18日に引き続き「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案(内閣提出第32号)」について、質問を致しました。

北神質疑

2006年4月21日 経済産業委員会
○石田委員長 質疑の申し出がありますので、
順次これを許します。北神圭朗君。

○北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 本法案の採決の前の最後の時間をいただいて、民主党を代表して質問させていただきたいと思います。

 本日は、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律の一部を改正する等の法律案の話でありますが、三法を合わせてまちづくり三法ということでございますので、きょうは、そういった総体としても質問をさせていただきたいというふうに思いますし、これまでも審議を重ねていく中で、ある程度制度的な問題点とか技術的な問題点、そういった話も出ましたので、やや大所高所からお話をできればというふうに思っております。

 今回の法案は、これまでの中心市街地活性化対策がなかなか成果を上げられなかった、その失敗に対する反省に立った、そういった流れにあるというふうに思っておりますが、いろいろな失敗した原因はあるかというふうに思いますが、特に、中心市街地から郊外に向けて無秩序に、無計画に人口とか都市機能というものが流出してしまった。そしてその中で、中心市街地において人口の減少あるいは高齢化が高まってきたということが非常に大きな課題だというふうに思います。

 しかしながら、私は、大変基本的な話ではございますが、郊外に人口や都市機能が流出するというのは、ある意味ではそれぞれ各自が、住民とかあるいは商業の方とか経営者とか、そういった方が合理的な選択の結果として、郊外の方に行く方が合理的だ、そういう選択の結果だというふうに思います。

 もちろん、無計画あるいは無秩序に郊外に行くということは都市計画的な観点から余り望ましくないということは私も思いますが、考えてみたら、一国の都でも時代によっていろいろ変遷する。奈良にあったり京都にあったり東京に来たり、そういった中心というものが移動する部分もありますし、東京でも、繁華街でも、一時期は新宿が盛り上がっていたり次は渋谷だったり六本木だったり、いろいろと変遷をする。

 そして、実際にアメリカでも、郊外においてゲートシティーというものが多数できてきている。これ自体がいいか悪いかというのはいろいろ議論はあると思うんですが、そういったところで完結した共同体というものも実際にできて機能しているというふうに思いますし、日本においても、従来から多摩ニュータウンとか千里ニュータウンとか、そういったこともあるわけですよね。

 そういったことからいえば、我々は、経済産業委員会に携わる者として商店街というものを中心、対象として考えているわけでございますが、一般の人からしてみれば、なぜ中心市街地にそんな力を入れなければならないのか、税金やあるいは法律の規制をかけなければならないのかといった疑問が生じるのは自然だというふうに思いますので、ぜひそこの部分で、ある意味では郊外においてしっかりとしたまちづくりということも可能であるわけでございますから、そういったことを踏まえて、なぜ中心市街地なのかという御見解を伺いたいというふうに思います。

    〔委員長退席、上田委員長代理着席〕

○加藤政府参考人 お答えいたします。

 これからのまちづくりに当たっては、今後の人口減少あるいは超高齢社会に対応するために、都市機能の無秩序な拡散を防止して、都市の既存ストックを有効活用したコンパクトなまちづくりを推進することが必要であるというふうに考えております。そのための拠点といたしまして、これまで公共交通ネットワークの拠点として整備され、また既存の都市ストックが確保されていて、地域の核としての歴史、文化を有している中心市街地が活性化されることが望ましいというふうに考えております。

 ただ一方で、地域によっては、先生御指摘のように、郊外に新たな拠点が既に形成されていたり、あるいは形成されつつあるというところもございます。そこを新たなまちづくりの拠点とするケースがあるということを否定するものではございません。

 いずれにいたしましても、これからのまちづくりは、地域が適切に判断をして都市機能の適正立地を確保する必要があるというふうに考えております。このため、今回の都市計画法の改正により、広域的に都市構造やインフラに大きな影響を与える大規模集客施設について、これまでの土地利用の原則を逆転させまして、一たん立地を制限した上で、立地する場合には都市計画の手続を経るということにいたしております。その過程を通じて、地域がどういう町がいいのか、どういう町をつくっていくことがふさわしいのかということをそれぞれお決めいただく、こういう制度に改めることとしたものでございます。

○北神委員 中心市街地はいろいろな、もう既にインフラがそろっているとか文化的な蓄積があるとか、そういったお話だというふうに思います。ただ一方で、郊外というものも、既にあるところというのはそれは尊重していくという話だというふうに思います。

 どっちを選ぶかとかそういった単純な話ではないのかもしれませんが、国としてどういった地域でまちづくりを行っていくかという際に一つ重要な視点というのは、こういう財政の一番厳しい時代でありますから、そういった中で経済効率性というものもやはり考えていかなければならない。その際に、やはり新たにまちづくりをするためには、もちろん既に蓄積されている部分もあるかもしれませんが、上下水道をそろえたり道路整備をしたり整地をしたり、いろいろな一種公共事業的なこともしないといけない。そういった一種社会インフラの生活資本のコストというものが一方である。

 他方で、こういう考え方が適切なのかわかりませんが、投資をする市町村の側からしてみれば、そこから資本整備をして、投資をして、人が住んで、まちづくりが行われて、ある意味では見返りというものが、例えば固定資産税の税収とか、そういった部分があるというふうに思うんですね。これは余り極端に突き詰める必要はないと思うんですが、やはり財政が厳しい中でどういった地域が本当にまちづくりにふさわしいかという経済効率性的な観点からいえば、そういったことを考えなければならない。

 ただ、今、地区別に、地区といってもどんな範囲かというのはいろいろあると思いますが、まちづくりにふさわしい地区別に、固定資産税の税収の数字というのは多分大体わかると思うんです。社会資本、上下水道とか生活資本の整備の部分、こういったところのコストという部分を考えて、その二つを合わせて一種収支みたいなふうに考えて、そういったことを一つの指標として参考にする必要はあるんじゃないかというふうに思うんですが、その点について政府としてどうお考えか。そして、そういった指標が大事なんだったら公表することも考えられるのかということをあわせてお聞きしたいというふうに思います。

○荒木政府参考人 お答えいたします。

 市町村がまちづくりを行いますための投資の際には、ただいまお話ございますように、費用対効果という観点からの検討は十分行う必要がある、大切であると考えております。

 地方自治法の規定には、御案内のとおり、その第二条におきまして、地方団体がその事務の処理に当たっては最少の経費で最大の効果を上げるようにという規定があるわけでございまして、これは地方自治運営の基本原則を示しておるわけで、今お話ございますような上下水道あるいは社会基盤整備全般につきまして、インフラ投資を行う際には、当然こういった基本原則にのっとってやることが必要かと思います。

 今お話ございました、それによります固定資産税の税収がどれだけということは、地域を区切って計算をするというのはなかなか難しい面があるかと思いますが、私ども財政運営等を指導する立場としましては、やはりこれらの投資を行う際に、議会の審議を通じまして、建設費あるいは特に将来の維持管理費等について十分情報提供をしまして、収支見通し等もよくお示しして十分な御審議をいただく。当然、それは市民、県民の方々にも情報が提供されるということになりますので、そういったことを通じまして、慎重に投資について御審議いただくというのが大事かと思います。

 また、当然、始まった事業について収支の状況等について、決算も毎年度行いますが、中長期の収支見通しについても情報公開等に努めていくことが大事であろうと考えております。

○北神委員 ぜひそういった取り組みを進めていただきたいというふうに思いますし、できればそういう指標を、ある程度、もちろんいろいろな仮定を置かなければならないと思うんですけれども、地区別にそういう指標というものもあれば、市町村にとっても物すごい参考になると思うんですよね、ここだったら非常に固定資産税。というのは、結局、郊外に行くと固定資産税の税収というのは恐らく取れないというふうに私は直観的に思うんですね、数字がなかなかわからないからそういったことは検証できないんですが。今回の法案も、ある意味では、市町村にとって非常に財政的に厳しい、余り郊外に無秩序に流出してしまうと、そういうところにも上下水道とか敷かないといけない、そういうところにも道路整備をしないといけない、大変なことになるというふうに思うんですよね。

 そういった視点も多分背後にあるんじゃないかというふうに推測するわけでございますが、そういったことをはっきりさせるためにも、ぜひそういったことを検討していただきたいというふうに思います。

 もちろん私も郊外をおろそかにすることはよくないというふうに思います。郊外も郊外で尊重しないといけないと思いますが、先ほどお話がございましたように、文化的な側面、共同体的な側面、あるいは、さっき申し上げたようなコスト的な面でいっても、中心市街地というのがやはり一つの重要なまちづくりの拠点になるというふうに思うわけでございます。

 これは、もともとは商店街を活性化するという話で来たというふうに思うんですね。ただ、結局は商店街の補助だけではなかなか成果が上がらないということで、よりいいまちづくりをやらなければならない。そして、それは、究極はやはり共同体の復活を図らなければならないということだというふうに思うんです。これは、矮小化しようと思えば矮小化できる話で、商店街を活性化するためにちょこっと施設を呼び寄せて、多少人がふえたらいいな、あるいは通行人がふえたらいいな、そういったことももちろん一つの方向性だというふうに思うんですが、私はそれは非常にもったいないなと。

 というのは、この話は、そもそも大店法の規制緩和、アメリカの、はっきり言えば外交的な、通商政策的な圧力のもとで行われてきた話だというふうに思いますし、そういった中で、いわば自由化の一つの流れとして大店法の規制緩和というものが行われて、その結果、中心市街地の小規模の店舗というものがだんだん廃れてきた、商店街も廃れてきた。何よりも大事なのは、商店街をいわば中核とするような中心市街地の共同体というものが崩れつつある、あるいは崩壊しつつある、それが私は非常に大事だというふうに思っております。

 そういった意味で、この自由化の中で、自由化というのはしょせん裸の資本の論理であるわけでございますから、そこには価値観とか人情とか、あるいは思想とか道徳とかコミュニティーとか、そういったものはないわけですよね。この資本の論理によってそういったものが破壊されていっているのが、ある意味ではこの中心市街地の象徴的な問題だというふうに私はとらえているわけです。これは大げさと言われれば大げさかもしれませんが、私は、これは戦略的に考えることは非常に大事なことだというふうに思っております。

 やや歴史的な話になるかもしれませんが、そもそも一九三〇年代、大分前、昭和初期ですね、このときにも世界的な自由化路線というものがありました。その結果というか、その状況の中で大恐慌という事態が生じたわけでございますが、実は、そのときに各国がそれぞれ、自分たちの経済秩序のみならず、自分たちの文化とか生活様式、考え方、価値観、こういったものを守る、守らなければならない、そういった事態に直面したというふうに私は見ているんですね。

 その際に、ある国は国家共産主義をとってみたり、これは裸の資本に対する防衛なんですよ、ある国は国家社会主義、ナチズムとかそういった形態をとった。そして、アングロサクソンの国家はケインズ政策という、ある意味ではこれも国家管理主義的な経済政策というものをとって、それぞれが裸の自由主義路線に対して防衛対策をとったというふうにとらえるわけでございます。

 我が国においては、やや国家社会主義に近いところで、統制経済的な方法をとったというふうに思うんですね。これはまさに、経済産業省の親の親である商工省の岸信介大先生、この人が象徴するような革新官僚たちがこういった統制経済のシステムというものを戦時経済という要請の中でつくろうとした。

 そういった中で、皮肉なことに、戦時経済の要請でつくろうとしたわけでございますが、実際に完成を見たのが戦後であるわけですね。田中角栄のシステムだというふうによく言われるんですけれども、それは私は間違いだと思って、岸信介が最後に業界団体とかそういうものを全部整備して、今のいわば自民党の、小泉さんの前ぐらいの政治を支えてきた仕組みというのをつくったのが、私は、岸信介さんとかそういった経済産業省的な発想だというふうに思うんです。

 今の小泉さんがやろうとしている構造改革、あるいはアメリカの相当な影響力のもとで行われているこの自由化路線の中で、まさに野口悠紀雄先生なんかが言うのは、いわゆる四〇年体制ですか、この統制経済の仕組みというものがだんだんと突き崩されてきていると。そういった中で、共同体の崩壊とかそういったものが生じているわけでございます。

 私は、もちろん自由化路線、部分的にはこれは必要だというふうに思いますし、ある程度合わせていかなければならない。効率性のことも先ほど申し上げたように考えていかなければならないけれども、国の政治というものはそんなものが最終目的ではなくて、やはり国民の生命財産のみならず、私たちの生活のあり方とか文化とか感性とか、そういったところまで守るというのが私は政治の役割だというふうに思っているわけでございます。

 そういった中で、やや壮大な話になるんですが、まちづくりの話というのは、私はそういう観点でとらえなければならないというふうに思っているわけですね。むしろとらえた方がいいんじゃないかと。

 この裸の資本の論理の中で、地域的な弱者とか経済的な弱者とか、そういった人たちをどうやって救うのか。あるいは、共同体の中で、それこそ教育の、しつけの問題とか、そういったものがだんだんとひずみが入ってきている、そういったことをどうやって救っていくのか、救済していくのか、守っていくのか。私たちの文化をどうやって防衛していくのかということがこのまちづくりの一つの観点だというふうに思うわけでございます。

 したがって、今審議している法案は、これはこれでいいというふうに私も思うんですが、今後求められていることは、この方向性というものをより明確に力強く推進していくことではないかというふうに思っているわけでございます。

 そういった点について、経済産業大臣としてではなくて、むしろ一政治家として、県議も経験されて地域や地方を知り尽くされている二階さんの、私が今申し上げたようなことに対する見解というものをお伺いしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○二階国務大臣 ただいまるるお示しをいただきました文化的価値観、これをこれからのまちづくりの上においてしっかりと加味していかなくてはならないのではないか、そういう御意見であったかと思います。私もただいまの委員の御発言に対して大変共鳴を覚えながら伺っておりました。

 また、海外でよく、日本にお越しになった海外の首脳の皆さんの感想などを聞いてみますと、みんな京都がいい、こう言うんですね。なぜ京都がいいと言うのかということですが、やはり私は、今議員の御意見を聞いておりながら、歴史あるいは文化、そうした、他の地域の追随を許さないといいますか、まねすることができないような深みのようなものがそれぞれの地域にあるわけですね。京都のみならず、いろいろな地域にそういう町がある。

 このまちづくりというのは、法律も役に立った場合もあるかもしれませんが、私は、その地域に住む人々の文化的水準によって醸し出されてきた歴史の歩みであろうと思うわけです。このごろそれが改めて見直しが始まっておりまして、観光地づくりというと、すぐ何かきらきらしたものを設置して、そこに観光客を呼ぶというふうな、一時そのような風潮もなくはなかったんですが、近ごろはやはり、かつての歴史的なそれぞれの地域のものを掘り起こすといいますか、改めて再評価して、みんながそれに対して誇りを持って取り組んでいこうということが言われております。

 近ごろ、観光地でも成功している例は、やはりそうしたその地域特有のもの、言いかえれば文化であり、歴史であろうと思います。お示しのとおりでございます。そういうことに対して積極的に対応してきた、努力をしてきた地域が、今、観光として新たに花開こうとしているわけであると思います。

 ですから、これからの時代は、やはり文化ということに関しての改めて地域挙げての取り組み。今まで文化といいますと、すぐ、文化ホールをつくるとか、我々のところには演劇を楽しむような、そういう音響装置の整った劇場がないとかというようなことがよくどこの町でも言われたものでありますが、一通りそういうことが大体設置された今日、みんなが改めてこれからの時代に対して、町をどうしていくか、地域をどうしていくか、観光客を呼ぶためにどうするかということに対して立ちどまって考えるとすれば、私は、ただいま議員がおっしゃったようなことについて、お互いに、それぞれの地域の皆さんが、自分の足元をもう一度積極的に見直してみるということから生まれてくるのではないかと思っております。

    〔上田委員長代理退席、委員長着席〕

○北神委員 ありがとうございます。

 おっしゃることも非常に私も思いを共有しておりまして、まさに地域の人々がそういった認識を持って自分たちでつくっていかなければならないし、国としても、行政としても、やはりそういった後押しをしていく必要もあるし、整備をしていく必要があるというふうに思いまして、今回の法案というのはそういった側面が非常に強いし、私はそこの部分を今後強めていかなければならないというふうに思っているわけです。

 具体的には、先ほどもお話がありましたように、実際にコンパクトシティーという理想が掲げられているわけですよね。ですから、商店街活性化の部分よりも、むしろ私は、都市計画的な側面というものをこれから強化していかなければならない、それがひいてはそういう商店街の活性化とか経済の活性化につながるというふうに思いますし、まさにそういう思いで皆さんもこの法案をつくられたというふうに思うわけでございます。

 そういった意味で、今回の法案は、その都市計画的な部分についていろいろ工夫もされている、例えば郊外に大店舗が流出しないように原則禁止にするとか、そういったこともしているし、逆に、流出してしまった公共公益施設とか住宅というものを呼び戻すためにいろいろな税制の優遇措置とかインセンティブづくりを用意している、そういった部分はよくわかるんです。それは非常に大事なことです。

 ただ、この都市計画をやる上で、都市計画の皆さんが一番よくわかっていることだというふうに思いますが、一番問題となるのは、そして日本においてなかなか都市計画というものが進んでこなかった最大の理由というのは、地権者との利害調整という部分だというふうに思います。やはり、住民の皆さんを説得する、彼らを巻き込んでいかなければ難しいと。

 私も司馬遼太郎の本を読み返したんですよ、「土地と日本人」というのかな、ちょっと忘れましたけれども。彼はふだん冷静な口調で語るんですけれども、この土地の問題になると非常に激高して、公有地にすべきだとか、そういった主張をされているんですよ。司馬遼太郎の趣旨というのは、やはり土地というのは単なる財産じゃない、公共の部分が非常に強いものだと。

 しかしながら、これは日本の昔からの歴史的な経緯なのかわかりませんが、あるいは田中角栄の列島改造からのいわゆる土地というものを投機の対象として見てしまう、そういった部分からきているのかわかりませんが、やはり地権者がなかなか協力をしないわけですよね。ごねればごねるほど後でもっとたくさんの補助をもらえる、そういった知恵みたいなものが身についてしまって、これが都市計画の古典的な問題であるわけでございます。

 そして、このまちづくりの法案の話も、そこの部分が、私が勉強した限りでは余り手当てされていない。そこを手当てしなければ、幾ら郊外への流出をとめても、幾ら税制の優遇措置で誘致をしようとしても、そこで本当にさっき申し上げたような共同体を復活するために、コンパクトシティーなるものをきちっとまじめにやるのであれば、本当はそこの部分を手当てしなければ絵にかいたもちになってしまうんじゃないかというふうに私は思うんですが、いかがでございましょうか。

○加藤政府参考人 都市計画は、合理的な土地利用の実現を図るために、土地の権利に対して制限を行うというものであります。

 このため、都市計画の決定等に当たりましては、必要に応じた公聴会の開催ですとか都市計画の案の公告縦覧、それと住民の意見書の提出、第三者機関であります都市計画審議会の議決といった手続を経なければならないということにされております。

 御指摘のとおり、先生今おっしゃられたとおり、都市計画の決定に当たる現場では、こういう手続を踏んで個々の都市計画を決めていくわけでございますが、大変な労力を現場の第一線では使っているということが実態であります。ただ、実態でありますが、土地の権利に一定の制限を、都市計画の内容といたしまして地権者の方に制限を課すものである以上、地権者を含みます地域の住民の意見を反映させるために必要なものであると考えております。

 また、私どもとしては、こうした都市計画は、先ほども先生おっしゃられた、そのとおりでありますが、地域の労力を傾けて都市計画を決める、その都市計画を決めたものは、一つの言ってみれば地域の財産という意味合いも持つものでありますから、それはみんなで守っていただいて、いいまちづくりに貢献していただく、これが都市計画のねらいであるというふうに考えております。

○北神委員 まさに、地域の財産であるわけですよね。ですから、都市計画というものは公共性の非常に高いことだと思うんですよ。

 しかし、今おっしゃられた手続の意義とか意味合いはよくわかるんですよ。ただ、それは教科書どおりの話でありまして、現実には、本当にこういうちゃんとした経済的な合理性のある土地の制約とかあるいは収用、収用まで入れれば収用というものがあって、そういう提案をしても、最後の最後までごねたり、あるいはなかなか協力をしない、そういった地権者がいるわけですよね。ですから、今おっしゃったようなことが本当に現実に行われるのであれば、実際、日本というのは、都市計画が先進諸国同様もう少し進められているはずなのに、なかなか進められないというのがそこの部分だというふうに思うんですよ。

 役所としてはなかなか答えにくいと。憲法の制約ももちろんあります、財産権の問題もあります、内閣法制局もにらみをきかせていると思います。しかし、この問題は、やはり本当にコンパクトシティーというものをやって、これが私が今申し上げていたように、一種、国家の一つの重要な戦略として位置づけるのであれば、私は高速道路をつくると同じぐらいの公共性の高いものだというふうに思うんですよ。

 そういった意味で、地権者を、もちろんできるだけそれは巻き込んで、今回の法案にあるように協議会の中に入れて、NPOの団体やいろいろな関係者といろいろ話し合って、一丸となってまちづくりを進めるということになればいいですけれども、そのぐらいの制度づくりだったら、やはり最後は、本人の意思によって変わる変わらないがあるんですよね。そうすると、やはりこういうものは、ある意味では、行政の権限の集中というんですか、私権をある程度制限するための権力というものが前提になるというふうにはっきり申し上げたいというふうに思うんですよ。

 そういった中で、これはあくまで提案ですが、例えば、地権者が理不尽に協力をなかなかしない、そしてほかの人たちは基本的には合意がなされていて、まちづくり、都市計画というものをこれでいこう、そして都市計画決定の手続を踏んでいこうというふうに決まっても、なかなか協力しないという地権者がいる場合に、そういった方に対して、課徴金とかペナルティーとかそういったものを科す。これは大変過激な話かもしれませんが、そういったことも多分私は先進国では行われているというふうに思うんですね。それじゃないと、ニューヨークなんかに行ってホテルの上から整然とした町並みを見て、私の友達が、これは相当な地上げをやったんだなというふうにコメントを漏らした友達もいましたが、やはりそのぐらいやっていると思うんですよ、公共の福祉の名前のもとで。そういったことは考えられないのかということをちょっとお聞きしたいというふうに思います。

○加藤政府参考人 先ほども答弁させていただきましたが、都市計画は、土地の権利に対して必要な制限を行うというものでございますので、先ほども答弁させていただきましたが、都市計画の必要な手続を踏んで都市計画の内容を決めていただくということになっております。

 それで、今申し上げましたようなこうした手続を経て、地域の判断で都市計画の内容が決められるものでございますので、一方で、都市計画の実現のための手段としては、都市計画法でも、例えば、道路とか公園とかの施設決定ですとか、区画整理とか再開発といった市街地開発事業があるわけでございますが、その都市計画の内容を実現するために、今申し上げたような事業については、例えば道路ですとか都市公園などの都市計画事業については、事業認可を受けることにより収用権が付与されるということになっておりまして、その収用権に基づいて強制力を持った事業執行ができるということになっておりますし、また、公的主体が実施いたします土地区画整理事業や市街地再開発事業につきましても、事業の実施に当たって地権者の同意は法律上の要件とはされておりません。

 また、地権者が構成する組合による区画整理事業ですとか再開発事業につきましても、事業計画の決定等に際しまして地権者の三分の二以上の同意が必要とされておりますけれども、憲法が保障する私有財産権との関係から、当該要件の緩和につきましては非常に厳しい面があるというふうに考えております。

○北神委員 手続があるのはよくよくわかっております。要するに、それをさらに踏み込めないかという話なんですね。

 これは、通告はなかったんですが、二階大臣、もういろいろ経験されていると思います。この土地の問題というのは最も大変な問題で、まちづくりをする上で一番ネックになるというふうに思うんですね。そして今、日本の場合は、成田でも紛争をまだしているがごとく、本当に土地に対しては非常に公共性というものがなかなか及ばない、及ぼすことができない、そういったジレンマがあって、しかしながら、今後、人口減少がある、財政も厳しい、そしてこの共同体というものを、先ほど申し上げたように、戦略的にもし復活しなければならないということであるならば、やはりここの部分に踏み込まなければなかなか厳しいというふうに思うんですね。ですから、そこは政治家としてどのようにお考えかということをお聞かせ願えればというふうに思います。

○二階国務大臣 今、成田のお話が出ましたが、私も運輸政務次官などを経験したことがございます。もう随分以前のことで、たしか海部内閣であったかと思います。大野明運輸大臣のもとで、私は政務次官として現場にも再々赴いたこともございます。まさに命がけの交渉であったわけであります。そして、政務次官でただ一人、自分の自宅の方にも警備がつく、こういうふうな状況での生活でありました。これは私だけではなくて、その方の担当者の方々、これは、成田は少し他の例とは異なるわけではありますが、土地に対する問題、そしてお互いの、地域の皆さんの執念のようなものを感じながら、これは法律だけでは解決しないな、そういう問題もありました。

 そしてまた、今、公共事業問題が非常に関心が高まっておるところでありますが、道路などは、もう一息頑張れば開通できて他の地域も活用できるというような場面でも、最後のところがネックになって、そしてなかなか解決できない。そして、何とかかんとか言っておっても、最後のところは頑張った人が粘り勝ちみたいな例があるわけですね。多くの皆さんに迷惑をかけながら、その人が粘り勝ち。

 私は若いころ、議員からもお話出ましたから申し上げるんですが、地方で県会議員をやっておりましたときに、この県の中で用地買収ができなくて公共事業が滞っているようなところが何カ所あるかということを聞いたら、やはり九十カ所ぐらいあると言った。それから随分歳月がたっておりますが、今尋ねても、九十とは言わぬでしょうけれども、その半分ぐらい滞っている場所がある。私は、そういう地域は、これは和歌山県のみならずでありますが、工事を手控えるといいますか、地域の合意ができなければ、やはりそういうところはもうやらないというふうなことをきちっとやっていくこと、そして、法改正も含めて、国民的合意のもとにここのところを考えなければ、日本の都市づくり、まちづくりというものは進まないという問題点は、私は議員のおっしゃるとおりであろうと思います。

○北神委員 率直な御答弁、ありがとうございます。まさにそういうことで、もう時間がございませんので、いろいろ提案もしたかったんですが、ぜひ土地の私有権の制限、私ももちろん、今大臣がいみじくもおっしゃったように、執念という言葉ですね、こういうものも確かにあるんですよ。そして、それは、先祖代々の土地だとか、あるいは農地解放の後に、土地というものは何とか守らなければならない、そういった意識もある一方で、単なる財産として長く持って、景気が回復すれば、それを売ればたくさんお金が入るとか、そういった部分とか、いろいろこの問題は根深い、そして総合的に検討しなければならないというふうに思います。

 最後に大臣に御質問したいのは、今おっしゃっていたように、この法案というのは単なる商店街の補助の話ではなくて、やはり、私たちの文化とかコミュニティーを守るための一つの重要なきっかけになり得る話だというふうに思いますので、ぜひとも、経済産業省、国土交通省だけじゃなくて、文化人とか経済人とか都市計画の専門家とか、あるいは思想家とか宗教関係の人とか歴史家とか、そういったものを含めて、今示されている、今兆候としてある流れというものをさらに力強く進めていきたいというふうに思いますし、具体的には、審議会なのか知りませんが、そういった場というものをつくっていく、これは大臣がやられるのかどうかわかりませんが、そういう提案を例えば内閣でしていくとか、そういったことをぜひお願いしたいというふうに思うんですが、その辺、お考えはいかがでしょうか。

○二階国務大臣 私も先ほどから御質問をお伺いしながら考えておったわけでありますが、おっしゃるように、文化人であるとか芸術家とか歴史家、それぞれ地域にも立派な方々が多くいらっしゃるわけであります。そうした方々の経験や知見をやはりまちづくりに生かしていくということは大変重要なことでありますから、ただいま法律で提起しております協議会等につきましては、これはこれで、もうしっかり取り組んでおる地域もおられるようでありますから、今考えておられるとおりお進めいただくことにして、国全体としてこうした問題に対して経済産業省が意見を尋ねられれば、そういうことに明確にお答えすることができる、方針を示すことができるような、そういう審議会という形をとるか、もう少し柔らかい形でも、しっかりと現実に対応できるようなことを考えていくべきではないかと思っておりますので、総合的にそうした専門家のアドバイザーを集めるなどというようなことを考えてみたいと思います。

○北神委員 ありがとうございます。

 これで終わりにしたいというふうに思いますが、せっかく今回の法案でも地域活性化の協議会がありまして、そこに今度はNPOとか地権者とかいろいろ巻き込んで、恐らく現場の意見としていろいろ出てくると思うんですね。そういった具体的な意見と、さっき申し上げた大所高所の意見とをあわせて検討すれば、そしてそういう方向性を打ち出していただければ大変ありがたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

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