経済産業大臣に法案は「消費生活用製品安全法」について質問させていただきました。
北神質疑
2006年10月24日 本会議
消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案(内閣提出)の
趣旨説明に対する質疑
○議長(河野洋平君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。北神圭朗君。
〔北神圭朗君登壇〕
○北神圭朗君 民主党の北神圭朗でございます。
ただいま議題となりました内閣提出の消費生活用製品安全法の一部を改正する法律案に関して、民主党・無所属クラブを代表して、経済産業大臣に質問いたします。(拍手)
まず初めに、背景にある製品事故についてお伺いいたします。
最近、パロマ製ガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故や家庭用シュレッダーによる幼児の指切断事故など、大変痛ましい事故が相次いでおります。今回の改正案は、こうした事故が発生した場合に、製造事業者等に報告を義務づけるという内容になっておりますが、そもそもパロマの事故については、経済産業省は大分前から既に情報をガス事業者から知らされていたはずであります。具体的には、二十八件あった事故のうち、二十件についても報告がなされておりました。にもかかわらず、都市ガスやLPガスなど縦割りの担当ごとに情報が細分化をされ、事故の共通性と関連性が把握できなかったため、二十年という長きにわたって放置されていたのが事の真相であります。その結果、この間に何の対応もなされず、残念ながら、二十一名もの方々が亡くなってしまっているんです。
こうした点について、パロマの一酸化炭素中毒事故に対する経済産業省の責任をどう認識しておられるのか、お伺いいたします。(拍手)
私は、何もいたずらに犯人捜しをしているわけではありません。むしろ、今申し上げた事例が示すとおり、単に政府が事故の情報を把握しさえすれば事が済むのではないということを申し上げているんです。依然として、政府が情報を断片的に処理するのであれば、幾ら報告義務が課されても、問題の本質は変わりません。やはり、事故の原因について横断的かつ継続的な分析、評価を実施することが肝要であります。実際に情報がありながらもパロマの事故への対応が極めておくれてしまったことへの反省に立ち、事故情報の分析・評価体制をどう整備していくのか、お伺いいたします。
また、重大製品事故に関する情報の多くは、当然ながら警察にも連絡が入ります。例えば、パロマの事故についても、経済産業省は、警視庁から連絡を受けて改めて過去の報告書を分析し直し、その結果、明らかになったものであります。さらには、内閣府所管の独立行政法人国民生活センターにおいても、消費者からさまざまな情報が寄せられております。したがって、省庁の壁を乗り越えて、製品の所管省庁と警察との連携体制、さらには国民生活センターといった関係機関との連携体制を構築すべきではないでしょうか。この点についてどう認識しておられるのかについても、あわせてお伺いいたします。
次に、事故情報の報告が義務づけられる対象について質問いたします。
今回の法案においては、製造・輸入事業者に対し重大製品事故の報告を義務づける一方で、小売事業者、修理事業者、設置工事事業者についてはこうした報告義務が課されないことになっております。これらの事業者については、より緩やかな形で、製造事業者等に情報を通知することに努めることを求めるのみとなっております。
しかしながら、今回のパロマの事故を見ると、実は、一部には修理事業者による安全装置の改造がなされたために不完全燃焼に至り、一酸化炭素中毒事故が発生しているのです。そうだとするならば、こうした改造を実際に行う修理事業者や設置工事事業者についても報告を義務づけ、その責任を明らかにすべきではないでしょうか。何ゆえ、これらの事業者については努力規定しか設けず、報告義務を課さないことにしたのでしょうか。
さらに、流通のプロセスが非常に多様、複雑になっております。こうした中で、明らかに消費者により身近な存在である小売事業者、修理事業者、設置工事事業者に報告を義務づけることなく、一体政府の迅速な情報把握は可能なのでしょうか。こうした点を含め、製造・輸入事業者のみに事故報告を義務づけることとした理由と根拠について、御説明いただきたいと思います。
ところで、近年、規制緩和ということで、事前規制から事後規制へということが言われております。にもかかわらず、小泉政権のもとでは、事前規制の緩和を行っても、本来はあわせてやらなければならない市場のルールや法律を遵守させるための事後規制の整備を怠ってまいりました。
本改正案は、そういう意味では、遅きに失しているものの、製品の安全に係る事後規制の整備という位置づけができます。その必要性について異論はありませんが、今回のように国民の生命や身体に対する危害が生じる場合にあっては、事故が発生してから事後的に対応をとっても遅過ぎるんです。確かに事故の拡大は防げても、被害者にとっては取り返しのつかない状況になってしまいます。したがって、重大な製品の事故の発生が予見されるような製品については、安全性を確保する観点から、製品の規格を厳格化するなど、いわば事前規制の強化が必要な場合もあるのではないかと考えますが、この点についての見解をお伺いいたします。(拍手)
また、製品の安全性との関連で、我が国のものづくり技術の現状についてもお伺いいたします。
我が国が、工業立国、貿易立国を実現し、世界第二位の経済大国となったのは、まさにものづくり産業における高い技術水準と品質管理のおかげであります。今後も、IT革命などさまざまな構造変化に直面しつつも、こうしたものづくり産業こそが我が国経済の生命線であると言っても過言ではないのです。しかしながら、今回のパロマのみならず、最近は、ソニー、トヨタ、松下電器といった国際的な企業から地元の中小零細企業に至るまで、相次いで製品事故が発生しております。これは憂慮すべき事態であり、日本のものづくりの現場は果たして大丈夫なのかと心配を強く感じざるを得ません。
この背景の一つに、労働市場の安易な規制緩和という流れの中で、非正規雇用の増加に伴って、ものづくり技術が空洞化してきていることが挙げられるのではないでしょうか。
そもそも、ものづくりの基盤は人にあります。長期間にわたる経験と蓄積の中で、これまで諸先輩方が培ってきた技術やノウハウが後輩たちに順々に継承され、一層高度なものへと洗練、発展されてきたんです。これが我が国の強みでした。ところが、最近、経営者はコスト削減のためにパートや派遣社員などの非正規労働者をふやしてしまっております。人材が入れかわり立ちかわり行き来しているような職場で、我が国が誇るべきたくみの伝統の連綿たる流れに断絶が生じつつあるのではないでしょうか。幾ら同じマニュアルや同じ機械を使ったとしても、現場の人次第で製品の質が大きく異なってくることは言うまでもありません。
大局で見れば、政府そして経営者も、ここ十数年間、小さな政府、民営化、規制緩和なる旗のもとで効率を追い求めてきました。和魂洋才の精神のもとで、こうした英米の経済、経営の考え方を国益のために活用するのは、これは大いに結構であります。しかし、同じまねるのであれば、もう少し本場の全体像、そして細部の戦略、戦術までを勉強してからまねていただきたいと切に願うところであります。(拍手)
英米両国においては、規制緩和はあくまで一手段として柔軟に行われております。逆に、国民の安全、安心を確保するためには、分野によっては、規制を強化し、のみならず、それを取り締まるために役所の権限をも拡大し、人員を増強する場合すらあるわけであります。これは決して、小さな政府に何ら矛盾することではなく、むしろ補完するものであります。
同時に、外来の制度思想を導入する場合には、我が国の伝統的価値観、思想にふさわしい形でやらなければなりません。これでは、目先の利益を追い求める余り、日本資本主義の父、渋沢栄一が論語の道徳思想に基づいて経営方針を立てたという「論語と算盤」の精神を放棄してしまったのではないでしょうか、日本は。
周知のとおり、そもそも経済という言葉は、経国済民に由来します。すなわち、国を治め、人民を救うという意味であります。つまり、効率も大事です、大事ですが、それはあくまで手段であり、経済産業政策の究極の目的は、済民、国民の生活の安心と安全を守ることにあります。
こうした民族に脈々と流れている知恵と理想を忘れ、軽々しく外来の小さな政府だの民営化だの規制緩和だのを中途半端な、軽薄な、こっけいな、歪曲された形で取り入れて、明治の鹿鳴館の社交婦人のごとく踊らされている我が国の現状は、まことに目を覆いたくなるばかりであります。せっかく内閣もかわりましたので、ここ数年間はびこってきた軽佻浮薄な鹿鳴館経済学とそろそろ決別するときがやってきたのではないでしょうか。(拍手)
いずれにせよ、製品事故の頻発が我が国の製造業、さらには政府の経済産業政策の根本方針が抱える潜在的な問題をあぶり出していることは間違いないと考えます。こうした点を踏まえ、我が国のものづくり技術をめぐる現状をどう評価し、今後どう対応していこうとするのか、お伺いいたします。
最後に、近年、経済の国際化が急速に進展しており、我が国にも膨大な海外製品が流入しております。海外製品は、国内製品以上に品質が千差万別であります。中には余り品質のよろしくないものも含まれている可能性は、これは否定できません。国境をまたいだ製品の行き来が活発化している中で、海外製品の安全性についてどう確保されていかれるのか、御説明いただきたいと思います。
いずれにせよ、最近の製品事故の頻発は、国民の間に不安を招いております。私たち民主党は、これまでも、食品衛生法や薬事法などの改正も含めた包括的な危険情報公表法案を提出してまいりました。平成十三年の臨時国会に提出した折には、残念ながら全く議論が行われないままに終わってしまいましたが、その間に今回のような事態が発生してしまっているのです。また、前回の国会において、建築物をも対象にした形で、消費生活用製品等及び特定生活関連物品に係る危険情報の提供の促進等に関する法律案を提出しております。
いま一度、経国済民の原点に立ち返って、国民が安心して安全な生活を送れるようにすることこそが政治の果たすべき使命であります。行政に対して適切な対応を求めていくとともに、我々もまたこの問題に全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
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