<政府・民主党から反発、菅氏に抗議文 朝鮮学校無償化手続き再開指示>
(産経新聞8月31日)

 

 菅直人首相が退陣直前に朝鮮学校に対する高校無償化適用の審査手続きを再開するよう指示したことに対し30日、政府・民主党から反対表明が相次いだ。北朝鮮による日本人拉致問題に消極的だというメッセージを伝えたとみられるためだ。

 中野寛成拉致問題担当相は内閣総辞職後の記者会見で、手続き再開について「再開の環境が新たに整ったとは思わない。断固反対だ」と表明した。さらに「菅首相は審査停止を昨年に決断したので在任中にケジメをつけるということのようだが、事前報告がなかったのは大変残念だ」と強い不快感を示した。

 民主党の拉致問題対策本部長を務める中井洽元拉致問題担当相らも首相官邸を訪ね、枝野幸男官房長官に拉致対策本部としての菅首相あての抗議文を手渡した。

 中井氏は「拉致問題に進展が見られない中、北朝鮮に間違ったシグナルを送ることになりかねない。拉致被害者や家族の心情を思うと極めて遺憾だ」と再開の撤回を要求した。枝野氏は「被害者や家族の心情は理解できる。菅首相に伝える」と述べるにとどまった。同席した北神圭朗衆院議員も会談後、記者団に「菅首相はなぜ辞める直前に再開を指示したのか。納得できない」と批判した。

 自民党も閉会中審査手続きのために開く31日の衆院文部科学委員会で、再開の経緯や理由を追及する方針だ。

 審査手続きは、昨年11月の北朝鮮による韓国・延坪島砲撃を受けて停止した。菅首相は29日、高木義明文部科学相に「砲撃事件前の状態に戻った」として手続きの再開を指示した。

 拉致被害者の家族らは「政府は拉致問題を解決する気がなかった表れ」と反発を強めている。