しかいない。金融庁はちなみに三百以上いるわけですよね。農水省の方も本省と地方を合わせて大体三十八名ぐらいだ。これは非常に少ないわけでございます。

 ですから、いわゆる投資サービス法の対象にしなくても大丈夫なんだ、今の経済産業省と農林水産省がきちっと監督して検査をすれば大丈夫なんだ、仮に百歩譲ってそういったことを考えるとしても、少なくとも今の体制では厳しいものがあるわけでございます。

 したがって、普通の発想でいけば、金融庁と共管にしたらいいんじゃないかというふうになるわけです。つまり、ある程度の体制が充実していて専門性を持っている金融庁の人たちも、現物じゃなくてむしろ金融商品としての機能の部分に着目をして、商品先物についてきちっと監督そして検査をしていくというふうに思うんですが、これについて、岩原先生、大田先生ももしよろしければ、お考えをお聞かせ願えればと思います。

○岩原参考人 そういう監督行政の、実際は余り存じませんのできちんとしたことは申し上げられないんですけれども、ただ、何よりも、本来は農水省、経産省がきちんと監督するのが本筋だと思っておりまして、先生おっしゃるとおり、実物の側面もある以上そちらの面についての配慮も必要ですから、本筋であれば経産省や農水省がきちんと監督するのが一番望ましいと思います。

 共管にした場合の問題としては、一つは、共管にしたときいわば二重の監督を受けることになるので、基本的には、監督を受ける側としては、二重の監督というのはいろいろ問題が生じることが多いのでできれば避けたいということがあると思います。

 もう一つは、確かに金融庁は相対的に言えば経産省や農水省よりも検査官等たくさんの人員をそろえていますが、ただ一方で、金融庁もどんどん職務が大きくなって、先ほど申し上げましたようにSECと比べると逆に十分の一しかないわけで、金融庁だってゆとりがあるわけではありませんので、共管にしたときに金融庁が一体どこまでのことができるかということも、実際の問題としては検討する必要があるのかなと思っております。

 以上です。

○大田参考人 農水省、経産省がこれまでずっと商品先物について監督をしてこられたわけですが、その結果が今の状況なわけですよね。ですから、それを見れば、やはりこれでは不十分だというふうに言わざるを得ないわけです。

 それから、私個人的に思いますのは、農水省、経産省というのは、いわゆる商品先物市場を広めて育成していく、振興していくという方向での立場もあるわけですね。ですから、そういったものと、それから顧客側に立っていろいろな問題をチェックする、ここはやはり少し独立した形でやっていただかないといけないのかな、これは私の個人的な意見もあります。

 ですから、そういった意味でも、農水省、経産省の監督下だけではもう不十分だ、もう少し別な形で、少し独立したチェックをする必要もあるのではないかというふうに考えております。

○北神委員 わかりました。

 岩原先生がおっしゃるのは、二重の監督の危険性があるのと、今金融庁の体制それ自体が不十分だと。その後者の部分はおっしゃるとおりで、多分ここにおられる委員の皆さんも、人員の拡充というものを図っていかなければならないと。共管の部分は、これはたしか共管の部分はあるんですよね、不動産関係とかそういったいろいろの、あるので、それがどういうふうに機能しているかというのは検証していかなければならないと思いますが、いずれにせよ、今、大田先生もお話がありましたように、市場育成というか業界育成の立場と利用者保護の立場というのは確かに利益相反するところもありますので、そこのところをやはり我々も考えていかなければならないというふうに思います。

 それで、もう用意した質問は大体終わってしまったんですが、最後にもう一点だけお伺いしたいのは、大田先生に対してですが、この商品先物というのは、先ほど申し上げたように、実物の部分と金融商品の部分がある。多分、大田先生はすべてのそういう投資商品の苦情案件というものを扱っているというふうに思うんですが、不招請勧誘の禁止の話も出ましたが、何かほかにこの商品先物について特別に配慮をしなければならない、それに応じてちょっと異なった規制をかけないといけないとか、そういった点があるかどうかというのをお聞きしたいと思います。

○大田参考人 ちょっと難しい質問なんですけれども、今までの繰り返しになるかもしれないんですけれども、商品先物については先ほどから私何回も申し上げておりますように、その市場への参加者がどういう人たちがふさわしいのか、これをやはり考えていかなきゃいけないと思うんですね。

 日本の商品先物の今までの流れは、昭和三十年代以降、勧誘によって一般の人たちが多数参加する市場であったわけですが、本来こういう市場が望ましいのかどうか。商品先物というもともとの機能を考えるとハイリスク・ハイリターンな金融商品でありますから、そういったところにどのような人たちが参画したらいいのか。

 それから、当然価格形成という機能もあるわけですから、一般の人たち、そういう勧誘された人たちが九割入ってくる市場でそういうことができるのかどうか、そういった観点をもう少し考えていただく必要が出てきているんじゃないかというふうに考えております。

○北神委員 ありがとうございます。

 本日の審議で出てきた話で、不招請勧誘の禁止というものを商品先物に適用すべきではないかという話と監督体制の話について、ぜひ今後の審議の中で議論していただければというふうにお願いを申し上げまして、質問といたします。

 ありがとうございました。

○小野委員長 以上で北神圭朗君の質疑を終了といたします。

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